国道220号
国道220号(こくどう220ごう)は、宮崎県宮崎市から日南市や鹿屋市を経由して鹿児島県霧島市に至る一般国道である。
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概要
宮崎市から日南海岸を経て大隅半島を横断し、桜島のある鹿児島湾に沿って霧島市とを結ぶ幹線道路。南九州の大動脈のひとつであり[1]、全線が国土交通大臣が管理する指定区間である。
宮崎市の中心市街地、橘通り3丁目交差点を起点に南下し、大淀川に架かる橘橋を通過すると宮崎南バイパスとなる。
宮崎市加江田からは青島バイパス、堀切峠バイパスと続き、日南海岸沿いに南下する道路は別名日南海岸ロードパークまたは日南フェニックスロードとも呼ばれる[2]。沿線には道の駅フェニックスやサンメッセ日南、鵜戸神宮などの観光地があり、日本有数のツーリングスポットとしても知られている[3]。1986年に日南フェニックスロードが日本の道100選に選定され、2003年には宮崎県の広域観光ルート「ひむか神話街道」として指定された。また、宮崎市内はワシントンヤシ(ワシントニアパーム)やフェニックスの並木が植栽されており、南国情緒のある優れた街路樹景観が評価されて、読売新聞社選定の「新・日本街路樹100景」(1994年)のひとつにも選定されている[4]。
日南市南郷町からは進路を西に変え都井岬をショートカットする峠越えルートで串間市中心部へ向かい[注釈 1]、志布志湾沿いから大隅半島のシラス台地を西へ横断して、鹿屋市を経由。同市古江町からは鹿児島湾(錦江湾)岸沿いに北上して、桜島口を経て霧島市を走る国道10号と合流する終点・国分敷根交差点に至る。
路線データ
一般国道の路線を指定する政令[5][注釈 2]に基づく起終点および経過地は次のとおり。政令上の終点は国分市となっているが、合併に伴い、2005年(平成17年)11月7日以降は霧島市となっている。
- 起点 : 宮崎市(橘通3丁目交差点=国道10号交点、国道269号・国道448号終点)
- 終点 : 国分市[注釈 3](国分敷根交差点=国道10号交点)
- 重要な経過地 : 日南市、宮崎県南那珂郡南郷町[注釈 4]、串間市(北方)、鹿児島県曽於郡大崎町、鹿屋市、垂水市
- 総延長 : 188.2 km(宮崎県 89.2 km、鹿児島県 99.0 km)[6][注釈 5]
- 重用延長 : なし km[6][注釈 5]
- 未供用延長 : なし[6][注釈 5]
- 実延長 : 188.2 km(宮崎県 89.2 km、鹿児島県 99.0 km)[6][注釈 5]
- 指定区間[7]
- 宮崎市橘通東三丁目125番 - 霧島市国分敷根字松崎143番1(全線)
歴史
1953年(昭和28年)に道路法(昭和27年法律第180号)に基づく二級国道として初回指定された路線のひとつである。『鹿屋市史 上巻(改訂版)』に掲載された地図によると、少なくとも中世までには現在の国道220号とほぼ同地点を経由する道路が開設されていたことがうかがえる。
江戸時代、飫肥藩が現在の日南市から宮崎市方面へ向かう道路として、現在の国道220号に相当する「鵜戸街道」よりも山越えながらも直線的に結ばれていた「飫肥街道」(現在の宮崎県道27号宮崎北郷線など)を主に使用していた。これは鵜戸街道が「七浦七峠」と呼ばれるほどの難所であったことが関係している。鹿屋 - 串良間は「串良街道」として知られており、松並木が植え付けられていた。
年表
- 1886年-1892年
- 鹿屋 - 垂水間の県道の工事を開始。1890年に鹿屋 - 志布志間が開通し、1892年に全通した。当時は加治木-垂水間(志布志・鹿屋経由)の県道の一部区間(その他の区間は現在の国道10号・主要地方道志布志福山線に相当)。
- 1935年(昭和10年)
- 1939年(昭和14年)
- 鹿屋 - 古江間の舗装工事を開始(翌1940年3月に完成)。
- 1953年(昭和28年)5月18日
- 1960年(昭和35年)6月20日
- 1965年(昭和40年)4月1日
- 道路法改正により一級・二級区分が廃止されて一般国道220号として指定施行[10]。
- 1966年
- 管理を建設省(当時)に移管する(全線が指定区間となる)。
- 1978年(昭和53年)度
- 改良舗装率が100パーセントとなる。
- 1979年(昭和54年)9月12日
- 宮崎南バイパスが全線開通。旧道は県道367号中村木崎線となる。
- 1992年(平成4年)3月25日
- 鹿屋バイパスが全線開通。旧道は国道269号や鹿児島県道68号鹿屋吾平佐多線、鹿児島県道550号鹿屋環状線などとなる。
- 2005年(平成17年)
- 青島バイパスが全線開通。旧道は2006年3月31日に宮崎県道377号内海加江田線となる[11]。
- 2016年(平成28年)
路線状況
宮崎南バイパス区間は、清武町方面(国道269号)や宮崎空港方面(国道220号バイパス)からの通行車が合流し交通が集中することから、宮崎県内で最も交通量の多い区間のひとつとなっており、慢性的な渋滞が発生している。この対策として2008年7月末に、国道10号へ接続する国道269号のバイパス道路(加納バイパス)が完成した。また、宮崎IC(宮崎自動車道)から宮崎県総合運動公園までは、信号機がほとんど設置されておらず、道路の走りやすさマップでは最高ランクの「S」と認定されている[14]。
宮崎市 - 鹿屋市間を同じく結ぶ国道269号と平行するが、内陸の都城市を経由する国道269号に対し、日南海岸沿いを走る本路線のほうが、距離、所要時間ともに長い[15][16]。日南海岸沿いの区間は、異常気象時に度々交通規制がなされる。
鹿屋市内は鹿屋バイパスによって中心市街地を避ける形で通過し、バイパスの一部区間には「ばら通り220」の別名がある。沿線にはロードサイド店舗が多数立地し、大隅半島で最も交通量の多い区間となったことから。
桜島口に接する鹿児島湾岸区間は、垂水市牛根境に異常気象時規制区間がある。同じく、鹿児島湾に面する垂水市牛根にある道の駅たるみずは、「全長60メートルの足湯」がある観光新名所で知られる。
高規格幹線道路
- E78 日南・志布志道路 : 日南市 - 志布志市間。2016年に東九州自動車道に並行する一般国道自動車専用道路として事業化。供用時期は未定。
別名
- 日南フェニックスロード(にちなんフェニックスロード)
- 宮崎県宮崎市街から青島付近の堀切峠と日南市の国道220号と国道448号、宮崎県道36号を経て、宮崎県最南端の串間市の都井岬に至る全長約85 kmある海岸沿い道路の愛称[17][18]。都井岬付近を除いた宮崎市堀切峠 - 日南市南郷町目井津間(約40 km)は国道220号に指定される区間であり[19]、1986年(昭和61年)8月10日に、旧建設省と「道の日」実行委員会により制定された「日本の道100選」に選定されている[20]。日南海岸沿いに走っており、青島や堀切峠、鵜戸神宮、油津といった南九州の代表的な観光名所が道沿いに集まっており、日南海岸国定公園のシンボルロードでもある[17][18]。沿道には亜熱帯植物が多く植えられ、愛称名のもとにもなっているフェニックスやビロウのほか、ワシントンヤシ(ワシントニアパーム)、リュウゼツラン、ポインセチア、コバノセンナなどが植生しており、黒潮で浸食された奇岩が多く、日本国の天然記念物に指定された波状岩がある海岸風景とあいまって、南国的な情緒が特徴的である[18][21]。3000本のソテツが自生する最南端の都井岬では、野生の馬である御崎馬が生息し、日南フェニックスロードまで出てくることもある[18]。かつて、宮崎市内では新婚旅行で馬に花嫁を乗せて日南海岸を通って鵜戸参りにゆく風習があったといわれ[17]、日本全国からも多くの新婚カップルが新婚旅行で訪れる地で盛況を見せたことがあるところから、ハネムーン街道ともよばれている[19]。
- 鵜戸街道(うどかいどう)
バイパス
- 宮崎南バイパス : 宮崎市。1979年に全通、暫定4車線。
- 青島バイパス : 宮崎市。2005年に全通、暫定2車線。堀切峠トンネルの内容も含む。
- 鹿屋バイパス : 鹿屋市(起点は肝付町)。1992年に全通、一部区間は4車線。
- 古江バイパス : 鹿屋市 - 垂水市間。2008年に一部区間が開通。2車線。
重複区間
- 国道269号(起点 - 源藤交差点)
- 国道448号(起点 - 日南市・南郷駅付近、串間市・串間駅付近 - 大崎町大崎上町交差点)
事前通行規制区間
4の事前通行規制区間が設定されている。
- 宮崎県宮崎市折生迫 - 宮崎市内海(延長2.9km)
- 旧道(堀切峠・道の駅フェニックス区間)のみ。連続雨量が170mmに達した場合通行止。
- 宮崎市小内海 - 日南市富土(延長4.5km)、日南市宮浦 - 日南市風田(延長11.2km)
- 連続雨量が170mmに達した場合通行止。山岳ルートの主要地方道日南高岡線(県道28号)で迂回可能。
- 鹿児島県垂水市牛根境 - 垂水市牛根境(延長3.8km)
- 連続雨量が200mmに達した場合通行止。
道路施設
道の駅
地理
日南海岸国定公園にも指定された日南海岸沿いの「日南海岸ロードパーク」(日南フェニックスロード)区間では、変化に富んだ海岸線に沿ってヤシの並木や亜熱帯性の植物が多く、南国ムードを感じながら独特の海岸美を眺められるドライブルートでも知られる[22]。沿線に観光名所も多く、美しい海岸線で知られる堀切峠、隆起海床と奇形波蝕痕で「鬼の洗濯板」の異名で知られる奇勝の青島や、日向灘の断崖絶壁の海食洞の中に本殿が鎮座する鵜戸神宮がある[17][22]。国道220号が走る標高62 mの堀切峠は、国土地理院の地形図に記載のある峠のなかでは日本一低い場所にあることでも知られている[17]。一方、西の牛根大橋の区間では、わずかながらも桜島(鹿児島市)を通過する。
通過する自治体
交差する道路
- 国道10号(宮崎市・橘通3丁目交差点)
- 国道269号(宮崎市・源藤交差点)
- 宮崎自動車道・一ツ葉有料道路(宮崎市・宮崎インターチェンジ)
- 国道222号(日南市春日町)
- 国道448号(日南市南郷町)
- 国道448号(串間市・串間駅前交差点)
- 国道448号(鹿児島県曽於郡大崎町)
- 国道269号(鹿屋市・札元269交差点)
- 国道224号(垂水市海潟)
- 国道10号(霧島市・検校橋・国分敷根交差点)
脚注
注釈
出典
- ↑ 『鹿屋市史 下巻』678頁。
- ↑ 須藤英一 2013, p. 176.
- ↑ 『ツーリングマップルR 九州・沖縄』(昭文社、2007年)には「九州ツーリングのハイライト」と記載されている。
- ↑ 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』 日本実業出版社、2001-11-10、初版。ISBN 4-534-03315-X。
- ↑ “一般国道の路線を指定する政令(昭和40年3月29日政令第58号)”. 法令データ提供システム. 総務省行政管理局. . 2013閲覧.
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 “表26 一般国道の路線別、都道府県別道路現況 (PDF)”. 道路統計年報2016. 国土交通省道路局. p. 12. . 2017閲覧.
- ↑ “一般国道の指定区間を指定する政令(昭和33年6月2日政令第164号)”. 法令データ提供システム. 総務省行政管理局. . 2013閲覧.
- ↑ ウィキソースには、二級国道の路線を指定する政令(昭和28年5月18日政令第96号)の原文があります。
- ↑ ウィキソースには、二級国道の路線を指定する政令(昭和35年6月20日政令第167号)の原文があります。
- ↑ 一般国道の路線を指定する政令(昭和40年3月29日政令第58号)
- ↑ “県道の路線の認定(平成18年3月31日宮崎県告示第208号) (PDF)”, 宮崎県公報 号外第25号: 21, (2006年3月31日)
- ↑ “平成28年度新規事業候補箇所説明資料 一般国道220号 日南・志布志道路 (PDF)”. 国土交通省九州地方整備局 (2016年3月8日). . 2016閲覧.
- ↑ 東九州自動車道(北郷〜日南間)のインターチェンジ・橋梁の名称が決定 - 国土交通省 九州地方整備局 宮崎河川国道事務所 記者発表資料 2016年9月2日付
- ↑ “「走りやすさマップ」16分割詳細図”. 道路の走りやすさマップ. 国土交通省九州地方整備局. . 2008閲覧.
- ↑ “一般国道220号”. 道路時刻表. 国土交通省九州地方整備局. . 2008閲覧.
- ↑ “一般国道269号”. 道路時刻表. 国土交通省九州地方整備局. . 2008閲覧.
- ↑ 17.0 17.1 17.2 17.3 17.4 17.5 17.6 佐々木・石野・伊藤 2015, pp. 126–127.
- ↑ 18.0 18.1 18.2 18.3 ロム・インターナショナル(編) 2005, pp. 27-28.
- ↑ 19.0 19.1 「日本の道100選」研究会 2002, p. 213.
- ↑ 「日本の道100選」研究会 2002, p. 11.
- ↑ 「日本の道100選」研究会 2002, pp. 212-213.
- ↑ 22.0 22.1 須藤英一 2013, pp. 176-177.
参考文献
- 鹿屋市史編さん委員会・編 『鹿屋市史 上巻(改訂版)』 鹿屋市、1995年3月、293-297頁。
- 鹿屋市史編さん委員会・編 『鹿屋市史 下巻(改訂版)』 鹿屋市、1995年3月、677-680頁。
- 『絶景ドライブ100選[新装版]』 松井謙介編、学研パブリッシング〈GAKKEN MOOK〉、2015-09-30。ISBN 978-4-05-610907-8。
- 須藤英一 『新・日本百名道』 大泉書店、2013年。ISBN 978-4-278-04113-2。
- 「日本の道100選」研究会 『日本の道100選〈新版〉』 国土交通省道路局(監修)、ぎょうせい、2002-06-20、212-213。ISBN 4-324-06810-0。
- ロム・インターナショナル(編) 『道路地図 びっくり!博学知識』 河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2005-02-01、27-28。ISBN 4-309-49566-4。