治安警察法
治安警察法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | なし |
法令番号 | 明治33年3月10日法律第36号 |
効力 | 廃止 |
種類 | 治安立法 |
主な内容 | 政治活動の規制等 |
関連法令 | 治安維持法 |
条文リンク | 国立国会図書館近代デジタルライブラリー |
治安警察法(ちあんけいさつほう、明治33年3月10日法律第36号)は、日清戦争後に高まりを見せ始め、先鋭化しつつあった労働運動を取り締まる為に、第二次山県有朋内閣時に制定された法律である。
それまで自由民権運動を念頭に置いて政治活動の規制を主な目的としていた集会及政社法に、労働運動の規制という新たな機能を付加した上で継承発展させる形で制定された。敗戦直後の1945年11月に廃止された。
沿革
- 2月23日に制定、同年3月10日公布、3月30日施行された。
- 一部改正。
内容
全33条より成る(うち2条削除)。治安維持法とともに、戦前の有名な治安立法として知られる。臣民の言論の自由・出版の自由・表現の自由・集会の自由・結社の自由は法律の範囲内で存在するとする、大日本帝国憲法第29条に対して加えられた制限である。
第1条ないし19条が集会、結社、多衆運動の取締方法に関する規定で、すなわち
- 政治結社の届出(1条)
- 政治上の結社加入の資格なき者(5条1項、6条、15条)
- 政治に関し公衆を会同する集会の届出(2条)
- 政治に関係なき公事に関する結社または集会の届出(3条)
- 屋外における公衆の会同もしくは多衆運動の届出(4条)
- 屋外集会、多衆運動、群集の制限、禁止、解散および屋内集会の解散(8条)
- 集会における言論の制限(9条、10条)
- 結社、集会、多衆運動に関する警察官の尋問、集会の臨監(11条)
- 集会および多衆運動における喧擾、狂暴者の取締(12条)
- 戎器(じゅうき。武器のこと)、兇器等の禁止(13条、18条)
- 街頭その他公衆の自由に交通することを得る場所における作為の禁止(16条)
- 秘密結社の禁止(14条)
が規定された。第20条以下は罰則である。
第17条はストライキを制限するものであったが、1926年、大正15年法律第58号により削除され、代わって暴力行為等処罰ニ関スル法律が制定された。
第17条
左ノ各号ノ目的ヲ以テ他人ニ対シテ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀シ又ハ第2号ノ目的ヲ以テ他人ヲ誘惑若ハ煽動スルコトヲ得ス
1 労務ノ条件又ハ報酬ニ関シ協同ノ行動ヲ為スヘキ団結ニ加入セシメ又ハ其ノ加入ヲ妨クルコト
2 同盟解雇若ハ同盟罷業ヲ遂行スルカ為使用者ヲシテ労務者ヲ解雇セシメ若ハ労務ニ従事スルノ申込ヲ拒絶セシメ又ハ労務者ヲシテ労務ヲ停廃セシメ若ハ労務者トシテ雇傭スルノ申込ヲ拒絶セシムルコト
3 労務ノ条件又ハ報酬ニ関シ相手方ノ承諾ヲ強ユルコト耕作ノ目的ニ出ツル土地賃貸借ノ条件ニ関シ承諾ヲ強ユルカ為相手方ニ対シ暴行、脅迫シ若ハ公然誹毀スルコトヲ得ス
※「誹毀」(ひき)とは「誹謗」(ひぼう)し「毀損」(きそん)すること。他の悪口を言い名誉を毀損すること。
また第5条では、軍人及警官、神職僧侶や教員などと共に、女性が政党などの政治的な結社へ加入すること、また政治演説会へ参加し、あるいは主催することを禁じた。そのため、同法制定直後には早くも改正を求める請願運動が起こる。
改正運動は執拗に続き、1922年(大正11年)3月には集会の自由を禁じた第5条2項の改正に至った(治安警察法第五条改正運動)。しかし女性の結社権を禁じた5条1項は残されたため、婦人団体を中心に、治安警察法5条全廃を求める運動がその後も続いた。
関連項目
- 暴力行為等処罰ニ関スル法律
- 公安条例
- 破壊活動防止法 - 過去に破壊活動を行った団体の解散指定などを定める
- 政治資金規正法 - 政治団体の届出などを定める
- 女性参政権
- 女性解放運動
- 新婦人協会 - 平塚らいてう、市川房枝、奥むめおらが中心の団体。治安警察法第五条改正運動を展開し、一部改正を実現した。
- 坂本真琴 - 日本初の婦人団体「新婦人協会」創立メンバーの一人。女性の集会の自由を阻んでいた治安警察法第五条の一部改正を成し遂げた運動の中心人物。
- 御木徳一 - ひとのみち教団の教祖。治安警察法により教団は解散させられた。
- 労働組合期成会
- 日本共産党
- 農民労働党
- 大政翼賛会 - 法第3条に規定される「公事結社」。1940年から46年まで日本にあった唯一の擬似政党。
- 赤瀾会
- 日本労働組合評議会
- 赤旗事件
- 朴烈事件
- 川俣事件 - 治安警察法成立前に起きた事件であるにもかかわらず、被疑者が治安警察法違反の疑いで起訴された事件。
外部リンク
- 治安警察法(中野文庫)
- 二村一夫著『高野房太郎とその時代』(90)治安警察法公布
- 昭和3年4月10日閣議決定「労働農民党、日本労働組合評議会及全日本無産青年同盟ノ3結社治安警察法第8条ニ依リ禁止ノ件」(国立国会図書館)
- 昭和3年12月21日閣議決定「治安警察法第8条第2項ニ依リ無産党結社禁止ニ関スル件」(国立国会図書館)