大庭みな子

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大庭 みな子(おおば みなこ、1930年11月11日 - 2007年5月24日)は日本小説家。本名・美奈子。東京市出身。

来歴・人物

東京渋谷生れ[1][2]海軍軍医の父の転任で、海軍の要地に移り住む[1]

広島県呉市(呉市二河小学校)、広島県江田島(従道小学校(海軍兵学校内))、愛知県豊川市(豊橋高等女学校(現愛知県立豊橋東高校))、広島県賀茂郡西条町(現東広島市)などで育つ[1][2]。賀茂高等女学校(現広島県立賀茂高校)在籍時の1945年8月末から原爆投下後の広島市に救援隊として入り、その惨状に強い衝撃を受ける。この時見た被爆地の悲惨な光景が文学的原点となった[2]。終戦後、岩国高等女学校(現山口県立岩国高校)、新潟高等女学校(現新潟県立新潟中央高校)を経て津田塾大学学芸学部英文学科卒業[1]

夫の赴任先・アラスカで本格的に執筆を始め、1968年アメリカの市民生活を描いたデビュー作『三匹の蟹』で、群像新人文学賞芥川賞を受賞した。

1975年『がらくた博物館』で女流文学賞1982年『寂兮寥兮(かたちもなく)』で谷崎潤一郎賞1986年『啼く鳥の』で野間文芸賞1991年評伝『津田梅子』で読売文学賞2003年『浦安うた日記』で紫式部文学賞受賞。

小説からエッセイ、評論、詩集など作品多数あり、ドナルド・キーンなどの著作や児童文学の翻訳もある。講談社より『大庭みな子全集』(全10巻)が刊行されている。1987年から河野多惠子と共に芥川賞初の女性選考委員となり、1997年まで務めた。1991年日本芸術院会員、その他日本ペンクラブ副会長、女流文学者会代表などを務めた。フェミニズムに関心が高く、対談集などで精力的に発言していた。

1996年脳梗塞で倒れ、左半身不随で車いす生活になった。その後は夫の協力を得て、口頭筆記で著述を行っていたが、2007年5月24日午前9時14分、腎不全のため入院先で没した。76歳没。夫の利雄は、この介護を題材とした手記「終わりの蜜月」を発表している。

なお没後、絶筆となった短編やエッセイを含む『風紋』と、倒れる直前まで執筆していた未完の長編『七里湖』が相次いで刊行された。

2009年5月から、日本経済新聞出版社より2回目の全集(全25巻)が刊行されている。

受賞歴

著書(刊行順)

  • 『三匹の蟹』(講談社/1968年)のち文庫、文芸文庫、小学館P+D BOOKS  
  • 『ふなくい虫』(講談社/1970年)のち文庫 
  • 『幽霊達の復活祭』(講談社/1970年)のち文庫 
  • 『栂の夢』(文藝春秋 1971年) のち文庫 
  • 『魚の泪』(中央公論社/1971年)のち文庫 
  • 『錆びた言葉』※詩集(講談社/1971年)
  • 『胡弓を弾く鳥』(講談社/1972年)
  • 『野草の夢』(講談社/1973年) 
  • 『死海のりんご』※戯曲(新潮社/1973年)
  • 『がらくた博物館』(文藝春秋/1975年)のち文庫 
  • 『青い狐』(講談社/1975年) 
  • 『浦島草』(講談社/1977年)のち文庫、文芸文庫  
  • 『醒めて見る夢』(講談社/1978年)
  • 『蒼い小さな話』(角川書店/1978年)
  • 『対談・性としての女』高橋たか子(講談社/1979年)
  • 『花と虫の記憶』(中央公論社/1979年)のち文庫 
  • 『淡交』(河出書房新社/1979年)
  • 『女の男性論』(中央公論社/1979年)のち文庫 
  • 『霧の旅』1-2(講談社/1980年)
  • 『オレゴン夢十夜』(新潮社/1980年)のち集英社文庫、講談社文芸文庫  
  • 『寂兮寥兮(かたちもなく)』(河出書房新社/1982年)のち文庫、講談社文芸文庫  
  • 『島の国の南』(潮出版社/1982年) 
  • 『私のえらぶ私の場所』(海竜社/1982年)
  • 『夢を釣る』(講談社/1983年)
  • 『帽子の聴いた物語』講談社、1983 
  • 『夢野』(講談社/1984年)
  • 『舞へ舞へ蝸牛』(福武書店/1984年)のち文庫 
  • 『駆ける男の横顔』(中央公論社/1984年) 
  • 『田園のうた(詩)』(佑学社/1984年)
  • 『楊梅洞物語』(中央公論社/1984年)
  • 『女・男・いのち エッセイ』(読売新聞社/1985年)「続女の男性論」中公文庫 
  • 『ドラマ』(作品社/1985年)
  • 『啼く鳥の』(講談社/1985年)のち文芸文庫 
  • 『三面川』(文藝春秋 1986年)
  • 『大庭みな子の竹取物語・伊勢物語』(集英社/1986年)のち文庫 
  • 『鏡の中の顔』(新潮社/1986年)
  • 『大庭みな子の雨月物語』(集英社/1987年)のち文庫 
  • 『王女の涙』(新潮社/1988年)のち文庫 
  • 『生きもののはなし』(読売新聞社/1988年)
  • 『性の幻想 対談集』(河出書房新社 1989年)
  • 『虹の橋づめ』(朝日新聞社/1989年)のち文庫 
  • 『海にゆらぐ糸』(講談社/1989年)のち文芸文庫 
  • 『古典の旅 万葉集』(講談社/1989年)「「万葉集」を旅しよう」文庫 
  • 『魔法の玉』(TBSブリタニカ/1989年) 
  • 『新輯お伽草子』(河出書房新社/1990年)
  • 津田梅子』(朝日新聞社/1990年)のち文庫 
  • 『虹の繭 自選短篇集』(学芸書林/1990年)
  • 大庭みな子全集』全10巻(講談社、1990-91年) 
  • 『郁る樹の詩 母と娘の往復書簡 』大庭優共著 (中央公論社/1992年)
  • 『想うこと』(読売新聞社/1992年)
  • 『やわらかいフェミニズムへ 対談集』(青土社/1992年)
  • 『二百年』(講談社/1993年)
  • 『雪』(福武書店/1993年)
  • 『むかし女がいた』(新潮社/1994年)のち文庫 
  • 『もってのほか』(中央公論社/1995年)
  • 『わらべ唄夢譚』(河出書房新社/1995年) 
  • 『<山姥>のいる風景 対談』水田宗子(田畑書店/1995年)
  • 『おむぶう号漂流記』(岩波書店/1996年)
  • 『炎える琥珀』水田宗子共著(中央公論社/1996年)
  • 『初めもなく終わりもなく』(集英社/1998年)
  • 『楽しみの日々』(講談社/1999年)
  • 『雲を追い』(小学館/2001年)
  • 『ヤダーシュカミーチャ』(講談社/2001年)
  • 『大庭みな子の枕草子』(講談社/2001年)
  • 『浦安うた日記』(作品社/2002年)
  • 『大庭みな子全詩集』(めるくまーる/2005年)
  • 『風紋』(新潮社/2007年)
  • 『七里湖』(講談社/2007年)※未完
  • 大庭みな子全集』全25巻(日本経済新聞出版社/2009年-2011年)

共著編

  • 『古寺巡礼京都 24 清水寺大西良慶共著 淡交社 1978
  • 『対談・性としての女』高橋たか子共著 講談社 1979
  • 『日本の名随筆 53 女』編 作品社 1987
  • 『新潮古典文学アルバム 古事記日本書紀神野志隆光共編 新潮社 1991
  • 『郁る樹の詩 母と娘の往復書簡』大庭優共著 中央公論社 1992
  • 『<山姥>のいる風景 対談』水田宗子共著 田畑書店 1995
  • 『炎える琥珀』水田宗子共著 中央公論社 1996
  • 『現代日本文化論 2 家族と性』河合隼雄共同編集 岩波書店 1997
  • 『テーマで読み解く日本の文学 現代女性作家の試み』監修 小学館 2004

翻訳

  • ジェイムズ・ボールドウィン,マーガレット・ミード『怒りと良心 人種問題を語る』平凡社 1973
  • ローズマリー・ウエルズ 『いたずらノラ』文化出版局 1977 (ミセスこどもの本) 1977
  • ローズマリー・ウエルズ 『モリスのまほうのふくろ』文化出版局 1977
  • ヘレン・バックレイ『ゆっくりおじいちゃんとぼく』佑学社(アメリカ創作絵本シリーズ) 1979
  • ローズマリー・ウエルズ 『スタンレイとローダ』文化出版局 1979
  • マージョリー・ワインマン・シャーマット『ぼくうそついちゃった』佑学社 1980
  • ミラ・ギンズバーグ『みんなおやすみ』ほるぷ出版 1985
  • 『ノアのはこ舟のものがたり』エルマー・ボイド・スミス再話・絵 ほるぷ出版 1986
  • 『ジャネット・マーシュの水辺の絵日記』ティビーエス・ブリタニカ 1986
  • 『少年少女古典文学館 枕草子清少納言 講談社 1991
  • ドナルド・キーン『古典の愉しみ』ドナルド・キーン JICC出版局 1992 のち宝島社文庫 

関連書籍

  • 江種満子『大庭みな子の世界 アラスカ・ヒロシマ・新潟』新曜社 2001
  • 水田宗子『大庭みな子記憶の文学』平凡社 2013
  • 大庭利雄『終わりの蜜月 大庭みな子の介護日誌』新潮社 2002
  • 大庭利雄『最後の桜 妻・大庭みな子との日々』河出書房新社 2013

脚注

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