村松英子
村松 英子(むらまつ えいこ、1938年(昭和13年)3月31日[1] - )は、日本の女優・詩人。東京都出身。身長162cm、体重50kg。父は精神医学者の村松常雄、母方の祖父は田部隆次。実兄は文芸評論家の村松剛。兄の友人三島由紀夫の弟子で演劇活動を引き継いでいる[2]。再従兄弟に当たる夫の南日恒夫(日本テレビ勤務の技師)は南日恒太郎の孫。本名は南日英子[1]。
Contents
来歴・人物
東京市淀橋区西大久保(現・東京都新宿区大久保)で誕生[3]。学者一家の家庭に生れ、父・村松常雄の書斎で『マザーグース』『ペロー童話集』などを読み聞かされて育つ[2]。芝居好きの祖母は英子を歌舞伎に連れていくこともあった[2]。
日本女子大学附属豊明小学校の10歳の頃、兄・村松剛の影響で詩に親しみ、毎年夏に避暑に行く信濃追分で兄から『立原道造詩集』を買ってもらったのをきっかけに、自身も詩を書いたりするようになる[2]。
日本女子大学附属中学校・高等学校、日本女子大学英文科を卒業後に、慶應義塾大学大学院英文学科修了[1][2][4]。大学院ではエリオットを研究した[2]。
日本女子大学在学中に文学座に入団し、その後、座員に昇格。1956年(昭和31年)に初舞台『女の一生』に出演した[1]。1961年(昭和36年)に再従兄弟の南日恒夫と結婚[2]。同年11月に楽屋当番をしている時、杉村春子に『十日の菊』公演初日の花束を持って来た三島由紀夫と初対面した[2][5]。
1963年(昭和38年)の「喜びの琴事件」で、三島、中村伸郎らと共に文学座を脱退し、劇団雲を経てグループNLTに所属[5][2]。英子の資質を認めていた三島に指導を受け、『班女』など三島戯曲の舞台に多数出演した[5][2]。1968年(昭和43年)には再び三島らと共にNLTを脱退し、劇団浪曼劇場の旗揚げに参加した[5][2]。
1966年(昭和41年)、第一回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。1971年(昭和46年)1月24日の三島の葬儀に際しては、(本人は初め辞退したが遺族の強い希望で)演劇界代表で弔辞を読んだが嗚咽を抑えきれなかった[6][2][7]。英子は三島没後にカトリックの洗礼をうけ信者となった[2]。
夫(日本テレビ社員だったがすでに物故している)との間に高齢で出来た2人の子の育児や主婦業などでしばらく演劇活動は休止していたが、1995年(平成7年)から再開。演劇ユニット「サロン劇場」を主宰し演出家でもあり、『近代能楽集』、『鹿鳴館』、『薔薇と海賊』など多くの三島戯曲を公演している[6][2][8]。娘・村松えりも女優として「サロン劇場」公演に多数出演しており[9]、えり自身も2017年に「サロン劇場 B- side」を立ち上げて英子も出演している。 学生時代より詩作をしており、詩集をはじめ、育児や人生論に関する書籍を数冊出版している[2][4]。
1983年(昭和58年)より長年、鳥取女子短期大学、北海学園大学、慶應義塾大学での客員講師(鳥取女子短期大学では、1993年に英文科教授に昇格)を歴任し、1993年(平成5年)開館の倉敷市劇場「芸文館」の初代館長を務めた[4][1]。
主な出演
出典は[2][4][11][12][1][8][13][3][14][15][16]
舞台
- 女の一生(1956年) - 布引けいの娘役
- 守銭奴(1957年) - エリーズ役
- 班女(1965年、1996年) - 花子役
- サド侯爵夫人(1965年) - アンヌ役
- リュイ・ブラス(1966年) - 王妃役
- 鹿鳴館(1967年) - 朝子役
- 朱雀家の滅亡(1967年) - 璃津子役
- 癩王のテラス(1969年) - 第二王妃役
- 薔薇と海賊(1970年) - 楓阿里子役
- 館の殺人
- ベル・ブック・アンド・キャンドル
- 気紛れ
- 海を越えて エミーとジョン
- 葵上(1996年)
- 卒塔婆小町(1997年)
- 弱法師(1997年)
- 熊野(1998年)
映画
- アラブの嵐(1961年、日活)
- 怪談(1964年、東宝) - 建礼門院役
- ここから始まる(1965年、東宝)
- 日本暗黒街(1966年、東映)
- 陸軍中野学校 雲一号指令(1966年、大映)
- 他人の顔(1966年、東宝)
- 花の宴(1967年、松竹)
- 育ちざかり(1967年、東宝)
- 爽春(1968年、松竹)
- 年ごろ(1968年、東宝)
- 娘ざかり(1969年、東宝)
- 砂の器(1974年、松竹大船・橋本プロ ) - 銀座クラブのママ役、ノンクレジット
- 本陣殺人事件(1975年、ATG)
- 悪魔が来りて笛を吹く(1979年、東映)
- 隠密同心 大江戸捜査網(1979年、東宝) - 敬秀尼役
テレビドラマ
- 一族再会(1960年)
- NHK連続テレビ小説 あかつき(1963年、NHK) - 佐田千津役
- 波の塔(1964年、NET) - 結城頼子役
- 徳川家康(1964年 - 1965年、NET)
- ぼんたん家族(1965年、NET)
- 青い山脈(1966年、NTV)
- 近鉄金曜劇場「愛とこころのシリーズ 女が帰るとき」(1967年2月10日、ABC)
- 平四郎危機一発 第1話(1967年、TBS)
- 若き日の高杉晋作(1967年11月30日)
- 泣いてたまるか 第33話(1967年、ABC)
- 白い巨塔(1967年、NET)
- 明治天皇(1967年、NTV)
- 風 第14話「孤剣春を行く」(1968年、TBS)
- 三匹の侍 第5シリーズ 第20話「白い幻花」(1968年、CX) - 深雪
- 女ゆえに(1968年、NTV)
- NHK劇場「去年の秋」(1968年3月14日、NHK)
- 大奥(1968年、KTV) - 桂
- 日本剣客伝(NET)
- 第2話「小野次郎左衛門」(1968年5月)
- 第10話「千葉周作」(1968年12月)
- ローンウルフ 一匹狼 第37話「運命の拳銃」(1968年、NTV)
- 東京バイパス指令 第5話「恐喝(かつあげ)」(1968年、NTV・東宝)
- 上方武士道(1969年、NTV) - 冬子内親王
- 怪奇ロマン劇場 第3話「ゆきおんな」(1969年7月19日、NET) - 雪女
- ゴールドアイ 第12話「密売大組織」(1970年5月1日、NTV) - 佐野ケイ子
- 遠山の金さん捕物帳 第2話「吹矢場にいた女」(1970年7月19日)- お甲
- 日本怪談劇場 第13話「怪談・雪女」(1970年9月26日、12ch) - 雪女
- 大坂城の女(1970年、KTV)
- 銭形平次 第213話「流人島異聞」(1970年、CX) - お杉
- 男は度胸(1970年、NHK)
- 徳川おんな絵巻(1970年、KTV) - ナレーション
- 柳生十兵衛 第16話「三九郎故郷へ帰る」(1970年) - 美津
- 大奥恋物語(1971年、CX) - お登勢
- NHK大河ドラマ「新・平家物語」(1972年、NHK)
- ザ・ガードマン(大映・TBS)
- 荒野の素浪人 第12話「慕情 赤い谷の女」(1972年、NET) - 雪乃
- 木枯し紋次郎 第18話「流れ舟は帰らず」(1971年、CX) - おみつ
- 非情のライセンス(1973年、NET) - 河村志津
- 氾濫(1974年、NET)
- 高校教師(1974年、東京12ch・東宝) - 小松原貴子教諭
- しろがね心中(1975年、TBS)
- Gメン'75 第7話「女子学生誘拐殺人事件」(1975年、TBS・東映)
- 十手無用 九丁堀事件帖 第13話「死神を追え」(1975年、NTV・東映) - おふさ
- 女の十字路(1977年)
- 花のながれ(1977年、TBS)
- Yの悲劇(1978年)
- 探偵物語 第5話「夜汽車で来たあいつ」(1979年、NTV)
- 江戸の牙 第8話「対決! 黒い稲妻」(1979年、ANB)
- そば屋梅吉捕物帳 第14話「黒い十手に悪の華」(1979年、12ch) - 千代
- 鬼平犯科帳 第1シリーズ 第21話「引き込み女」(1980年、テレビ朝日 / 東宝) - お元
- 西遊記II 第14話「鬼女妖怪 狙われた新婚夫婦」(1980年、NTV) - 千手観音
- 柳生あばれ旅 第18話「涙に散った乱れ雲」(1981年)
- 土曜ワイド劇場「先妻の亡霊と闘う新妻」(1981年、ANB)
- 時代劇スペシャル 「日本犯科帳 隠密奉行・久留米編」(1982年、CX)
- 天守物語
- ニュードキュメンタリードラマ昭和 松本清張事件にせまる 第13・14回(1984年、ANB) - ナレーション
著書
詩集
- 『ひとつの魔法』 ユリイカ、1960
- 『一角獣』 サンリオ出版、1973 (現代女性詩人叢書)
随筆等
- 『天使とのたたかい 詩人女優の母としての記』 主婦の友社、1979
- 『愛はわが家から 村松英子の子育て奮戦記』 講談社、1983
- 『私のたったひとつの望いに 女・詩・演劇』 文化出版局、1985
- 『貴女への贈りもの 人生で一番大切なこと』 中央書院、1999
- 『こころの花 あなたと共に』 講談社、2003
- 『三島由紀夫追想のうた 女優として育てられて』 阪急コミュニケーションズ、2007
- 『歴史に恋して』万葉舎、2018
訳書
- 『世界の愛の詩集』 ルック社、1966
- 『わが子を抱きしめ、さとす「一分間のしつけ」』(ジェラルド・E.ネルソン著)三笠書房、1985
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 広瀬正浩「村松英子」(事典 2000, pp. 612-613)
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 「第四章 新劇女優 村松英子」(岡山 2016, pp. 135-174)
- ↑ 3.0 3.1
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 著者略歴(英子 2007, p. 200)
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 「出逢いから傍に落ち着くまで」「先生のお傍で」(英子 2007, pp. 12-34)
- ↑ 6.0 6.1 「三島先生の葬儀」「付記として」(英子 2007, pp. 131-145)
- ↑ 「第八章」(年表 1990, pp. 229-245)
- ↑ 8.0 8.1 鈴木靖子「村松英子」(旧事典 1976, p. 413)
- ↑ “移動しながら謎解き劇 村松英子の「サロン劇場」”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2015年11月25日). オリジナルの2016年12月1日時点によるアーカイブ。
- ↑ 遠藤悠樹(編)、日本会議の人脈、三才ブックス、2016年。
- ↑ 「三島先生の言葉から」(英子 2007, pp. 11-146)
- ↑ 「戯曲編」(英子 2007, pp. 147-193)
- ↑ 85回史 2012
- ↑ [1] - allcinema
- ↑ テレビドラマデータベース「村松英子」
- ↑ Drill Spin データベース「村松英子」
- ↑ CiNii Books「村松英子」
- ↑ 国会図書館リサーチ「村松英子」
参考文献
- 井上隆史; 佐藤秀明; 松本徹編 『三島由紀夫事典』 勉誠出版、2000年11月。ISBN 978-4585060185。
- 井上隆史; 佐藤秀明; 松本徹編 『同時代の証言 三島由紀夫』 鼎書房、2011年5月。ISBN 978-4907846770。
- 岡山典弘 『三島由紀夫が愛した美女たち』 啓文社書房、2016年10月。ISBN 978-4899920205。
- 長谷川泉; 武田勝彦編 『三島由紀夫事典』 明治書院、1976年1月。NCID BN01686605。
- 松本徹 『三島由紀夫――年表作家読本』 河出書房新社、1990年4月。ISBN 978-4309700526。
- 松本徹監修編 『別冊太陽 日本のこころ175――三島由紀夫』 平凡社、2010年10月。ISBN 978-4582921755。
- 村松英子 『三島由紀夫 追想のうた ――女優として育てられて』 阪急コミュニケーションズ、2007年10月。ISBN 978-4484072050。
- 村松剛 『三島由紀夫の世界』 新潮社、1990年9月。ISBN 978-4103214021。 - 新潮文庫、1996年10月 ISBN 978-4101497112
- 『決定版 三島由紀夫全集42巻 年譜・書誌』 新潮社、2005年8月。ISBN 978-4106425820。
- 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』 キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2012年5月。ISBN 978-4873767550。
関連項目
- 村松えり(娘)