壊死性筋膜炎
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壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)とは、皮下脂肪組織と固有筋膜の間にある浅層筋膜の細菌性炎症で組織壊死を引き起こす嫌気性菌が原因の感染症の一つ。発症は緩やかであるが急速に進行し重篤な状態となり致死率は高い。中高年の四肢や陰部に好発する[1]。起因菌の一つであるビブリオ・バルニフィカスは「人食いバクテリア」とも呼ばれることがある[2]。
解説
基礎疾患が無くても生じ、原因菌の経口摂取[3]や外傷(肛門周囲膿瘍[4]、歯周炎、親知らず周囲炎、抜歯後感染、咽頭周囲炎など)からの細菌侵入が原因となる[5]。また、前駆疾患として耳下腺炎、下顎智歯の歯根膜炎由来の歯槽膿瘍、頬粘膜の咬傷、下顎小臼歯の根管治療、下顎智歯の抜歯、口腔底の腺様嚢胞癌の切除術、下顎エナメル上皮腫の下顎骨切除術が原因となったとする報告がある[5]。早期診断が重要で急速に悪化するため播種性血管内凝固症候群、多臓器不全に進展し死亡する例も多い。
原因菌
常在菌が原因となることもあり黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌、大腸菌[4]、無芽胞嫌気性菌など様々であるが特定されると、原因菌名を冠した名称で呼ばれる事もある。
- 溶血性レンサ球菌 - 劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症[6]
- エロモナス属(Aeromonas) - Aeromonas 壊死性軟部組織感染症
- ビブリオ・バルニフィカス (Vibrio vulnificus)[7] - ビブリオ・バルニフィカス感染症
- ウェルシュ菌など - 壊疽
症状
真皮全層に浮腫が著明で紫斑、水疱や血疱、陥凹性壊死、潰瘍、激痛を伴う浮腫性腫脹、発赤腫脹と発熱などの全身症状を呈する。初期には、蜂窩織炎に類似した症状を呈し、鑑別が困難なことがある[8][1]。
診断
抗菌薬投与前の細菌検査、白血球増多、炎症反応上昇(CRP高値)、肝機能障害、凝固系異常など。MRI、CT画像検査による筋膜の病変、ガス像の有無。
治療
- 外科的デブリードマン、抗菌薬大量投与、対症療法、ショック症状への対応
脚注
- ↑ 1.0 1.1 壊死性筋膜炎 necrotizing fasciitis あたらしい皮膚科学 (PDF) 北海道大学 大学院医学研究科皮膚科学教室
- ↑ 岡本正則、松田智、中村功 ほか、劇症型A群溶連菌感染症を呈した化膿性膝関節炎の1例 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 Vol.52 (2009) No.6 P.1377-1378, doi:10.11359/chubu.2012.169
- ↑ 古木春美、水足久美子、前川嘉洋 ほか、経口感染が考えられた,Aeromonas sobriaによる壊死性筋膜炎の死亡例 日本皮膚科学会雑誌 Vol.102 (1992) No.7 p.847-, doi:10.14924/dermatol.102.847
- ↑ 4.0 4.1 角崎秀文、岡村孝、鳥屋城男 ほか、肛門周囲膿瘍に続発した壊死性筋膜炎の1例 日本臨床外科学会雑誌 Vol.59 (1998) No.3 P.837-840, doi:10.3919/jjsa.59.837
- ↑ 5.0 5.1 山岡稔、壊死性筋膜炎 松本歯科大学学会 松本歯学22(3), p.233-244, 1996-12-31
- ↑ 谷 哲郎1), 行方 雅人1), 岩名 大樹 ほか、A群溶連菌による壊死性筋膜炎の1例 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 Vol.58 (2015) No.3 p.527-528, doi:10.11359/chubu.2015.527
- ↑ 川崎啓介、長野博志、大塚和俊 ほか、水害により発生したVibrio vulnificusによる下腿壊死性筋膜炎の1例 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 Vol.48 (2005) No.5 P.827-828, doi:10.11359/chubu.2005.827
- ↑ 永松正代、綾部忍、下肢壊死性筋膜炎の検討-蜂窩織炎との鑑別は難しい- 日本下肢救済・足病学会誌 Vol.7 (2015) No.1 p.69-76, doi:10.7792/jlspm.7.69
関連項目
外部リンク
- 石川耕資、南本俊之、一村公人 ほか、「壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別診断における LRINEC score の有用性の検討」 創傷 Vol.5 (2014) No.1 p.22-26, doi:10.11310/jsswc.5.22
- 大澤郁介、伊藤英人、天野貴文 ほか、壊死性筋膜炎の治療法の検討 中部日本整形外科災害外科学会雑誌 Vol. 55 (2012) No. 1 P 169-170, doi:10.11359/chubu.2012.169
- 皮膚の壊死性感染症 メルクマニュアル 家庭版