安息香酸
安息香酸(あんそくこうさん、英: benzoic acid、独: Benzoesäure)は示性式 C6H5COOH の芳香族化合物であり、特に芳香族カルボン酸である。ベンゼンの水素原子1個がカルボキシ基に置換された構造を持つ。水に溶かすと酸性を示し、pKa は 4.21 である。
安息香酸のカルボキシル基に対してオルト位の水素原子がヒドロキシル基に置換されると、サリチル酸となる。
抗菌・静菌作用があるので、水溶性のナトリウム塩、安息香酸ナトリウム (sodium benzoate) などは清涼飲料等の保存料として添加されている。酸型保存料の一種。殺菌作用はない(既に細菌などの増殖したものに対しては無効)。旧厚生省は安息香酸を天然に存在しない添加物に分類している[1]。
発見と命名
ユストゥス・フォン・リービッヒとフリードリヒ・ヴェーラーにより、1832年に構造決定がなされた。
安息香(ベンゾイン)は香料として用いられる樹脂の一種であり、この中に安息香酸のエステルが多いことからこの名がとられた。
製法
安息香酸はアルキル側鎖を1つ持つ芳香族(たとえば、トルエンやエチルベンゼン、クメンなど)を酸化することで得られる。この反応ではベンゼン環に隣接する水素-炭素間の結合が攻撃される。ベンジル位にC-H結合がない場合はベンゼン環が酸化される。 また、ベンズアルデヒドC6H5CHOの酸化によって得ることも出来る。
体内での代謝
安息香酸は、体内に取り込まれると肝臓にて代謝され馬尿酸となり尿として排泄される。
使用基準
日本国内では、安息香酸はキャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ及び醤油のみに、安息香酸ナトリウムはそれに加えて、菓子製造に用いる果実ペースト及び果汁に使用できる。対象ごとに使用量も設定されている。 [2]