助数詞

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助数詞(じょすうし)は、を表す語の後ろに付けてどのような事物の数量であるかを表す語要素である。数詞を作る接尾辞の一群。類別詞の一種である。

日本語のほか、中国語韓国語など東アジア東南アジアの多くの言語、またアメリカ大陸先住民の言語などにある。

日本語の助数詞

日本語の助数詞はバラエティに富んでおり、一説には約500種類もの数が存在するが、助数詞間で使用頻度に差が大きく、「個」、「匹」(動物)、「本」(細長いもの)、「枚」(平たいもの、厚みのないもの)など高頻度で多くの語に用いられる助数詞、「巻」「門」「艘」のような、相当程度使うが対象が限定的な助数詞、「口」「闋」「合」のような、低頻度で日常的にはほぼ現れない助数詞が連続的に存在している。一つの語に対して二,三種の助数詞が可能な場合もあるが、一方で特に助数詞が決まっていない語もあり、雑然とした状態にある。

数詞との組み合わせと語形変化

助数詞には漢語(音読み)のものも和語(訓読み)のものもあるが、原則として数詞もそれに合わせる。つまり、漢語の助数詞の前では漢語の数詞である「いち」「に」「さん」〜を使い、和語の助数詞の前では和語の数詞である「ひと」「ふた」「み」〜を使う。しかし、例外もあり、たとえば鳥を数える「羽(わ)」は和語だが、常に漢語の数詞と組み合わせる。逆に「晩(ばん)・鉢(はち)・幕(まく)・役(やく)・椀(わん)」などは漢語だが和語の数詞と組み合わせる。「1組」は通常「ひとくみ」だが、「3年1組」というときは助数詞ではなく序数詞(一番目の組という意味なので)「いちくみ」になる。

漢語の場合、原則として「4」は「よん」(「よ」もあるが少数)、「7」は「なな」と和語を用いる。また、「9」は漢音の「きゅう」になり、呉音の「く」はごく一部の助数詞との組み合わせでのみ出現する。

現代語では多くの場合和語の数詞が使えるのは1からせいぜい4までで、それ以上は漢語の助数詞を使うか、または漢語の数詞を和語の助数詞に組み合わせる。

助数詞が外来語の場合は漢語の数詞を使うことが多い。原語の数詞を使うこともあるが、この場合も少ない数でしか使えない。「クラス・シーズン」など、和語数詞と組み合わせることのできる助数詞も少数ある。

例:

  • 1枚(いちまい)・2枚(にまい)・3枚(さんまい)
  • 1皿(ひとさら)・2皿(ふたさら)・3皿(みさら)。6皿(ろくさら)は「むさら」とは言わない。
  • 1セット(いちセット/ワンセット)・2セット(にセット/ツーセット)・3セット(さんセット/スリーセット)

漢語においては音便化や連濁も多い(例: 1匹=いっぴき、2匹=にひき、3匹=さんびき)。おおまかな規則としては、

  • 助数詞が無声子音(か行・さ行・た行・は行)で始まるときは、「1・6・8・10・100」が促音便を起こす(「8」は促音便を起こさないこともある)。このとき、助数詞が「は行」で始まっている場合は「ぱ行」に変化する。
  • 数詞が「ん」で終わる漢語の場合(「3・1,000・10,000・半」)、少数の助数詞が連濁を起こす。「は行」で始まっている助数詞は、連濁を起こさない場合「ぱ行」になる。

と言える。「3回」(さんかい)と「3階」(さんがい・さんかい)、「3杯」(さんばい)と「3敗」(さんぱい)、「4本」(よんほん)と「4発」(よんぱつ・よんはつ)の例のように、規則性を捉えることが難しく、日本語学習者泣かせの点のひとつである。

数が1または2のときだけ、数のかわりに専用の語を用いることがある(長男・次男、初段、初校・再校など)。

とくに不規則なものを以下にあげる。

  • つ: 1から9までのものに対してつける。10は「とお」で「つ」をつけない。11以上は助数詞「個」などを使う。
  • 日: 1日は、日付の場合は「ついたち」と和語で言うことができるが、日数の場合は漢語を使う。2日から10日までと20日は「か」で終わる専用の和語を用いる。それ以外は漢語のみを使うが、14日は和語の助数詞を使って「じゅうよっか」と言うことがあり、しばしば「正しい日本語かどうか」の議論の種になる。
  • 月: 月名は漢語「がつ」のみを使う。4月・7月・9月はそれぞれ「しがつ・しちがつ・くがつ」になる。月数は和語「つき」か、漢語「箇月」(かげつ)を使うが、慣用表現を除くと前者は四月までしか使えない。
  • 年: 漢語を使うが、4年・7年は「よねん・しちねん」(「よんねん・ななねん」ではない)。9年は「くねん・きゅうねん」の両方がある。
  • 年齢: 漢語の「歳」を使うほか、1から10までは「つ」と同様に言うことができる。また20を「はたち」、30を「みそじ」と言うことがある。
  • 人: 現代語では「ひとり・ふたり」のみを和語でいい、漢語は使わない。それ以外は漢語の「にん」を使う。「4人・7人」は「よにん・しちにん」になる(「よんにん・ななにん」にはならない)。9人は「くにん・きゅうにん」の両方がある。
  • 時(じ)・時間(じかん): 「4時・7時・9時」はそれぞれ「よじ・しちじ・くじ」になる。
  • 羽(わ): 「わ」は和語であるが、漢語の数詞と組み合わせる。3羽・1,000羽は「さんば・せんば」になる。

文法

文法的には通常、数を表す語要素から助数詞までが合わせて統語上1つのとみなされ、名詞または副詞と同様にあつかわれる。

メートルなどの計量単位を表す語も、文法的には助数詞と同じ働きをする。そのため、助数詞に含めるか、「助数詞・単位」のように一括して論ずることが多い。

「三兄弟」「二十四の瞳」(≠「24の瞳」)、「三百六十五歩のマーチ」(≠「365歩のマーチ」)のように、ではなく「漢数字」を用いた名詞や「作品名」(漫画、小説などのタイトル)を修飾することもあり、作品名で装飾されている「漢数字」を「アラビア数字」に直すのは正確でなく、「漢数字」と「アラビア数字」の取り違えによる表記ゆれ誤植の原因になりうる(例として、「3月のライオン」(漫画・アニメ)と「三月のライオン」(映画)とでは、全く別の作品になる)。

名詞的用法

数詞+助数詞+の+名詞(「3人の男」)または名詞+数詞+助数詞(「男3人」)の形であとに格助詞をともなう。あるいは「3人の男だ」のように、助動詞を伴い述語となる。「3人が来る」のように、修飾する名詞がなくともよい。
「個」は、「3個師団」のようにある種の名詞に前置してかつ「の」なしで修飾できるが、これは中国語の「箇(个)」に由来する用法である。「3ヶ月・3ヶ所・3ヶ国」などの「ヶ」(箇)も成り立ちは同じであるが、現在の日本語では「箇」だけで助数詞であるという意識は失われていてヶ+○で一つの助数詞をなす。

副詞的用法(数量詞の遊離)

「3人いる」のように、格助詞をともわず修飾語となる。被修飾語は原則として動詞だが、「倍」など度合いを表す助数詞に限り、「3倍明るい」のように形容詞形容動詞を修飾できる。

名詞的用法と副詞的用法は修飾する対象が異なるために、同じ数量でも文意に差が出ることがある。たとえば「腐った3個のみかんを捨てた」は、腐っていたみかんは3個であることを含意するが、「腐ったみかんを3個捨てた」は、捨てた数が3個という意味であって、腐っていたみかんの数は3個以上のこともありうる。また、「3個のみかんをください」は構文としては正しくても不自然であり、「みかんを3個ください」のほうが自然である。これはたくさんあるみかんからいくつかを抜き出すという行為が暗黙に意識され、抜き出された数はみかんではなく行為の属性であるとみなされることによる。

助数詞の一覧

  • 駅(えき)(1)大都市の中で、ある場所にいくまでのおおよその距離を表す。大都市では鉄道網が発達しており、短い間隔で駅が設置されているため、ある駅から電車に乗りそこから何個先の駅で降りるかを言うほうがキロメートルを用いるよりも便利なことがある。そこで、口語ではときおり名詞の駅を助数詞として用いる。「1駅」「2駅」は「ひとえき」「ふたえき」も可。(2)駅の数に用いる。
  • 日(か)和語助数詞。地上から見て空に太陽が周期的に出没するという現象に依拠した伝統的な時間の単位「日(ひ)」を数えるのに用いる。漢語助数詞の「日(にち)」と不完全な相補分布をなす。「か」はほかの和語助数詞と異なり和語数詞の1~10と20、30の12個とくみ、語形が以下のように不規則である。

1日(ひとひ/ついたち)、2日(ふつか)、3日(みっか)、4日(よっか)、5日(いつか)、6日(むいか)、7日(なのか)、8日(ようか)、9日(ここのか)、10日(とおか)、20日(はつか)、30日(みそか/つごもり)

序数的に月の第1日をいう場合には「ついたち」を用い、基数的に単に時間を言う場合は、「日(にち)」を用いて「いちにち」という。「ひとひ」は「いちにち」と同義で、使用頻度は大きく劣るが、文体によっては用いなくもない。また行政そのほかの業界では、「ついたち」のかわりに「いっぴ(<いち+ひ)」という規範的ではない名称を用いる。30日は基数的用法、序数的用法ともに「さんじゅうにち」と言うのが普通である。みそか(基数的用法・序数的用法)、つごもり(月の最後の日という意味の序数的用法)という一般的でない語もあり、文体によっては用いなくもない。12月31日はよく「おおみそか」と呼ばれる。「はつか」は「みそじ」に対する「はたち」と同じく11以上の和語数詞が孤立的に用いられる例外で、「みそか」とは異なり頻繁に用いられる。上の12個以外にはすべて「にち」を用いる。1つの日を単独で言う場合で、かつその日が2~9日か20日なら、「6日(むいか)は休みだ」のように、「か」による名詞を用いるほうが「にち」による名詞を用いるより一般的である。「イベントが来月の18日、19日、20日に開催される」のように、「にち」で呼ぶ日と「か」で呼ぶ日が列挙され、先に「にち」で呼ぶ日が来る場合、「か」で呼ぶ日も「にち」に変えて「じゅうはちにち、じゅうくにち、にじゅうにち」のように助数詞をそろえることがよくある。また「にち」を使って相手にたずねられた場合に、その答えが「か」による日であっても、相手の言った「にち」に引きずられて「お前誕生日今月の何日(なんにち)だ?」「7日(しちにち)だよ」のように「にち」による名詞で答えることがある。また日の前に「月」や「年」が来て「~年~月~日」の形で言う場合、漢数詞のついた「年」と「月」に引きずられて「か」による日でも漢数詞+「にち」にすることがある。「人(たり)」の「いくたり」と同様に、「か」にも「いく」をつけた「いくか」という語がある。これはアルカイスムとして限定的に用いられる。一般的には「何日(なんにち)」といい、文語ではときおり「幾日(いくにち)」も用いる。

  • ヵ月(かげつ) (1)月単位で数えた期間に用いる。数詞+月の場合は、序数的用法として一年の一部分をさし、数詞+カ月の場合は期間をさすという使い分けがある。たとえば「三カ月はたらく」は可能だが、「三月はたらく」は不可で、「私は五月に生まれた」は可能だが「私は五カ月に生まれた」は不可。この使い分けは「年」にはなく、「三年はたらく」とも「私は平成三年に生まれた」ともいう。(2)0~2歳までの子どもの年齢を数えるのに用いる。生まれてまもない子どもは成長が急激なため、1年を単位とする「歳」で呼ぶとなると実用的には「1.3歳」のように少数が必要になる。そこで「歳」のかわりに「カ月」を用いる。2歳を超えた年齢でも、口語では「俺、18歳と10カ月だよ。あーもう19歳だよー」のように年齢の端数を「カ月」を使って表すこともときおり見られる。
  • ヵ所(かしょ)入口、郵便ポスト、寺院、バグなど、固定した位置におかれている多数の同種のものについて用い、そのもののある地点を数える。「日本は43カ所の県がある」のように面的な領域には用いない。また「コンサート3カ所(=コンサート3回)」のように時間的な位置をさして用いることもない。
  • 型(がた)「25型」のように、第なしで序数的に用いて、機械などの種類や規格を表す。基数的用法はない。和語数詞だが常に漢語数詞とくむ。
  • ヵ年(かねん)「15ヵ年にわたる研究をまとめた著書」のように、 かぎられた固定的表現で、人が何かを行うのにかかる年数に用いる。「年」と競合しており「ヵ年」が可能なところも「年」を用いるほうが一般的である。ただし「五ヵ年計画」などは、半固有名詞化しているため「年」と交換することはできない。
  • 株(かぶ)和語助数詞。(1)人の栽培する農作物、花卉、樹木に用いる。野生の植物に用いることもなくはない。「株」は語源的には植物の体の部分をさす名詞 株によるが、その意味の株に助数詞「株」を用いることもなくはない。(2)容器に隔離した状態で培養、維持している微生物に用いる。(3)株券の数に用いる。
  • 缶(カン)英語canに由来する。外来語の助数詞の一つ。(1)缶(に入ったもの)の数に用いる。「個」と競合する。「缶1缶」のように名詞の缶に助数詞「缶」をともなうのは不格好で、名詞を省略して「1缶」とだけ言うか、「缶1個」と「個」を用いるかする。「ジュース1缶」のように内容物の名詞と助数詞「缶」がくむのはごく自然。(2)ものの量に用いる。「~缶」=「缶~個の量」
  • 巻(かん)(1)複数の本が共通のタイトルを持ち、内容が分割されてわりふられている場合に、その複数の本を番号で呼ぶのが便利である。そのような番号に助数詞「巻」をつけて1巻、2巻、3巻……とする。この「~巻」は「~個めの本」という序数的な意味を持つ用法である。(第をつけた第1巻、第2巻、第3巻……もある。)「巻」がものの個数を表す基数的用法になる場合は、「~巻」の番号が付された同じ所属の本の中のどれかをまとめてさす。たとえば「このシリーズを6巻買う」は「第1巻、第2巻、第4巻、第8巻、第10巻、第11巻を買う」などの意味になる。本に用いる助数詞はほかに「冊」があるが、序数的用法では「冊」より「巻」が一般的であること、基数的用法のときに「冊」は単に本の数をさすが「巻」は所属の同じ本に限定されることの二点が異なる。(2) 「巻」は語源的には「巻いたもの」という意味であるが、現代の日本語で絨毯、トイレットペーパーなど巻いている物体に「巻」を用いるのは、きわどいものの不可。
  • 騎(き)騎兵、または騎兵の乗る馬、またはその両方を数えるのに用いる。一般的には馬を数える場合は「頭」か「匹」を取る。
  • 機(き)(1)飛行機に用いる。(2)戦闘用ロボットに用いる。フィクションで一般的。(3)シューティングゲームや、アクションゲームで、ステージに挑戦できる回数(残りライフ)に用いる。テレビゲームでよく遊ぶ人の中の一部にしか通じない俗語。残りライフが1つ回復することは「1機アップ(いっきゃっぷ)」と言う。
  • 掬(きく)両手の手のひらを上に向け、手の小指のがわを接触させ、手を小指がわに少し斜めにした状態で水などを取る行為の回数、またはその手に入っている水などの量を数える。使用頻度は非常に低い。
  • 級(きゅう)(1)等級、階級を数える。「彼は3級進んだ」のように基数的に用いる場合と、「2級の試験を受ける」のように、第なしで序数的に用いる場合がある。 (2)切り落とした敵兵の頭部を数えるのに用いる。古代中国で敵兵を倒したことの証明として、人の首を用いたことにちなむ。現代の日本では人の首を切って持ち運ぶという行為が例外的であるため、この用法ではほぼ用いられない。
  • 球(きゅう)(1)スポーツ用語。球に力を加えて高速で運動させる行為を数える。「投げる」「撃つ」「かわす」などの動詞とともによく用いる。物体としての球の数には「個」を取る。(2)「五球目で当たりを引いた」のように、球を使った抽選について用いることも可能だが、あまり一般的ではない。
  • 行(ぎょう)(1)文字が規則的に長く連なっているものを数えるのに用いる。(2)涙や轍など通過の跡が観念されるものに用いる。古典的あるいは衒学的な用法。「条」と競合する。
  • 曲(きょく) 曲の数に用いる。曲は語源的には「曲がる」という意味であるが、助数詞の「曲」は音楽の曲からできたものであるため、「この道を少しいくとカーブが3,4曲連続する」のように用いることはない。
  • 局(きょく)(1)「~局」とつく名詞で表されるものを数えるのに用いる。(2)囲碁将棋などの試合を数えるのに用いる。「番」と競合する。「トランプで一局ひまつぶしをする」のように、ボードゲームに全般的に使えるかどうかはあいまいなところである。テニスなどスポーツの試合に用いるのはきわどいものの不可である。
  • 区(く)ある広い領域を、より小さな面積の単位に分割したものを、区域、区間、地区などと呼ぶが、その区域、区間、地区に番号を付してあつかう場合に助数詞の「区」を用いる。
  • クール  日本のテレビ・ラジオ放送では、一年間を四つの期間に分け、期間ごとに番組を変更する体制を取っている。この四つの期間を業界用語で「クール」(フランス語coursに由来する)といい、これを助数詞としても用いる。
  • 件(けん) 文章で内容が示され単位化されたできごとに用いる。事故、通報、通知、契約、企画、訴訟など比較的限られた名詞に用いられるが、それを加味すると使用頻度は相当高い。手紙、留守番電話は通知の一種であり、その内容に焦点がある場合は「件」を取ることが可能だが、物質的な面に焦点があるときは不可で「通」による。中国語では衣服など一部は物体にも用いるが、日本語にはない。
  • 戸(こ)人の居住する家屋、またはそれに付属する畜舎、納屋、倉に用いる。左を除き、一般に人の居住しない建物(学校、庁舎、大型の店舗、駅、ホール、ドーム、発電所など)には用いない。病院や宿屋に使えるかどうかはあいまいなところである。「戸」は語源的にはドアの意味だが、ドアには用いない。
  • 個(こ、か)日本語の中でもっとも対象が広範囲である助数詞。一般に、助数詞はあいまいさがあるものの統一的な原則によって対象が決まっており、使用範囲を積極的に規定することができるが、「個」はそれと異なり「~である場合に用いる」という積極的な規定と「~でない場合に用いる」という消極的な規定を併用しなければ範囲を表すことができない。この点で「個」は助数詞の中で特異な位置を占める。「個」は1~9の場合にかぎって「つ」と競合する。また対象が広範囲ゆえに、ほかの助数詞と「個」に両属する名詞は多い。「ヵ所(かしょ)」「ヵ年(かねん)」「ヵ月(かげつ)」「ヵ国」(かこく)」「ヵ条(かじょう)」の5つは、所、年、月、国、条と「個」が結合していて、独立の助数詞になっている。この場合は「個」は「か」と読まれ、よく「ヵ」と書かれる。 (1)果物、石、卵、コップ、箱、袋など球体、立方体に比較的近い形状のものに用いる。近いとはいうものの範囲は相当に広い。(2)形状が不定である原料から人為的な加工によって形状が固定された物体を、その形状を指定するニュアンスがなく言う場合に用いる。氷、木、金属、パン、チーズ、ガラス、プラスチックなどが該当する。たとえば「パンを2,3個買ってくる」はどのようなパンにも使えるが、「パンを2,3本買ってくる」だとバゲットを買うものと受けとられる。(3)雲、腫瘍、模様など、形状が不定で連続的なものを区切って個数を付加して呼ぶ場合に用いる。(4)ヘッドホン、バネ(これは本も可)、端子、エンジンなど、複雑な形状を持っているためにほかの助数詞のほうに入れにくい人工物に用いる。(5)穴、隙間、溝、余白など、もののない空間の意味を持つ語に用いる。空は地球全体で1つとみなすので通常は助数詞とともに用いることはないが、複数の星について言うような場合、空間の一種とみなして個になる。(6)抽象概念を数えるときに用いる。(7)項目、単語、段階、章節など、何かを区切ったものという意味を持つがその具体的な内容はアプリオリに含まれていないようなものに用いる。(8)プログラム、銀河、遺伝子、素粒子など、普及が新しかったり人体のスケールから離れていたりするために助数詞があまりはっきりと決まっていない語も少数ある。そのような語はとりあえず個に含めることが多い。(9)該当する助数詞をよく知らないか、忘れたか、言い分ける意識の薄い場合に、まにあわせとして「個」を用いる(代用的用法)。何に「個」を代用するかは個人差が大きく、一般的な規則はない。外国人、無学者、幼児によく見られるが、日本語のネイティブである程度教養のある成人でも低頻度の助数詞まで広く把握しているわけではないため、代用的用法は存在する。どこまでが(周辺的な)正用の範囲とみなすかという規範上の問題もある。
  • 行(こう) 銀行を数えるのに用いる。「社」と競合する。銀行業界では「行」が普通だが、一般的には銀行を「行」で数えるとは限らず「社」も見られる。
  • 校(こう)学校に用いる。「個」と競合する。大学は複合語の成分になるとき、「学内」や「本学」のように「学」と略することがあるが、助数詞を用いるときは「30学」のように学を用いることはなく、「校」を用いる。日本では小中高校大学の入学試験のためのノウハウを提供する受験産業が盛んであるが、そのような受験産業の企業を俗に「塾」と言う。塾は学校に近い機能を持っているが、「校」では数えず、ごく小規模なものを「軒」、広範囲に展開しているものを「社」で数える。
  • 合(ごう)前近代の戦争について、個々の戦闘の回数に用いる。
  • 腰(こし)和語助数詞。腰にはいている(鞘におさめた)剣に用いる。ベルトなど腰に身に着けた状態のものに拡大的に用いることもなくはない。使用頻度は低い。
  • 歳(さい)年齢を数える。形式ばった書類以外で「歳」を手書きするときは「才」で代用してもよい。(「才月」のように助数詞でない歳を才で書くのは不可)(1)人の年齢に用いる。1~9歳の場合は「歳」のほか「つ」を用いて言うことができる。この「つ」は口語的で、幼児に年齢をたずねたり、幼いころを回想したりするときによく用いられる。また20歳は「はたち」、30歳は「みそじ」と言うことがよくある。これは「和語数詞+つ」が10以上の場合について用いられる例外であり、無論「にじっさい」「さんじっさい」を用いてもよい。「1~9つ」とは異なり、「はたち」と「みそじ」は一個の名詞という意識があり、「はたち」が「成年」、「みそじ」が「おじさん/おばさん」というニュアンスを持つことがある。「私が9歳か10歳のころ」「今19歳、20歳、21歳あたりの世代」のように、1~9歳、20歳、30歳と「数詞+さい」で読む数が同時に用いられるときは、「つ」「はたち」「みそじ」は用いず、「数詞+さい」に統一して言う。近年教養の低い人が「妹は俺の1個下」のように、年齢差を言うときに「個」を使う代用的用法が見られる。この年齢差の「個」は、誤用かどうかきわどいところで、規範的には「個」でなく「歳」である。(2)動物の年齢に用いる。家畜とペットは、飼い主がその成長を身近に見ることになるが、それは人の成長を見るのと心理的に近いところがある。そこで人に対して用いる「歳」を家畜とペットにも拡大して用いることがある。人は年齢をほぼ「歳」で言うが、家畜とペットについては「歳」は任意であり「年」でもよく、人で「1~9つ」「はたち」「みそじ」を用いる場合もすべて「数詞+さい」を用いる。野生動物は「歳」を用いないこともないが、「年」のほうが普通である。植物、無機物は擬人化しないかぎり「年」を用いる。
  • 作(さく) 人の作った器物、芸術品、文章に用いる。大量生産の工業製品には用いない。「個」「編」「首」「躯」などと競合する。使用頻度は高い部類である。「作」は作るという行為を暗示するはたらきがあり、「映画5作/5編の紹介」のような場合は差はないが、「彼はこの1作/1編に疲れきった」のような場合には多少差が出てくる。「作」は古典的な助数詞ではないため、古語による文章や衒学的な文章では「作」以外の助数詞が適する。
  • 匙(さじ)(1)水、小麦粉、調味料など、スプーンで移しかえる食材の量に用いる。料理で食材の量をはかるときにすべてミリリットルを用いてはわかりにくいため、二次的な単位として用いる。(2)「ジャムを1匙口に含む」のように、スプーンで食べ物をすくいとる行為を表す。こちらは(1)と異なり、ものの量よりもスプーンですくう動作を暗示するほうに重点がある。
  • 冊(さつ)本を数える。一部「部」「巻」と競合する。通常は本の個数をさすのに用いるが、序数的用法もある。すなわち辞典など複数の本が一くみになっている場合に、その一くみの中で特定の順位を持つ本をさす。その場合「巻」と競合し、「第~冊」とも言う。「冊」には一定程度の厚みがあることが条件に含まれている。たとえば標準的な紙100ぺージからなる本は1冊と呼べるが、その本と同じ内容を、面積が100倍の巨大な1枚の紙に書いて1ページの本にした場合は1冊と呼ぶことはできない。電子書籍については、電子書籍端末を「冊」で数えるのか、データを「冊」で数えるのか、厚みの条件はどうなるのかなど、適用の規則は決まっていない。
  • 皿(さら)和語助数詞。(1)皿に用いる。「枚」と競合する。小さい皿なら「個」も可。 (2)皿に乗せた食べ物の量に用いる。「肉をもう一皿注文した」 日本語では皿が料理を意味する換喩は一般的ではなく、「友人たちに一皿(=料理を一つ)ふるまう」のような言い方は可能だがやや自然さに欠ける。
  • 駟(し)四頭立ての馬車、または四頭立ての馬車に用いる一くみの馬に用いる。馬車が一般的でない現代ではほぼ用いられず、古代中国についての文章に限られる。
  • 字(じ)文字の数に用いる。中国語の影響で、「一字も言わない」のように単語に「字」を用いることもなくはない。
  • シーズン 英語seasonに由来する。(1)プロスポーツで、公式の対戦の開催される期間をさす。シーズンは名詞として用いられることが多いが、助数詞の用法もある。(2)一回の企画で制作されるテレビドラマの各話をまとめて呼ぶときに用いる。この用法では「シリーズ」と競合する。この「シーズン」はテレビ業界が消費者に向けて宣伝の中で用いる(例「〇〇、第5シーズン10月より放送開始」)のが一般的で、日本人が全体的に用いるものではない。また「ポイント」や「ルート」などとはちがって、アメリカ臭さがある。
  • 社(しゃ)(1)企業に用いる。銀行は「行」もある。(2)神社に用いる。(1)のほうがよく用いられる。
  • 首(しゅ)短い詩に用いる。漢詩と和歌に用いることが多いが、それ以外の詩でも可。「首」は語源的には頭の意味であるが、助数詞としての「首」と「頭」はまったく競合していない。
  • 周(しゅう)始端と終端がつながっている閉じた経路の上をくりかえし通過する回数に用いる。語源的には「週」と共通するが現在の用法では「周」と「週」はまったく異なる。
  • 週(しゅう)7日を1つとして時間の単位としたもの。
  • 勝(しょう) スポーツ、ゲームなどで、対戦に勝った数に用いる。「10戦して7勝」「1勝2敗」のように「戦」「敗」とともに用いることが多い。「第5勝」のように第をつけて用いることはない。「~勝する」と「する」をつけて用いるが、「3勝連続する」のように副詞的に用いることはできない。
  • 錠(じょう)人が指でつまめる程度の固形かつ小型の薬剤を数えるのに用いる。「個」と競合する。「個」は汎用的な助数詞で量や形状を限定しにくい欠点を持つため、文によっては「個」と「錠」が互換的でないこともある。
  • 小節(しょうせつ)音楽用語の「小節」を助数詞化したもので、ある曲の一部分やその長さをいうときに用いられる。
  • 色(しょく)(1)色の種類に用いる。(2)やや変則的だが、「ハンカチを3色買う」「クレヨンが2,3色ちびてきた」のように、色の差が重要なものについて、色ちがいの同一のものの個数を数えるときにも用いる。
  • 世(せい)(1)同じ王朝の同名の王を区別するために、数を付して「人名+数詞+世」の形で用いる。この「世」は序数的用法として人名と結合した形でのみ用い、副詞的用法はない。中国とその周辺諸国では、歴史的に亡くなった王を諡号そのほか何らかの異名で呼ぶため、また近親の者に同じ名前をつけるのが一般的でなかったため、「人名+数詞+世」は中国圏以外の王についてよく見られる。(2)移民の家系の人の世代を数えるのに用いる。外国に移住した人を1世、その移住した人が移住先で産んだ子ども、または移住した時点で幼児だった子どもを2世と言う。2世の人の子どもを3世と言い、以下同様に4世,5世,6世と呼ぶ。この用法では「私はアシュケナージの3世です」のように、人名と合わせず数詞+世だけで用いる。(3)ある有力な政治家の子、おい/めい、孫が有力な政治家になった場合に、そのあとのほうの世代の政治家をさして、あだ名として「姓+2世(3世)」で呼ぶことがある。この用法は口語的であまり用いない。また4世以下はまれで、おおよそ2世か3世に限られる。地位を世襲した議員という意味の「2世(3世)議員」という語はよく見られる。
  • 席(せき)(1)人が座るための細かく区切った面的な空間に用いる。(2)(1)におかれるしきもの、イスに用いる。「1席の絨毯を壁に飾る」のように、座らないものに用いるのは不可。(3)「彼は委員会の第4席を占める」のように、序数的に用いて少数の人間の参加する会議での参加者の序列を表す。あまり用いられない。第のあるほうが自然で、第のない言い方も可能だが省略的な感じがある。この点は「級」とは異なる。
  • セット 英語のsetに由来する。度量衡ではない外来語の助数詞はごく少数だが存在し、セットはその一つである。漢数詞とくむが、「ひとセット」「ふたセット」は用いなくもない。 (1)工具、ケーキなど、様々な種類のものを一つにまとめたものに用いる。「組」と近い意味を持つが、使用範囲が狭い。「セット」は生物に用いることができず、車輪、電池のように規格や性質が同一のものをまとめてあつかうときにも用いることができず、ズボンとシャツ、クラベㇲなど二個からなるものにも用いることができない。(2)印刷機に入れる紙など、日本語で動詞「セットする」の目的語となるものの量を数える。(3)トレーニングや格闘技で、運動と休憩を合わせた一区切りの時間を数える。
  • 膳(ぜん)食事の際に各人にふりわけた食器を数えるのに用いる。食事から離れて食器を単なる物体として見る場合は、一般的な助数詞(個(碗、盆)、本(箸、匙、ナイフ、フォーク、串)、枚(皿、葉)、杯(コップ、グラス)、把(杓))をそれぞれ用いる。ただし膳が使える場合でも一般的な助数詞のほうが用いられることもよくあり、あいまいなところである。箸は2つの棒を同時に用いるため、箸1膳というとかならず2本1くみをさす。箸1本というと1くみになっている2本をさすのかそれとも1くみの片方をさすのか決まっていない。
  • 艘(そう) 船を数える。「隻」と競合する。大きな船が「隻」、小さな船が「艘」であると説く本もあるが、その境界ははっきりしておらず、かなり大きいものでも「艘」が使える。フィクションに出てくる飛行船(船の形をした飛行する乗り物)は「艘」「隻」が可能だが、現実の航空機には「機」を用いる。船の模型は、工業用の大型のものなら「艘」「隻」を取るが、趣味、鑑賞用の小型のものは「個」を用いる。船の絵や船の形のマークは「個」である。
  • 足(そく) (1)くつ、くつした、義足など、足に身につけるものに用いる。蹄鉄、ギプス、レッグガードなどにも使えるが、足との連想上の結びつきが弱いため、ほかの助数詞でもよい。「着」と一部競合する。 (2)動物の足の数を数える。「羊4頭」を「羊16足」のようにして個体の数を足で代用することはできない。
  • 駄(だ)牛、馬、ロバ、ラクダなどに荷物を乗せる行為、またはその荷物の量(~頭分の荷物=~駄)に用いる。現代の日本ではほぼ用いられない。
  • 体(たい)(1)彫像、人形など人を模した物体に用いる。(2)幽霊、怪獣、ロボットなど、人間や動物に近い姿であるがこれと異なるものに用いる。「人」「匹」との使い分けはあいまいであり、「体」のかわりに「人」「匹」が用いられることも多い。(3)死体を数える。ただし「死体(したい)」は形態素に助数詞「体」と同じ「-体」を含んでいて「5体の死体」だと音に重複の感じがあるため、修辞的な理由で「5人/5名の死体」、「なきがら5体」のように別の言い方にする。
  • 隊(たい)(1)軍の一部分である部隊を数えるのに用いる。規模がよほど大きくない範囲で様々な部隊に用いることができる。(2)楽隊、バンド、スポーツチーム、登山者のグループなどに用いる。(1)は競合がなく、よく「隊」が用いられるが、(2)は「個/つ」「グループ」「チーム」など別の助数詞につづいて「隊」も可という程度。
  • 台(だい)(1) テレビ、冷蔵庫、洗濯機、旋盤、ベルトコンベアーなど、通常は持ち運んで使用しない(大型の)機器に用いる。電話、テレビ、パソコンは、1990年代には回線の都合ですえおきであったため台を用いたが、のちに持ち運べる小型のものが一般化した。これらに限っては旧時の延長で「台」を用いるか、持ち運ぶ以上「台」から外れて「個」なのか、あいまいになってきている。(2)車に用いる。「両」と競合する。(3) 大型のものを乗せる台を数えるのに用いる。使用頻度は低い。
  • 題目(だいめ)石川県と富山県で、歌の「番」を、かわりに「題目」という。序数的用法のみがある。
  • 人(たり)人に用いる。和語助数詞。すべて和語数詞とくみ、ひとり、ふたり、みたり、よたり、いつたり……とする。「人(にん)」と競合している。1,2では「たり」を用いて「ひとり」「ふたり」、3以上で「にん」を用いてさんにん、よにん、ごにん……とするのが標準的である。「みたり」は年配者では使われなくもないが、若い世代では忘れられている。これは英語のonce,twice,thriceの関係に類似している。不定数は「いく-」をつけて「いくたり」とする。「いくたり」は「何人(なんにん)」にかわるアルカイスムとして用いられる。ひとり、ふたり、みたり、いくたり以外の語はまず見られない。
  • 段(だん)(1)階段の、足を踏む面の数に用いる。(2)序数的用法で、棋士の名誉的な階級に用いる。この場合は第は取らない。
  • チーム 英語teamに由来し、チームを数えるのに用いる。「個」と競合する。「人」と同様の理由で、名詞のチームを助数詞の「チーム」とくませるのは避け、「チーム6チーム」は「6チーム」「チーム6個」のようにする。
  • 着(ちゃく)衣服を数える。くつしたの場合は「足」と競合する。靴は日本人の感覚では衣服に入らないので「ブーツ1着」のようにはできない。同様に、身体に接触するが衣服とはいいがたいものは「着」以外を用いる。たとえばメガネ、イヤリング、カツラなどは「個」、鎧は「具」か「領」、ターバンは「枚」のようにする。
  • 着(ちゃく) 序数的用法のみがある。「1着、2着、3着……」として、競走で規定の距離を走りきった人の順位を表す。この「着」は第をつけないほうが普通である。副詞的用法はない。「東京駅の正午以後1着の列車」のように競走ではない場合には使えない。衣服の助数詞の「着」とは用法が大きく異なる。
  • 通(つう)手紙、電話などで何かを知らせる行為やそれにともなう物体を数える。「件」と部分的に競合する。一回に多くの別個のことがらを伝える場合に通を使ってまとめて呼ぶことはできない。たとえば「3通のメッセージが来ている」「この前注文した品物が1通とどいている」はできるが「新聞紙を1通読む」は不可。
  • 粒(つぶ)和語助数詞。(1)塩、種子、小石、昆虫の卵など、人のひとさし指に安定して乗る程度の、球状に近いか人間の肉眼でほぼ点に見える固体に用いる。(2)固体でないが(1)に近いと見なされるものに用いる。この用法は(1)よりも適用される対象の境界がはっきりしない。「星が何粒か見えはじめた夕暮れ」
  • 滴(てき)容器の外にあるごく少量の液体に用いる。「汗が一滴目に入る」
  • 店(てん)(店舗(てんぽ))同じ業態の店舗、同じ企業の店舗、同じ地区にある店舗を数えるのに用いる。「軒」と競合する。「全国に30店舗を展開する」のように「店舗」を助数詞として用いる例もビジネス文書や広告に見られる。複合名詞は普通助数詞にならないが、一部の場合に名詞を臨時的に助数詞化することがあり、「店舗」はその一つである。
  • 党(とう) 政党に用いる。報道でよく見られる。「郷党」のように「党」を成分に持つが政党以外のものをさす名詞には用いない。
  • 頭(とう)(1)人よりやや小さいか、人以上の大きさの哺乳類に用いる。動物は一般的に「匹」を用いるが、哺乳類の一部にかぎって「頭」が優先される。 クジラ、ゾウ、クマ、トラ、ライオン、キリン、カバ、ラクダ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、アザラシ、ジュゴンなどが該当する。人と比べたときの大小という粗い基準によっているため、オオカミ、カンガルー、カピバラ、オランウータンなど「匹」か「頭」かはっきりとは決まっていないものもある。「頭」は頭の意味から来ているが、頭自体を数えるのには用いない。(2)一部特殊な慣用で、チョウなど昆虫に用いる。これは使用者が限定されており、昆虫は普通は「匹」を取る。
  • 人(にん)(1)人に用いる。使用範囲は広く非常に高頻度で見られ、人を表す名詞であれば基本的に「人」が使える。「にん」は呉音であるが、助数詞の「人」は漢音で「じん」と読むことはない。「何人」は、住む国、民族などを聞くときは「なにじん」(複合名詞)で、数を聞くときは「なんにん」(名詞+助数詞)である。また特殊な場合であるが「なんぴと」(複合名詞)とも読む。「人(にん)」と「人(たり)」は意味の上では競合するが、1,2で「たり」、3以上で「にん」として相補的に用いるのが標準的である。(2)人形、ロボット、AI、宇宙人、天使、幽霊、吸血鬼、人魚、人狼など、人と同様の知能を持つか、外形が人間に近いかする対象について、「人」か、「体」「匹」などが用いられる。こちらは(1)と異なり統一的な規則がない。
  • 杯(はい、ぱい、ばい)(1)コップなど人が液体を飲むのに用いる容器の数に用いる。「個」と競合する。(2)コップなど人が液体を飲むのに用いる容器、または桶など液体をためておく容器に入った液体の量に用いる。碗に入った飯も例外的に「杯」で数える。「一杯」は「今夜一杯おごってやるよ」のように、「酒を飲むこと」という意味でも用いる。(3) 漁獲して殺したあとの、体が大部分残っている食材としてのイカ、タコ、アワビに用いる。頭を上にしたときのイカをさかずきに見立てたことによる(タコとアワビはイカの拡大)。さかずきとイカの連想があまりわかりやすくなく、ほかの助数詞と比べると対象が変則的である。(4)船に用いる。船はよく「艘」「隻」を用い、「杯」は一般的ではない。
  • 敗(はい)スポーツ、ゲームなどで、対戦に勝った数に用いる。「10戦して7敗」「1勝2敗」のように「戦」「勝」とともに用いることが多い。「第5敗」のように第をつけて用いることはない。「~敗する」と「する」をつけて用いるが、「3敗連続する」のように副詞的に用いることはできない。
  • 箱(はこ)和語助数詞。1,2は「ひとはこ」「ふたはこ」、3以上は「さんぱこ/さんはこ」「よんはこ」「ごはこ」……、不定の数は「なんぱこ/なんはこ」とする。(1)箱に入ったものの量を大雑把にさす。(2)箱の数を数えるのに用いる。日本人がどこまでを箱と見なすかがあいまいなため、助数詞の「箱」も多少あいまいな面がある。たとえば「電話ボックス1箱」は無理だが、「アタッシェケース1箱」や「オルゴール1箱」の場合はきわどいところである。
  • 柱(はしら)和語助数詞。(1) 柱に用いる。「本」と競合する。 (2)神に用いる。神ではないがそれに近い巨大な超常的存在に用いることもある。「オリンポス十二神は、ギリシャ神話に出てくる十二柱の神の併称である」(3)神道に関係する文脈で、貴人の霊魂に用いる。(2)と(3)は宗教色のある表現のため、現代では使う場面は限られる。また若干文学的であって、3以上でも和語数詞で「みはしら、よはしら、いつはしら……」と言っても不自然ではない。
  • 発(はつ、ぱつ)(1)矢、弾丸などの発射の回数、または爆弾などの爆発の回数に用いる。雷に「発」が使えるかはあいまいなところである。発車、発行など、物体を高速で飛ばすという意味以外でも発を用いるが、その意味で助数詞「発」を用いて「1時間にバスが5発ある」のように言うことはない。(2) (1)から拡大して、殴打を数えるのに用いる。かなり口語的。(3)ポルノの中では、射精の回数に用いる。ポルノの外で現実の人間が会話で用いると、品位を大きく損なう。(例「女なんてブサイクだったら布越しでちょっとケツなでられただけでブチ切れるのに、イケメンだったら何発も口でヤるんだぜ?」)
  • 尾(び) 漁獲して殺したあとの、体が大部分残っている食材としての魚、大きめのエビを数える。切り身や乾物など、加工がなされていて原形がないものは不可。「魚を3匹買ってきて食べる」は、家でしばらく飼ってから食べるという意味になるが、この使い分けによらない「尾」と「匹」の省略的な混同もときおり見られる。「尾」は日常的に用いるが、対象が非常に限定されているため使用頻度は低い。
  • 票(ひょう、ぴょう)(1)多くの人がそれぞれ対象に点数を与え、その合計によって何かの可否、順位を決めるという行為(投票)において、その点数または点数を示す紙片を数えるのに用いる。(2)チケット、切符、切手などに用いる。こちらは「枚」のほうが一般的である。
  • 部(ぶ)(1) 数多くの小部分に分かれている文章(英雄叙事詩、戯曲、長編小説など)、人を長時間立ち会わせるもよおし(講演、映画、演劇、コンサートなど)を、内容にそって数個に区切ったときに、その区切りを数えるのに用いる。「第三部は16時より開始」のように序数的に用いることもできる。「部」については序数的用法のときに第を省略してもよい。「内部」「接合部」のように、物体の一部分を意味する「部」を持つ名詞はあるが、このようなものをさして助数詞の「部」を使うことはできない。(2)書籍、ポスター、雑誌、パンフレット、新聞紙など、紙に文章や絵を配置したものに用いる。書籍では「冊」と競合し、文語では両者ともによく見られるが、口語では「冊」のほうが多い。「冊」は厚みがあるものでなければならないという制約があるため、書籍以外の厚みのあまりないものには「部」を用いる。(3)「~部」とついている組織を数えるのに用いる。
  • 房(ふさ)和語助数詞。バナナ、ブドウ、ポンポンなど、ふさの形をしたものに用いる。
  • ページ 英語のpageに由来する。本などをなす個々の紙を数えるのに用いる。序数的用法でも第をつけない。一部「葉」と競合する。一般的にはカタカナで「ページ」と書かれるが、「頁」と書いて「ページ」と読むことがある。また「p.」と略記する人もある。
  • 品(ぼん) 仏典の各章の名に「●●(題名)品第××(数詞)」の形で用いる。仏典の中国語訳は後漢から始まるが、仏典が特に盛んに翻訳された六朝時代は中国語で助数詞の発達する時代でもあり、現代とは助数詞の顔ぶれが異なっていた。そのころに、仏典の内容を区切った各部分をさすのに等級をあらわす「品」を用いた。一般的な意味の助数詞「品」は日本語に残らなかったが、仏典の各章の名には受け継がれている。第+数詞がうしろに来るのは、第+数詞+名詞の順序が確立する前には名詞の後ろについていたことによる。
  • 名(めい)(1) 雇用された労働者、学生、競技の参加者、選挙などの候補者、入院患者、予約客、受賞者、同一の事故の被害者など、名前が登録されている人の集団に用いる。使用頻度は高い。「人」と部分的に競合する。乞食、通行人、観衆など、話し手から見て名前が不明な人や、「1万人の難民」のように、個々の名前が捨象されるほど多数の人には用いることができない。商品や動物園の動物など、固有の名を与えられているものでも、人でない場合には使えない。やや文語的で、くだけた会話では「名」が使える場合でも「人」ですませることが多い。(2)「南京の別称は何名あるのですか?」のように、同一のものの持つ複数の名前を数えるときに用いる。「個」と競合する。使用頻度は低い。
  • 門(もん)(1)大砲を数える。(2)生物の分類に用いる階級の単位の一つ「門」を数える。(3)複雑な構造の建物についてその出入り口の数を数える。使用頻度は低い。
  • 問(もん)「~は~のとき~となるか?」「~において~を~せよ」のように、条件が明示された問題に用いる。 学校教育や、クイズ番組でよく見られる。序数的用法では第がつくほうが正式で、第のない場合は口語的。
  • 葉(よう)(1)手紙、写真、メモ、カード、本のページなど、一枚の紙からなるものに用いる。かなり文学的で、日常的には「枚」「通」「ページ」などほかの助数詞が用いられる。「葉」は語源的には木の葉に由来するが、木の葉に「葉」を用いるのは特殊な場合であり、通常は「枚」を取る。(2)文学的な用法で、詩を数えるのに用いることができる。
  • 両(りょう)(1)車両を数える。「台」と競合している。「両」のほうがやや文語的で、口語で自家用車の数を言うときは「両」より「台」が多い。軍用の車両は「台」より「両」のほうがよく用いられる。列車を構成する連結された各部分はふつう「両」と言う。(2)中国圏での伝統的な重量の単位。現代の日本では用いない。(3)江戸時代に用いられた貨幣の単位。現代の日本では用いない。(4)古代には靴や手袋など二つ一組のものにも用いたが、現代ではよほど擬古的な文章以外では用いない。
  • 列(れつ)列に用いる。特に拡大的な用法はなく、単に列をさす場合に用いる。
  • 浪(ろう) 大学の入学試験に落第した回数を数える俗語の助数詞。品位はそれほど低くなく広く通用する。大学の入学試験に落第し、次の試験に備えて勉強している人を俗語で「浪人」と言い、その浪人を略して助数詞に転用したものである。俗語ゆえに助数詞の中では特殊で、「お前何浪?俺3浪」のように「~回落第している人」という意味で用いることができる。さらに「先輩は2浪してるんだよ」のように「する」をつけて動詞にすることもできるが、「5浪苦汁をなめる」のように副詞的に使うことはできない。「浪」につく数は大体1~10の範囲である。中立的で「浪」と同じ意味の助数詞はなく、「浪」を避けるなら「一度大学に落ちた」のように、「浪」の部分以外も変えて表現する必要がある。0浪すなわち一回で合格して入学した場合は、「ストレート」などと言う。
  • 羽(わ、ぱ、ば) 鳥に用いる。ダチョウ、エミューなど大型かつ飛ばないものに限って「頭」も可。語源的には羽であるものの、羽を持っていても昆虫とコウモリには使えず「匹」を取り、体の部位としての羽をさすのにも使えない。一方、例外的にウサギに対しては「匹」のほかに「羽」を用いる。ウサギに「羽」を用いる理由ははっきりとしたところは分かっていない。「羽」は和語助数詞であるがつねに漢数詞とくむ。

名詞から使用する助数詞を引く

以下に名詞に対応する助数詞の一覧を示す(漢字表記は助数詞に「一」を付けたものとし、読みは括弧内に標準的な助数詞の読みのみを記す。必ずしも「一」を付けた時の読みとは一致しない)。なお、外来語が起源の助数詞(単位)には、一般的にアラビア数字を用いて表記する。(例:1バイト)

  • あ行
    • 灯り - 1灯(とう)
    • アリ - 1頭(とう)
    • 安打 - 1本(ほん)
    • 行燈 - 1張(はり)
    • - 1戸(こ)、1軒(けん)、1棟(むね、とう)
    • イカ - 食品の場合は1杯(はい)、生物の場合は1匹(ひき)
    • - 1枚(まい)
    • 衣桁 - 1架(か)
    • 遺骨 - 1体(たい)、1柱(はしら)
    • 囲碁の対局 - 1局(きょく)、1番(ばん)
    • 椅子 - 1脚(きゃく)
    • 井戸 - 1本(ほん)、1基(き)
    • 衣類 - 1着(ちゃく)
    • 印籠 - 1具(ぐ)
    • ウサギ - 1羽(わ)
    • - 1頭(とう)
    • - 1席(せき)、1献(こん)
    • 団扇 - 1柄(へい)
    • うどん - 麺を指す場合は1玉(たま)。1杯(はい)
    • 映画 - 1巻(かん)、1齣(こま/シーン)、1本(ほん)
    • - 1枝(えだ)
    • エビ - 1頭(かしら)、1尾(び)
    • 烏帽子 - 1頭(かしら)
    • - 1掛(かけ)
    • 演能 - 1番(ばん)
    • お年玉 - 1封(ふう)
    • - 1匹・疋(ひき)
    • - 1挺(ちょう)
    • - 1筋(すじ)、1条(じょう)
  • か行
    • - 1頭(とう)
    • - 1面(めん)
    • 掛け軸 - 1幅(ふく)、双幅の場合には1対(つい)
    • 駕籠 - 1挺(ちょう)
    • - 1本(ほん)、和傘は1張(はり)
    • 株式 - 1株(かぶ)
    • - 1刎(はね)
    • - 1柱(はしら)
    • (特定の場所に祀られている)神 - 1座(ざ)
    • 蚊帳 - 1張(はり、ちょう)
    • 乾麺 - 1把(わ)、
    • 騎馬騎兵 - 1騎(き)
    • (文章の) - 1行(ぎょう、くだり)
    • 銀行 - 1行(こう)
    • - 1錠(じょう)、1カプセル、1服(ふく)、1包(ほう)、薬に包んだ散薬は1貼(ちょう)
    • 果物 - 1果(か)、1菓(か)、果実は1顆(か)
    • - 1足(そく/左右1組で)
    • 袈裟 - 1領(りょう)
    • 原動機 - 1発(はつ)、1基(き)
    • 航空機 - 1機(き)
    • こてアイロン) - 1丁(ちょう)
    • - 1面(めん)、1張(はり、ちょう)
    • 子供 -1人(ひとり)
    • 米俵 - 1俵(ひょう)、1輿(こし)
    • ご飯 - 1膳(ぜん)、1杯(はい)
  • さ行
    • - 1匹(ひき)、1尾(び)、1喉(こん)
    • - 1献(こん)
    • 砂糖 - 1斤(きん)、1叺(かます)、1貫(ぬき)
    • - 1篇(へん)
    • 地蔵 - 1尊(そん)
    • 三味線 - 1棹(さお)、1挺(ちょう)
    • 車両 - 1台(だい/自動車)、1両(りょう/鉄道車両など、ただし公営交通事業ではバスも路面電車などを運用していた、または今も運用している時に用いる)
    • - 1挺(ちょう)
    • 数珠 - 1連(れん)
    • 将棋の対局 - 1局(きょく)、1番(ばん)
    • 食パン - 1斤(きん)
    • 書類 - 1部(ぶ/同じ書類を作る場合)、1葉(よう)、1頁(ページ)
    • 真空管 - 1球(きゅう)
    • 新聞 - 1部(ぶ)
    • 握り寿司 - 1貫(かん/二個で1貫説、1個で1貫説あり)、1個(こ)
    • - 1挺(ちょう)
    • 戦車 - 1両(りょう)
    • 相撲 - 1番(ばん/取組)、1枚(まい/番付の地位)
    • 川柳 - 1句(く)
    • 算盤 - 1面(めん)、1挺(ちょう)
  • た行
    • - 1枚(まい)、1面(めん)
    • 大砲 - 1門(もん)
    • タコ - 食品の場合は1杯(はい)、生物の場合は1匹(ひき)
    • 戦い - 1戦(せん)
    • - 1畳(じょう)
    • - 1柱(はしら)
    • 弾丸 - 1発(はつ、ぱつ)
    • 箪笥 - 1棹(さお)
    • 反物 - 1反(たん)、1匹・疋(ひき、むら)
    • - 1頭(とう)
    • 鳥類 - 1羽(わ)
    • 提灯 - 1張(はり、ちょう)、1帳(ちょう)
    • - 1脚(きゃく)、1台(だい)、1卓(たく)
    • - 1張(はり、ちょう)、1丁(ちょう)
    • - 1口(く、こう)、1壺(こ、つぼ)
    • テープ(音響用、データ用) - 1巻(かん)
    • 手紙(書簡) - 1通(つう)、1封(ふう)、1本(ほん)
    • テント - 1張(はり、ちょう)
    • 刀剣 - 1振(ふり)、1腰(こし)、1口(くち)、1剣(けん)、1刀(とう)
    • 塔婆 - 1基(き)
    • 投票用紙 - 1票(ひょう)
    • 豆腐 - 1丁(ちょう)
    • 灯籠 - 1基(き)
  • な行
    • 海苔 - 1帖(じょう)10枚
  • は行
  • ま行 - わ行
    • - 1張(はり、ちょう)
    • 神輿 - 1基(き)
    • 美濃紙 - 1帖(じょう)48枚
    • - 1匹(ひき)
    • - 1手(て)(矢二本で1手)、1条(じょう)、1本(ほん)
    • - 1本(ほん)、1筋(すじ)、1条(じょう)、
    • - 1張(はり、ちょう)
    • 羊羹 - 1棹(さお)、1本(ほん)、1切れ(きれ)
    • 料理 - 1品(しな、ひん)、1人前(にんまえ)
    • 類人猿 - 1頭(とう)、1人(にん・たり)
    • - 1柱(はしら)、1位(い)
    • 和歌 - 1首(しゅ)

中国語の助数詞

中国語では量詞(リヤンツー liàngcí)というのが普通であり、日本の中国語学でもそのまま量詞と呼ぶことが多い。ただし、必ずしも「量」を表さないので、類別詞などと呼ぶ場合もある。

中国語の場合、「個」・「張」などのように、名詞を修飾するものは「名量詞」、「回」・「次」などのように、動詞を修飾するものは「動量詞」と呼んでいる。

現代の中国語(普通話)では、量詞は200種前後が用いられており、量詞に近い使い方をする単位も含めると350種以上になる。

最も常用される代表的なものは「個(箇・个)」であり、近年ますます多用されるようになってきている。日本語と共通する漢字を用いるものでも、使える対象が異なる場合がある。例えば、「匹」はもっぱらウマロバラクダに用いる他、反物にも用いるが、他の動物は「隻(只)」や「頭」を用いるなどの違いがある。

中国語の量詞の用法は日本語とは大きく異なる。量詞とそれが修飾する名詞の間には日本語の「の」にあたる「的」を入れてはならない。また、指示詞(この・その・どの)や「毎」なども名詞を直接修飾することはなく、間に量詞を入れて「這個人」(この人)、「毎個人」のように言わなければならない。

数(とくに「一」・「幾」)と量詞の組み合わせは、それが修飾する名詞が不定であることを示すために使われる。とくに存在や出現を表す「存現文」では量詞を必要とすることが多い。

「一」+量詞を重ねると、「……ずつ」のような意味になる。

名詞の後に量詞を付けて、総体を指すのに使う造語法がある。例えば、名詞の「人」を数えるのに用いるのは「個」や「口」であるが、「人口」というと人をまとめてその数を指す。名詞の「馬」と量詞の「匹」を合わせて「馬匹」というとさまざまな馬の総体を指す。

中国語でも、方言では対応する量詞が異なったり、使用範囲が違ったりする。例えば、椅子は、北京語や普通話では「把」を用いるが、広東語では「張」を用いる。この例では、椅子のどの部分(背もたれか座る部分か)に着目するかという違いによっているが、一般的に、標準的な形状や大きさに地域差があるものなどは、量詞にも違いが出やすい。また、他の例としてはは北京語や広東語では「把」を使い、閩南語では「枝/支」を使うのがある。

広東語や潮州語などでは、名詞の前に数詞を伴わない量詞を付けて、英語の定冠詞のように、全体の中のひとつを指す、特定化に用いる例もある。例えば、「一架車」は英語の「a car」のように、ある1台の車というイメージであるが、「架車」とすると英語の「the car」のように、話者が特定の1台の車を指していう言い方に変わる。

広東語や潮州語では形容詞の後に量詞を付けて、性状と形状を同時にいう例もある。

すでに甲骨文字において容器を用いて量をいう表現が記されているが、先秦では通常は数詞を直接名詞につなげており、量詞を使った表現は「馬十乗」(論語、「乗」は四頭にあたる)など少数である。容器を用いない助数詞が普通にみられるようになるのは代からで、魏晋以降は多用される。また、上記「馬十乗」に見られるように、古くは「名詞・数詞・量詞」の順の方が普通だったが、現在は原則として名詞は後に来る。

ベトナム語の助数詞

ベトナム語をはじめとする東南アジアの言語では、語族にかかわらず助数詞を多用する言語が多い。

ベトナム語の助数詞の使い方は中国語とよく似ている。語順も似ているが、指示詞(この・その・あの・どの)は名詞の後ろにつく。

日本語と同様にベトナム語にも中国語から借用した数詞と固有語の数詞があるが、前者は特定の語でしか用いられず、たとえ助数詞が漢語に由来するものであっても、固有語の数詞とともに使用する。例:「bốn (4) quyển (冊) sách (本) này (この)」。bốn は固有語、quyển は漢語「巻」。

特によく使われる助数詞として、動かない物一般に使う cái と、動く物(動物など)一般に使う con がある。

ベトナム語で助数詞のつかない名詞は「……というもの」のような一般的な意味になることが多く、具体的なもの・特定のものを表すには助数詞をつける。

英語の助数詞

英語には単位や容器を使って数える場合を除いて通常助数詞は必要なく、数詞は直接名詞を修飾することができる。しかし、これには例外があり、以下の場合には直接数詞をつけることができないため、助数詞に似た表現を利用する。

  • 不可算名詞を数えるとき
    • a sheet of paper (紙一枚)
    • a piece of chalk (チョーク一本)
  • 常に複数形で使う名詞や集合名詞を数えるとき
    • two pairs of pants (ズボン二着)
    • four head of cattle (牛四頭)なお、この場合は heads にならない。

関連項目

関連書籍

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