大韓民国の警察
大韓民国の警察(だいかんみんこくのけいさつ)は、大韓民国の行政自治部(旧内務部)の管轄下にある警察庁及び地方警察庁等の警察組織である。
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概要
韓国の警察の体制は日本の警察同様の典型的な国家警察であり、アメリカ合衆国の警察[1]のような形態ではない。このような形態は日本統治時代の朝鮮の警察制度が、南北間の軍事的緊張状態のなかで残存したと見ることもできる。最新統計によれば、警察人員総数は約96,000人である。なお韓国警察の緊急通報用電話番号は112番。
なお済州特別自治道については、2006年、自治警察制導入を謳った地方分権特別法に基づき、最初の自治警察団が設置されている。
紋章は天秤を首に掛けたミサゴが、赤青の陰陽を中央に配したムクゲの花の上に止まった図[2]。全ての制服警察官はこの徽章を両襟に着けている。他に、頂部に「POLICE」「경찰」と書かれた太陽(昼)と三日月または影(夜)を表わす不同心円の中に、赤青の陰陽を中央に配し無色の陰陽5つで囲むように並べたデザインの「警察公務章」というバッジがある。勤務中は制服であればこれを左胸に着用、私服刑事は革ケースに身分証と共に収め携帯している[3]。
組織
行政自治部に所属する警察庁が警察大学、警察教育院、中央警察学校、警察捜査研修院、警察病院及び1特別市、6広域市、9道に設置された16地方警察庁を統括する。警察庁の内部組織は生活安全局、捜査局、サイバー安全局、交通局、警備局、情報局、保安局、外事局の8局からなる。また地方警察庁は市・道知事の所属下に置かれ、所轄の警察署を管轄するが、市・道知事には指揮監督権がなく、中央の警察庁が一括して指揮監督することになっている。他に、来韓外国人を守る観光警察がある。
沿革
- 1945年 - 米軍政下に警察管理局、各道に警察部を設置。
- 1946年 - 警察管理局を警事部に昇格、新階級制度導入。
- 1948年 - 内務部(省)の下に治安局、ソウル特別市、各道に警察局設置。
- 1967年 - 各道、主要市に戦闘警察隊設置。
- 1974年 - 内務部治安局を治安本部に改組。
- 1979年 - 警察大学設置。
- 1991年 - 治安本部を警察庁に改編、内務部の外庁となる。地方警察局は地方警察庁に改称。
- 1998年 - 上部組織である内務部が総務処と統合され、行政自治部成立。
- 1999年 - 蔚山地方警察庁設置。
- 2000年 - 運転免許業務を運転免許試験管理団に移譲
- 2006年 - 済州特別自治道の発足にともない、最初の自治警察団が済州に設置される。
- 2007年 - 大田地方警察庁・光州地方警察庁設置。
- 2008年 - 行政自治部が行政安全部に改編される。
- 2010年12月31日 - 運転免許試験管理業務を道路交通公団に移譲し、運転免許試験管理団廃止。
- 2013年 - 行政安全部が安全行政部に改編。
- 2014年 - 安全行政部が行政自治部に改編。
人員配置
2016年11月現在の定員[4]
- 警察庁:1,757人
- 警察大学:240人
- 警察教育院:161人
- 警察捜査研修院:56人
- 中央警察学校:180人
- 警察病院:587人
- ソウル地方警察庁:26,079人(31警察署)
- 釜山地方警察庁:8,631人(15警察署)
- 大邱地方警察庁:5,357人(10警察署)
- 仁川地方警察庁:5,702人(10警察署)
- 光州地方警察庁:3,146人(5警察署)
- 大田地方警察庁:2,966人(7警察署)
- 蔚山地方警察庁:2,307人(4警察署)
- 京畿南部地方警察庁:15,306人(30警察署)
- 京畿北部地方警察庁:5,134人(12警察署)
- 江原地方警察庁:4,189人(17警察署)
- 忠北地方警察庁:3,292人(12警察署)
- 忠南地方警察庁:4,500人(15警察署)
- 全北地方警察庁:4,657人(15警察署)
- 全南地方警察庁:5,224人(21警察署)
- 慶北地方警察庁:6,072人(24警察署)
- 慶南地方警察庁:6,372人(23警察署)
- 済州地方警察庁:1,636人(3警察署)
階級名称
- 治安総監(치안총감、Commissioner General)1名(警察庁長(ko:대한민국의 경찰청장)に補職)
- 治安正監(Chief Superintendent General)5名(警察庁次長、ソウル地方警察庁長、京畿地方警察庁長、釜山地方警察庁長、警察大学長に補職)
- 治安監(Senior Superintendent General)(警視監。警察庁各局長、警察庁企画調整官、ソウル・京畿・釜山を除く地方警察庁長、ソウル地方警察庁次長、京畿地方警察庁次長、警察教育院長、中央警察学校長)
- 警務官(Superintendent General)(警視長。地方警察庁次長、ソウル・京畿地方警察庁部長、警察庁管理官・審議官、一部の警察署長)
- 総警(Senior Superintendent)(警視正。警察署長、地方警察庁課長級)
- 警正(Superintendent)(警視にあたる。警察署課長、警察庁・地方警察庁係長)
- 警監(Senior Inspector)(警部に相当。地区隊長、警察署主要係長、チーム長、警察庁・地方警察庁班長)
- 警衛(Inspector)(警部補に相当。巡察チーム長、交番所長、警察署係長、警察庁・地方警察庁は実務者)
- 警査(Assistant Inspector)(巡査部長に相当)
- 警長(Senior Policeman)
- 巡警(Policeman)(巡査にあたる)
- 巡警試補(Policeman Assistant)(試験採用2年、正式の階級ではない。)
戦闘警察隊
「戦闘警察隊設置法施行令」による戦闘警察巡警の階級
- 特警
- 首警
- 上警
- 一警
- 二警
済州自治警察
「済州特別自治道設置及び国際自由都市造成のための特別法」による階級(カッコ内は相当職)
- 自治警務官(自治警察団長)
- 自治総警
- 自治警正
- 自治警監
- 自治警衛
- 自治警査
- 自治警長
- 自治巡警
戦闘警察隊
韓国の警察には戦闘警察隊と呼ばれる組織が存在した。準軍事組織であり、北朝鮮から侵入した武装ゲリラの殺害・拘束(対間諜作戦)を目的としていた。
隊員は厳密には警察官ではない。徴兵によって集められ、韓国陸軍で軍事訓練を受けた後、出向という形で警察に勤務する。この者を作戦戦闘警察巡警と呼ぶ。戦闘警察への入隊を徴兵と同等とみなし、希望者を募って試験を行い、合格すると兵役期間中戦闘警察で勤務する義務戦闘警察巡警もある。軍事訓練は陸軍に委託する。
作戦戦闘警察巡警は主に対間諜作戦任務、義務戦闘警察巡警は主に警備・交通外勤・派出所勤務・防犯巡察など警察の補助任務を行っている。
国会警備隊や政府庁舎警備隊にも戦闘警察巡警が多く勤務している。
軍事独裁政権時代には「白骨団」と俗称される私服のデモ弾圧部隊が組織され、民主化運動の弾圧に猛威を振るった。名前は被っていたヘルメットが白かったことに由来している。弾圧方法は非常に過酷で、デモ参加者を殺害してしまうという不祥事を度々起こした。盾には自制のため「忍」の文字が書かれていた。
盧武鉉政権下では、過去に死者を出した経緯もあり、非殺傷性装備であるにも関わらず催涙弾等の使用が禁止又は制限されてしまい、警棒等を使用した近接検挙に頼らざるを得なくなり、デモ隊との間でしばしば乱闘に発展し、双方に多くの負傷者を生じる結果となった。
警察教育
前述のように警察大学(幹部候補生教育)など警察庁運営の専門教育機関があるが、いずれも小規模なものである。このほか、東国大学校をはじめとした4年制大学に警察行政学科が設置され、警察専門教育を行っている。大学院課程まである大学も存在する。ただし、一般の4年制大学の警察行政学科を卒業しても警察公務員試験に合格しなければ、警察官にはなれない[5]。なお、警察公務員の採用は各地方警察庁ごとに行われ、採用者は警察行政学科卒業者も含め、中央警察学校において6ヶ月間の基礎教育が課される。
警察庁の採用は大きく三つに分かれ、日本のノンキャリアにあたる巡警(巡査)採用、警察関連大学の卒業生を対象にした、日本の準キャリアにあたる警査(巡査部長)採用、また、日本のキャリアにあたる幹部候補生の警衛(警部補)採用がある。幹部候補生で採用された場合は1年間の警察総合学校での研修を終え、警察大学出身者と同様、警衛(警部補)として入庁することになる。韓国にも日本のキャリアにあたるものがあるが、韓国の弁護士資格を持つ者、および国家公務員採用上級試験に合格し、2年以上の経歴を持つ者だけに資格が与えられ、短期研修を経て警正(警視)に任命される。韓国内にこのようなキャリアは80余名だと言われていて、この中現在、弁護士出身は29人である。
ちなみに、警察大学は幹部警察官養成のための4年制大学である。警察における士官学校的な位置づけであり、軍における陸軍士官学校・海軍士官学校・空軍士官学校に相当する。警察大学のカリキュラムは大学警察行政学科に準じているが、警察学の講義、幹部警察官になるための訓練(テコンドーなどの武術や 射撃訓練、戦闘警察隊の訓練)がある。入学者の成績は全大学受験生の上位3~5パーセントほど。かなりの難関である[注 1]。卒業生は、卒業後ただちに警衛の階級(日本警察の警部補に相当)に任官する。
警察採用試験合格者からは政府機関(中央情報部、現・国家情報院)の工作員になる者もあり、日本では新潟日赤センター爆破未遂事件を引き起こしている[6]。
不正
脚注
注釈
出典
- ↑ 詳細は当該項目を参照。自治体警察と州警察及び連邦捜査機関は別個の存在で、昇進しても州政府や連邦政府に異動出来るわけではない
- ↑ CI Korea National Police Agency(英語)
- ↑ emblem Korea National Police Agency(英語)
- ↑ 警察庁訓令第791号(2016年3月25日施行)「警察庁とその所属機関組織及び定員管理規則」別表4。
- ↑ 警察行政学科出身枠で受験可能
- ↑ “50여년前 66인의 北送저지 공작대를 아십니까(50余年前の66人の北送阻止工作隊をご存知ですか)”. 朝鮮日報. (2011年4月30日) . 2011.05閲覧.
関連項目
- アメリカ合衆国の警察 - FBI(連邦捜査局)
- 王立カナダ騎馬警察
- スコットランドヤード(ロンドン警視庁)
- 大韓帝国の警察
- 大韓民国海洋警察庁
- 韓国陸軍士官学校
- 韓国海軍士官学校
- 韓国空軍士官学校
- 中華人民共和国公安部
- 独島警備隊
- 日本の警察
- ポドリくん(マスコットキャラクター)
- 韓国の刑事事件の一覧
- 韓国警察サッカー団
- 韓国警察庁野球団
外部リンク
- サイバー警察庁(韓国警察庁公式)(朝鮮語)(英語)
- 警察大学 (朝鮮語)(英語)
- 女性初の警察大出身総警が誕生(朝鮮日報 日本語版 記事)