東葉高速鉄道
東葉高速鉄道株式会社(とうようこうそくてつどう)は、千葉県内で第三セクター鉄道である東葉高速線を運営している鉄道事業者。本社と車両基地(八千代緑が丘車両基地)は千葉県八千代市に所在する。
「高速鉄道」とあるも、新幹線のような高速鉄道ではなく都市高速鉄道を意味する[1]。
Contents
概要
東葉高速線は、元来は京成本線の混雑解消路線として計画され、帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄〈東京メトロ〉)東西線の延伸区間として、当初は「営団勝田台線」と呼ばれた(詳細は「東京メトロ東西線#開業までの沿革」を参照)。しかし、京成電鉄が、オイルショックの影響による不動産投資・地域開発分野で大幅な損失を計上したことや、新東京国際空港(現・成田国際空港)の開港の遅れにより業績を悪化させたことに考慮して、当時の運輸省が一時的に計画を凍結し、さらに営団側が「東京のテリトリーから大きく外れる」として申請を取り下げた。当時、地元は営団経営による延長を主張していたが、結局は第三セクター方式で建設されることとなった。この原案は1965年頃に本八幡駅 - 船橋市行田団地 - 習志野駅 - 八千代市萱田間を予定経路として行われた地下鉄10号線(現・都営地下鉄新宿線)の千葉県内延長調査が元となっている。なお、計画凍結中の運行案として、京成電鉄の短絡路線とする計画もあったが、同社がこれを拒否したため実現しなかった。
建設にあたり、当初より地権者の抵抗もあって用地買収は難航した。当時、千葉県の収用委員会が機能していなかったことが拍車をかけたと言われている。さらに、手抜き工事によるトンネル陥没事故や、バブル期の土地高騰のあおりを受けて、建設費が当初予定をはるかに上回る結果となった。近年の営業収支は黒字で推移しているが、その黒字額では建設時の債務の利払いにも足りず、経常収支は赤字であり、負債額は年々増加している。そのため、東日本旅客鉄道(JR東日本)の電車特定区間運賃の約2.5倍となる高額な運賃となっている(「運賃」の節も参照)[2]。この東葉高速鉄道の経験が、後の様々な助成制度の整備やつくばエクスプレスの成功につながったと言われている。
2006年3月末現在のデータで全国の第三セクター鉄道の中でもっとも債務超過額が多くなっている[3]。2008年3月期決算では、売上高は約152億5000万円、営業損益は約47億4000万円の黒字であるが、約5億円の経常損益の赤字があり、累積赤字は約846億8000万円になっている。その後もしばらく「売上高が150億円強で営業損益は黒字であるが経常損益・純損益が赤字」という状況が続いたが、2011年3月期(2010年度)決算にて、支払利息の低減などにより開業以来初めて経常損益・純損益が黒字に転じた [4]。その一方で、累積赤字額については一時増加に転じていたこともあり、2013年3月期決算でも約833億5723万円と改善は僅かにとどまっている[5][6]。
営業収益 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 繰越利益剰余金 (累積赤字) |
長期債務残高 | 純資産 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2007年度 | △4億8493万円 | △3億4792万円 | △846億7857万1000円 | △498億7857万0000円 | |||
2008年度 | △3億4701万円 | △3億2212万円 | △850億0068万8000円 | △477億8068万8000円 | |||
2009年度 | △3893万円 | △4314万円 | △850億4382万5000円 | △454億0382万5000円 | |||
2010年度 | 150億6400万円 | 46億4300万円 | 1億6800万円 | 3億9800万円 | △846億4486万3000円 | 3043億8500万円 | △417億5486万3000円 |
2011年度 | 149億600万円 | 44億7100万円 | 3億1100万円 | 3億700万円 | △843億3783万5000円 | 2975億9400万円 | △381億9783万5000円 |
2012年度 | 151億7200万円 | 50億5000万円 | 10億8100万円 | 9億8000万円 | △833億5723万7000円 | 2916億円 | △339億1723万7000円 |
2013年度 | 154億8600万円 | 55億900万円 | 16億6400万円 | 15億3100万円 | △818億2539万6000円 | 2853億9600万円 | △290億9539万6000円 |
2014年度 [7] | 152億6000万円 | 53億1100万円 | 17億7100万円 | 12億6200万円 | △805億6252万7000円 | 2789億6100万円 | △245億4252万7000円 |
2015年度 [8] | 156億5800万円 | 59億2700万円 | 27億8700万円 | 18億2200万円 | △787億4029万3000円 | 2722億2200万円 | △194億3029万3000円 |
2016年度 [9] | 159億1300万円 | 56億6500万円 | 29億8800万円 | 21億9400万円 | △765億4551万4000円 | 2652億2900万円 | △139億4551万4000円 |
2017年度 [10] | 163億2000万円 | 58億1600万円 | 31億2800万円 | 25億5800万円 | △739億8670万7000円 | 2601億1100万円 | △113億8670万7000円 |
2007年(平成19年)初頭まで、京成本線との乗り換えで成田国際空港まで早く着くことをセールスポイントとして「味な近道」というキャッチコピーでPRしていた。開発により沿線地域のベッドタウン化が進んだこともあり、収益は改善が進む傾向にある。
現在では旅客以外の収入にも力を入れており、駅施設(ホームや改札口など)を利用して、ドラマをはじめとするテレビ番組やCMのロケーション撮影もたびたび行われている。ドラマ撮影は『Mの悲劇』[11]、『クロサギ』、『パパとムスメの7日間』、『猟奇的な彼女』、『人生で最高の終わり方』などTBS系列が多いが、日本テレビ系列の『悪夢ちゃん』、フジテレビ系列の『ありふれた奇跡』、『リーガル・ハイ』、『GTO』(関西テレビ制作、2012年)、テレビ朝日系列の『相棒』でも使用されたことがある[12]。CMではこれまでに、ヤクルトの健康飲料「プレティオ」、消費者金融のアコム、三井住友海上グループ、乳酸菌飲料カルピスなどの撮影に使われている。
歴史
- 1974年(昭和49年) - 帝都高速度交通営団(当時)が西船橋 - 勝田台駅間の免許を申請。
- 1981年(昭和56年)9月1日 - 会社設立。
- 1996年(平成8年)
- 1999年(平成11年)12月6日 - 平日ダイヤにおいて西船橋・北習志野・八千代緑が丘・東葉勝田台の4駅のみに停車する東葉快速を運転開始。
- 2000年(平成12年)10月14日 - パスネットを導入。
- 2004年(平成16年)12月7日 - 2000系車両が営業運転開始。
- 2006年(平成18年)
- 2007年(平成19年)3月18日 - PASMOを導入。Suicaと相互利用可。
- 2008年(平成20年)3月14日 - パスネットの自動改札機での使用を終了。
- 2009年(平成21年)10月1日 - 開業当時からの青色の制服から、チャコールグレーに社色である緑の線が入った制服にリニューアル。
- 2013年(平成25年)3月23日 - 交通系ICカード全国相互利用サービス開始により東葉高速線でTOICA、ICOCAなども利用可能となる。
- 2014年(平成26年)3月15日 - 東葉快速が廃止。
路線
使用車両
- Toyorapid2000.jpg
2000系
過去の車両
- 1000形(1996年3月16日 - 2006年12月4日)
- 1000形車両は、帝都高速度交通営団から東西線を走っていた5000系電車を譲り受け改造したもの。東葉高速線開業前の3月16日から、営団地下鉄東西線内のみでの運用に就いていた。
- 営団5000系
- Tōyō Rapid 1008F.JPG
1000形
なお、同じく東京メトロ東西線に乗り入れるJR東日本E231系電車は、東葉高速線の乗り入れ装置を搭載していないことから入線しない。
運賃
大人普通旅客運賃(小児半額・ICカードの場合は1円未満切り捨て、切符購入の場合は10円未満切り上げ、)。2014年4月1日改定[13]。
キロ程 | 運賃(円) | |
---|---|---|
ICカード | 切符購入 | |
初乗り1 - 3 km | 206 | 210 |
4 - 5 | 288 | 290 |
6 - 7 | 360 | 360 |
8 - 9 | 432 | 440 |
10 - 11 | 504 | 510 |
12 - 14 | 565 | 570 |
15 - 17 | 627 | 630 |
定期券
定期券の割引率は通勤30.8%・通学55.6%(2014年4月現在)で、普通運賃より割安になるのは通勤定期で月21往復、通学定期で月14往復以上の場合である。6か月定期では割引率は通勤定期37%で、月19往復以上で割安になる。2014年4月より通学定期は通勤の約半額に値下げされている。
回数券
回数券は区間式で、「普通回数券」は11枚綴り、「昼間・土休日割引回数券」は他社と異なり13枚綴りで発売している。
企画乗車券
- 東葉シネマチケット[14] - 西船橋駅・八千代緑が丘駅を除く東葉高速線各駅から八千代緑が丘駅との往復乗車券とTOHOシネマズ八千代緑が丘の映画鑑賞引換券がセットになっている。2006年9月2日から2007年3月31日まで発売された後、2007年5月1日から通年発売となった。
- 東葉東京メトロパス[15] - 東葉高速線往復・東京メトロ線が一日乗り放題の乗車券。発売当日限り有効で、西船橋以外の東葉高速線内の各駅にて発売。また、発売額が駅によって異なる。
- 東葉羽田バスきっぷ[16] - 東葉高速線乗車券と羽田空港高速バス乗車券[17]がセットになった乗車券。購入日から1か月間有効(有効期間内1回限り有効)。片道券と往復券を発売している。ただし、往復券は往復割引は無く、片道券の倍額となる。西船橋駅を除く東葉高速線内各駅でのみ発売(羽田空港では発売しない)。
第24回全国都市緑化ふなばしフェアにおける動き
2007年10月2日から11月4日まで、千葉県船橋市のふなばしアンデルセン公園で「第24回全国都市緑化ふなばしフェア おとぎの国の花フェスタinふなばし」が開催された。これに併せて、以下の取り組みを行った。
- 西船橋駅以外の各駅で特別前売り券を発売した。
- 2007年9月9日から10月31日まで、2000系2102Fの先頭車前面に船橋市市制70周年も兼ねた特製ヘッドマーク、2109Fの先頭車前面に八千代市市制40周年記念特製ヘッドマークを装着した。2101F・2102F・2107F・2108F・2110Fの5編成の側面にはイベント告知ステッカーを貼付した。
- 2007年9月20日から11月4日まで、中野・西船橋・綾瀬を除く東京地下鉄の定期券売場で、「東京メトロ&東葉高速一日乗車券セット」を発売した。
その他
- 自社の研修施設を持たないため、動力車乗務員(運転士)の養成を他社に委託している。
- 駅構内の売店は、京成線と同じ京成ストア運営のMini shopである。以前は新京成線と同じスタシオン・セルビス運営のSKショップもあったが2013年6月までに全店撤退した。
- 現在の本社は2代目であり、初代は千葉県船橋市のフロントンビルに入居していた。1997年頃に現在地に移転している。
- 開業時には開業記念として、1000形が缶にデザインされたビールが販売されていた。
- 2017年に八千代市長に初当選した服部友則は東京地下鉄との経営統合などで運賃値下げに繋げていきたいと語っている。
脚注
- ↑ 鉄道トリビア (84) あんまり速くないのに「高速鉄道」ってどうして? - マイナビニュース、2011年11月29日
- ↑ 八千代市 寄せられた投書への回答、東葉高速鉄道 よくある質問 を参照
- ↑ 『週刊ダイヤモンド』2007年12月15日号
- ↑ 平成22年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 平成24年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 公社等外郭団体に関する情報公開(2014年4月1日現在) 東葉高速鉄道(株) (PDF) - 千葉県
- ↑ 平成26年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 平成27年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 平成28年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 平成29年度決算報告(事業実績報告・貸借対照表・損益計算書) (PDF) 東葉高速鉄道公表の資料。
- ↑ 「東速鉄道」の名で登場している。
- ↑ 『人生で最高の終わり方』などの作品中では、実在の駅名や会社名がそのまま使用されている。
- ↑ 鉄道運賃の改定及び通学定期旅客運賃の値下げについて (PDF) - 東葉高速鉄道、2014年3月5日
- ↑ 東葉シネマチケット - 東葉高速鉄道
- ↑ 東葉東京メトロパス - 東葉高速鉄道
- ↑ 東葉羽田バスきっぷ - 東葉高速鉄道
- ↑ 但し、羽田空港高速バスで、船橋駅発着便における船橋駅での乗降と空港発「深夜割増運賃適用便」の乗車はできない。