株式会社 (日本)
株式会社(かぶしきかいしゃ、かぶしきがいしゃ)とは、日本の会社法に基づいて設立される会社で、株式と呼ばれる細分化された社員権を有する有限責任の社員(株主)のみから成るもののことである。出資者たる株主は出資額に応じて株式を取得し、配当により利益を得る。広義には外国における同種または類似の企業形態を含む(会社法823条)が、これについては株式会社を参照。
法務省日本法令外国語データベース:会社法(翻訳日:平成21年4月1日)第六条第二項では、株式会社は Kabushiki-Kaisha とローマ字表記されている。ただし外国語データベースは参考資料であって、法的効力は有せず、また公定訳でもない。
Contents
概要
株式会社に出資することにより株式を有する者(すなわち株式会社の社員)を株主という。株主は購入した株式の数に応じて、株式会社の経営に関与する事ができる(経営参加権)。具体的には株式会社の意思決定会議である株主総会において、原則として株式の保有数、またはその保有単元数に応じて議決権を持つ(株主平等の原則)。
日本の株式会社に対応する同様の構造の法人形態は、アメリカ合衆国各州における「
起源
- 日本初の株式会社
なお、商法はドイツ法を参考に立法されたため、株式会社もドイツの株式会社(AG)を参考に立法された。もっとも、その後、特にアメリカ法の強い影響を受けて幾度もの改正がなされて現在に至っている。専門職として、明治5年に司法書士が創設され、設立及びそれ以後の権利義務の変動に関する登記業務を行う。
設立
株式会社は設立登記をすることで成立する。法人格は準則主義により、法定の手続きが履行されたときに付与される。
会社法第2編第1章 設立に規定がある。
- 第1節 総則(25条)
- 第2節 定款の作成(26条-31条)
- 第3節 出資(32条-37条)
- 第4節 設立時役員の選任及び解任(38条-45条)
- 第5節 設立時取締役等による調査(46条)
- 第6節 設立時代表取締役の選定等(47条・48条)
- 第7節 株式会社の成立(49条-51条)
- 第8節 発起人等の責任(52条-56条)
- 第9節 募集による設立(57条-102条)
株式会社は設立登記をすることで成立する。そのためには定款を作成
- 発起設立
- 発起人が発行する全ての株式を引受け設立後の株主となる設立方法のこと(25条1項1号)。
- 募集設立
- 発起人が発行する全一部の株式を引受け、残部は、募集を行い発起人以外の者が株式を引受け、発起人と発起人以外の者が、設立後の株主となる設立方法のこと(25条1項2号)。
発起人
- 株式会社の成立後は、錯誤、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの無効又は取消しをすることができない(51条)。
- 株式会社の設立の企画者として定款に署名する者を言う。擬似発起人とは、募集広告等で設立を賛助する者を言い発起人とみなされる(103条2項)。
定款の作成
定款 とは、会社の組織活動に関する根本規則(実質的意義の定款)、及びそのような規則を記載した書面・電磁気的記録(形式的意義の定款)のことを指す。
株式会社を設立するためには、発起人が定款を作成、署名・押印しなければならない(26条)。
定款の記載事項は必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、記載しなくてもいいが記載しなければその記載の効力が認められない相対的記載事項、定款以外の規則でも効力を及ぼすが定款に記載することもできる任意的記載事項がある。(詳細は定款を参照)。
発起人が作成した定款は公証人によって認証される。また、相対的設立事項の一部は変態設立事項と言い、検査役の調査が必要とされる。
商号
商号には「株式会社」をどこかに含まなければならない。一般に、「株式会社」は先頭(株式会社○○、いわゆる「前株」)か末尾(○○株式会社、いわゆる「後株」)に置かれ、しばしば(株)と略記される(法的には、○○株式会社□□のような法人名も認められるが、実例はごく少ない)。銀行振込の場合、前株は「カ)」、後株は「(カ」と表記される。
設立時発行株式
発起人の全員の同意が必要である(32条)。
- 期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う。
- 発行可能株式総数の定め等(37条)
- 公開会社は、設立時発行株式の総数を、発行可能株式総数の四分の一以下にすることができない。
創立総会
- 創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の2/3以上に当たる多数をもって行う。
設立時役員等
- 設立時役員等の選任は、発起設立では発起人の議決権の過半数をもって決定し(40条)、募集設立では、創立総会の決議によって行わなければならない(88条)。
- 定款で設立時役員等として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時役員等に選任されたものとみなす(38条)。
- 設立時取締役・設立時監査役は、選任後遅滞なく、設立事項を調査しなければならない(46条、93条)。
成立
本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)。成立の日における貸借対照表を作成しなければならない(435条)。株式会社の設立の登記(911条)
設立無効の訴え
- 会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に訴えをもってのみ主張することができる(828条1項1号)。
- 会社の設立の無効の訴えは、設立する会社を被告として訴え(834条)、認容判決が確定したときは、、将来に向かってその効力を失う(839条)。
機関
株式会社は法人であり、その意思決定や行為を実際に行うのは、かかる権限を有する機関である。
変遷
日本のかつての商法における株式会社は、従来(1950年(昭和25年)改正以降)、全株主により構成される株主総会の下、株主総会により選任された取締役及び取締役により構成される取締役会、取締役会により選任される代表取締役、並びに株主総会が選任する監査役によって構成される。これを、国家機関の抑制均衡になぞらえて三権分立モデルという。この例えでは、株主総会と取締役会の関係を議院内閣制における議会と内閣の関係になぞらえている。ただし、監査役の役割を裁判所になぞらえるのは無理がある。敢えて言うなら検察官の役割といえる。
日本の株式会社は、代表取締役の権能が非常に強く、株主が軽視されがちであるとの主に欧米の機関投資家からの批判を受け、コーポレートガバナンスの観点から、米法型の委員会等設置会社が2003年(平成15年)4月、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)改正により規定された。委員会等設置会社に対して、従来の株式会社を呼称する場合には監査役設置会社といった。
2005年(平成17年)の会社法の成立により、従来の有限会社の枠組みに属するタイプの会社が株式会社の基本的な形態とされることになったため、取締役会の設置も任意になった。その他会社の機関構造の自由度は飛躍的に増加した。また委員会等設置会社は委員会設置会社に名称が改められた。
種類
- 株主
- 株式会社の出資者にして究極的な所有者。
- 株主総会における議決権の行使の他、帳簿閲覧請求権や差止請求権、株主代表訴訟などを通じて会社の経営を監視することができる。多数の株主により構成されることを想定され(例外として、日本特有の小規模な株式会社や、一人会社がある)、株主ら自身によって会社を運営してゆくのは効率的とはいえない。そこで日常的な業務については取締役会、およびさらにそこから日常業務を委任された代表取締役といった経営陣が執り行う。
- 株式会社は株式を発行して出資を募り、株主は転々流通する株式を購入することによって会社に出資することを目的として設計された制度である。法律学において社員とは、社団の構成員(株式会社においては「株主」)のことを指す言葉であり、一般的な用法である従業員のことを指す言葉ではない[1]。従業員とは一般に、会社との間で雇用契約を締結している者を言い、社団構成員としての意味の社員とは別の概念である。
- 取締役
- 株式会社における取締役は取締役会を構成し、意思決定に参加する
- のみで、取締役会で決定されたことを具体的に執行するのは代表取締役、業務担当取締役らである。
- 取締役会
- 取締役による合議体。
- 会社の業務執行に関する会社の意思を決定し、各取締役の職務執行を監視する。
- 2005年(平成17年)成立の会社法においては、取締役会は任意の設置機関となった。これは従来の有限会社の機関構造が会社法における株式会社の基本的な機関構造とされたことによる。
- 監査役
- 会社の帳簿や財産内容を調査したり、取締役の違法行為を取締役会や株主総会に報告するなどして会社の業務が適正に行われているかどうかを監査し、会社と株主の利益を保護する役割を負う。
- 監査役会
- すべての監査役で構成される組織。監査報告の作成、監査役の選定・解任、監査方針事項の決定などを行う。
- 公開会社かつ大会社では監査役会か監査委員会が必ず設置される。
- 会計監査人
- 大会社・委員会設置会社では必ずおかれる。公認会計士か監査法人が務める。
- 検査役
- 会計参与
- 取締役と共同で計算書類を作成する。税理士などが務める。
- 指名委員会
- 株主総会に取締役・会計参与の選任・解任に関する議案を決定する。
- 監査委員会
- 執行役の職務を監査する。
- 報酬委員会
- 執行役等の報酬を決定する。
- 執行役
- 業務の決定・執行を行う。
資金調達
会社が営業上の資金を調達するには、銀行などから融資を受けるという方法と、新株あるいは社債を発行する方法とがある。新株発行の方法は自己資本を拡大するものであり、社債発行は他人資本による資金の調達方法である。そのいずれにせよ、商法は、資金の調達を容易になしうるような法的措置を講じている。
株式会社における社員の地位が株式という細分化された割合的単位の形式をとっているのは、社員の個性を失わせ、多数の者が容易に株式会社に資本的参加ができるようにしたものである。すなわち、株式は、株式会社が大衆資本を集積して巨大な資本をもつことを可能にした技術的な手段であるが、株式会社は、会社資金調達の必要があれば、授権資本の枠のなかで、取締役会の決議に基づき新株を発行し、増資することができる。これに対し、社債は、大衆に対してなされる起債によって発生した株式会社に対する債権であって、集団的な長期借入金であり、社債券という有価証券が発行される。この場合も大量的であり、長期の借入金を一般大衆から集める手段である。なお、株式も社債も証券化により流通性をもつが、株式の流通市場が活発であるのに対し、社債の流通市場は日本では未発達である。
日本の株式会社における資金調達の実情は、銀行などからの借入金に依存する場合が多く、株式による自己資本の比重は低く、また社債による資金の調達もそれほど活発ではないといわれている。
解散
株式会社が、活動を止め財産の整理し、清算することをいい、法人格は、合併の以外では清算手続の完了まで存続する。
- 解散事由(471条)
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散の事由の発生
- 株主総会の特別決議
- 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
- 破産手続開始決定
- 解散命令(824条)又は解散請求(833条)による解散を命ずる裁判
清算
清算中の株式会社は清算株式会社と呼ぶ。清算が結了するまでは、清算株式会社は、株式会社として(解散の決議後なども)存続し、、定期株主集会も開かれ(491条)、原則として清算結了の登記を行うことで、株式会社は消滅する。
- 特別清算
- 清算手続の特則として、清算中の株式会社に債務超過の疑いがある場合などには、倒産処理手続の一種と分類される特別清算の手続が利用されることとなる。
- 会社法(平成17年法律第86号)第2編第9章第2節第1款により規律され、解散して清算手続に入った株式会社について、清算の遂行に著しい支障を来す事情がある場合や債務超過の疑いがある場合に、清算人が裁判所の監督の下で清算を行う手続である。会社法に組み込まれている手続であり独立した法典が存在しないが、倒産四法制の一つとして位置づけられている。破産手続と異なり、原則として従前の清算人がそのまま清算手続を行う。
関連する法律
- 会社法(第2編 株式会社で規定されている)
英語
日本の株式会社に対応する英語での呼称には、以下のようなものがある。
- stock company - イギリス風の直訳。比較的標準的な訳語で、政府による『法令用語日英標準対訳辞書』および『会社法』の英訳(公式訳ではない)でも採用されている[2]。
- stock corporation - アメリカでの、株式を発行するコーポレーションを指す用語である。
- business corporation - アメリカで、営利目的のコーポレーションを指すのに用いられる表現である。
- joint-stock company - 英米法に存在する概念で、かつ、直訳に近い。実際に大陸法諸国の株式会社の訳語として使われることが多い。ただし、英米いずれも株式会社とは似て非なる概念であり、誤解を招くため避けるべきとの指摘がある。
なお、以上とは別に、kabushiki kaishaと呼ぶこともある。特に英文契約書などではこの表現が好まれる。
商号の英訳
英語表記の場合には、「株式会社」をそのままローマ字表記にして頭文字を取った「KK」(kabushiki kaisha)の他、米国や英国に倣って「Corp.」、「Inc.」、「Ltd.」とすることが多い。日本においては Co., Ltd. の形もよく使われている。最近では、カンマを外した「Co. Ltd.」の表記を採用する企業もある。また、多国籍企業ではシックス・アパートのように日本国外の本社と日本法人を区別するために、前者を「Ltd.」など英語の略称、後者を「KK」として区別に用いている例もある。
外国企業等との取引の際に便利なように、英文での商号を定めている日本の株式会社もあり、定款に定めることもある。ただし、日本に英文商号を規制する法律や登記する制度はない。日本の株式会社が定める英文商号の中で、「株式会社」の翻訳として通常使われているのは、以下の4種類である(実例とともに示す)。
- XXX, Limited(あるいはその略称である、XXX, Ltd.。XXX Co., Ltd.やXXX Co. Ltd.("Co."は"company"の略である。)、XXX Kaisha, Ltd.と定めているものもある。):特に"Co., Ltd."の採用例が圧倒的に多いが、真ん中のスペースが欠落していることも多い。なお、アメリカ合衆国において、Ltd.ないしはLimitedを含む名称を用いるのは、通常LLCであり、日本では合同会社に相当する。イギリス(本土)では、私会社 (private company) である場合に強制されるものであり、これは、日本のいわゆる非公開会社に近い。一方、イギリス(本土)及びアメリカ以外の英語圏では上場会社であってもこのような名称が用いられることがある。
- XXX Corporation(略してXXX Corp.):アメリカ合衆国における例に倣ったものである。
- 新日鐵住金株式会社 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation
- 日本電信電話株式会社 Nippon Telegraph and Telephone Corporation
- 日本テレビ放送網株式会社 Nippon Television Network Corporation
- 株式会社三井住友銀行 Sumitomo Mitsui Banking Corporation (「三井」と「住友」が反対)
- 三菱電機株式会社 Mitsubishi Electric Corporation
- ソニー株式会社 SONY Corporation
- トヨタ自動車株式会社 Toyota Motor Corporation
- パナソニック株式会社 Panasonic Corporation
- XXX, Incorporated(略してXXX, Inc.)またはXXX Incorporated(略してXXX Inc.):アメリカ合衆国における例に倣ったものである。
- キヤノン株式会社 Canon Incorporated
- 株式会社電通 Dentsu Incorporated
- 株式会社東京放送 Tokyo Broadcasting System, Incorporated
- 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント Sony Music Entertainment Incorporated
- XXX Kabushiki Kaisha(略してXXX KKまたはXXX K.K.):株式会社をローマ字表記したものである。日本法に準拠して設立された株式会社であることが明らかとなるメリットがあるが、取引関係者が日本語のkabushiki kaishaの意味を解さないと意味がない。そのため、通常の企業では採用例は少なく、特定目的会社においてよく用いられる。
なお、英語圏には日本の会社の種類を表す語を前に置く習慣がないため、「株式会社○○」であっても"XXX Co., LTD"などのように後ろに置くのが普通である。
記号
英語では「Kabusiki Kaisha」の略として㏍という記号が使われることもあり、Unicodeなどではこの記号を「全角KK」として定めている。また日本語では「全角括弧付き株」の㈱記号も使われている。
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
㏍ | U+33CD |
1-13-67 |
㏍ ㏍ |
全角KK SQUARE KK |
㈱ | U+3231 |
1-13-74 |
㈱ ㈱ |
全角括弧付き株 PARENTHESIZED IDEOGRAPH STOCK |
関連項目
脚注
外部リンク