水文学
水文学(すいもんがく、英語: hydrology)とは、地球上の水循環を主な対象とする地球科学の一分野であり[1]、主として、陸地における水をその循環過程から、地域的な水のあり方・分布・移動・水収支等に主眼をおいて研究する科学である。水文科学(英語: hydrologic science)ともよぶ。
研究対象は、水の供給源としての降水の地域的・時間的分布特性、蒸発、浸透、陸水や地下水の移動等が中心となる。
定義
水文学の定義は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって国際水文学10年計画(International Hydrological Decade: IHD)の発足前年に当たる1964年に、次のように定められた。
Hydrology is the science which deals with the waters of the earth, their occurrence, circulation and distribution on the planet, their physical and chemical properties and their interactions with the physical and biological environment, including their responses to human activity. Hydrology is a field which covers the entire history of the cycle of water on the earth.[2]
水文学とは地球の水を扱う科学、その発生、循環、分布、その物理的および化学的特性、またそれら特性の人間活動への反応を含めての物理的および生物的環境との相互作用を扱う科学である。すなわち水文学は地球上の水のサイクルのすべての歴史をカバーする分野である[2]。
研究分野
水は生命維持に不可欠な物質であり、学問の対象としてのみでなく水資源としても重要である。近年、水資源・水環境に関連した世界規模の問題が多数発生しているが、それらに対応するためには、水循環について正確で深い理解が求められる[3]。
水文学は理学、工学、農学などの様々な分野において研究が行われてきており、横断的な研究領域という側面をもつ。研究分野は、水循環の各素過程、すなわち浸透、流出、蒸発散、地下水流動、湖沼、河道流出などを対象とするもの、これらの各素過程における水質を取り扱うもの、地球全体などさらに広い領域水循環を対象とするものなどがある。また、社会との接点を取り扱う部分もある。
関連する学問としては、理学においては気象学、陸水学、湖沼学、工学では土木工学における河川工学、水理学、また農学における砂防学、灌漑工学、土壌物理学などがある。広義の水文学は、このような関連する学問をすべて内包した総合的な学際領域であると考える場合もある。
出典
- ↑ 森 和紀「水文科学:基礎科学としての水文学」、『日本水文科学会誌』第47巻第1号、日本水文科学会、2017年4月、 17-21頁、 doi:10.4145/jahs.47.17。
- ↑ 2.0 2.1 風間 聡 『水文学』 コロナ社〈土木・環境系コアテキストシリーズ〉、2011年、2頁。ISBN 978-4-339-05628-0。
- ↑ 水文科学とは? 筑波大学水文科学分野 2017年7月15日閲覧