小中一貫教育
小中一貫教育(しょうちゅういっかんきょういく)とは、初等教育(一般の小学校で行われている教育)と前期中等教育(一般の中学校で行われている教育)の課程を調整し、一貫性を持たせた体系的な学校制度のことである。また、これを行っている学校を小中一貫校(しょうちゅういっかんこう)という。
無試験で上級学校に進学する学校を俗に「エスカレーター式」「エレベーター式」と呼ぶこともあるため、小中一貫校もこのように呼ばれることがある。
上記記載されていることとは別に、過疎地などでは小学校と中学校で校舎・敷地を共用する小中併設校(小中併置校)が存在する。このような形態の学校では一部の行事などを小・中学校合同で実施することがある。校長も小学校・中学校で兼任の場合も多い。
特に、小学校と中学校が一つの学校に統合されたものは、義務教育学校とされ、改正法施行により、2016年以降、一部で設置されている地域もある。
Contents
日本の小中一貫教育
- 施設一体型
- 同一の校舎内に小学校および中学校の全学年(9学年)があり、組織・運営ともに一体的に小中一貫教育を行う
- 学校施設は、新規に施設を建設し、または既存の施設を改築する必要がある
- 組織運営は、小中学校の教育職員が一体となって教育活動を実施
- 施設隣接型
- 隣接する小学校及び中学校で、教育課程および教育目標に一貫性をもたせる
- 学校行事を小学校および中学校で合同実施
- 一体感のある教育活動を実施
- 施設分離型
- 離れた場所にある小学校及び中学校で、教育課程および教育目標に一貫性をもたせる
- 小中学校で互いに連携を図りながら教育活動を実施
- 義務教育学校
- 2016年4月から制度化され、9年間課程の学校が設置可能となる[2]。
小中連携
小中連携とは、小学校および中学校が各々別個である「6・3制」を前提に、教育課程および制度をそのままにして、教育課程及び教育目標の共通部分に関し、協同する取り組みを行い、小学校と中学校の教職員の交流や連携を密にしていくことをいう。具体的には以下の通りである[3]。
小中一貫の教員免許資格取得方法
教育職員免許法 の規定により、小学校教諭一種免許状および中学校教諭一種免許状の両方を併せ取得する方法は、次の通りである[4]。
- 教科に関する科目についての単位修得方法
- 教職に関する科目についての単位修得方法は、小学校教諭一種免許状の41単位及び中学校教諭一種免許状の31単位であり、小学校教諭一種免許状と中学校教諭一種免許状との間での教職に関する専門科目の単位の修得方法の相違点は次の通りである。
- 教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想のうち教育原理については、幼稚園・小学校の教育を中心とする初等教育原理と、中学校・高等学校の教育を中心とする中等教育原理の両方の単位修得を必要とする。ただし、1科目の中に、初等教育に関するものと中等教育に関するものの双方が含まれている事が課程認定されれば、この限りではない。
- 幼児・児童・生徒の発達及び学習の過程のうち発達心理学の単位修得については、幼稚園・小学校用の児童心理学と中学校・高等学校用の青年心理学については、小中間でダブルカウントできない。児童心理学及び青年心理学に関わる内容の双方を包括し、なおかつ心身に障害のある児童・生徒に関する内容(特別支援教育における、児童生徒の心理、生理・病理に関する内容を包括すること)を含めることで、課程認定されれば、同一の科目で対応は可能。
- 各教科の指導法(教科教育法)の単位修得方法は、小学校教諭一種免許状を取得する場合は小学校9教科の指導について各2単位以上、中学校教諭一種免許状を取得する場合は取得しようとする免許教科ごとに8単位以上修得する。
- 教育実習については、幼稚園又は小学校での教育実習と、中学校又は高等学校での教育実習の両方が必要となる。
- 教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(教育法・教育行財政学・教育社会学・学校経営学)について
教員養成を目的とする大学・学部の学生は小学校および中学校の両方の教諭の一種免許状を取得できるが、年間履修単位数がはなはだしく膨れあがる一方、教員養成を目的としない一般大学では、中学校および高等学校の両方の教諭の一種免許状、あるいは幼稚園および小学校の両方の教諭の一種免許状のいずれかしか取得できない[5]。よって教育職員免許法での認定課程制度および単位修得方法により、大学(特に一般大学)で小学校および中学校の両方の教諭の普通免許状を同時に取得するのは、とても厳しいか、または全くできない。できたとしても、大学設置基準により、近年では、コンプライアンスの観点からも、1年度の間に履修が可能な単位数に上限を設けているケースが多いため、1年間に50単位まで履修登録が可能と仮定しても、4年間で200単位までしか履修登録はできない(単位を落とした場合は、その分がロスになるため、結果的には4年間で200単位の履修も難しくなる場合もある)ため、4年で卒業できない可能性が出てくる場合もある。
大学通信教育の場合は、大学通信教育設置基準についても、年間の学習時間数等の設定方法(1単位を修得するのにかけるべき時間数)は、上述した大学設置基準の内容にほぼ準ずるが、レポート提出や科目修了試験の受験ができなかった等の理由により、履修した科目の単位の取りこぼしがあったとしても、翌年度に繰越して、規定の単位数に取りこぼした科目に関する単位数であれば、履修することができる場合もある。
歴史
かつての日本では、ドイツのフォルクスシューレをモデルにして、1941年に尋常高等小学校を国民学校に校種名を変更し、尋常小学校を国民学校初等科に、高等小学校を国民学校高等科にそれぞれ改めた。
小中一貫教育校無免許授業担当事件
2013年8月に、長野県松本市の私立小中一貫教育校才教学園小学校・中学校で、中学校教諭の普通免許状しか所持し、小学校教諭特別免許状を有しない者が小学校の学級を担任したり、小学校教諭の普通免許状しか所持しない者が中学校の授業を担任するなどの事件が起きた[6]。
各国の小中一貫教育
オランダ
オランダの教育はK-12制であり、basisschool は4-12歳まで8段階の義務教育レベルの学校である。
デンマーク
デンマークの教育制度ではフォルケスコーレ (Folkeskole) が存在し、6-15歳までの義務教育レベルの学校である。
スウェーデン
スウェーデンの教育制度では、Grundskolaが存在し、6-15歳までの義務教育レベルの学校である。
ドイツ
ドイツの教育制度では、初等教育レベル基礎学校(グルンドシューレ, 4年制)修了後のキャリアは、5年制の基幹学校(ハウプトシューレ、高等小学校相当)、6年制の実科学校(レアルシューレ、中学校相当)又は中高一貫のギムナジウム(中等教育学校相当)に分かれる。
そのうち基幹学校は基礎学校と併せて、かつてはフォルクスシューレ(国民学校, Volksschule)を構成し、1964年10月28日のハンブルク協定による校種名変更後[7]は、フォルクスシューレは基礎学校と基幹学校を併せた通称とされ、9年制小中一貫教育校である。
1919年のヴァイマル憲法 (Weimarer Verfassung) 第145条では、義務教育履行のため8年制のフォルクスシューレ(小中一貫制)と、満18歳に達するまでの職業学校を設けることが明記された[8]。
ドイツのフォルクスシューレの修業年限は、従前は8年間(Unterstufe(下級段階、現在の基礎学校)4年間、Oberstufe(上級段階、現在の基幹学校)4年間)であるが、現在は9年間である。この9年間のうち、前期4年間が基礎学校(小学校の第1学年から第4学年まで)に、後期5年間が基幹学校(小学校第5学年から中学校第3学年まで)に該当し、基幹学校の学年は「4・3・2制」の中期3年間及び後期2年間と一致する。
脚注および参照
- ↑ この小項目においては小中一貫教育の展望と課題-小中学校の円滑な接続を目指して-のpp3-4に基づいて記載する。
- ↑ “「義務教育学校」に 小中一貫制度化を閣議決定”. 日経. (2015年3月17日)
- ↑ 小中連携、一貫教育に関するこれまでの主な御意見についてのp.2による。
- ↑ 教育職員免許法第5条第1項別表第1並びに教育職員免許法施行規則の第3条、第4条及び第6条による。
- ↑ 現在、教員免許資格を取得することのできる大学等は?-文部科学省を介して教員免許資格を取得できる大学の一覧を閲覧できる。なお、教育職員免許法の認定課程規定により免許を取得できる大学・学部・学科は決まっている。
- ↑ 免許なしで授業、常態化 長野の小中一貫校、開校時から-朝日新聞2013年8月20日による。
- ↑ 西洋教育史による。このときに併せて中間学校(ミッテルシューレ)は実科学校に改称された。
- ↑ 樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第3版』のp.232に条文が記載されている。