推理漫画
推理漫画(すいりまんが)は、日本における漫画作品の種類のひとつで、ミステリ(あるいはサスペンス)を扱う。探偵漫画(たんていまんが)とも呼ばれる。ただし、単なるホラー漫画やギャンブル漫画などは含まない。
Contents
概要
1980年代まではミステリを扱った漫画は少なかった[1]。原作が小説のコミカライズ[2]以外では、探偵やスパイが主人公であるアクションのものが中心であった[1]。そのため小説でよくある伏線張り、論理的・意外性のある解決によって面白くする推理ものは傍流だった[1]。
1992年に週刊少年マガジンの『金田一少年の事件簿』の登場が波紋、反響を呼ぶ[1]。先の今まで少数だった本格ミステリの要素を漫画にもってきて、解答編前に一種の懸賞形式で真相当てクイズを実施するというスタイルを導入、ヒットする[1]。この作品の成功を受けて週刊少年サンデーが『名探偵コナン』を連載し[3][4][5]、ヒット。
他にも1990年代後半には多数の推理漫画が発表されたが、その中で特に水準が高い作品が『金田一少年の事件簿』『名探偵コナン』『Q.E.D. 証明終了』である[5]。
特徴
小説の場合はトリックの作成のために部屋配置や人物配置を記載する際には、文字とは別に図面を異質な形で新たに設けなければいけず、事件に置かれている現場でも重要な証拠を置くことについても文字で一々言及しなければならなかった。しかし、漫画の場合はコマ絵を並べる過程で部屋配置や人物配置などの図面を挿入することの自然さや、現場で重要な証拠も漫画描写の過程でさりげなく記載するほか、読者にじっくり読ませることが可能である[6]。事件解明前の犯人の描写は、『金田一少年の事件簿』の作者が犯人を黒いシルエットで表現する手法を考え付き、他の推理漫画でも採用されている。
作品
以下は発表順。漫画以外の媒体を原作としている作品(コミカライズ)は省略する[5]。※は掲載誌が幾度も変わっている漫画である。
事件推理がメインの作品
- 草壁署迷宮課おみやさん(ビッグコミック、1981年 - 1983年)
- 亜雅沙の事件ファイルシリーズ(別冊マーガレット、1986年 - 1988年)
- NERVOUS BREAKDOWN(月刊コミックNORA、1989年 - 1997年)
- 金田一少年の事件簿(週刊少年マガジン、1992年 - 2001年、2004年以降不定期連載中)
- 名探偵コナン(週刊少年サンデー、1994年 - 連載中)
- ぼくらの推理ノートシリーズ(月刊少年ギャグ王、1994年 - 1999年)
- 人形草紙あやつり左近(週刊少年ジャンプ、1995年 - 1996年)
- 秘密警察ホームズ(月刊コロコロコミック、1996年- 1999年)
- 心理捜査官 草薙葵(週刊少年ジャンプ、1996年 - 1997年)
- 探偵ボーズ21休さん(週刊少年チャンピオン、1997年 - 1998年)
- Q.E.D. 証明終了シリーズ(1997年 - 連載中)※
- 少年探偵Q(週刊少年ジャンプ、1998年)
- ぼくは少年探偵ダン♪♪(週刊少年ジャンプ、1998年 - 1999年)
- 探偵レボリューション(りぼん、1999年 - 2005年)
- 探偵学園Q(週刊少年マガジン、2001年 - 2005年、2007年短期連載)
- ミステリー民俗学者 八雲樹(週刊ヤングジャンプ、2002年 - 2004年)※
- リモート(週刊ヤングマガジン、2002年 - 2004年)
- C.M.B. 森羅博物館の事件目録(月刊少年マガジン、2005年 - 連載中)
- 火災調査官ナナセ(週刊コミックバンチ、2005年 - 2007年)
- 推理の星くん(月刊コロコロコミック、2005年 - 2008年)
事件推理以外の要素も強い作品
- 夢幻紳士(1981年 - 1987年)※
- パズルゲーム☆はいすくーるシリーズ(1984年 - 連載中)※
- 鎌倉ものがたり(漫画アクション→まんがタウン、1984年 - 連載中)
- すくらんぶる同盟(なかよし、1988年 - 1992年)
- 土曜ワイド殺人事件シリーズ(1995年 - 2004年)※
- パタリロ!(花とゆめ→別冊花とゆめ、MELODY、1978年 - 連載中)
- サイコメトラーEIJI(週刊少年マガジン、1996年 - 2000年)※
- 魔探偵ロキ(月刊コミックブレイド、1999年 - 2004年)
- スパイラル 〜推理の絆〜(月刊少年ガンガン、1999年 - 2005年)
- なんてっ探偵♥アイドル(週刊ヤングサンデー、2000年 - 2004年)
- 喰いタン(イブニング、2002年 - 2009年)※
- きらきら☆迷宮(ちゃお、2000年 - 2001年)
- 十二宮でつかまえて(なかよし、2001年 - 2003年)
- スパイラル・アライヴ(2001年 - 2008年)※
- 探偵犬シャードック(週刊少年マガジン、2011年 - 2012年)
- 名探偵マーニー(週刊少年チャンピオン、2012年 - 2014年)
似非推理漫画
バカミス、犯罪漫画、SF漫画、ファンタジー漫画などの要素も強い作品も含む。
- ハロー張りネズミ(週刊ヤングマガジン、1980年 – 1989年)
- CLAMP学園探偵団(月刊Asuka、1992年 – 1993年)
- 多重人格探偵サイコ(1997年 - 連載中)※
- 虹色仮面(FEEL YOUNG、1998年 - 2001年)
- 少女探偵 金田はじめの事件簿(ウルトラジャンプ、1999年 - 2000年)
- ああ探偵事務所(ヤングアニマル、2002年 - 2008年)
- 魔人探偵脳噛ネウロ(週刊少年ジャンプ、2005年 - 2009年)
- シバトラ(週刊少年マガジン、2006年 – 2009年)
- SKET DANCE(週刊少年ジャンプ、2007年 - 2013年)
- よんでますよ、アザゼルさん(イブニング、2007年 - 連載中)
- デカワンコ(YOU、2008年 - 連載中)
- ARISA(なかよし、2009年 - 2012年)
- 今際の国のアリス(週刊少年サンデー超(週刊少年サンデーS)、2010年 - 2015年)
- 今際の路のアリス(月刊サンデーGX、2015年 - 2018年)
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 日下三蔵「「名探偵コナン」は現代の「少年探偵団」だ」『ハヤカワミステリマガジン』(早川書房)2011年6月号<通巻664号>p.66
- ↑ 藤子不二雄Aの『怪人二十面相』(『少年』1959年 - 1960年連載、光文社)や影丸穣也の『八つ墓村』(『週刊少年マガジン』1968年 - 1969年連載、講談社)があり、後者は1970年代の角川文庫の横溝正史作品のリバイバルブームのきっかけになった作品。
- ↑ 青山剛昌×天樹征丸×さとうふみや 豪華作家鼎談『名探偵コナン&金田一少年の事件簿』(小学館)2008年4月25日号<第1号>p.291
- ↑ 村上貴史 「迷宮解体新書 第42回 青山剛昌」 『ミステリマガジン』(早川書房)2011年6月号<通巻664号>p.6
- ↑ 5.0 5.1 5.2 知的発見!探検隊 「世界の名探偵がよくわかる本 」 (イースト・プレス)p.50
- ↑ 有栖川有栖 「ミステリ漫画の金字塔」 『ミステリマガジン』(早川書房)2011年6月号<通巻664号>p.17