小川洋子

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小川 洋子(おがわ ようこ、1962年3月30日 - )は、日本小説家

経歴

岡山県岡山市中区森下町出身[1]兵庫県芦屋市在住。既婚で長男がいる。旧姓は本郷[2]。祖父は金光教の教師であり、両親とも金光教の信者という家庭で育つ。父親は国家公務員[3]。生家も教会の敷地内の離れだった。教会では祖父母、伯父伯母。従兄らが暮らしていた[1]

小さいころ納戸にあった『家庭医学大事典』が最初の読書で、病気の説明や内臓の図を見る。小学1、2年からオレンジ色の表紙の『世界少年少女文学全集』を愛読する。小学校から図書室をよく利用する。また、こたつの中で空想にふける癖があり、高じて小説を書くようになったと述懐している[4]。8歳か9歳で幼少習作『迷子のボタンちゃん』を書き、画用紙に清書しホチキスで綴じる。『家庭医学大事典』の病気の人の話も作る。小学校の図書室で『シートン動物記』、『ファーブル昆虫記』、「動物や恐竜の図鑑」、「科学者の伝記」を『家庭医学大事典』の影響で借り、児童小説の『若草物語』、『長くつ下のピッピ』、『メアリー・ポピンズ』も借りて同様に読んでいた。小中高とどんな女子グループにも入らなかった[5]

1973年6月、市内祇園町に転居。岡山市立高島小学校に転校。1974年4月、岡山市立竜操中学校に入学[3]

1977年4月、岡山県立岡山朝日高等学校入学[6]。クラブ活動で弓道を始める[3]。高校時代に『アンネの日記』を読み感銘を受ける[7]。高校3年生の時、萩原朔太郎中原中也の詩集を読む。読書範囲が広がり、立原道造川端康成太宰治谷崎潤一郎を愛読する。自分の文学を求めて、大学は文芸を志す[8]。推薦入学決定後に『万葉集』を読む[9]

1980年4月、早稲田大学第一文学部文芸専修に入学。小金井市にある金光教の女子寮に入る[3]。入学してすぐに文学サークル「現代文学会」に入る[10]。大学時代は一軒家の金光教東京学生寮で、女子5人で自炊で質素に暮らし、金光教を当り前のものとして受け止めることにした[11][5]。18歳の大学の夏休みに、岡山の古本屋の100円本売り場で金井美恵子『愛の生活』を買い、「自分もこういうものが書きたい」と自分の基本とする小説を発見し、その後も座右の書の1つにしている[8][12]。在学中は自作の小説を平岡篤頼に見てもらっていた[13]。大学4年生のとき、海燕新人文学賞に応募するが、第一次審査で選に漏れる[3]

1984年3月、早稲田大学を卒業。倉敷市の川崎医科大学中央教員秘書室に就職[14]。1986年9月21日、川崎製鉄[15]の製鉄エンジニアの男性との結婚を機に退職し、小説の執筆に取り組む。夫は当初、小説を書いているのを知らなかった。

1988年、再度、海燕新人文学賞に応募する。大学の卒業論文として提出した「情けない週末」を書き直して『揚羽蝶が壊れる時』というタイトルで投稿[16]。同年9月8日、海燕新人文学賞を受賞。『揚羽蝶が壊れる時』は『海燕』1988年11月号に掲載される。それまで手書きだったが、賞金でワープロを買い、それ以後パソコン導入まで使用する[17]

1989年8月、長男を出産[18]。同年9月、最初の単行本『完璧な病室』(福武書店)を刊行。

1991年1月16日、妊娠した姉に対する妹の静かな悪意を描いた『妊娠カレンダー』が第104回(1990年下半期)芥川賞を受賞する。同作品はラジオドラマ化され、4日後の1月20日にNHK-FMで放送された[18]

2002年3月、夫の転勤のために兵庫県芦屋市に転居[19][5]

2004年、記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦の母子との交流を描いた『博士の愛した数式』で読売文学賞本屋大賞を受賞し、ベストセラーとなった。のちに文庫版は当時最速の2か月で100万部を突破した[20]。同作は2006年に映画化された。2004年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞を受賞する。2005年には『薬指の標本』がフランスで映画化される。2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞を受賞する。2013年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する[21]

2007年7月より芥川賞選考委員となる。2004年から太宰治賞、2011年から読売文学賞の2013年より河合隼雄物語賞選考委員を務める。

エピソード

  • 阪神タイガースのファンとしても有名で、芦屋市に越してから地元テレビ放送で視聴し、甲子園球場にも試合を見に行く[5]。もし試合を見ることができなくなったら、人生の楽しみの半分が無くなる思いがある[22]
  • 極端な機械音痴で、WEB関連の予約等、ハガキ作成など、書くこと以外の一切は夫に任せている[22]
  • 歌手の佐野元春のファンでもあり、1993年に佐野の歌詞を基にした短編集『アンジェリーナ』を発表した。
  • 創志学園高等学校の校歌の作詞をしている[22]
  • 作品集『妊娠カレンダー』(文藝春秋、1991年)に収録されている「夕暮れの給食室と雨のプール」の英訳版が、『ザ・ニューヨーカー』2004年9月6日号に掲載された[23]。また「妊娠カレンダー」の英訳版も同誌2005年12月26日に掲載された[24]。これより前に同誌に日本の小説が掲載されたのは、村上春樹(1990年以降、多数)、大江健三郎(1993年)のみ。

受賞歴

賞選考委員歴

作品一覧

小説

  • 『完璧な病室』(「揚羽蝶が壊れる時」収録)(1989年 福武書店、1991年 福武文庫、2004年 中公文庫)
  • 『冷めない紅茶』(1990年 福武書店)(2004年 中公文庫『完璧な病室』収録)
  • 妊娠カレンダー』(1991年 文藝春秋)のち文庫
  • 『余白の愛』(1991年 福武書店)のち文庫、中公文庫
  • 『シュガータイム』(1991年 中央公論社)のち文庫
  • 『アンジェリーナ』(1993年 角川書店)のち文庫
  • 『密やかな結晶』(1994年 講談社)のち文庫
  • 薬指の標本』(1994年 新潮社)のち文庫
  • 『刺繍する少女』(1996年 角川書店)のち文庫
  • 『やさしい訴え』(1996年 文藝春秋)のち文庫
  • 『ホテル・アイリス』(1996年 学習研究社)のち幻冬舎文庫
  • 寡黙な死骸 みだらな弔い』(EN)(1998年 実業之日本社)のち中公文庫
  • 『凍りついた香り』(1998年 幻冬舎)のち文庫
  • 『沈黙博物館』(2000年 筑摩書房)のち文庫
  • 『偶然の祝福』(2000年 角川書店)のち文庫
  • 『まぶた』(2001年 新潮社)のち文庫
  • 『貴婦人Aの蘇生』(2002年 朝日新聞社)のち文庫
  • 博士の愛した数式』(2003年 新潮社)のち文庫
  • 『ブラフマンの埋葬』(2004年 講談社)のち文庫
  • 『ミーナの行進』(2006年 中央公論新社)のち文庫
  • 『おとぎ話の忘れ物』(樋上公実子絵 2006年 集英社)
  • 『海』(2006年 新潮社)のち文庫
  • 『はじめての文学 小川洋子』(2007年 文藝春秋)自選集
  • 『夜明けの縁をさ迷う人々』(2007年 角川書店)のち文庫
  • 『猫を抱いて象と泳ぐ』(2009年 文藝春秋)のち文庫
  • 『原稿零枚日記』(2010年 集英社、2013年 文庫)
  • 人質の朗読会』(2011年 中央公論新社 2014年 文庫) 
  • 『最果てアーケード』(2012年 講談社)のち文庫 
  • 『ことり』(2012年 朝日新聞出版)のち文庫
  • 『いつも彼らはどこかに』(2013年 新潮社)のち文庫
  • 『琥珀のまたたき』(2015年 講談社)
  • 『不時着する流星たち』(2017年 KADOKAWA)
  • 『口笛の上手な白雪姫』(2018年 幻冬舎)

随筆

  • 妖精が舞い下りる夜(角川書店 1993年)のち文庫
  • アンネ・フランクの記憶(角川書店 1995年)のち角川文庫、2011年『アンネ・フランクをたずねて』に改題改訂して角川つばさ文庫(イラスト:吉野朔実
  • 深き心の底より(1999年 海竜社 / 2006年 PHP文庫)
  • 犬のしっぽを撫でながら(2006年 集英社)のち文庫
  • 物語の役割(2007年 ちくまプリマー新書)
  • 博士の本棚(2007年 新潮社)のち文庫
  • 科学の扉をノックする(2008年 集英社)のち文庫
  • 心と響き合う読書案内(2009年 PHP新書)
  • カラーひよことコーヒー豆(2009年 小学館、2012年 文庫)
  • 祈りながら書く 「みち」シリーズ 2 (2010 金光教徒社)
  • 妄想気分(2011年 集英社)
  • とにかく散歩いたしましょう(2012年 毎日新聞社)

対談集

  • 世にも美しい数学入門(藤原正彦 対談 2005年 ちくまプリマー新書)
  • 小川洋子対話集(2007年 幻冬舎)のち文庫
  • 生きるとは、自分の物語をつくること(河合隼雄 対談 2008年 新潮社)のち文庫

共編著

  • 博士がくれた贈り物(2006年 東京図書 菅原邦雄岡部恒治宇野勝博共著)
  • 小川洋子の「言葉の標本」( 2011年 文藝春秋 福住一義共著)
  • みんなの図書室(2011年 PHP文芸文庫)
  • みんなの図書室2(2012年 PHP文芸文庫)
  • 言葉の誕生を科学する(2011年4月 河出ブックス 岡ノ谷一夫共著、2013年11月 河出文庫)
  • 注文の多い注文書(2014年1月 筑摩書房 クラフト・エヴィング商會共著)
  • 洋子さんの本棚(2015年1月 集英社平松洋子共著)のち文庫

翻訳

解説

アンソロジー

作品掲載

「」内が小川洋子の作品

  • New History 街の物語(2001年 角川書店)「ガイド」
  • 秘密。私と私のあいだの十二話(2005年 メディアファクトリー)「電話アーティストの甥」「電話アーティストの恋人」
  • おいしい話 料理小説傑作選(2007年 徳間書店)「お料理教室」
  • みじかい眠りにつく前に 3 (2009年 ジャイブ ピュアフル文庫)「美少女コンテスト」
  • Invitation(2010年 文藝春秋)「巨人の接待」
    • 【改題】甘い罠 8つの短編小説集(2012年 文春文庫)
  • 短篇集 Stories(2010年 ヴィレッジブックス)「物理の館物語」
  • それでも三月は、また(2012年2月 講談社)「夜泣き帽子」
  • 胞子文学名作選(2013年9月 港の人[25])「「原稿零枚日記」抄」
  • 日本文学100年の名作 第10巻2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所(2015年6月 新潮文庫)「バタフライ和文タイプ事務所」

選者

  • 小川洋子の偏愛短篇箱(2009年 河出書房新社)のち文庫
  • 小川洋子の陶酔短篇箱(2014年1月 河出書房新社)

ラジオ出演

メディア・ミックス

映画

テレビドラマ

漫画

  • 最果てアーケード(雑誌「BE・LOVE」講談社 2011年7月第15号から2012年01月3号連載 作画:有永イネ)小川洋子により漫画原作として書かれた後に小説化。

関連資料

  • ユリイカ」(2004年 青土社) 2004年2月号 特集・小川洋子 ISBN 479170116X
  • 小川洋子(2005年 鼎書房)高根沢紀子 著 ISBN 4907846339

脚注

  1. 1.0 1.1 『深き心の底より』P.209 1999年 海竜社
  2. 『深き心の底より』P.182 1999年 海竜社
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 『現代女性作家読本 2 小川洋子』鼎書房、2005年11月20日、根沢紀子編、157頁。
  4. 『深き心の底より』P.19-21・63-65 1999年 海竜社
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 『妄想気分』2011年 集英社
  6. 『深き心の底より』「朝日高校の制服」P.141-143 1999年 海竜社
  7. 『アンネ・フランクの記憶』角川文庫 1998年
  8. 8.0 8.1 作家の読書道第29回
  9. 『深き心の底より』P.13 1999年 海竜社
  10. THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 4 ファイアズ(炎)』(レイモンド・カーヴァー著、中央公論社、1992年9月20日)付録のエッセイ「村上春樹とカーヴァーの瞳」より。
  11. 『深き心の底より』P.200 1999年 海竜社
  12. 『妖精が舞い下りる夜』「小説を書きたくなる瞬間」「『愛の生活』と私の関係」角川文庫 1997年
  13. 第4回「坪内逍遙大賞」授賞式
  14. 『深き心の底より』P.66-68・70 1999年 海竜社
  15. 『妖精が舞い下りる夜』p.154 角川文庫 1997年
  16. 『現代女性作家読本 2 小川洋子』前掲書、9頁。
  17. 『深き心の底より』P.79-80 1999年 海竜社
  18. 18.0 18.1 『現代女性作家読本 2 小川洋子』前掲書、158頁。
  19. 『現代女性作家読本 2 小川洋子』前掲書、161頁。
  20. “文庫で100万部突破 小川洋子「博士の愛した数式」”. 共同通信. (2006年1月30日). オリジナル2015年7月10日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150710073405/http://www.47news.jp/CN/200601/CN2006013001002601.html . 2015-1-14閲覧. 
  21. 平成24年度芸術選奨 受賞者及び贈賞理由”. 文化庁 (2012年). 2013年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
  22. 22.0 22.1 22.2 『とにかく散歩いたしましょう』2012年 毎日新聞社
  23. The Cafeteria in the Evening and a Pool in the Rain BY YOKO OGAWA. September 6, 2004The New Yorker
  24. Pregnancy Diary BY YOKO OGAWA. December 26, 2005The New Yorker
  25. 出版社「港の人」

関連項目

外部リンク


テンプレート:谷崎潤一郎賞