新幹線962形電車

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新幹線962形電車(しんかんせん962がたでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が東北上越新幹線を想定した営業車両(後の200系)の先行試作車として、1979年昭和54年)に製作した試験用電車である。

概要

同じく小山試験線で試験に供されていた961形を設計のベースとしているが、東北・上越新幹線での使用に最適化するため、電気装備品を交流50Hz・25000V専用とし、徹底的な耐寒耐雪対策が施された。

構造・性能

外装

先頭車のスカート(排障器)先端にはスノウプラウ、各車側面には雪切り室(電動機への冷却風から雪を分離する装備)につながる吸気口が設けられていた。台車側面は台車カバーで覆われ連結面には内ホロを覆うように外ホロが設けられていた。また、雪から機器を守るためボディーマウント構造を採用。軸重が16.3t以内(車重で65.2t以内)となるようにするためアルミ合金製であった。なお、当初から試験終了後の電気試験車への改造が予定されていたため窓配置なども改造に適した配置になっていた。試験時の塗装は、白地に緑という配色でそのまま200系に継承された。ただし、登場当時の緑の色調はモスグリーンで、200系とは若干異なっていた。

性能

6両編成で全車電動車である。力行制御は不等6分割サイリスタバーニア連続位相制御方式で230kWの直流電動機MT201X形を駆動。製造当時、電動機の冷却風に雪が混じると故障の元になるとされていたため、前述の雪切り室で雪を分離した空気を使用することとし、従来電動機に装着されていた電動送風機は廃止された。ブレーキ制御はチョッパ連続位相制御と発電ブレーキ電気指令式空気ブレーキを併設。ただし0系のように速度に応じて各ブレーキを切り替えるのではなく、最適なブレーキ力を得るため適時空気ブレーキが追加されるようになっていた。なお、力行、ブレーキともに連続制御となっているのは降雪に対応して粘着性能を向上する必要があるためである。

内装

空調装置は各車両の天井部に2基設置されたが、暖房性能を向上するためポジスタ(PTCサーミスタ)という半導体の一種を用いた電熱ヒータを採用した。なお、この空調方式は現在も東日本旅客鉄道(JR東日本)所属の新幹線車両の基本として踏襲されている。

また、当時改善要望の強まっていた0系の転換クロスシートに代わる普通車用座席のテストが行われ、在来型転換クロスシート3列席の中央席を拡幅したもの・簡易リクライニングシート(集団見合い形)・両側2列席クロスシートなどが搭載され比較検討された。この結果2列席のみ回転可能な簡易リクライニングシートが200系および0系の増備車両に採用されることになった。

運用実績

1979年2月22日から1980年6月まで小山試験線で試験を実施後、開業前の上越新幹線にて1980年9月24日より地上設備監査を実施。200系E2編成の1~8号車、軌道試験車921-41、962形962-5・962-6で組成した総合監査を1980年11月5日から12月12日にかけて行い、11月28日から速度向上試験に移り210km/hを達成した。他、開業前の東北・上越両新幹線に各種試験で用いられ、問題点の洗い出しが行われ改善に活かされた。上越新幹線開業後の1983年1月17日、電気試験車925形10番台に改造、921-41を加えた7両編成となり検測を開始した。925形になった後も速度向上試験にたびたび使用されたが、老朽化のため2003年1月25日に廃車となった。