埋立地
埋立地(うめたてち)は、廃棄物や浚渫土砂、建設残土などを大量に積み上げることによって人工的に造成された土地を指す。概ね、湾や湖などの水面に投入することによって陸地を造成する場合と、低湿地・窪地・山間地などの内陸地に盛土して造成する場合とがある。
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概要
水面(海面または内水面)を平らな陸地に変える水面埋立地は、天然に形成された陸続きに水面を埋め立てていき陸地にするものと、全く新たに島を作るものとの二種類に大別され、地形条件によっては干拓などと平行して行われる。
日本の埋立地
歴史
埋立地は古くより造成されてきたが、その多くは港湾を形成・整備することが目的であった。すなわち、海岸線を整えたり埠頭を整備することにより港湾としての機能を向上させるもので、小規模なものはクニ成立以前の古代より行われてきたと考えられている。 大規模なものは、日本では江戸期から増加し、東京湾では1592年(文禄元年)の日比谷入り江が最初とされる。
一方、人工島造成は大規模な事業となるため、確認されているものは時代がかなり下ってからのものとなる。日本では平清盛による経が島築島が最初とされ、以降、長崎の出島や東京湾の台場などが知られている。 しかし、本格化したのはやはり高度成長期であり、各地の臨海工業地帯で埋立造成が進み、大阪南港、川崎の東扇島、長崎空港などが造成された。
特に神戸市では「山、海へ行く」と言われた、丘陵を切り崩した土砂で海面埋立を行うことで同時に土地造成を図る事業が行われた。これによる埋立地がポートアイランド、六甲アイランド、神戸空港である。 最近では関西国際空港、横浜八景島や和歌山マリーナシティなどがあり、総面積は国土の約0.5%に相当する。
土地利用
埋立地は人工地盤の一種であり、長時間かけて形成された天然の陸地に比べると、急速に形成されたことにより土壌粒子の間隙が大きく保有水が多いため、地震による液状化現象が起きやすいとされている。このため、耐震基準など法令上の制約(構造計算に使う係数が厳しい等)があり、建築基準法に関する建設省告示では、第三種地盤:地盤が著しく軟弱な区域、とされている(埋立から30年未満、埋立地盤厚さ3m以上)。また、液状化対策として土壌の水抜きなどの地盤改良を行うことがある。
埋立地の可能性がある場所での建築にあたっては、明治以前の古地図や土地条件図を調査したり、ボーリングによって土壌やN値を実測して判定(構造計算書用の標準貫入試験)する必要があるがかなりの費用を要するため、一般の住宅ではより簡易なスウェーデン式サウンディング試験等が用いられている。
主に埋立で造成された地域
- 東京湾岸の大部分
- 東京都(東京都内の東京湾岸のすべて)
- 千代田区(日比谷公園など旧日比谷入江、岩本町など旧神田お玉が池)
- 中央区(銀座、築地、浜離宮庭園、佃、月島、勝どき、晴海、豊海町)
- 港区(芝浦、港南、台場)
- 文京区(関口など旧白鳥池、後楽など旧小石川大沼)
- 台東区(千束など旧千束池、旧姫が池)
- 品川区(東品川、八潮、東八潮)
- 大田区( 東海、平和島、昭和島、城南島、京浜島、羽田空港、羽田旭町、大森東、大森南、東糀谷)
- 江東区(夢の島、豊洲、東雲、辰巳、潮見、有明、青海、新木場、若洲、その他江戸時代には旧永代島、旧宝六島を除く小名木川以南の大部分)
- 江戸川区(清新町、臨海町)
- 荒川区(三河島=三川ヶ島の周辺水域)
- 神奈川県(神奈川県内の東京湾岸の大部分)
- 千葉県(千葉県内の東京湾岸の大部分)
- 三河湾の一部
- 愛知県
- 伊勢湾の一部
- 大阪湾岸本州側の大部分
- 瀬戸内海の一部
- 響灘の一部
- 福岡県
- 博多湾の一部
- 福岡県
- 別府湾の一部
- 大分県
- 鹿児島湾の一部
- 鹿児島県
ドバイの埋立地
ドバイには人工島として埋め立てられた「ザ・パームジュメイラ」がある[4]。「ザ・パームジュメイラ」はヤシの木の形状をした全長120kmにも及ぶ巨大人工島となっている[4]。
また、「ザ・ワールド」は世界地図を模して造成された300の人工島からなる分譲リゾートとなっている[4]。
環境への影響
埋立てを行うということは、それ自体干潟や浅海域の消失を意味している。干潟や浅海域は海洋においてバイオマスの集中している部位であり、海洋生態系における生物生産、水産資源の再生産において重要な役割を果たしている。 これを短期的な視野における経済的な利便性を目的に相当量消失させてしまうことは、海洋生態系や水産業に不可逆的な損失を与えることにつながっている。日本の場合、干潟の8~9割は戦後高度経済成長期の工業用地確保などのために埋立てられて消失しており、日本近海の水産資源減少のひとつの原因として指摘されている。
また埋立て用の土砂を確保するためにサンドポンプで沖合いの海底堆積物を吸い上げて利用することがしばしば行われるが、これにより海底に大きな穴が開き、そこに低酸素水が溜まって青潮の元凶になることも知られている。
汚染
埋立地は、何等かの不要物を用いて造成される事が多い。例えば横浜の山下公園は関東大震災の瓦礫を処分する過程で造成された。その他、廃棄物、底質、ヘドロ及び浚渫土砂や家屋の瓦礫等が使用されている事が多く、時にこれらに含まれていた有害物質が溶出し、土壌汚染となる事例が発生している。 これは土壌が汚染されたというより、汚染された土壌で土地を造成していた事が、今になって明らかになったものである。
但し、有害物質を含む浸出水が地下水などの形で移動することにより、周辺の汚染されていない土壌を二次汚染したり、水質汚濁やそれに引き続く底質汚染を引き起こしているケースも発生している(海面埋立地では潮汐の干満により、地下水へ外力が加わりやすい)。
また、埋立地であること自体が原因ではないのだが、工場が多く立地していたため、操業時に漏洩した有害物質による土壌、地下水への汚染リスクが高い傾向がある。 大規模事例としては、東京都築地市場移転候補地である豊洲の東京ガス工場跡地で高濃度の有害物質が検出された、土壌・地下水汚染があげられるが、その他にも小規模汚染が各所で確認または懸念されており、跡地利用・取引上の制約となっている。これを解消し、不動産価値を回復させる土壌浄化ビジネスが1998年頃から拡大しており、各地で施工実績があがっている。
法規制
日本では、法令上、廃棄物が地下にある指定区域を販売する場合は、重要事項として説明しないと宅地建物取引業法の営業停止処分等を受ける。これは廃棄物処理法における、廃棄物が地下にある土地を指定区域として公開する法規制に基づく。しかし、全ての廃棄物で埋め立てられた土地を指定するには至っておらず、従って、土地を購入したり利用しようとする場合には事前に汚染リスク調査等の対策をしておかないと、予想以上のトラブルに巻き込まれるおそれがある。
脚注
関連項目
外部リンク
- 環境省 土壌汚染対策法について[1]
- 千葉県水産総合研究センター 貧酸素水塊速報など[2]
- asahi.comニュース 沖縄の泡瀬干潟埋め立て、県と市の事業差し止め判決[3]
- 東京地学協会 東京都臨海域における埋立地造成の歴史
- 建設省 宅地防災マニュアル パブリックコメント募集