博物誌
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『博物誌』(はくぶつし、ラテン語: Naturalis Historia)は、古代ローマの大プリニウスが著した書。全37巻。地理学、天文学、動植物や鉱物などあらゆる知識に関して記述している。数多くの先行書を参照しており、必ずしも本人が見聞、検証した事柄だけではない。怪獣、巨人、狼人間などの非科学的な内容も多く含まれ、学問的な体系を完全に成しているわけではない。
古くから知られていたが、特にルネサンス期の15世紀に活版印刷で刊行されて以来、ヨーロッパの知識人たちに愛読され、引用されてきた。科学史・技術史上の貴重な記述を含むほか、芸術作品についての記述は古代ローマ芸術についての資料として美術史上も珍重された。また、幻想文学にも影響を与えた。
Contents
主な内容
- 第1巻 序文
- 第2巻 天文
- 第3 - 6巻 地理
- 第7巻 人間
- 第8 - 10巻 動物
- 第11巻 昆虫
- 第12 - 19巻 植物
- 第20 - 27巻 薬草
- 第28 - 32巻 動物性薬品
- 第33巻 鉱物
- 第34巻 彫刻
- 第35巻 絵画
- 第36巻 建築
- 第37巻 宝石
『博物誌』に記された怪物
プリニウスが記した『博物誌』には、実在する生物に混ざって、ペガサス、ユニコーン、スフィンクス、マンティコア、サラマンダーといった有名なものから、コロコッタ、アンフィスバエナ、カトブレパスなど、あまり知られていないものまで、多数の怪物が記されている。
- アピス(Apis)
- 右腹に三日月型の白斑がある雄牛。エジプトの神牛。(第8巻第71(46)章第184 - 186節)
- アンフィスバエナ(Amphisbaena)
- 双頭の毒蛇。(第8巻第35(23)章第85節)
- エアレー(Eale)
- カバぐらいの大きさで、ゾウの尾をもち、毛色は黒あるいは黄褐色で、イノシシの顎をもち、どの角度にも動かすことの出来る2本の長い角をもつ動物。(第8巻第30(21)章第73節)
- カトブレパス(Catoblepas)
- 頭をいつも地面に垂れ下げていて、その目を見た者は誰でも即座に絶命する。(第8巻第32(21)章第77節)
- コロコッタ(Crocota, Corocotta)
- ハイエナと雌ライオンとの交配によって生まれる怪物。人間や牛の声を真似る。(第8巻第30(21)章第72節、第8巻第45(30)章第107節)
- サラマンダー(Salamandra)
- トカゲのような形をした、全身を斑点に覆われている動物。(第10巻第86(66)章第188節、第11巻第116(53)章第280 – 281節、第29巻第23(4)章第74 - 76節)
- スフィンクス(Sphinx)
- 毛が褐色で胸に一対の乳房がある獣。(第8巻第30(21)章第72節)
- ドラゴン(Draco)
- インドに棲むドラゴンは象と戦う際に、体を巻きつけ、動けないようにする。(第8巻第11(11)章第32節)
- トリトン(Triton)
- 半人半魚の姿をした海神。(第9巻第4(5)章第9節)
- ナウプリウス(Nauplius)
- 船の形をした貝。(第9巻第49(30)章第94節)
- ネレイス(Nereis)
- 半人半魚の姿をした海の精霊。
- バシリスク(Basiliscus)
- キュレナイカ(リビア東半)に生息する猛毒のヘビの一種。その目で見られた者は即死、もしくは石化するといわれる。(第8巻第33(21)章第78 - 79節)
- フェニックス(Phoenix)
- アラビアに生息し、大きさは鷲ぐらいで、頸まわりは金色、尾は青く、薔薇色の毛が点々と混ざり、体は紫。(第10巻第2(2)章第3 - 5節)
- ペガサス(Pegasus)
- エチオピアに生息する翼の生えた角を持つ馬。(第8巻第30(21)章第72節、第10巻第70(49)章第136節)
- マンティコア(Mantichora)
- エチオピアに生息し、顔は人間、体は獅子、尻尾はサソリのようで、人間の声を真似るという。(第8巻第30(21)章第75節、第8巻第45(30)章第107節)
- ユニコーン(Monoceros)
- インドに生息し、馬の体、鹿の頭、象の肢、猪の尾を持ち、額の中央に黒く、長い一本の角が生えている獰猛な獣。(第8巻第31(21)章第76節)
- レウクロコタ(Leucrocota)
- ハイエナの異種。ロバほどの大きさで、鹿の肢、獅子の首、尾、胸、穴熊の頭、割れた蹄、耳まで裂けた口を持ち、歯のかわりに一本の連続した骨がある。人間の声を真似る。(第8巻第30(21)章第72節)
訳書
- プリニウス『プリニウスの博物誌』〈I・II・III〉