接種

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接種(せっしゅ)は、多くの場合、予防接種のことであるが、本来は種を植え付けることである。広い意味では、微生物学の分野で、微生物が繁殖可能な場所に人為的に植え込むことを表す。

原義

本来、字義通りに取れば、接種とはを植え付けることであるが、種子植物の種まきにこの言葉を使うことはない。実際には、微生物を扱う場合に於いて、特定の微生物を繁殖させることを目的として、その微生物を繁殖させるべき場を用意した上で、目的の微生物を含む材料を、そこに植え付ける、押し込む、注入するなどの操作を指して言うものである。

たとえばほだ木にシイタケの種菌を接種するとか、培地培養株を接種するとか、農作物共生微生物を接種するとか。微生物の分離のために、野外からの試料を培地に直接に植え付ける方法を直接接種法という例もある。

予防接種の場合も、ワクチンは多くの場合に弱毒化された病原体であり、つまり生きた微生物であるから、それを人間の体に注入するのは接種なのである。なお、この言葉の起源は、おそらく種痘である。種痘は、ヒトからヒトへと植え継ぎが可能であり、その内容が不明な時代から、まるで植物の繁殖と同じような感覚で扱われた。うまく植え継げず、その効果がなくなった場合には“枯れる”と称した。

予防接種

概論

予防接種は、感染症予防する目的でワクチンを生体に投与する医療行為。予防注射ともいわれる。ワクチンとは、弱毒化した病原体または死菌などであり免疫記憶の形成を誘導することで、本格的な感染を防ぐためのものと言われている。

ジェンナー種痘に始まる。理論的裏付けはルイ・パスツールによって行われ、それ以後は多くの伝染病に対するワクチンが開発されるようになった。


ヒトへの臨床的応用

実際の臨床への応用は、予防接種で詳しくまとめたので参照のこと。
  • 接種方法は主に筋肉注射または皮下注射などで行われるが、ポリオ生ワクチンは腸管粘膜で増殖させる為に経口投与を行う。インフルエンザは上気道粘膜に抗体を付ける為、外国では経鼻ワクチンが用いられる場合もある。

予防接種の有効性に関する議論

否定論

  • ワクチンは毒素を弱められているとはいえ病原菌が原料になっていることが多く、副作用が発生しやすい。種痘や日本脳炎など薬害になるにいたったケースも多い。
  • 公衆衛生や栄養の改善がなされた時期に開発されたワクチンが多く、それらの中に有効性に疑問がもたれているものが存在する。
  • インフルエンザ等変異が早い病原菌はワクチンがすぐに効かなくなるため予防接種効果が疑問視される。また、麻疹・水痘などは予防接種を受けても免疫がつかないケースがある。

肯定論

  • 種痘によって天然痘が撲滅されたことは疑いない。また、ポリオ・日本脳炎も予防接種が始まってから患者数が激減した。
  • 2001年以降の「1歳の誕生日に麻疹ワクチンのプレゼント」キャンペーンにより、麻疹患者が大幅に減少したのは疑いない。
  • 水痘・帯状疱疹など最近開発されたワクチンは公衆衛生や栄養の改善によって患者数の減少を説明できず、予防接種の成果と考えられている。

ワクチンの種類

EPIワクチン

WHOが中心に世界的規模で進めている拡大接種計画(Expanded Program on Immunization)で選定されたワクチン

定期接種ワクチン

生ワクチン

  • BCG
  • 麻疹・風疹混合(MR)
  • 麻疹(はしか)
  • 風疹
  • 水痘

不活化ワクチン・トキソイド

  • 百日咳・ジフテリア・破傷風混合(DPT)
  • ジフテリア・破傷風混合トキソイド(DT)
  • ポリオ(IPV)
  • 百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合(DPT-IPV)
  • 日本脳炎
  • インフルエンザ
  • 肺炎球菌(13価結合型)
  • インフルエンザ菌b型(Hib)
  • ヒトパピローマウイルス(HPV):2価,4価
  • 肺炎球菌(23価多糖体)

任意接種ワクチン

下記の他、定期接種対象年齢以外での定期接種ワクチンも任意接種対象となる。

生ワクチン

  • ポリオ
  • 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
  • 黄熱
  • ロタウイルス:1価,5価

不活化ワクチン・トキソイド

  • B型肝炎
  • 破傷風トキソイド
  • 成人用ジフテリアトキソイド
  • A型肝炎
  • 狂犬病
  • 髄膜炎菌:4価

未認可のワクチン

外国で承認されているが日本で未認可のワクチン

  • 髄膜炎菌
  • ペスト
  • ヨーロッパダニ脳炎
  • 腸チフスワクチン
  • 炭疽
  • 帯状疱疹

関連項目

fr:Variolisation