姉妹車
姉妹車(しまいしゃ)とは、外観意匠の部品に差異を設けるなどを行って、異なる名称をつけて販売される自動車やオートバイの車種同士の関係をいう俗称である。兄弟車、双子車とも呼ばれる。
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概要
主に「バッジエンジニアリング」と呼ばれる販売手法を用いて、外観の一部を変更するなどし、複数のブランドあるいはメーカーの製品として販売される車種をいう。このうち複数のメーカーから販売される物は「OEM車」とも呼ばれる。日本のメーカーが国内に販売する場合は1つの車種を複数の販売チャンネルで流通させる際に、異なる車名が与えられて姉妹車となる例が多い。過去には多数の販売チャンネルを持つ車種も多く、「マークII三兄弟」や「パルサー三兄弟」などのように呼ばれる兄弟車もあった。姉妹車同士の相違点は、車名エンブレムや設定されるボディカラーなどの違いにとどまる場合だけでなく、バンパー、フロントグリル、前後の灯火類、さらにはボディ外板パネルなどを変更し、差別化が図られているケースもある。姉妹車同士は事実上同一の車種であるため、前述の「マークII三兄弟」のように、まとめて一つのモデルとして扱われることも多い。
また、一つのモデルのボディバリエーション(セダンとステーションワゴン、バンとトラックなど)や仕様(乗用車と商用車など)によって別々の商標が与えられている場合も姉妹車と呼ばれる場合がある。
姉妹車同士は部品に互換性がある場合が多く、外観上の改造(ドレスアップ)として姉妹車の部品を流用する手法がユーザーによって行われる例は少なくない。あるいは、大きく外観の異なる部品を周辺部品と一緒に交換する、顔面スワップなどと呼ばれる改造もしばしば見られる。例えば、日産・180SXのスカットルより前の部分を日産・シルビアの部品に交換したシルエイティや、その逆のワンビアなどが該当する。
姉妹車の一例(絶版車種を含む)
- オペル・モッカ / ボクスホール・モッカ / シボレー・トラックス / ホールデン・トラックス / シボレー・トラッカー / ビュイック・アンコール
- オペル・インシグニア / ボクスホール・インシグニア / ビュイック・リーガル / ホールデン・コモドア
- 上者・下者とも、一つのメーカーが複数のブランドで販売する姉妹車の例である。この例はゼネラルモーターズのブランドである。
- トヨタ・ノア(旧タウンエースワゴン→タウンエースノア) / トヨタ・ヴォクシー(旧ライトエースワゴン→ライトエースノア) / トヨタ・エスクァイア
- 販売チャンネルが異なる姉妹車の例である。いずれもトヨタ自動車(以下トヨタ)の小型ミニバンで、ノアはカローラ店、ヴォクシーはネッツ店、そしてノアとフロントの主骨格を共用するエスクァイアはトヨペット店/トヨタ店で販売され、それぞれ外観が異なる。1982年から1992年まではカローラ店のタウンエースワゴンとトヨタ店のマスターエースサーフ(及びダイハツのデルタワイドワゴン)、1992年から2001年までは、カローラ店のタウンエースノア(旧タウンエースワゴン)とネッツ店(オート店)のライトエースノア(旧ライトエースワゴン)(及びダイハツのデルタワイドワゴン→デルタワゴン)として販売されていた。
- ルノー・タリスマン / ルノーサムスン・SM6
- ルノー・コレオス / ルノーサムスン・QM6
- 同じグループ企業で仕向け地の異なる姉妹車の例である。この例は上者・下者ともにルノーとその傘下、ルノーサムスンから発売された車種を示す。
- ダイハツ・ミライース / トヨタ・ピクシスエポック / スバル・プレオプラス
- ダイハツ・トール / トヨタ・ルーミー / トヨタ・タンク / スバル・ジャスティ
- 同じグループでメーカーと販売店が異なる姉妹車の例であり、この場合は上者のOEM元がミライース、中者のOEM元がトールである。
- フォード・フュージョン / フォード・モンデオ
- 同じ企業の同じ車体を使用するが、地域により名称とメカニズム、ボディバリエーションが変わる例である。前者は北米、後者は欧州、中国、韓国にて販売される。
- 日産・シルフィ / 日産・セントラ / 日産・スーパーセントラ / 日産・セントラエアロ / 日産・パルサー(セダンの場合)
- 日産・ラティオ / 日産・ヴァーサセダン / 日産・アルメーラ / 日産・サニー
- 日産・ティーダ / 日産・ビッグティーダ→iティーダ / 日産・パルサー / 日産・パルサーハッチ (ハッチバックの場合)
- 同じく、同じ企業の同じ車体を使用するが、地域により名称と一部メカニズムが変わる例である。特に下者は地域によってC12型とC13型とで異なって存在するため、少々ややこしい。
- ルノー・カングー / メルセデス・ベンツ・シタン
- 業務・技術提携による成果の例である。細部のみならず、一部外板や部品形状も異なる。
- 日産・アトラスF24 / いすゞ・エルフ100 / UDトラックス・コンドル カーゴ(1.15~1.5t) / 三菱ふそう・キャンターガッツ / ルノートラック・マクシティ
- グループ企業の枠を超えての例。この場合、ベースはアトラスで、マクシティのみフロントデザインの一部が異なるが、残車はエンブレム類の変更にとどまる。
- トヨタ・ラクティス(2代目) / スバル・トレジア
- マツダ・プレマシー(3代目) / 日産・ラフェスタ ハイウェイスター
- OEMによる姉妹車の例である。この例では上者がトヨタからのOEM供給であり、下者がマツダからのOEM供給である。いずれも外板やバンパーなどが大幅に変更され、外観が大きく異なる。
- トヨタ・カローラアクシオ / トヨタ・カローラフィールダー
- スバル・レヴォーグ / スバル・WRX
- ホンダ・フィット / ホンダ・シャトル
- ボディタイプによってに別の商標が与えられている例である。上者、中者、下者共にメカニズムの一部や販売戦略上のキャラクターにも違いが与えられている。
- 日産・ウイングロード / 日産・AD(含、NV150 AD)
- 仕様が異なる場合である。ウイングロードは乗用ワゴン、ADは商用バンである。なお、ADはマツダ、三菱自動車にOEM供給されている。
- ホンダ・モンキー/ホンダ・ゴリラ
- オートバイの姉妹車の例である。モンキーと共通のエンジンやフレームに、モンキーよりも大型のタンクと前後の荷台を装備して実用性を向上させたものが、ゴリラとして製造、販売された。
- ホンダ・タクト (2BH-AF79) / ヤマハ・ジョグ (2BH-AY01)
- オートバイのOEMによる姉妹車の例である。タクトのフロントデザインを変更したものがジョグとしてOEM供給されている。
また、
- トヨタ・86 / スバル・BRZ
- マツダ・ロードスター / アバルト・124スパイダー
- アウディ・R8 / ランボルギーニ・ウラカン
- ヒュンダイ・コナ / キア・ストニック
- ポルシェ・マカン / アウディ・Q5
- レンジローバーイヴォーク / ジャガー・Eペイス / ランドローバー・ディスカバリースポーツ
- 等、メーカーの個性が問われるスポーツカーやSUVの分野でも、近年は姉妹車が増加している。
広義の姉妹車
完全に異なるモデル同士であってもプラットフォーム(シャーシ)が共通である場合は姉妹車と呼ばれる場合がある(スズキ・エスクードのように新旧のモデルが併売されているケース、販売期間が重複していないケースを除く)。
プラットフォームを共有する姉妹車の場合、上記のバッジエンジニアリングやボディバリエーションとは意味合いが異なり、それぞれが別個のモデルとして扱われるため、ユーザーに意識されることはない(一方でメーカーにとってプラットフォーム共通化は、開発コスト、生産効率、商品ラインナップ、そして車両の性能やパッケージングに大きな影響を与えるため、大変重要な課題といえる)。
具体的には以下のような例がある。
- ホンダ・フィット/ホンダ・ヴェゼル/ホンダ・グレイス/ホンダ・シャトル
- 日産・マーチ/日産・ノート/日産・キックス
- ルノー・キャプチャー(ルノーサムスン・QM3)/日産・ジューク(インフィニティESQ)
- 日産・エルグランド/日産・ティアナ/日産・ムラーノ/インフィニティ・QX60
- トヨタ・カローラ(カローラアルティス、レビン)/トヨタ・オーリス(カローラハッチバック、カローラiM)/トヨタ・ハリアー/トヨタ・RAV4/トヨタ・プリウスα(プリウスV、プリウス+)/トヨタ・SAI/レクサス・HS/レクサス・CT/レクサス・NX
- アルファロメオ・ジュリエッタ/ダッジ・ダート/ジープ・チェロキー
- フィアット・500X/ジープ・レネゲード
- ヒュンダイ・グレンジャー/キア・K7
- ジェネシス・G70/キア・スティンガー
- MINI/BMW2シリーズ アクティブツアラー/グランツアラー/BMW・X1
- ホンダ・N BOXシリーズ/ホンダ・N-ONE/ホンダ・N-WGN/ホンダ・N-VAN→プラットフォームを共有する姉妹車をシリーズ化している例
- ルノー・トゥインゴ/スマート・フォーフォー
- メルセデス・ベンツ・Aクラス/インフィニティ・Q30
プラットフォームを共有する車種同士では足回り部品等の流用が可能なケースが多い。
一つのプラットフォームから多数の車種が作られることが当たり前になり(プラットフォーム開発時点で様々な車種展開が想定されている)、専用のプラットフォームを用意する例がほとんどなくなった近年では「○○(車種名)とプラットフォームを共有する/○○系プラットフォームを採用」や「○○をベースに開発された」と表現されるほうが一般的である。