公開会社
公開会社(こうかいがいしゃ, publicly listed company)とは、商法(会社法)上の概念、用語。株式会社のうち、証券市場に上場するなどして株式を公開する株式会社のこと。譲渡制限などにより株式を非公開にする非公開会社(Private company 閉鎖会社)と対立する概念。日本法では、「会社法」(平成17年(2005年)7月26日公布、平成18年(2006年)5月1日施行)において定義づけられている。
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日本法
定義
条文上は、「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」をいう。(会社法2条5号)と定められる。
講学的な意味とは異なり、会社法においては、発行する株式のうち1株でも譲渡制限を付していない株式を発行する旨の定款の定めがあれば公開会社である。会社法においては、従来の有限会社形態の会社も含めてすべて「株式会社」とするため、従来の商法上の原則形態であった株式会社が「公開会社」としてあらたに定義されることになった。
また、発行するすべての株式に譲渡制限の定款の定めがある会社を公開会社でない会社(非公開会社)という。
機関構造
なお公開会社は取締役会の設置が義務付けられ(取締役会設置会社)、原則として監査役の設置も義務付けられるが(監査役設置会社)、非公開会社(かつ会社法上の大会社でない会社)では取締役会の設置は義務付けられておらず、取締役会を設置しない場合は取締役と株主総会の二つの機関のみによって会社の経営が行われていく。(下記参照)
会社法による各種機関の設置の任意/義務
分類 | 取締役会 | 監査役 | 監査役会 | 会計監査人 | 会計参与 | |
---|---|---|---|---|---|---|
公開会社 | 大会社である(注a) | 義務 | 義務 | 義務 | 義務 | 任意 |
大会社でない | 任意 | 任意 | ||||
公開会社でない会社 | 大会社である | 任意 (注c) |
義務 | 任意 | 義務 | |
大会社でない (会計監査人を置くとき) |
義務 | (置く) | ||||
大会社でない (会計監査人を置かないとき) (注d) |
取締役会を設置するときのみ義務 (注b) |
(置かない) | ||||
以上にかかわらず | 義務 | 設置できない | 設置できない | 義務 |
- 注a:この種の会社では内部統制システムの決定が義務付けられている。
- 注b:ただし会計参与を設置するときは監査役は置かなくてもよい。
- 注c:監査役会を設置するときは、取締役会を置かなければならない。
- 注d:監査役会を設置しない場合は、定款の定めによる監査範囲の限定をしうる。
各国の法制度
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国デラウェア州では、コーポレーションのうち「閉鎖型のもの」が『クローズ・コーポレーション』として特別の規制に服しており、したがってこれ以外のコーポレーションが公開会社に相当することとなる。
イギリス
イギリスの2006年会社法(Companies Act 2006)において、会社(company)は、公開会社(public company)と私会社(private company)に分類される。公開会社とは、株式有限責任会社(company limited by shares)と株式資本を有する保証有限責任会社(company limited by guarantee and having a share capital)のうち、基本定款(certificate of incorporation)において公開会社である旨の定めをおき、かつ、公開会社としての登記又は再登記に関する一定の要件を充足するものをいう。
公開会社は、有価証券の公募が許され、かつ最低資本金制度が適用されるのが特徴である。公開会社である有限責任会社(limited company)(すなわち、public limited company。もっとも、前述の定義上、公開会社は全て有限責任会社である。)は、原則として、その名称において"public limited company"又は"p.l.c."(ウェールズの会社については、"cwmnicyfyngedig cyhoeddus"又は"c.c.c."も可。)を付さなければならない。一方、私会社(private company)とは、公開会社でない会社のことであり(したがって、株式資本を有さない保証有限責任会社(company limited by guarantee and having no share capital)と無限責任会社(unlimited company)は全て私会社である。)、有価証券の公募は許されず、最低資本金制度の適用はない。私会社である有限責任会社(すなわち、private limited company)は、原則として、その名称において、"limited"又は"ltd."(ウェールズの会社については"cyfyngedig"又は"cyf."も可。)を付さなければならないが、無限責任会社にはこのような名称についての規制はない。
ロシア
1995年から2014年にかけて、ロシアではОАО(ロシア語: Открытое акционерное общество、公開株式会社)と呼ばれており、ガスプロムなど元ソ連国営企業やスホーイ、アエロフロートなどの大企業がこの会社形態を取っていた。2014年9月1日、同国における民法改正を受けて、ПАО(ロシア語: Публичное акционерное общество、公共株式会社)へ移行した[1]。日本の有限会社などとは異なり、社名変更を強制されているため、現在のロシアでは法的に認められたОАОは存続していない。