日立金属

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日立金属株式会社(ひたちきんぞく、Hitachi Metals, Ltd.)は、日本鉄鋼メーカー。

1956年(昭和31年)4月日立製作所が全額出資して日立グループ鉄鋼業金属部門を統合分立させた会社である。2013年(平成25年)7月、同じく1956年に日立製作所から電線部門を分離して設立された日立電線株式会社を吸収合併したため、日立グループで日立製作所に次ぐ規模となった。

概要

委員会設置会社三水会及びみどり会の会員企業であり三和グループに属している[1][2]

主力製品は刃物金型に用いられる先端固体材料の高級工具鋼(YSSヤスキハガネ)、その他電子製品で使用されるインバー合金等の高級金属製品、高級自動車部材、磁性材料、鉄鋼用ロール配管製品、電子部品などを擁する特殊鋼・エコ製品を核とした総合素材メーカーである。2013年(平成25年)には旧・日立電線の製品である鉄道車両用電線・ケーブルや医療機器用電線、自動電装用部品、ブレーキホースなども製品群に加わった。

売上高鉄鋼メーカー第4位、時価総額第3位、高性能鉄鋼材料に特化している。特殊鋼マレブル鋳鉄ダクタイル鋳鉄磁性材料の開発、製造に関し最も古い歴史を持つ、伝統と最先端技術の調和の取れた融合体となっている。永久磁石では最も強力とされているネオジム磁石は、日立金属の佐川眞人らによって開発された(開発は旧住友特殊金属在職時)。メセナの一環として、日本美術刀剣保存協会が行う玉鋼(マルテンサイト化する日本刀の素材)製造法たたら吹きの支援も行っている。

沿革

戦前

  • 1899年(明治32年) - 安来工場前身の雲伯鉄鋼合資会社(後、安来鉄鋼合資会社、及び、安来製鋼所)設立
  • 1910年(明治43年) - 鮎川義介により、日立金属の前身および日産自動車のルーツとなる戸畑鋳物株式会社設立
  • 1917年(大正6年) - 戸畑鋳物、帝国鋳物(若松)を吸収合併
  • 1918年(大正7年) - 日立製作所内に日立電線の前身となる電線製造工場を新設
  • 1922年(大正11年) - 戸畑鋳物、木津川製作所(桑名)を吸収合併
  • 1929年(昭和4年) - 戸畑鋳物は東京製作所(深川)を新設し自動車用マレブル鋳鉄製造開始。
  • 1934年(昭和9年) - 安来製鋼所を吸収合併(この後、ヤスキハガネ開発に成功し、すでに開発していた高速度工具鋼にも応用した)
  • 1935年(昭和10年) - 戸畑鋳物、国産工業に社名変更
  • 1937年(昭和12年) - 国産工業、日立製作所に吸収合併
  • 1944年(昭和19年) - 日本初国産ジェットエンジンネ-20搭載の推力軸受用Cr-W鋼イ513を開発し海軍技術廠より表彰を受けた(日立製作所安来工場の冶金研究所の小柴定雄による発明)

戦後

旧日立電線の沿革は日立電線を参照。

  • 1956年(昭和31年) - 日立金属工業株式会社設立(日立製作所全額出資にて分離独立)
  • 1961年(昭和36年) - 熊谷工場新設。東京および大阪証券取引所第二部上場
  • 1962年(昭和37年) - 東京、大阪証券取引所一部上場
  • 1965年(昭和40年) - 米国に Hitachi Metals America, Ltd.を設立
  • 1967年(昭和42年) - 株式の額面及び社名変更の目的で日立金属株式会社に合併
  • 1970年(昭和45年) - ドイツに Hitachi Metals Europe GmbHを設立
  • 1972年(昭和47年) - 京都国際会議にて、清永欣吾が「鋼の強靭性」にて特殊鋼に初めて破壊力学の考え方を導入する発表を行い世界的反響を呼んだ
  • 1973年(昭和48年) - 1990年代まで続く、計算科学に基づいたいわゆる「合金設計」という手法を渡辺力蔵が発表し始める。
  • 1979年(昭和54年) - シンガポールに Hitachi Metals Singapore Pte. Ltd.を設立
  • 1995年(平成7年) - 日立フェライト(株)と合併
  • 2001年(平成13年) - 執行役員制および社内カンパニー制を導入
  • 2003年(平成15年) - 商法上の「委員会等設置会社」に移行
  • 2004年(平成16年) - 住友特殊金属に自社磁材事業を会社分割の上NEOMAXと商号変更。連結子会社とする。
  • 2005年(平成17年) - 米国アライド社の非晶質金属事業を買収し、日本非晶質金属株式会社を傘下に設立。
  • 2007年(平成19年) - NEOMAXを吸収合併
  • 2010年(平成22年) - 米国アドバンスドエナジー社のマスフローコントローラ事業およびガスボックス事業を買収。
  • 2011年(平成23年) - メトグラス安来工場新設
  • 2012年(平成23年) -佐賀工場新設
  • 2013年(平成25年) - 日立電線株式会社を吸収合併[3]
  • 2014年(平成26年) - 三菱マテリアル株式会社の子会社であるMMCスーパーアロイ株式会社を、日立金属MMCスーパーアロイ株式会社として子会社化
  • 2014年(平成26年) - 世界最大の鋳物製造会社である米国Waupaca Foundry, Inc.を買収。
  • 2015年(平成27年) - 米国の工具鋼会社Diehl Tool Steel, Inc.を子会社化
  • 2016年(平成28年) - 米国の医療機器用部品会社HTP-Meds, LLCとHi Tech Machine and Fabrication, LLCを子会社化
  • 2017年(平成29年) - 日立金属MMCスーパーアロイ株式会社を完全子会社化
  • 2018年(平成30年) - 日立金属MMCスーパーアロイ株式会社を吸収合併[4]

特徴

分野は、インフラ、自動車、エレクトロニクス、IT、半導体、環境エネルギー、鉄鋼、宇宙航空機、建機、工機、建築、医療用の材料及び部品で多角的な経営であるが、コア技術は鉄周辺の合金および製鋼鍛造熱処理などを主体とした製造技術と代表トライボロジー材料である工具鋼やそれより発展した磁性材料、電子部品、非鉄金属や無機/有機材料の鋳造塑性加工、粉末冶金・射出成形品などの新素材および部品製造というまとまりがある。株式市場では鉄鋼部門に属するが、研究開発型企業を志向しているところも特徴的であり、Materials Magicをコーポレートブランドとして掲げている。鉄鋼メーカーであっても鉄鋼大手のような高炉を用いて製鉄をすることはなく、とくに鉄鋼材料においても最も合金設計が精密な高級特殊鋼分野に特化している。

また、グローバル化展開も他の特殊鋼メーカーより先んじた体制を2004年(平成16年)の傘下商社の再編により構築している。 ひょうたん印の継手は1910年(明治43年)、戸畑鋳物の時代からのブランドであり[5]、上下水道、ガス等の配管で目にすることが多い。また特殊鋼の商標としてはYSSヤスキハガネの商標を持ち、工具鋼刃物鋼から金型用鋼に至る丈夫な鋼材として評価を得ている(身近なところでは、日立製のシェーバーの刃に使用されている)。

加えて、2013年(平成25年)7月に加わった電線材料事業(旧・日立電線の事業)は、導体・高分子・接合技術をコア技術として産業用電線、医療用電線、自動車電装部品を中心に成長を図っている

製品ブランド

  • SLD-MAGIC(高性能冷間ダイス鋼)
  • DACシリーズ(アイソトロピィ熱間ダイス鋼)
  • YXRシリーズ(マトリックスハイス)
  • HAPシリーズ(高性能粉末ハイス)
  • GINB(グローバルカミソリ材料)
  • NEOMAX(ネオジ鉄ボロン磁石)
  • ファインメット(ナノ結晶磁性材料)
  • Metglas(鉄基アモルファス軟磁性材料)
  • ハーキュナイトシリーズ(自動車用耐熱特殊鋳鋼)
  • SCUBA(大口径・高意匠アルミホイール)
  • HINEXロール(鉄鋼圧延用ハイスロール)
  • エコグリーン(電力用エコ電線)

生産拠点

以下の他に国内子会社、海外生産拠点を多数擁している。

研究開発拠点

  • 素材研究所(栃木県真岡市;自動車エンジン部品、耐熱部品、軽合金)
  • 冶金研究所(島根県安来市;鉄鋼材料、特殊鋼、エネルギー、自動車用新素材、宇宙航空素形材、磁性電子素材)
  • 磁性材料研究所(大阪府三島郡島本町;マグネット素材、マグネット応用品、セラミックス、金属電子材料)
  • 電線材料研究所(茨城県日立市;電線材料)
  • 生産システム研究所(埼玉県熊谷市;生産技術)

グループ企業

国内

海外

  • Hitachi Metals Europe GmbH
  • Hitachi Metals America, LLC
  • Hitachi Metals Singapore Pte. Ltd.
  • 日立金属(東莞)特殊鋼有限公司
  • 台湾日立金属股フン有限公司
  • 日立金属投資(中国)有限公司
  • San Technology, Inc.
  • Hitachi Metals Hongkong Ltd.
  • Hitachi Metals Korea Co., Ltd.
  • Hitachi Metals (Thailand) Ltd
  • 日立金属(蘇州)科技有限公司
  • Hitachi Metals (India) Private Ltd.
  • Metglas, Inc.
  • Hitachi Metals North Carolina, Ltd.
  • Waupaca Foundry, Inc.
  • AAP St. Marys Corp.
  • Ward Manufacturing, LLC
  • SinterMet, LLC
  • 宝鋼日立金属軋輥(南通)有限公司
  • PT. NX INDONESIA
  • 東莞住秀電子有限公司
  • Pacific Metals Co., Ltd.
  • Namyang Metals Co., Ltd.
  • 日立金属精密儀器(深圳)有限公司
  • HNV Castings Private Limited
  • Hitachi Cable America Inc.
  • HC Queretaro, S.A. de C.V.
  • Hitachi Cable (Johor) Sdn. Bhd.
  • Thai Hitachi Enamel Wire Co., Ltd.
  • Hitachi Cable Philippines, Inc.
  • Hitachi Cable Vietnam Co., Ltd.
  • 上海日立金属線材有限公司
  • 日立電線(蘇州)有限公司

参考文献

  • 渡辺ともみ著 「たたら製鉄の近代史」 吉川文庫(2006年)
  • 『メイド・イン・ジャパン-日本製造業変革への指針-』(ダイヤモンド社、1994年)
  • 『産業技術短期大学大学案内2011』(産業技術短期大学、2010年)
  • 『産業技術短期大学五十年のあゆみ』(学校法人鉄鋼学園 産業技術短期大学、2012.4.25)

ほか

脚注

  1. 六大企業集団の無機能化 (PDF) - 同志社大学学術情報検索システム内にあるページ。筆者は経済学者田中彰
  2. メンバー会社一覧 - みどり会
  3. 日立金属株式会社および日立電線株式会社の合併契約締結に関するお知らせ
  4. 連結子会社(日立金属MMCスーパーアロイ株式会社)の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ
  5. 『“より強靭に、より滑らかに、より美しい曲線に”との願いを込めて鋳出しされたのがこの「ひょうたん」印です。海外でも「Gourd Brand」の名で親しまれています。』との由来の説明が同社ホームページ上にある。暮らしを支える「ひょうたん印」”. . 2015閲覧.

関連項目

外部リンク