大阪港トランスポートシステム
株式会社大阪港トランスポートシステム(おおさかこうトランスポートシステム)は、大阪府大阪市内で鉄道事業とトラックターミナルその他流通施設管理などを行っている第三セクター会社。大阪市などが出資している。略称はOTS。本社は大阪府大阪市住之江区南港東四丁目10番108号、大阪南港トラックターミナル管理棟2階。
歴史
- 1974年(昭和49年)7月10日 - 大阪南港複合ターミナルとして設立
- 1976年(昭和51年)10月4日 - 大阪南港トラックターミナル開業
- 1989年(平成元年)8月 - 大阪港トランスポートシステムに社名変更
- 1997年(平成9年)10月17日 - 管理を受託した大阪港咲洲トンネルが開通
- 12月18日 - テクノポート線とニュートラムテクノポート線の営業を開始[1]
- 2005年(平成17年)7月1日 - 大阪市交通局へテクノポート線の運営を移管、ニュートラムテクノポート線の施設・車両を譲渡。大阪港トランスポートシステムは第三種鉄道事業者となる(詳細は路線の節にて後述)
- 2009年(平成21年)2月16日 - 大阪港咲洲トンネルの回数券約1万1千枚、2億2800万円相当の紛失を公表(詳細は不祥事の節で後述)
- 2009年(平成21年)5月31日 - 大阪港咲洲トンネルの指定管理者としての管理運営終了。6月1日から阪神高速道路が同トンネルの指定管理者となる[2]
トラックターミナル・流通施設管理事業
本来の事業として、長距離を走る大型路線トラックと市内を走る小型集配車を中継する機能を持つトラックターミナルや流通倉庫などの運営を行っている。これらの拠点はすべて大阪市住之江区にある。
- トラックターミナル
- 駐車場・車両整備設備
- 大阪区域トラックセンター
- 大阪南港海上コンテナシャーシプール
- 流通倉庫
- 大阪港化学品センター
- 大阪南港R物流センター
- 南港航空貨物ターミナル
鉄道事業
鉄道事業として、大阪市港区の大阪港駅から住之江区のコスモスクエア駅を経てトレードセンター前駅に至る「南港・港区連絡線」の線路を保有している。2005年6月30日までは大阪港 - コスモスクエア - 中ふ頭間を大阪港トランスポートシステムが直接運営していた(詳細は路線の節を参照)。
大阪南港の埋立地に新たな集客施設としてWTC(現:大阪府咲洲庁舎)やATCといったタワー型ビルや商業施設を開設した大阪市であったが、鉄道による交通アクセスが南港ポートタウン線(ニュートラム)しかない、という欠点があった。梅田からでは、大阪市営地下鉄四つ橋線(現在のOsaka Metro四つ橋線)経由で住之江公園駅乗り換えによるニュートラムの利用で実に1時間近くかかるという不便さが災いし、企業誘致が思うように進まず空き地だらけで、また、一度は南港に移転した企業も再び都心部へ戻ってしまうという悪循環であった。その不便さを解消するために計画されたのが大阪港駅と中ふ頭駅を結ぶ鉄道路線であった。
当初、大阪港 - 中ふ頭の全区間をニュートラムで結ぶ計画であったが、コスモスクエア駅周辺でのライブホール(Zepp Osaka)の開設による観客輸送など今後の輸送需要を勘案し、最終的に中ふ頭 - コスモスクエア間はニュートラムで、コスモスクエア - 大阪港間は大阪市営地下鉄中央線(現在のOsaka Metro中央線)と同様の第三軌条による車両による運用に変更された。
路線
- 現有区間(ともに大阪港トランスポートシステムが第三種鉄道事業者、大阪市高速電気軌道が第二種鉄道事業者)
- 譲渡区間(軌道事業)
- ニュートラムテクノポート線 トレードセンター前 - 中ふ頭 0.7km
大阪港 - 中ふ頭間を総称して南港・港区連絡線(なんこう・みなとくれんらくせん)と呼ぶ。
開業以来、これらの路線を大阪港トランスポートシステムが第一種鉄道事業者(大阪港 - コスモスクエア - トレードセンター前間)、軌道事業者(トレードセンター前 - 中ふ頭間)として直接運営していたが、直通運転している大阪市交通局の地下鉄・ニュートラムと運賃体系が別立てであったため[3]、運賃が割高となり[4]、開業当初見込みよりも利用者数が低迷していた。
そのため、2005年7月1日に大阪市交通局へ線路以外の鉄道施設・車両を譲渡して、同局が第二種鉄道事業者として路線を運営することで、同局の地下鉄などと運賃体系を統一して運賃値下げを図ることになった。同時に大阪港トランスポートシステムは線路の保有のみを行い、大阪港 - コスモスクエア - トレードセンター前間の第三種鉄道事業者となった[5][6][7]。これにより日本の新交通システムでは唯一であった異なる事業者間での直通運転は消滅した。
乗務員は大阪港トランスポートシステム・大阪市交通局、両者ともコスモスクエア - 長田および住之江公園間を通しで乗務していた。
大阪市交通局は、2018年4月1日の市営地下鉄・ニュートラムの民営化に伴い廃止され、第二種鉄道事業者は交通局のこれらの事業を継承した大阪市高速電気軌道となった。
また、コスモスクエア駅から大阪港上の人工島である夢洲(ゆめしま、大阪五輪会場の予定だった)、舞洲(まいしま)を経て此花区の新桜島駅(仮称)へ延びる「北港テクノポート線」の開業を目指して事業化に着手したが、最大の目的であった2008年の大阪オリンピック招致に失敗したことからその採算性を問題視されており、コスモスクエア駅 - 夢洲駅(仮称)間の沈埋トンネル「夢咲トンネル」のみが建設された。同トンネルの鉄道部分は準備工事のみで、道路部分のみが2009年8月1日に先行開通した[8]。
車両
大阪港トランスポートシステムはテクノポート線・大阪市営地下鉄中央線(現:Osaka Metro中央線)・近鉄東大阪線(現:けいはんな線)用の自社車両としてOTS系を保有していたが、2005年7月に大阪市交通局に譲渡され、2006年3月中央線で24系50番台として走行した後、近鉄けいはんな線との相互直通運転区間拡大に伴う車両転用計画に基づき22系に改造され、大阪市営地下鉄谷町線(現:Osaka Metro谷町線)へ移籍した。移籍後、OTS系独特の塗装やオーシャンブルーの座席を見ることはできなくなったが、床や化粧板などは現在もOTS時代のままである。前述の通り、近鉄けいはんな線(生駒駅 - 学研奈良登美ヶ丘駅)開業前の2006年3月以前に全編成転属したため、生駒以東に営業列車で乗り入れたことはない。
また、ニュートラム用の100A系も33 - 35編成がOTS100系を名乗っていたが、こちらも2005年7月の大阪市交通局譲渡時に100A系に編入された。こちらは現在もOTSカラーのままで、車内も座席以外はそのままだが、2016年に第33,35編成は廃車となったため、2017年現在も営業運転を続けているのは第34編成のみである。
不祥事
大阪港トランスポートシステムが当時管理を受託していた大阪港咲洲トンネルの通行回数券が、約1万1,000枚(約2億2,800万円分)に亘り紛失していたことが、同社の内部調査により、2009年2月16日に発覚した。また、同回数券の利用実績が、販売実績を上回る異常事態も起こった。トンネル管理事務所の当時の所長で販売管理担当をしていた元社員の男性が横流しした疑いがもたれた[9][10]。
同社は、この元社員を、業務上横領で告訴した上、約2億円の損害賠償を求め大阪地裁に訴えを起こした[11]。2010年5月17日に、大阪府警察捜査2課がこの元社員を業務上横領の容疑で逮捕した[12]。
脚注
- ↑ 『鉄道ジャーナル』第32巻第3号、鉄道ジャーナル社、1998年3月、 56-57頁。
- ↑ 大阪港咲洲トンネルのご案内 阪神高速道路株式会社
- ↑ 境界駅である大阪港駅・中ふ頭駅到着前には自動放送でこれらの駅から先は別運賃になる旨、注意を喚起していた。
- ↑ 大阪港トランスポートシステム線内は均一料金で230円。大阪市営地下鉄線との乗継割引も設定されていたが、1区で40円、2区以上で20円の割引だった。
- ↑ 「OTS線鉄道料金 平成17年7月下旬値下げに向けて手続きを行います」(InternetArchive) 大阪市交通局、2005年2月9日。
- ↑ 「OTS線の事業主体変更等に向けた申請書・届出書の提出について」(PDF, InternetArchive) 大阪市交通局、2005年4月21日。
- ↑ 「OTS線を交通局が一体的に運営し、通算料金とします」(PDF, InternetArchive) 大阪市交通局、2005年6月7日。
- ↑ 「大阪五輪の夢の跡、夢咲トンネル8月開通へ…利用見込めず 」読売新聞 2009年2月12日
- ↑ トンネル通行回数券2億2000万円分行方不明に 大阪 産経新聞 2009年2月16日
- ↑ 大阪港トンネル回数券2億円分不明、3セク元社員横流しか 読売新聞 2009年2月17日
- ↑ 大阪、トンネル回数券不明で提訴 元所長に2億円の損害賠償 共同通信 2009年7月25日
- ↑ 大阪市の三セク元所長を逮捕 トンネル回数券横領容疑 共同通信 2010年5月17日