曜日
曜日(ようび)とは、七曜(7つの天体)が守護するとされる日のことをいい、曜日が循環する7日の組の事を週と呼ぶ。日本語では現在でも各曜日を日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日のように七曜の名を冠して呼ぶが、地域によっては、後に曜日の名に番号、土着の神、イベント等が当てはめられ、七曜との関係は忘れられている。これについては後述の「各言語での曜日の名称」を参照。
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歴史
週・曜日の概念は古代バビロニアで生まれ、紀元前1世紀頃のギリシア・エジプトで完成したと考えられる。一方、古代バビロニアからさまざまな経路を経てユダヤ教徒が使ったものがそのままキリスト教徒に伝えられた。
順序の起源
天動説での太陽系モデルでは、七曜は、地球から見た角速度が速いものほど地球に近く、月・水星・金星・太陽・火星・木星・土星の順に並んでいると考えた。しかし、曜日の順序は、この順番またはその逆というわけではなく、2つおき(3つめごと)に遡っている。
元来、七曜は、1曜が1日ではなく1時間ごとに地上を守護すると考えられた。これがプラネタリーアワーである。プラネタリーアワーの順序は、地球から最も遠い土星に始まり、内側へと進む。きっかり24時間後、すなわち翌日の第一時間目の守護星は、3つ前(あるいは4つ後)の太陽となる。
以下、順に土星、太陽、月、火星、水星、木星、金星、そしてまた土星が各日の第一時間目の守護星になる。第一時間目の守護星は、同時にその日一日の守護星ともされ、その日は守護星の名をもって呼ばれるようになった。こうして、現在の曜日の順が決まった。
日本への導入
日本には入唐留学僧らが持ち帰った「宿曜経」等の密教教典によって、平安時代初頭に伝えられた。宿曜経が伝えられて間もなく、朝廷が発行する具註暦にも曜日が記載されるようになり、現在の六曜のような、吉凶判断の道具として使われてきた。藤原道長の日記『御堂関白記』には毎日の曜日が記載されている。
具註暦では、日曜日は「日曜」と書かれるほかに「密」とも書かれた。これは、中央アジアのソグド語で日曜日を意味する言葉 ミール(Myr)を漢字で音写したものであり、当時、ゾロアスター教やマニ教において太陽神とされていたミスラ神の名に由来する。
その後江戸時代になると、借金の返済や質草の質流れ等の日付の計算はその月の日にちが何日あるか(大抵は29日か30日)がわかればいいという理由で、七曜は煩わしくて不必要とされ、日常生活で使われることはなかった。
週の最初は何曜日か
週の最初が何曜日であるかは、国、文化、規準により様々である。
実態
週が始まる日を、日曜日とすることもあり、また月曜日からとするところもある。アメリカ製のカレンダー、ヘブライ語、ポルトガル語、アラビア語、ペルシア語、ベトナム語などでは前者であり、フランス製のカレンダーなどは後者である。イスラム圏では金曜日が公休日になっていて、カレンダーも土曜日から始まるものがある。
日本で曜日の順列を明確に定めているものにはJIS規格(JIS X 0301)があり、「01:月曜日 02:火曜日 03:水曜日 04:木曜日 05:金曜日 06:土曜日 07:日曜日」と規定されている。
日本で「週末」といえば一般的に「金土日」を指す。気象庁でも週末を「土、日曜日」としている[1]。また「週の頭」と言われれば「月曜」を考えるのが一般的で、実情からも習慣やイメージからも月曜が日本の週の始まりといえる。週間予定表付き手帳は、月曜始まりのものがほとんどである[2]。一方、古くからの輸入カレンダー等の影響もあり、日本で販売されているカレンダーには日曜始まりのものと月曜始まりのものが混在している。
国際標準など
- ISO 8601では、月曜日が週の始まりとされ、月曜日-日曜日を1-7で表す。
- 国際航空業界の時刻表などでは、月曜日を1、火曜日を2、…日曜日を7と表示している。
- Javaでは、日曜日は零番目とされ、日曜日-土曜日を0-6で表す。デフォルトでは月曜日が週の始まりだが、任意に変更できる(数値は変わらず、どれが始まりかだけが変わる)。
- 日本の労働基準法体系では、就業規則その他に別段の定めがない限り、週は日曜日から土曜日まで、としている[3]。
曜日の名称から
いくつかの言語では、曜日の名称が、明示的にもしくは暗黙のうちに順序を示している。
- ドイツ語では、水曜日をMittwoch(ミットゥヴォッホ、直訳すれば「週の中間」)と呼び、この名は日曜日が週の始まりであることを前提としている。ロシア語のсреда(スレダー、真ん中)も同様であるが、週末と平日は区別され、月曜日を平日の第1日としている。
- 中国語では、唐の時代に占いの中で日本語と同じ曜日名を使ったが、今は広く日常生活において日曜日を星期日、平日の月曜日-土曜日を星期一-星期六というようになった。中国本土の住民の間では週は月曜日に始まるとの考えも根強いが、香港などの中国語のカレンダーでは、日曜日の後に平日が配列されている。
- ベトナム語では、日曜日をChủ nhật(主日)、月曜日〜土曜日を二次〜七次を意味する言葉(Thứ Hai〜Thứ Bảy)で表している。しかし近年のベトナム語によるカレンダーではヨーロッパ諸国やタイで見られるように日曜日を週末に配しているものが珍しくない。ポルトガルも同様であるが、ともに週の起点を示す言葉とは異なる配列である。
- スワヒリ語では、週の起点は金曜日または土曜日である。
曜日の起源から
曜日の起源から考えると、プラネタリーアワーは地球に近づく順に進んでいるので、最も遠い土曜日から始まるのが自然である。
『ローマ史』を著したカッシウス・ディオによって紹介されている曜日の順番の起源では、土星を1番目としている。
曜日と暦
曜日の基点
日付から曜日を特定するには、ある1日についてそれが何曜日かを決めておく必要がある。これは古代からデファクトスタンダード(事実上の標準)として暗黙裏に広く認められ使われていたが、あらためてISO 8601で「2000年1月1日を土曜日とする」と定義された。日本ではJIS X 0301がそれに従っている。
曜日の計算
任意の日付から曜日を求めるには、ユリウス通日を求める。
ツェラーの公式を使えば、日付から直接に曜日を計算することもできる。
曜日の循環
グレゴリオ暦では、曜日の循環も400年周期である。その理由は、以下の通り、400年間の日数である 146 097 日が 7 で割り切れるからである。
- グレゴリオ暦では、400年間に97回の閏年を設ける。したがって、
- 1年間の平均日数 = 365 + 97/400 = 365.2425 日/年
- 400年間の日数 = 365.2425 × 400 = 146 097 日 ( 又は 365 日 × 400 年 + 97 日としても同じ。 )
- 146 097 日 ÷ 7 = 20 871 週ちょうど
各言語での曜日の名称
ロマンス諸語
イタリア語、スペイン語などの多くのロマンス諸語では、キリスト教やローマ神話に由来する呼び名が使用されている。例えば、スペイン語ではdomingo(日曜日)は主、lunes(月曜日)は月、martes(火曜日)は軍神マルス、miércoles(水曜日)は商業の神メルクリウス、jueves(木曜日)は神々の王ユピテル、viernes(金曜日)は愛の女神ウェヌス、sábado(土曜日)はユダヤ教の安息日をそれぞれ起源としている。
アジアでは、(ロマンス諸語には含まれないものの)タガログ語などフィリピンの諸言語がスペイン語の曜日名を借用している。ただし、タガログ語において日曜日のみは週を表すLinggoと呼ばれるが、これもスペイン語の"domingo"がなまったものと言われる。
ポルトガル語では、Sábado(土曜日、第七曜日)、Domingo(日曜日、第一曜日)以外は数詞を冠して、月曜日をSegunda-Feira(第二曜日)、火曜日をTerça-Feira(第三曜日)、水曜日をQuarta-Feira(第四曜日)、木曜日をQuinta-Feira(第五曜日) と 金曜日をSexta-Feira(第六曜日)と呼び、神話に起源をもつ名称を排除している。
ゲルマン語
英語やドイツ語、オランダ語といったゲルマン系の言語では、日曜日 (Sunday) は太陽 (Sun)、月曜日 (Monday) は月 (Moon) にちなむ。また、ローマ神話の神々に相当する北欧神話の神々の名も採用されている。
英語においては、火曜日 (Tuesday) は北欧神話における天空神テュールに、水曜日 (Wednesday) はアングロサクソンの主神オーディン(ウォドン)、木曜日 (Thursday) は北欧の雷神トールに由来しており、金曜日 (Friday) は北欧の愛の女神フレイヤ(フロイア)、土曜日 (Saturday) はローマ神話に登場するサトゥルヌスを起源としている。
ただし、アイスランド語では日曜日 (sunnudagur) と月曜日 (mánudagur) が太陽と月に由来する部分では他のゲルマン系の言語と共通するが、残りの曜日において、北欧神話の神々の名はすべて排除された名称が用いられる。
その他
現代の中国語では、日曜日を星期日、月曜日を星期一、火曜日を星期二、…土曜日を星期六と呼んでいる。昔は七曜の名を冠して呼んでいた(その呼び名は中国に起こり、日本や朝鮮などに伝えられた)が、現代の中国語ではこれを使わない。
ヘブライ語やアラビア語では、日曜日を第一日とする番号で言い表される。ただしヘブライ語では土曜日は安息日を意味する「シャバト」を用い、アラビア語では金曜日(ジュムア)と土曜日(サブト)のみ特別な名称を使用する。
ペルシャ語では土曜日を「シャンベ」と呼び、日曜日から木曜日までは「シャンベの1日後・2日後…5日後」を意味する語を使用する。
様々な呼び方の曜日
- 日曜日
- 月曜日
- 薔薇の月曜日 - 謝肉祭最後の薔薇の日曜日に続く月曜日。
- 暗黒の月曜日 - 1987年10月19日月曜日(アメリカ時間)の株価大暴落。
- ブルーマンデー症候群 - 初台関谷神経科クリニックの関谷透院長によって命名された症候群。「休日が終わり仕事が始まる」という事実が会社員の心身に負担を与え、自殺率、脳卒中と心筋梗塞の発症率、血圧上昇率、ひいては歩留まり下降率等が他の曜日よりも高くなるという統計に基づく。
- 火曜日
- 薄切りの火曜日 - 謝肉祭最終日の火曜日。ベーコンや梨など、薄切りの食べ物がよく食べられる日。
- スーパー・チューズデー - アメリカ合衆国大統領選挙がある年の3月初旬の一つの火曜日。多くの州で同時に予備選挙が開催されるため重要視される。
- 暗黒の火曜日 - 1929年10月29日火曜日(アメリカ時間)の株価大暴落。同年10月24日木曜日の大暴落に続いたこの日の大暴落が世界恐慌を引き起こした。
- 水曜日
- 木曜日
- 金曜日
- 土曜日
七曜以外の曜日
十曜制
フランスでは、七曜制を廃止し独自の十曜制が設けられた時期が存在した。1793年11月24日から1805年12月31日まで(グレゴリオ暦)と1871年のパリ・コミューンの際に「フランス革命暦」が用いられ、この暦では、合理性を追求するため、従来の七曜を廃止して10日ずつ3つのデカード(décade。週・旬とも。フランス革命暦では1か月はすべて30日であった)に分けられた。しかし、七曜に慣れた国民にとっては大変苦痛であったため、革命暦廃止を前に1802年3月31日から元の七曜制に戻された。
五曜制
- インドネシアのジャワ島には古来から伝わる伝統的な独自の五曜制があった。
- ソ連では、七曜制を廃止し独自の五曜制が設けられた時期が存在した。1929年から1940年まで「ソビエト連邦暦」が用いられた。この制度の実施は2つの時期に分けられる。
脚注
- ↑ 時に関する用語 気象庁、時間経過などを表す用語。 週末を「土、日曜日」としている。
- ↑ 週間予定表の一例 能率手帳ゴールド・週間予定表のメモページの使い方
- ↑ 改正労働基準法の施行について 労働省労働基準局長、労働省婦人局長通知、1988年1月1日 (基発第一号、婦発第一号) 1 法定労働時間 (2)一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間 なお書き。「一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。」
参考文献
- 倉田正也 『科学・技術の盲点をつく もうひとつの視角』 工業調査会〈ケイブックス 30〉、1982-10。ISBN 978-4-7693-6030-8。
- 土屋吉正 『暦とキリスト教』 オリエンス宗教研究所、1987-06、増補改訂版。ISBN 978-4-87232-022-0。