宇津木村

宇津木村（うつきむら）とは、東京都八丈支庁管内の八丈小島にかつて存在した村である。現在の八丈町の一部で、大字として「宇津木」が現存するが、1969年1月から始まった「全島民完全移住」により現在は島自体が無人島となっている。

地理

海上より見た宇津木村跡（2017年11月10日撮影）

伊豆諸島・八丈島のすぐ西に浮かぶ八丈小島に2つあった村のうちの1つで、おおむね南東側半分に相当する。

村名の由来は、源為朝がウツギを折って差したところに根付いたことから^[1]。

1799年（寛政11年） - 家数は、神主百姓20軒、小屋持3軒、流人小屋1軒^[3]。
1872年 5月15日（明治5年4月9日） - 太政官布告によって、旧来の庄屋・名主などの村役人の呼称を廃止して戸長・副戸長と呼ぶこととする^[4]。
1881年（明治14年）4月18日 - 郡区町村編制法の例外規定が設けられ、名主制度が復活する^[5]。
1908年（明治41年）10月1日 - 八丈小島の鳥打村および宇津木村は、島嶼町村制施行対象外となり、名主が継続して各1名置かれ、村内の一切の事務が執られる^[6]。

1947年（昭和22年）5月3日 - 地方自治法の施行により、八丈小島に鳥打村および宇津木村を設置。地方公共団体として執行機関の宇津木村役場と議決機関の宇津木村議会を置き、名主制度を廃する^[5]。
1951年（昭和26年）4月1日 - 「宇津木村村民総会定例会条例」により、宇津木村議会を廃止し、村民総会（町村総会）で審議処理をする^[5]。
1952年（昭和27年）7月29日 - 宇津木漁港が、第1種漁港に指定される^[7]。
1955年（昭和30年）4月1日 - 大賀郷村とともに八丈村へ編入され、村を廃する^[8]^[9]。村民総会を廃する^[5]。
- 同日、八丈村が町制施行し八丈町となる^[10]。

変遷表

昭和22年 5月2日まで	昭和22年 5月3日	昭和30年 4月1日	現在
宇津木村	宇津木村	八丈村に編入八丈村 → 八丈町	八丈町

1969年（昭和44年）1月 - 「全島民完全移住」により離島を開始する^[6]。
- 3月 - 宇津木小学校および宇津木中学校が廃校となる。離島が完了する^[6]。
1999年（平成11年）6月10日 - 宇津木漁港の、第1種漁港指定が取り消される^[11]。

人口が50人程度であった本村では、地方自治法が施行される1947年まで島嶼町村制も施行されず、例外的に名主制度が存続していた^[5]。

その後、1951年に宇津木村議会を廃止し、地方自治法第94条および第95条による町村総会が村が、合併される1955年までの8年間にわたって設置された^[5]。いわば直接民主制が実施された、地方制度史上極めて稀な事例である。

総数 [単位：人]

1887年（明治10年）	222
1935年（昭和10年）	50

↑ 秋山富南『南方海島志』、1791年（寛政3年）
↑ 角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典13 東京都』、角川書店、1978年、ISBN 978-4040011301
↑ 近藤富蔵『八丈実記』
↑ 同日、太政官第117号布告「荘屋名主年寄等ヲ廃シ戸長副戸長ト改称シ給料並ニ諸入用割合ヲ定ム」
↑ ^5.0 ^5.1 ^5.2 ^5.3 ^5.4 ^5.5 榎澤, 幸広 (1-), “地方自治法下の村民総会の具体的運営と問題点-八丈小島・宇津木村の事例から-”, 名古屋学院大学論集社会科学篇 47 (3)
↑ ^6.0 ^6.1 ^6.2 東京都八丈支庁『事業概要平成22年版 (PDF) 』、2011年
↑ 同日、農林省告示第344号「漁港を指定する件」
↑ 日本加除出版株式会社編集部『全国市町村名変遷総覧』、日本加除出版、2006年、ISBN 4817813180
↑ 同年3月31日、総理府告示第997号「村の廃置分合」
↑ 同年3月31日、総理府告示第998号「村を町とする処分」
↑ 同日、農林水産省告示第809号「漁港の指定を取り消す件」