日本の政党
日本の政党(にっぽんのせいとう)では、日本における政党及び、その政党制や法制度、歴史などの背景について記述する。
Contents
法律上の要件
現在の日本では、政治資金規正法により政治団体の届出が定められている。同法第8条によれば、政治団体は届出前に寄付や支出をすることができないとされている。したがって、秘密結社を設立すること自体は違法にはならないが、秘密のまま団体として寄付を集めたり支出することは違法となる。
このようにして届け出られた政治団体のなかから一定の要件を満たすものを政党と呼び各種の保護の対象としている。公職選挙法・政治資金規正法・政党助成法・政党法人格付与法の各法で、それぞれ似ているが微妙に異なる要件を定めている。すなわち、「政治団体のうち、所属する国会議員(衆議院議員又は参議院議員)を5人以上有するものであるか、近い国政選挙[1][2]で全国を通して2%以上の得票(選挙区・比例代表区いずれか)を得たもの」[3][4]を政党と定めている。かといって、小政党・地方政党が法律に従って現実の政党概念や政党分析、政党システム分析から追放されるわけではない。しかし、こと国政選挙に関していえば、政党とその他の政治団体・無所属候補の扱いの差は大きい。
たとえば、法律で認められたポスター・ビラ枚数や選挙カーの台数など、公職選挙法上の政党には候補者とは別枠で数が認められているなどである。その他にも、政党以外の候補は 以下の点で法律上大きく不利な条件で選挙運動を強いられている。
- 総選挙及び衆議院・参議院議員補欠選挙では選挙区で政見放送に出演できない
- 総選挙で比例区の重複立候補が認められていない
- 政党は比例区に1人からでも候補を立てられるが、政治団体は衆院では定数の10分の2以上、参院では10人以上(選挙区と含めて)候補を立てなければならない
- 企業(法人)からの政治献金を受け取ることができない(政党以外の政治団体は、個人献金のみ受け取れる)
- 政党とその資金管理団体以外の政治団体への寄付は政党等寄附金特別控除の対象とならないため政党に比べカンパを集めにくい。
- 比例区の選挙において、政党は既存政党と同一・類似の略称が使用できるが、政治団体は既存政党と同一・類似の略称は使用できない。
2005年(平成17年)の第44回総選挙後、選挙無効の訴訟が起こされた。この訴訟で原告は、一票の格差の他、公職選挙法における政党候補と非政党候補の格差は憲法14条1項の法の下の平等に反し違憲であると主張した。しかし、東京高裁で原告は全面敗訴。2007年(平成19年)6月13日、最高裁判所大法廷(島田仁郎裁判長)は12対3で原告の上告を棄却し、高裁判決が確定した(2005年衆院選合憲判決)[5]。判決では、「政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である」から、非政党候補との格差は「合理的理由に基づくと認められる差異」の範囲内であるとした。また、衆議院小選挙区における政見放送の非政党候補の締め出しについては、「選挙制度を政策本位、政党本位のものとするという合理性を有する立法目的によるもの」と判断した。
その他、政治資金規正法上の政党に該当すると団体献金が受けられるようになる等の点で差異があり、政党助成法上の政党になれば政党法人格付与法に基づき法人格の取得が可能になり[6]、国から政党交付金が受けられるようになるなど、他の政治団体と異なる扱いがなされている。
ミニ政党・泡沫政党
- ミニ政党
- 当選者数が極端に少ないことから、特に所属国会議員が存在せず、今後も議席を得る見込みのない政治団体を泡沫政党(ほうまつせいとう)と総称する。
インターネット政党
インターネット政党とは、インターネットやソーシャルメディアを主な媒体として自らの政策を発信し、その政策の実現のために活動している[7]政治団体及び任意団体の総称。一部のメディアから若者が政治参加するための媒体として注目されており[8]、日本では天木直人やドクター中松が主な提唱者であった[9]。
インターネット政党の特徴は、インターネットやソーシャルメディアを主な媒体にしているということであるが、政党要件を満たしているネット政党は、日本には存在しない[10]。海外には大韓民国の改革国民政党のように一時的に政党要件を満たしたものもあるが、のちに政党要件を喪失して解散している。また、他にも海外には国政選挙に候補者を擁立しているネット政党は複数存在するが、泡沫政党で終わったり、そもそも立候補自体を却下された例も存在する[11]。また、入党に年齢制限を設けない場合が多いため、中学生や高校生、大学生が幹部を行うことインターネット利用者に学生・生徒が多いことを反映している。
規定
- 同一政党所属者過半数禁止規定
- 議会で同意又は指名の対象となっている政府関連役職の一部については、定数の一定数以上が同一政党に所属してはならないとする規定がある。例として以下の役職がある。
- 国家公務員(定数の半数以上)
- 地方公務員(定数の半数以上)
- 地方公務員(2人以上)
- 選挙管理委員、選挙管理補充員
- その他(定数12人中5人以上)
- 日本放送協会経営委員
- 政党役員等禁止規定
公務員等の一部の役職については、政党役員等を兼ねることができないとする規定がある。例として以下の職がある。
- 「政党の役員、政治的顧問、これらと同様な政治的影響力をもつ政党員(任命前から5年間に就任していた場合を含む)」を禁止規定とする役職
- 「政党の役員だった者(任命前から1年間に就任していた場合を含む)」を禁止規定とする役職
- 日本放送協会経営委員
- 「政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、これらと同様な役割をもつ構成員」を禁止規定とする役職
- 「政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員」を禁止規定とする役職
- 「政党その他の政治団体の役員」を禁止規定とする役職
- 国地方係争処理委員会委員、中央更生保護審査会委員
- 「政党その他の政治的団体の役員」を禁止規定とする役職
- 国家公安委員会委員、会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員、再就職等監視委員会委員、会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員、中央労働委員会公益委員、原子力委員会委員、土地鑑定委員会委員、公害等調整委員会委員長及び委員、運輸安全委員会委員長及び委員、公害健康被害補償不服審査会委員、電気通信紛争処理委員会委員、証券取引等監視委員会委員長及び委員、国家公務員倫理審査会会長及び委員、運輸審議会委員、宇宙開発委員会委員長及び委員、情報公開・個人情報保護審査会委員、食品安全委員会委員、公益認定等委員会委員、総合科学技術会議民間議員、特定独立行政法人役員、日本銀行役員、都道府県公害審査会委員、都道府県公安委員会委員、教育委員会委員、特定地方独立行政法人役員、地方公務員一般職、人事委員会委員、公平委員会委員
- 「政党の役員」を禁止規定とする役職
- 国家公務員共済組合連合会役員、沖縄振興開発金融公庫役員、外務人事審議会委員
脚注
- ↑ 近い国政選挙とは、(1) 前回の衆議院総選挙 (2) 前回の参議院通常選挙 (3) 前々回の参議院通常選挙(ただし、公職選挙法上はカウント対象外)のいずれかを指す。政党要件における国会議員の資格は衆議院解散日から選挙投票日までの前衆議院議員、任期満了後から選挙投票日までの国会議員も含む。
- ↑ II 政党交付金の交付の対象となる政党
- ↑ 政党助成法上はさらに国会議員を有することを要件としている
- ↑ 日本国憲法の改正手続に関する法律106条2項では「政党等」を「一人以上の衆議院議員又は参議院議員が所属する政党その他の政治団体であって両議院の議長が協議して定めるところにより国民投票広報協議会に届け出たものをいう。」と定義する。
- ↑ 「平成18(行ツ)176 選挙無効請求事件 (PDF) 」
- ↑ 政党助成法上の政党以外の政治団体は基本的には人格なき社団であるが、他の法令に基づき法人格を有している例がある(自民党の政治資金団体である財団法人国民政治協会など)
- ↑ 新党憲法9条代表の天木直人(外交評論家、元駐レバノン日本国特命全権大使)や新政未来の党最高顧問の笠哲哉(新右翼団体「ナショナルフロント」会長、軍人遺族国民運動会頭、元英霊顕正会会長)のように、現実に政治活動を行っており、かつ、一定の社会的影響力を持つ人間も参加していることもあり、必ずしもインターネットでのみ活動しているわけではない。
- ↑ ネット選挙不発にみるネット政党の必要性 ※この記事は日本経済新聞が出典
- ↑ 野党総崩れとインターネット政党待望論 天木 直人
- ↑ 将来的な国政進出を目指す旨を主張するネット政党も存在し、インターネット政党・平成竜馬の会のように政治団体として届けられた例も存在するが、現実に候補者を擁立したネット政党は、2015年12月現在、存在しない。
- ↑ 世界の「インターネット党」は珍妙ぞろい--ダース・ベイダーから FBI が狙う億万長者まで
- ↑ 自衛官は自衛隊員の種類の一つ。「自衛隊員」と呼んだ場合は防衛事務次官以下、全ての事務官、防衛大学校学生までも含む