専制政治
専制政治(せんせいせいじ、英語:autocracy)とは、支配者が独断で思いのままに事を決する政治である。専制支配(せんせいしはい)、若しくは専政とも称される。英語の「autocracy」は、直訳すると「我がままな支配」「自分勝手な政治」となる(auto=自分。cracy=政治、支配)。
支配者層と被支配者層とが身分的に区別されていた社会において、身分的支配層が被治者と無関係に営む統治の仕方である。
独裁政治との違い
専制政治と独裁政治は混同される事が多いが、実際には明確な違いがある。上記の通り「身分的支配層が被治者と無関係に営む統治」が専制政治である。それに対して独裁政治は、国民の大多数の支持によって権力を付与された独裁者による政治であり、つまり統治者と被統治者の身分が同一なのである。国民の支持が得られず、弾圧などの行為に走る独裁者も存在するが、民主的手続きや国民の支持は形式上であっても尊重する。
それに対して専制政治の場合は、身分が確立しており、統治者と被統治者が完全に分離している。支配者の地位は国民の支持ではなく、血統など別の理由によって保証される。そして専制君主によって国民の弾圧が行われた場合、それは身分を固定する手段としてなされる。
そうした専制政治の理想の典型例が、古代中国の伝説の帝王・堯の「鼓腹撃壌」の逸話である。老百姓が「帝の力がなんであろう。居ても居なくてもおなじことさ。」と楽しげに歌っているのを見て、堯は天下が平和に治まっている事を悟ったとされる。専制政治においては、国民が専制君主を熱狂的に支持する事も望ましい事ではなく、専制君主とも無関係であると認識するのが理想だという事である。堯の逸話は伝説であるが、秦の商鞅が国政改革を行った際に、改革を批判された場合に留まらず、民衆が改革を支持した場合にすらこれを弾圧したという逸話がある。これは国民が政治に対して、どんな形であろうとも関わるべきではないという専制政治の真髄を表したものと言える。