名家 (諸子百家)
名家(めいか)は、諸子百家の1つである。中国の戦国時代を中心として、一種の論理学を説いた。
概要
この学派の代表的な思想家として、公孫龍や恵施が挙げられる。漢書芸文志によれば、名家は七家三十六篇あった。そこには鄧析(とうせき)、尹文子(いんぶんし)、公孫龍子、成公生、恵子(恵施)、黄公、毛公の名が見える。書物としてはこのうち『公孫龍子』だけが現存する。これは、今に残されたほとんど唯一のまとまった著作であるが、十四篇あったうち、現在手にすることのできるテキストは六篇しかない。残っている六篇は[跡府篇][指物論][堅白論][白馬論][通変論][名実論]である。
公孫龍は、人間には五感を経由しない超越的認識能力が存在しない以上、自己が獲得した知覚がいかなる位相に属するかを精密に弁別し、位相を異にする認識の混同を避けていく以外に、残された道はないと訴える。鄧析は疑書。『恵施』は失われたが、その論理は『荘子・天下篇』にわずかに見ることができる。その末流は往々にして詭弁に陥り、とくに公孫龍が唱えた「白馬非馬」(白馬は馬に非ず-白馬は『白馬』であって『馬』ではない)は後世、詭弁の代名詞にもなった。また、天下編には恵施が唱えた十箇の命題が載っている。その代表的なものとして「至大無外」(本当に大きな物には外がないの意)「至小無内」(本当に小さな物には内がないの意)という考え方がある。
名家の論理の中に「飛ぶ鳥の影は動かない」というものがある。これはゼノンのパラドックスに相当するものと考えられる。また、詭弁とみなされる論理の中にも、ものの存在とその本質を分離するという意味でイデア論に発展する可能性があるものもあった。しかしそれらは、ギリシアのように体系的な哲学として発展することはなく、弁論の訓練として使われるだけに終わった。
参考文献
関連項目
外部リンク
- “名家 - 中國哲學書電子化計劃” (中国語). . 2011閲覧.