元禄忠臣蔵
元禄忠臣蔵(げんろく ちゅうしんぐら)は、新歌舞伎の演目で劇作家真山青果作。昭和9年(1934年)2月に最終の第10編『大石最後の一日』が初演されたのを皮切りに、昭和16年(1941年)11月に第8編『泉岳寺の一日』が初演されるまでの7年間に、計10編11作が上演された。
この戯曲を松竹と前進座で溝口健二監督のもとに映画化され、同年12月と翌昭和17年(1942年)2月に前編・後編に分かれて公開された。この作品には吉良邸討ち入りの場面は描かれていない。また1957年に第10編『大石最後の一日』のみが東宝で映画化されている。
講談社の『青果全集.第1巻』(1975年復刊)に収められ、他に岩波文庫(上下巻、1982年)でも出されている。
Contents
構成
- 第1編 『江戸城の刃傷』- 昭和10年(1935年)1月東京劇場初演
- 第2編 『第二の使者』- 昭和10年(1935年)1月東京劇場初演
- 第3編 『最後の大評定』- 昭和10年(1935年)4月東京劇場初演
- 第4編 『伏見撞木町』- 昭和14年(1939年)4月歌舞伎座初演
- 第5編 『御浜御殿綱豊卿』- 昭和15年(1940年)1月東京劇場初演
- 第6編 『南部坂雪の別れ』- 昭和13年(1938年)11月歌舞伎座初演
- 第7編 『吉良屋敷裏門』- 昭和13年(1938年)4月明治座初演)
- 第8編 『泉岳寺』- 昭和16年(1941年)11月、東京劇場初演(初演時外題は『泉岳寺の一日』)
- 第9編上の巻『仙石屋敷』- 昭和13年(1938年)4月明治座初演
- 第9編下の巻『十八ヶ条申開き』- 昭和14年(1939年)2月東京劇場初演
- 第10編 『大石最後の一日』- 昭和9年(1934年)2月歌舞伎座初演
映画「元禄忠臣蔵 前編・後編」
元禄忠臣蔵 | |
---|---|
監督 | 溝口健二 |
脚本 |
原健一郎 依田義賢 |
原作 | 真山青果 |
製作総指揮 | 白井信太郎(総監督) |
出演者 |
四代目河原崎長十郎 三代目中村翫右衛門 五代目嵐芳三郎 三桝萬豐 |
音楽 | 深井史郎 |
撮影 | 杉山公平 |
編集 | 久慈孝子 |
製作会社 |
松竹 興亜映画 |
配給 | 松竹 |
公開 |
前篇 1941年12月1日 後篇 1942年2月11日 |
上映時間 |
前篇 112分 後篇 111分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
情報局国民映画参加作品。前後篇の2部作で、昭和16年(1941年)12月1日に前篇、翌年2月11日に後篇が公開された。製作は松竹京都撮影所。当時の松竹と前進座のオールスターキャストで監督は溝口健二とされている。しかし太平洋戦争の開戦時であり、地味ではあるが、ワンシーン・ワンカットの実験的手法とともに40年後に再評価されて、1980年1月4日に松竹系で公開されている。モノクロ 219分[1]。
スタッフ
- 総監督:白井信太郎
- 脚色:原健一郎、依田義賢
- 撮影:杉山公平、松野保三、中村忠夫、岩田生男
- 工作:吉田百人
- 作曲・音楽監督:深井史郎
- 美術監督:水谷浩
- 建築監督:新藤兼人、渡辺竹三郎
- 演奏:新交響楽団(現・NHK交響楽団)
- 指揮:山田和男
- 装置:六郷俊、大野松治、小倉信太郎
- 襖絵装飾:沼井春信、伊藤榮伍
- 録音:佐々木秀孝、杉本文造、田代幸一
- 効果:木村一、原田誠一
- 照明:中島末治郎、三輪正雄、中島宗佐
- 編集:久慈孝子、荒川葉子
- 速記:山下謙次郎
- 普通写真撮影:吉田不二雄
- 服飾:川田龍三、奥村喜三郎、加藤信太郎
- 装飾:松岡淳夫、荒川大、大澤比佐吉、西田孝次郎
- 技髪:高木石太郎、尾崎吉太郎、福水シマ
- 現像:富田重太郎
- 殺陣指導:橘小三郎
- 演技事務:武末雲二
- 字幕製作:望月淳
- 考証
- 演出:溝口健二、高木孝一、渡辺尚治、酒井辰雄、花岡多一郎、小川家平
キャスト
前進座
- 大石内蔵助:四代目河原崎長十郎
- 富森助右衛門:三代目中村翫右衛門
- 堀内伝右衛門:四代目中村鶴蔵
- 磯貝十郎左衛門:五代目河原崎國太郎
- 原惣右衛門:坂東調右衛門
- 吉田忠左衛門:助高屋助蔵
- 大高源吾:六代目瀬川菊之丞
- 堀部弥兵衛:市川笑太郎
- 赤埴源蔵:橘小三郎
- 武林唯七:市川莚司
- 片岡源五右衛門:市川菊之助
- 津久井九太夫、村井源兵衛:中村進五郎
- 大石瀬左衛門:山崎進蔵
- 大石主税:市川扇升
- 瀬尾孫左衛門、林兵助:市川章次
- 早水藤左衛門:市川岩五郎
- 岸佐左衛門:坂東銀次郎
- 細川内記:生島喜五郎
- 祐筆江島:山本貞子
松竹京都
- 堀部安兵衛:海江田譲二
- 進藤長房:坪井哲
- 落合与左衛門:風間宗六
- 間喜兵衛:和田宗右衛門
- 矢田五郎右衛門:竹内容一
- 諸井左太夫:征木欣之助
- 間瀬九太夫:梅田菊蔵
- 近松勘六:大川六郎
- 間十次郎:中村時三郎
- 奥田孫太夫:大河内龍
- 久永内記:松永博
- 中臈お古牟:大原英子
- うめ:岡田和子
第一協団
フリー
新興キネマ
松竹大船
その他
- 浅野内匠頭:五代目嵐芳三郎
- 大石りく:山岸しづ江
- 大石吉千代:四代目中村梅之助
- 大石くう:三井康子
- 潮田又之丞:市川進三郎
- 井関紋左衛門:坂東春之助
- 生瀬十左衛門:中村公三郎
- 大塚藤兵衛:坂東みのる
- 奥野将監:六代目嵐德三郎
- 大野九郎兵衛:筒井德二郎
- 岡島八十右衛門:川浪良太郎
- 萱野三平:大内弘
- 井関徳兵衛:羅門光三郎
- 潮田の妻・お遊:京町みち代
- 多門伝八郎:小杉勇
- 加藤越中守:清水将夫
- 梶川与惣兵衛:山路義人
- 深見宗左衛門:玉島愛造
- 近藤平八郎:南光明
- 久留十左衛門:井上晴夫
- 大久保権右衛門:大友富右衛門
- 田村右京大夫:賀川清
- 稲垣対馬守:粂譲
- 関久和:澤村千代太郎
- 登川得也:嵐敏夫
- 石井良伯:市川勝一郎
- 浮橋太夫:滝見すが子
映画「琴の爪」
元禄忠臣蔵「大石最後の一日」より 琴の爪 | |
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監督 | 堀川弘通 |
脚本 |
菊島隆三 若尾徳平 |
原作 | 真山青果 |
製作 | 堀江史朗 |
出演者 |
二代目中村扇雀 二代目中村鴈治郎 扇千景 八代目松本幸四郎 |
音楽 | 佐藤勝 |
撮影 | 山崎一雄 |
編集 | 岩下廣一 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1957年7月13日 |
上映時間 | 54分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
原作の最後の第10編「大石最後の一日」だけを映像化した中編作品。1957年7月13日公開。なおこの作品での共演がきっかけで 二代目中村扇雀(四代目坂田藤十郎)と扇千景が結婚した[2]。
スタッフ
キャスト
- 磯貝十郎左衛門: 二代目中村扇雀(四代目坂田藤十郎)
- 堀内伝右衛門:二代目中村鴈治郎
- おみの:扇千景
- 大石内蔵助:八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)
エピソード
この映画で大石内蔵助を演じた八代目松本幸四郎(初代松本白鸚)は、歌舞伎界ではこの『元禄忠臣蔵』の大石内蔵助役をたびたび演じており、また映画の世界でも松竹『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(1954年)と東宝『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(1962年)の映画でも大石内蔵助を演じている。そして同じ元禄忠臣蔵をもとに第10編 『大石最後の一日』を映像化した本作でも大石内蔵助を演じている。
参考文献
- 『戦後忠臣蔵映画の全貌』谷川健司 著 集英社 2013年11月発行
脚注
外部リンク
- 歌舞伎演目案内 元禄忠臣蔵 - 歌舞伎 on the web