外積代数
数学におけるベクトルの外積(がいせき、英語: exterior product)あるいは楔積(くさびせき、ウェッジ積、英語: wedge product)はクロス積をある特定の性質に着目して、より高次元の場合へ一般化する代数的な構成である。クロス積やスカラー三重積のようにベクトル同士の外積はユークリッド幾何学において面積や体積およびそれらの高次元における類似物の研究に用いられる。線型代数学において外積は、線型変換の行列式や小行列式を記述する基底の取り方に依存しない抽象代数的な仕方を提供し、階数や線型独立性といった概念に根本的に関係してくる。
外積代数(がいせきだいすう、英語: exterior algebra)は、ヘルマン・グラスマンに因んでグラスマン代数(グラスマンだいすう、英語: Grassmann algebra)[1]としても知られ、与えられた体 K 上のベクトル空間 V 上の外積によって生成される多元環である。多重線型代数やその関連分野と同様に、微分形式の成す多元環を通じて現代幾何学、特に微分幾何学と代数幾何学において広く用いられる。
形式的には、外積代数は ⋀(V) あるいは ⋀*(V) で表され、V を線型部分空間として含む、楔積あるいは外積と呼ばれる ∧ で表される乗法を持つ、体 K 上の単位的結合代数である。楔積は結合的で双線型な乗法
- [math]\textstyle \wedge\colon \bigwedge(V) \times \bigwedge(V) \to\bigwedge(V);\; (\alpha,\beta)\mapsto \alpha\wedge\beta[/math]
であり、本質的な性質として V 上の交代性
- (1) [math]v\wedge v = 0 \text{ for all }v\in V[/math]
を持つものである。これは以下の性質
- (2) [math]u\wedge v = - v\wedge u \quad\text{for any } u,v\in V[/math]
- (3) [math]v_1\wedge v_2\wedge\cdots \wedge v_k = 0\quad\text{whenever } v_1, \ldots, v_k \in V \text{ are linearly dependent}[/math]
をも特別の場合として含む[2]。
圏論の言葉で言えば、外積代数は普遍構成によって与えられる、ベクトル空間の圏上の函手の典型である。この普遍構成によって、体上のベクトル空間だけに限らず、可換環上の加群やもっとほかの興味ある構造にたいしても外積代数を定義することができる。外積代数は双代数のひとつの例である。つまり、外積代数の(ベクトル空間としての)双対空間にも乗法が定義され、その双対的な乗法が楔積と両立する。この双対代数は特に V 上の重線型形式全体の成す多元環で、外積代数とその双対代数との双対性は内積によって与えられる。
Contents
動機付けとなる例
平面における面積
- [math]\boldsymbol{e}_1 = (1,0),\quad \boldsymbol{e}_2 = (0,1)[/math]
という 2 つの単位ベクトルの組はその基底となっている。ここで、
- [math]\boldsymbol{v} = v_1\boldsymbol{e}_1 + v_2\boldsymbol{e}_2, \quad \boldsymbol{w} = w_1\boldsymbol{e}_1 + w_2\boldsymbol{e}_2[/math]
という 2 つの成分表示された R2 のベクトルが与えられたとすると、v, w を 2 つの辺とする平行四辺形が一意に存在する。この平行四辺形の面積は、行列式を用いて
- [math]A = \left|\det\begin{pmatrix}\boldsymbol{v} & \boldsymbol{w}\end{pmatrix}\right| = |v_1w_2 - v_2w_1|[/math]
と表される。いま、v, w の外積を
- [math]\begin{align}\\ \boldsymbol{v}\wedge \boldsymbol{w} &= (v_1\boldsymbol{e}_1 + v_2\boldsymbol{e}_2)\wedge (w_1\boldsymbol{e}_1 + w_2\boldsymbol{e}_2)\\ &= v_1w_1(\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_1) + v_1w_2(\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_2) + v_2w_1(\boldsymbol{e}_2 \wedge \boldsymbol{e}_1) + v_2w_2(\boldsymbol{e}_2 \wedge \boldsymbol{e}_2)\\ &= (v_1w_2 - v_2w_1)(\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_2)\end{align}[/math]
のように定める。まず最初の部分では楔積に分配法則を適用し、ついで楔積が交代的であるという性質を用いた。最終的に得られた表式の係数はまさに行列 (v w) の行列式である。この係数が正負の値を取りうることは、直感的には、v, w に、それらの定義する平行四辺形の辺として時計回りあるいは反時計回りの向きがつけられることを意味する。このような面積のことを平行四辺形の「符号つき面積」という。符号つき面積の絶対値は通常の意味での面積であり、符号はその向きを与えている。
この係数が符号つき面積となったことは偶然ではない。符号つき面積を代数的構造として公理化しようとすれば、必然的に外積と結びつくことが比較的簡単に確かめられる。詳しく言えば、v と w によって決まる平行四辺形の符号つき面積を A(v, w) と表すことにすれば、A は下に挙げる性質を満たさなくてはならない。
- 任意の実数 a と b について、A(a v, b w) = ab A(v, w) が成り立つ。なぜならば、どちらかの辺の長さを変えれば、それに応じて面積も変わる。また、どちらかの辺の向きを変えれば、平行四辺形の向きは変わる。
- A(v, v) = 0 である。なぜならば、v が決める退化した平行四辺形(すなわち、線分)の面積は 0 である。
- A(w, v) = -A(v, w) である。なぜならば、v と w の役割を交換すれば平行四辺形の向きは逆転する。
- A(v + a w, w) = A(v, w) である。なぜならば、w の定数倍を v に足すという作用は底辺の長さも高さも変えず、したがって面積を保つ。
- A(e1, e2) = 1 である。なぜならば、単位正方形の面積は 1 である。
最後の条件を除くと、楔積はこの面積の性質と同様の性質を満たす。ある意味で、楔積は面積の最後の性質を一般化し、適当に選んだ「標準的な」平行四辺形と比較することを許容したものであるといえる。言い換えれば、2 次元の外積は面積の「基底に依存しない」定式化である[3]。
クロス積と三重積
R3 におけるベクトルに対して、対応する外積代数はベクトルのクロス積およびスカラー三重積と近しい関係にある。標準基底 {e1, e2, e3} を用いて、2 つのベクトル
- [math] \boldsymbol{u} = u_1 \boldsymbol{e}_1 + u_2 \boldsymbol{e}_2 + u_3 \boldsymbol{e}_3,\quad \boldsymbol{v} = v_1 \boldsymbol{e}_1 + v_2 \boldsymbol{e}_2 + v_3 \boldsymbol{e}_3 [/math]
の楔積は 3-次元空間 ⋀2(R3) の基底 {e1 ∧ e2, e1 ∧ e3, e2 ∧ e3} に関して
- [math] \begin{align}&\boldsymbol{u} \wedge \boldsymbol{v} \\ &\quad = (u_1 v_2 - u_2 v_1) (\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_2) + (u_1 v_3 - u_3 v_1) (\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_3) + (u_2 v_3 - u_3 v_2) (\boldsymbol{e}_2 \wedge \boldsymbol{e}_3) \end{align}[/math]
と書くことができる。これは 3-次元における空間ベクトルの通常のクロス積の定義とよく似ている(通常のクロス積に落とすには後述のホッジの ∗ を用いればよい)。さらに 3 つ目のベクトルを
- [math] \boldsymbol{w} = w_1 \boldsymbol{e}_1 + w_2 \boldsymbol{e}_2 + w_3 \boldsymbol{e}_3 [/math]
とすれば、1-次元ベクトル空間 ⋀3(R3) の基底 e1 ∧ e2 ∧ e3 に関して、これら 3 つのベクトルの楔積は
- [math] \begin{align} & \boldsymbol{u} \wedge \boldsymbol{v} \wedge \boldsymbol{w} \\ & \quad = (u_1 v_2 w_3 + u_2 v_3 w_1 + u_3 v_1 w_2 - u_1 v_3 w_2 - u_2 v_1 w_3 - u_3 v_2 w_1) (\boldsymbol{e}_1 \wedge \boldsymbol{e}_2 \wedge \boldsymbol{e}_3) \end{align}[/math]
となる。これはスカラー三重積の通常の定義とよく似ている。
3-次元における通常のクロス積やスカラー三重積は幾何学的・代数的の両面で解釈することができる。クロス積 u × v は u と v の両方に直交し、大きさがそれらの張る平行四辺形の面積の大きさに等しいようなベクトルとして解釈することができ、これはまた u と v を列ベクトルとする行列の小行列式を成分に持つベクトルとして解釈することもできる。 u, v, w のスカラー三重積は幾何学的には(符号付)体積を表し、代数的には u, v, w を列ベクトルとする行列の行列式となっている。3-次元における外積についても同様の解釈が許される。事実として、正の向きを持つ正規直交基底の存在性に関して、外積はこれらの概念をより高い次元へと一般化する。
形式的定義と代数的な性質
ベクトル空間 V 上の外積代数 ⋀(V) はテンソル代数 T(V) を x ⊗ x (x ∈ V) の形の元で生成される両側イデアル I で割った商多元環として定義される[4]。これを記号的に
- [math]\textstyle \bigwedge(V) := T(V)/I[/math]
と表せば、⋀(V) の 2 元の楔積 ∧ は
- [math]\alpha\wedge\beta = \alpha\otimes\beta \pmod I[/math]
で与えられる。
楔積の交代性
この積は V の元の上で反対称的である。x, y ∈ V とすれば x + y ∈ V ゆえ
- [math]0 = (x+y)\wedge (x+y) = x\wedge x + x\wedge y + y\wedge x + y\wedge y = x\wedge y + y\wedge x[/math]
が成り立つから
- [math] x \wedge y = - y \wedge x[/math]
が得られる。あるいはもっと一般に x1, x2 …, xk を V の元、σ を整数 {1, ..., k} の置換 とすれば
- [math]x_{\sigma(1)}\wedge x_{\sigma(2)}\wedge\cdots\wedge x_{\sigma(k)} = {\rm sgn}(\sigma)x_1\wedge x_2\wedge\cdots \wedge x_k[/math]
が成立する。ここで sgn(σ) は置換 σ の符号である[5]。
外冪
V の k –次外冪 (k-th exterior power) ⋀k(V) とは
- [math]x_1\wedge x_2\wedge\cdots\wedge x_k,\quad x_i\in V, i=1,2,\ldots, k[/math]
で張られる ⋀(V) の部分線型空間である。
α ∈ ⋀k(V) とするとき、α は k-重ベクトル (k-multivector) と呼ばれる。更に、α が V の k 個の元の楔積で表すことができるならば、α は分解可能 (decomposable) であるという。
⋀k(V) は分解可能多重ベクトルによって張られるけれども、全ての元が分解可能というわけではない。例えば、 R4 で次の 2 重ベクトル
- [math]\alpha = e_1\wedge e_2 + e_3\wedge e_4[/math]
は分解可能ではない(α ∧ α ≠ 0 であり、実際にはこれは斜交形式である[6])。
基底と次元
V の次元を有限な n とし、{e1, …, en} を V の一つの基底とする。このとき、集合
- [math]\{e_{i_1}\wedge e_{i_2}\wedge\cdots\wedge e_{i_k} \mid 1\le i_1 \lt i_2 \lt \cdots \lt i_k \le n\}[/math]
は k-次外冪 ⋀k(V) の基底を成す。実際に任意の元が
- [math]v_1\wedge\cdots\wedge v_k[/math]
の形に与えられたとき、各ベクトル vj は基底 ei の線型結合に書けるから、楔積の重線型性を使って展開すればこれを基底ベクトル同士の楔積の線型結合に書き直すことができる。このとき、楔積の中に同じベクトルがあれば 0 になるし、基底ベクトルが順番に現われていなければ符号を変えて順番を入れ替えて、基底を順番通りに並ばせることができる。 一般に、結果として得られた k-ベクトルの基底の係数は基底 ei に関してベクトル vj を記述する行列の小行列式として計算できる。
基底に属する元の個数を数えることにより ⋀k(V) の次元は二項係数 C(n , k) で与えられることが分かる。特に、k > n ならば ⋀k(V) = {0} である。
外積代数の任意の元は多重ベクトルの和として表される。よって、外積代数はベクトル空間の直和
- [math]\textstyle \bigwedge(V) = \bigwedge^0(V)\oplus \bigwedge^1(V) \oplus \bigwedge^2(V) \oplus \cdots \oplus \bigwedge^n(V)[/math]
に分解される(ここで ⋀0(V) = K および ⋀1(V) = V と約束する)。したがって外積代数の次元は二項係数の和に等しく、2n である。
多重ベクトルの階数
α ∈ ⋀k(V) とすると α は分解可能多重ベクトルの線型結合
- [math] \alpha = \alpha^{(1)} + \alpha^{(2)} + \cdots + \alpha^{(s)}[/math]
として表示できる。ここで各 α(i) は分解可能、つまり
- [math]\alpha^{(i)} = \alpha^{(i)}_1\wedge\cdots\wedge\alpha^{(i)}_k,\quad i=1,2,\dots, s[/math]
と書ける。多重ベクトル α の階数 (rank)とは α のこのような表示に現れる分解可能多重ベクトルの最小数をいう。これはテンソルの階数の記法の類似である。
階数は特に 2 重ベクトルの研究で重要である{{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}。2-重ベクトル α の階数は α のある基底に関する係数の作る行列の階数と同一視できる。つまり、{ei} を V の基底とすると、α は
- [math]\alpha = \sum_{i,j}a_{ij}e_i\wedge e_j[/math]
と一意的に表示できる(ここで aij = −aji ゆえ、対応する係数行列は歪対称行列である)。そして α の階数は行列 (aij) の階数に一致する。
標数 0 の場合、2-重ベクトル α が階数 p を持つことと
- [math]\underset{p}{\underbrace{\alpha\wedge\cdots\wedge\alpha}}\not= 0[/math]
かつ
- [math]\underset{p+1}{\underbrace{\alpha\wedge\cdots\wedge\alpha}} = 0[/math]
であることとは同値である。
次数付け構造
k-重ベクトルと p-重ベクトルとの楔積は (k + p)-重ベクトルで、双線型性を持つことを思い出そう。結果として先行節で与えた直和分解
- [math]\textstyle \bigwedge(V) = \bigwedge^0(V)\oplus \bigwedge^1(V) \oplus \bigwedge^2(V) \oplus \cdots \oplus \bigwedge^n(V)[/math]
は外積代数に次数付き代数の構造を与える。記号的には
- [math]\textstyle \left(\bigwedge^k(V)\right)\wedge\left(\bigwedge^p(V)\right)\sub \bigwedge^{k+p}(V)[/math]
が成り立つ。さらに楔積は次数付き反対称性を持つ。つまり α ∈ ⋀k(V) と β ∈ ⋀p(V) に対し
- [math]\alpha\wedge\beta = (-1)^{kp}\beta\wedge\alpha[/math]
が成立する。外積代数の次数付き構造の研究に加えてBourbaki (1989)は、(それ自身次数付けを持つ加群である)次数付き加群上の外積代数のような、外積代数上の加法的次数付き構造を研究した。
普遍性
V を体 K 上のベクトル空間とする。形式張らずに言えば、⋀(V) における乗法は文字を分配法則、結合法則と恒等式 v ∧ v = 0 (v ∈ V) に従って操作することによって行われる。厳密には ⋀(V) は乗法がそれらの法則を満足する多元環の中で、「もっとも一般」なものである。それは V を含み交代的な乗法を持つ任意の単位的結合 K-代数は ⋀(V) の準同型像として得られるという意味である。言い換えれば、外積代数は以下の普遍性[7]を持つ。
- 外積代数の普遍性
- 与えられた任意の単位的結合 K-代数 A と任意の K-線型写像 j: V → A で j(v)j(v) = 0 (v ∈ V) を満たすものに対して、 単位的代数の準同型 f: ⋀(V) → A で f(v) = j(v) (v ∈ V) を満たすものが「唯一つ」存在する。
V を含み、V の上で交代的な乗法を持つもっとも一般の多元環を構成するには、V を含む最も一般な多元環であるテンソル代数 T(V) から始めるのが自然であり、テンソル代数の適当な商をとることによって交代性を導入してやればよい。そこで v ⊗ v (v ∈ V) の形の元全体が生成する T(V) の両側イデアル I をとり、⋀(V) を
- [math]\textstyle\bigwedge(V) = T(V)/I[/math]
で定義して、⋀(V) における乗法を表す記号として ∧ (wedge) を用いる。この ⋀(V) が V を含み、上記の普遍性を満たすことはすぐに判る。
この構成の結果として、ベクトル空間 V に外積代数 ⋀(V) に対応させる操作が、ベクトル空間の圏から多元環の圏への函手となる。
空間 ⋀k(V) を始めに定義して、それらの直和として代数 ⋀(V) を構成する代わりに、最初に ⋀(V) を定義して、外冪 ⋀k(V) を適当な部分空間と同一視するほうを好むかもしれない。このやり方はしばしば微分幾何で用いられる(次の節で記述する)。
一般化
与えられた可換環 R と R-加群 M に対して、上でやったようにテンソル代数 T(M) の適当な商として外積代数 ⋀(M) を定義することができる。それは類似の普遍性を満足するだろう。⋀(M) の多くの性質は M が射影加群であることを要求する。有限次元性が用いられるところでは、M を有限生成かつ射影的とすることが必要である。もっと一般の設定への一般化は {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} に見つかる。
位相幾何学などでベクトル束の外積代数を考えることがしばしばある。セール–スワンの定理により、有限次元ベクトル束の外積代数の代数的性質と有限生成射影加群の外積代数のそれとの間には本質的な違いはない。もっと一般に外積代数は加群の層に対して定義できる。
双対性
交代作用素
2 つのベクトル空間 V, X に対し、Vk から X への交代作用素 (alternating operator) あるいは反対称作用素 (anti-symmetric operator) とは多重線型写像
- f: Vk → X
であって、v1, …, vk が線型従属なベクトルならば
- f (v1, …, vk) = 0
を常に満たすもののことである。最も有名な例は行列式でこれは (Kn)n から K への交代作用素である。また、V の k 個のベクトルにその楔積となる k-重ベクトルを対応させる写像
- w: Vk → ⋀k (V)
も交代的である。事実として、この写像は Vk 上定義される交代作用素の中で「もっとも一般」なものである。つまり、交代作用素 f: Vk → X が与えられたとき、線型写像 φ: ⋀k(V) → X で f = φ ∘ w を満たすものが唯一つ存在する。この普遍性により ⋀k(V) を特徴づけられる。この普遍性を ⋀k(V) の定義とすることもある。
重線型交代形式
上記の特別の場合として X = K を基礎体とするとき、交代重線型写像
- f: Vk → K
は重線型交代形式と呼ばれる。重線型交代形式の全体の成す集合は、それらの和もスカラー倍も再び交代性を持つから、ベクトル空間を成す。 外冪の普遍性により、V 上の次数 k の交代形式の空間は双対空間 (⋀kV)∗ と自然同型である。V が有限次元なら後者は ⋀k(V∗) に自然同型である。特に Vk から K への反対称写像全体の成す空間の次元は n から k を選ぶ二項係数に等しい。
この同一視の元、楔積は具体的な形で 2 つの反対称写像から別の反対称写像を導く。ω: Vk → K と η: Vm → K を 2 つの反対称写像とする。重線型写像のテンソル積の場合と同様に楔積における変数の個数はそれぞれの写像の変数の個数の和になる。楔積は次のように
- [math]\omega\wedge\eta=\frac{(k+m)!}{k!\,m!}\operatorname{Alt}(\omega\otimes\eta)[/math]
と定義される。ここで重線型写像の交代化作用 "Alt" は変数の置換全体を亘る符号付平均
- [math]\operatorname{Alt}(\omega)(x_1,\ldots,x_k)=\frac{1}{k!}\sum_{\sigma\in S_k}\sgn(\sigma)\,\omega(x_{\sigma(1)},\ldots,x_{\sigma(k)})[/math]
で定義される。この楔積の定義は、K が有限標数をもてば矛盾無く定まる。上記と同値で階乗を使わないものとして
- [math]\begin{align}&(\omega \wedge \eta)(x_1,\ldots,x_{k+m})\\ &\quad = \sum_{\sigma \in \operatorname{Sh}_{k,m}} \sgn(\sigma)\,\omega(x_{\sigma(1)}, \ldots, x_{\sigma(k)}) \eta(x_{\sigma(k+1)}, \ldots, x_{\sigma(k+m)})\end{align}[/math]
を考えることもできる。ここで Shk,m ⊂ Sk+m は (k, m)-シャッフル全体の成す部分集合である。(k, m)-シャッフルは {1, 2, …, k + m} の置換 σ であって、σ(1) < σ(2) < … < σ(k) かつ σ(k + 1) < σ(k + 2) < … < σ(k + m) なるものを言う[8]。
双代数構造
正確に言えば、次数付き代数 ⋀(V) の次数付き双対と V 上の重線型交代形式全体の空間の間に対応が存在する。上で定義した重線型代数の楔積は ⋀(V) 上に定義され、余代数の構造を定める余積の双対である。
この余積 (coproduct) は線型写像 Δ: ⋀(V) → ⋀(V) ⊗ ⋀(V) であって、分解可能な元の上では
- [math]\Delta(x_1\wedge\cdots\wedge x_k) = \sum_{p=0}^k \sum_{\sigma\in \operatorname{Sh}_{p,k-p}} \sgn(\sigma) (x_{\sigma(1)}\wedge\cdots\wedge x_{\sigma(p)})\otimes (x_{\sigma(p+1)}\wedge\cdots\wedge x_{\sigma(k)})[/math]
によって与えられる。例えば
- [math]\Delta(x_1) = 1 \otimes x_1 + x_1 \otimes 1,[/math]
- [math] \Delta(x_1 \wedge x_2) = 1 \otimes (x_1 \wedge x_2) + x_1 \otimes x_2 - x_2 \otimes x_1 + (x_1 \wedge x_2) \otimes 1 [/math]
のようである。これを線型に拡張して外積代数全体で定義される演算を得る。余積の言葉で言えば、双対空間上の楔積はちょうど余積の次数つき双対
- [math](\alpha\wedge\beta)(x_1\wedge\cdots\wedge x_k) = (\alpha\otimes\beta)(\Delta(x_1\wedge\cdots\wedge x_k))[/math]
である。ここで右辺におけるテンソル積は線型写像としてのそれである(両立しない斉次次数の元については 0 で拡張する。もっとはっきり言えば α ∧ β = ε ∘ (α ⊗ β) ∘ Δ と定める。ここで ε は以下で定義する余単位射である)。
余単位射 (counit) は準同型 ε: ⋀(V ) → K で引数の 0-次成分を返すものである。余積および余単位射は楔積とともに外積代数に双代数の構造を定める。
内部積
V は有限次元とし、V∗ を V の双対空間とする。任意の α ∈ V∗ に対し、代数 ⋀(V) 上の反微分
- [math]\textstyle i_\alpha\colon \bigwedge^k(V) \to \bigwedge^{k-1}(V)[/math]
が定義できる。この微分を α に関する内積あるいは内部積 (interior product) と呼ぶ。挿入作用素 (insertion operator) や α による縮約 (contraction) などということもある。
w ∈ ⋀k(V) とすると、w は V∗ から R への重線型写像であるから、k-重直積 V∗ × V∗ × ⋯ × V∗ における値によって定まる。V∗ の k − 1 個の元 u1, u2, …, uk−1 に対し、
- [math](i_\alpha {\bold w})(u_1,u_2,\ldots,u_{k-1})={\bold w}(\alpha,u_1,u_2,\ldots, u_{k-1})[/math]
が定義される。加えて、f が純スカラー(つまり、⋀0(V ) の元)であるときには iαf = 0 とする。
公理的特徴づけと性質
内部積は以下の性質
- 任意の k と任意の α ∈ V∗ について[math]\textstyle i_\alpha\colon\bigwedge^k(V) \to \bigwedge^{k-1}(V)[/math]である(規約により ⋀−1(V) = 0 とする)。
- v が V (= ⋀1(V)) の元ならば iαv = α (v) とする。
- 任意の α ∈ V∗ に対し、iα は次数 -1 の次数つき微分[math]i_\alpha (a\wedge b) = (i_\alpha a)\wedge b + (-1)^{\deg a}a\wedge (i_\alpha b)[/math]である。
を満足する。事実として、これら 3 つの性質は、内部積を特徴付けるのに十分で、一般の無限次元の場合においても内部積を同様に定義する。内部積のほかの性質としては
- [math]i_\alpha\circ i_\alpha = 0,[/math]
- [math]i_{\alpha}\circ i_{\beta} = -i_{\beta}\circ i_{\alpha}[/math]
が挙げられる。
ホッジ双対性
V を有限 n-次元とすると、内部積はベクトル空間の自然な同型
- [math]\textstyle \bigwedge^k(V^*) \otimes \bigwedge^n(V) \to \bigwedge^{n-k}(V)[/math]
を誘導する。幾何学的な設定で、(一次元ベクトル空間である)最高次外冪 ⋀n(V) のゼロでない元はしばしば体積要素と(あるいは多少紛らわしい用語だが orientation form とも)呼ばれる。体積要素 σ に関して上記の同型は
- [math]\textstyle \alpha \in \bigwedge^k(V^*) \mapsto i_\alpha\sigma \in \bigwedge^{n-k}(V)[/math]
によって明示的に与えられる。体積要素に加えて、ベクトル空間 V が V と V∗ を同一視する内積を備えているならば、得られる同型
- [math]\textstyle * \colon \bigwedge^k(V) \to \bigwedge^{n-k}(V)[/math]
はホッジ双対、あるいは一般にはホッジ ∗-作用素と呼ばれる。∗-作用素とそれ自身の合成写像 ⋀k(V) → ⋀k(V) は常に恒等写像のスカラー倍である。ほとんどの応用においては、体積形式はそれが V のある正規直交基底の楔積であるという意味で内積と両立する。この場合は
- [math]\textstyle * \circ *\colon \bigwedge^k(V) \to \bigwedge^k(V) = (-1)^{k(n-k) + q}I[/math]
になっている。ここで I は恒等写像で、内積は計量符号数 (p , q) (プラスが p 個、マイナスが q 個)を持つ。
函手性
V , W をベクトル空間の対とし、f: V → W を線型写像とする。このとき普遍構成により、次数付き代数の準同型
- [math]\textstyle \bigwedge(f)\colon \bigwedge(V)\to \bigwedge(W)[/math]
であって、その ⋀1(V) = V への制限が
- [math]\textstyle\bigwedge(f)|_{V} = f[/math]
を満たすようなものが唯一つ存在する。特に ⋀(f) は斉次次数 (homogeneous degree) を保つ。⋀(f) の k-次成分は分解可能元の上では
- [math]\textstyle \bigwedge(f)(x_1\wedge\cdots\wedge x_k) = f(x_1)\wedge\cdots\wedge f(x_k)[/math]
で与えられる。
- [math]\textstyle \bigwedge^k(f) = \bigwedge(f)_{\bigwedge^k(V)}\colon\bigwedge^k(V) \to \bigwedge^k(W)[/math]
とすると、変換 ⋀k(f) の V と W の基底に関する成分は f の k × k 小行列式の作る行列である。特に、V = W で V が有限 n-次元のとき、⋀n(f) は 1 次元ベクトル空間 ⋀n(V ) をそれ自身に移すから、これはスカラーで与えられ、それはちょうど f の行列式の値である。
完全性
ベクトル空間の短完全列
- [math]0\to U\to V\to W\to 0[/math]
に対し、
- [math]\textstyle 0\to \bigwedge^1(U)\wedge\bigwedge(V) \to \bigwedge(V)\to \bigwedge(W)\to 0[/math]
は次数付き線型空間の完全列である[9]。もちろん
- [math]\textstyle 0\to \bigwedge(U)\to\bigwedge(V)[/math]
も完全である[10]。
直和
ベクトル空間の直和上の外積代数はそれぞれの空間上の外積代数のテンソル積に同型
- [math]\textstyle \bigwedge(V\oplus W)= \bigwedge(V)\otimes\bigwedge(W)[/math]
である。これは次数付き同型、つまり
- [math]\textstyle \bigwedge^k(V\oplus W)= \bigoplus_{p+q=k} \bigwedge^p(V)\otimes\bigwedge^q(W)[/math]
になっている。もう少し一般に
- [math]0\to U\to V\to W\to 0[/math]
がベクトル空間の短完全列ならば ⋀k(V) はフィルター付け
- [math]\textstyle 0 = F^0 \subseteq F^1 \subseteq \dotsb \subseteq F^k \subseteq F^{k+1} = \bigwedge^k(V)[/math]
で、その商が
- [math]\textstyle F^{p+1}/F^p = \bigwedge^{k-p}(U) \otimes \bigwedge^p(W)[/math]
なるものを持つ。特に、U が 1 次元ならば
- [math]\textstyle 0\to U \otimes \bigwedge^{k-1}(W)\to \bigwedge^k(V)\to \bigwedge^k(W)\to 0[/math]
は完全であり、W が 1 次元ならば
- [math]\textstyle 0\to \bigwedge^k(U)\to \bigwedge^k(V)\to \bigwedge^{k-1}(U) \otimes W\to 0[/math]
が完全である[11]。
交代テンソル代数
K を標数 0 の体とする[12]とき、ベクトル空間 V の外積代数はテンソル空間 T(V) の交代テンソル全体の成す部分空間と自然に同一視される。外積代数が T(V) の x ⊗ x で生成されるイデアルによる商多元環として定義されたことを思い出そう。
Tr(V) を次数 r の斉次テンソル全体の成すベクトル空間とすれば、Tr(V) は分解可能テンソル
- [math]v_1\otimes\cdots\otimes v_r,\quad (v_i\in V)[/math]
で生成される。分解可能テンソルの交代化作用素 (antisymmetrization) あるいは歪対称化作用素 (skew-symmetrization) は
- [math]\operatorname{Alt}(v_1\otimes\cdots\otimes v_r) = \frac{1}{r!}\sum_{\sigma\in\mathfrak{S}_r} \sgn(\sigma) v_{\sigma(1)}\otimes\cdots\otimes v_{\sigma(r)}[/math]
で与えられる。ここに和は文字 {1, …, r} の置換全体の成す対称群を亘る。これを線型性と斉次性を使ってテンソル空間 T(V) 全体まで拡張したものも同じく "Alt" で表す。Alt の像 Alt(T(V)) を交代テンソル代数 (alternating tensor algebra) と呼び、A(V) で表す。これは T(V) の部分線型空間で、T(V) から次数付きベクトル空間の構造が遺伝する。これにより結合的な次数付き乗法が
- [math]t\operatorname{\widehat{\otimes}}s = \operatorname{Alt}(t\otimes s)[/math]
によって誘導される。しかしこれはテンソル積とは異なる乗法であって、Alt の核がちょうど両側イデアル I に一致して(K は標数 0 だと仮定している)、自然な同型
- [math]\textstyle A(V)\cong \bigwedge(V)[/math]
が存在する。
指数表記
V が有限 n-次元であるとし、その基底 e1, …, en が与えられているとする。交代テンソル t ∈ Ar(V) ⊂ Tr(V) は添字表記を用いて
- [math]t = t^{i_1i_2\ldots i_r}\, \boldsymbol{e}_{i_1}\otimes \boldsymbol{e}_{i_2}\otimes\cdots\otimes \boldsymbol{e}_{i_r}[/math]
と書ける。ここで ti1…ir はその添字に関して完全反対称である。
階数がそれぞれ r および p である交代テンソル t および s の楔積は
- [math]t\operatorname{\widehat{\otimes}}s = \frac{1}{(r+p)!}\sum_{\sigma\in \mathfrak{S}_{r+p}}\sgn(\sigma)t^{i_{\sigma(1)}\ldots i_{\sigma(r)}}s^{i_{\sigma(r+1)}\ldots i_{\sigma(r+p)}} \boldsymbol{e}_{i_1}\otimes \boldsymbol{e}_{i_2}\otimes\cdots\otimes \boldsymbol{e}_{i_{r+p}}[/math]
で与えられる。このテンソルの成分はちょうどテンソル積 s ⊗ t の成分の交代部分になっており、添字に角括弧をつけて
- [math](t\operatorname{\widehat{\otimes}}s)^{i_1\dots i_{r+p}} = t^{[i_1\dots i_r}s^{i_{r+1}\dots i_{r+p}]}[/math]
と表す。
内部積も添字記法で書くことができる。
- [math]t = t^{i_0i_1\dots i_{r-1}}[/math]
を階数 r の反対称テンソルとすると、α ∈ V∗ に対して iα t は階数 r − 1 の交代テンソルで
- [math](i_\alpha t)^{i_1\dots i_{r-1}}=r\sum_{j=0}^n\alpha_j t^{ji_1\dots i_{r-1}}[/math]
によって与えられる。n は V の次元である。
応用
線型代数
分解可能 k-ベクトルは幾何学的に解釈することができる。2-ベクトル u ∧ v は u, v で張られる、u と v を辺に持つ向き付けられた平行四辺形の面積で与えられる数の「重み」を持つ平面を表す。同様にして 3-ベクトル u ∧ v ∧ w は、u, v, w を辺とする平行六面体の体積で重み付けられた 3 次元空間を表す。
射影幾何
⋀k(V) の分解可能 k-ベクトルは V の重み付き k-次元部分空間に対応する。特に V の k-次元部分空間のグラスマン多様体 Grk(V) は自然に射影空間 P(⋀k(V)) のある代数多様体と同一視される。これをプリュッカー埋め込みという。
微分幾何
外積代数の微分幾何における特筆すべき応用は、微分形式の定義に用いられることである。可微分多様体上の点における微分形式は、その点の接空間における重線型交代形式であり、k-次微分形式は接空間の k-次外冪からの線型汎函数である。結論として、重線型形式の楔積は自然に微分形式の楔積を定める。微分形式は微分幾何のさまざまな部分で大きな役割を担う。
特に、外微分は多様体上の微分形式に外積代数に微分環の構造を与える。外微分は多様体間の滑らかな写像に沿っての引き戻しと可換であり、それゆえに自然な微分作用素である。外微分を備えた微分形式の外積代数は、そのコホモロジーが台となる多様体のド・ラームコホモロジーと呼ばれる微分複体を成し、可微分多様体の代数的位相幾何学の根幹を成している。
表現論
表現論において、外積代数はベクトル空間の圏における二つの基本シューア函手のうちの一つで、もう一方は対称代数である。これらの構成はともに一般線型群の既約表現を生み出すのに用いられる。
物理学
外積代数は、フェルミオンと超対称性に関する物理理論において基本的な役割を演じる、超代数の原型的な例である。物理学的な議論はグラスマン数を見よ。ほかのいくつかの関連する概念の物理学への応用は超空間や超群を参照。
歴史
外積代数は1844年、『拡大の理論』(Ausdehnungslehre) の包括的な言葉の下にヘルマン・グラスマンによって初めて導入された[13]。これはもっと一般に量の拡大の代数的(あるいは公理的)な理論について言及しており、また早い時期における現代的なベクトル空間の概念のさきがけの一つとなっている。アデマール・ジャン・クロード・バール・デ・サン=ブナンもまた同様の exterior calculus の概念を著しており、それがグラスマンに先駆けて成されたものと主張した[14]。
外積代数それ自身は、アーサー・ケイリーとジェームス・ジョセフ・シルベスターの重ベクトルの理論の形式的側面を捉えたいくつかの規約あるいは公理から組み立てられたもので、それゆえに幾何学的な言葉での形式的な理由付けの面を抜きにすれば、命題計算のような「計算」(calculus) の類である[15]。 特にこの新たな発展は、それまで座標の観点からのみ説明されてきた性質である次元の概念の「公理的な」特徴づけを可能にした。
このベクトルと重ベクトルに関する新しい理論の重要性は19世紀半ばまでには失われ、1888年にジュゼッペ・ペアノによって詳しく調べられるまで顧みられることは無かった[16]。ペアノの仕事にも幾分不明瞭な部分が残されていたが、世紀が変わる頃には、微分形式の計算にグラスマンのアイデアを応用したフランス高等師範学校のメンバー(有名どころはアンリ・ポアンカレ、エリ・カルタン、ジャン・ガストン・ダルブーら)によって主題の統一をみた。
そのしばらく後にアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドはペアノとグラスマンのアイデアをもとにして普遍代数を導入する。これは確固たる論理的基礎の上に代数系の公理的な概念を与えることで、20世紀の抽象代数学の発展を可能にした。
関連項目
- 対称代数 — 外積代数の(積が)対称な場合の類似物
- クリフォード代数 — 外積代数の二次形式による量子化
- ワイル代数 — 対称代数のシンプレクティック形式による量子化
- 多重線型代数学
- テンソル代数
- 幾何代数
- コシュル複体
注記
- ↑ テンプレート:Harvcoltxt では拡大された代数 (extended algebra) として導入されている (cf. Clifford 1878)。おそらく現代的な線型代数学において定義されるところの outer product との区別のために、グラスマンは彼の定義した(今日では便利に外積 (exterior product) と呼ばれる)積 (produkt) を指し示すだけのために äußere(逐語訳すれば外の (outer) あるいは外部の(exterior))という言葉を用いた。
- ↑ 注意すべきは、多元環 ⋀(V) の任意の元に対して成立が要請される結合性や双線型性とは異なり、ここに挙げられる 3 つの条件は、この多元環の部分空間である V 上でのみ制約として課せられているということである。ここで条件 (1) と条件 (3) は同値であり、条件 (1) と条件 (2) は K の標数が 2 でない限り同値である。
- ↑ この面積の公理化はレオポルト・クロネッカーとカール・ワイエルシュトラスによる; see Bourbaki (1989, Historical Note)。近代的な取り扱いについては、see MacLane & Birkhoff (1999, Theorem IX.2.2)。初等的な取り扱いについては、see Strang (1993, Chapter 5)。
- ↑ これは標準的な定義の一つ。See, for instance, MacLane & Birkhoff (1999).
- ↑ このことのもっと一般な証明はたとえば Bourbaki (1989) に見ることができる。
- ↑ See Sternberg (1964, §III.6).
- ↑ Bourbaki (1989, III.7.1) および MacLane & Birkhoff (1999, Theorem XVI.6.8) を見よ。一般の普遍性に基づくより詳細な議論は MacLane & Birkhoff (1999, Chapter VI) およびブルバキの著作の至る所で見ることができる。
- ↑ 慣習的に、特に物理学では、楔積を
- [math]\omega\wedge\eta={\rm Alt}(\omega\otimes\eta)[/math]
- ↑ 主張のうち ⋀ が全射を全射に写すという部分はより一般に V と W が環上の加群である場合にも成り立つ。See Bourbaki (1989, Proposition 3, III.7.2).
- ↑ このことは V と W が可換環上の射影加群である場合にのみ一般化できる。そうでない場合には ⋀ が単射を単射に写すことが一般には期待できない。See Bourbaki (1989, Corollary to Proposition 12, III.7.9).
- ↑ このようなフィルトレーションはベクトル束や可換環上の射影加群についても取れる。これはしたがって、上述の直和に対する結果よりもっと一般的な結果である。実際、他のアーベル圏では必ずしも短完全列が分裂するとは限らない。
- ↑ See Bourbaki (1989, III.7.5) for generalizations.
- ↑ カネンバーグはグラスマンの仕事の英訳 {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} において Ausdehnungslehre を Extension Theory と訳している。
- ↑ J. Itard (1970-1990). Biography in Dictionary of Scientific Biography. New York. .
- ↑ かつてはこの計算についてさまざまな呼び方が成されており、calculus of extension (Whitehead 1898; Forder 1941) とか extensive algebra {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} とか、近いところでは extended vector algebra {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} などがある。
- ↑ Bourbaki 1989, p. 661
参考文献
数学的内容に関して
- Bishop, R.; Goldberg, S.I. (1980), Tensor analysis on manifolds, Dover, ISBN 0-486-64039-6
- Includes a treatment of alternating tensors and alternating forms, as well as a detailed discussion of Hodge duality from the perspective adopted in this article.
- Bourbaki, Nicolas (1989), Elements of mathematics, Algebra I, Springer-Verlag, ISBN 3-540-64243-9
- This is the main mathematical reference for the article. It introduces the exterior algebra of a module over a commutative ring (although this article specializes primarily to the case when the ring is a field), including a discussion of the universal property, functoriality, duality, and the bialgebra structure. See chapters III.7 and III.11.
- Bryant, R.L.; Chern, S.S.; Gardner, R.B.; Goldschmidt, H.L.; Griffiths, P.A. (1991), Exterior differential systems, Springer-Verlag
- This book contains applications of exterior algebras to problems in partial differential equations. Rank and related concepts are developed in the early chapters.
- MacLane, S.; Birkhoff, G. (1999), Algebra, AMS Chelsea, ISBN 0-8218-1646-2
- Chapter XVI sections 6-10 give a more elementary account of the exterior algebra, including duality, determinants and minors, and alternating forms.
- Sternberg, Shlomo (1964), Lectures on Differential Geometry, Prentice Hall
- Contains a classical treatment of the exterior algebra as alternating tensors, and applications to differential geometry.
歴史的内容に関して
- Bourbaki, Nicolas (1989). “Historical note on chapters II and III”, Elements of mathematics, Algebra I. Springer-Verlag.
- Clifford, W. (1878), “Applications of Grassmann's Extensive Algebra”, American Journal of Mathematics 1 (4): 350–358
- Forder, H. G. (1941), The Calculus of Extension, Cambridge University Press
- Grassmann, Hermann (1844), Die Lineale Ausdehnungslehre - Ein neuer Zweig der Mathematik (The Linear Extension Theory - A new Branch of Mathematics)
- Kannenberg, Llyod (2000), Extension Theory (translation of Grassmann's Ausdehnungslehre), American Mathematical Society, ISBN 0821820311
- Peano, Giuseppe (1888), Calcolo Geometrico secondo l'Ausdehnungslehre di H. Grassmann preceduto dalle Operazioni della Logica Deduttiva [Geometric Calculus according to Grassmann's Ausdehnungslehre, preceded by the Operations of Deductive Logic]
- Whitehead, Alfred North (1898), A Treatise on Universal Algebra, with Applications, Cambridge
その他の文献および関連図書
- Browne, J.M. (2007), Grassmann algebra - Exploring applications of Extended Vector Algebra with Mathematica, Published on line
- An introduction to the exterior algebra, and geometric algebra, with a focus on applications. Also includes a history section and bibliography.
- Spivak, Michael (1965), Calculus on manifolds, Addison-Wesley, ISBN 0-8053-90231-9
- Includes applications of the exterior algebra to differential forms, specifically focused on integration and Stokes's theorem. The notation ΛkV in this text is used to mean the space of alternating k-forms on V; i.e., for Spivak ΛkV is what this article would call ΛkV*. Spivak discusses this in Addendum 4.
- Strang, G. (1993), Introduction to linear algebra, Wellesley-Cambridge Press, ISBN 978-0961408855
- Includes an elementary treatment of the axiomatization of determinants as signed areas, volumes, and higher-dimensional volumes.
- テンプレート:Springer
- Wendell H. Fleming (1965) Functions of Several Variables, Addison-Wesley.
- Chapter 6: Exterior algebra and differential calculus, pages 205-38. This textbook in multivariate calculus introduces the exterior algebra of differential forms adroitly into the calculus sequence for colleges.
- 若木喬 (2011) "グラスマンの外積代数の研究と理工学解析への応用"
- Grassmann, Hermannの書Ausdehnungslehreの忠実な解釈に基づき、現代的な記号化と表現で新しい数学体系として"グラスマンの外積代数"を確立し、理工学分野の多くの問題の解析に応用している。