備後都市圏
備後都市圏(びんごとしけん)とは、旧備後国南部福山市を中心に、旧備中国西南部である岡山県西部や旧安芸国・旧伊予国の一部地域に及ぶ都市群の総称、または多核交流圏のこと。備後都市圏に含まれる代表的な自治体は、広島県福山市・尾道市・三原市・岡山県笠岡市・井原市など。
岡山都市圏・備後都市圏・高松都市圏などを主要都市圏とする経済地域については「東瀬戸経済圏」を参照。
Contents
概要
備後都市圏は、歴史的に備後エリアは旧吉備国に属していた関係上、広島県と岡山県にまたがって存在し、令制国も異なるため、広島県庁の定義では広島県内部分のみを指すこともある。しかし、実際は歴史的経緯もあり旧備中国南西部の岡山県井笠地方とも一体的な交流圏を構築している。そのため、県庁の定義に則って備後・井笠都市圏と、複数の都市圏による複合都市圏のような呼ばれ方をされる場合もある。
この地域では、福山市が中心都市となり、福山都市圏を形成している。福山都市圏は、広島県東南部と岡山県西南部にまたがり、人口約72万人を擁する(都市雇用圏)。この定義では、全国22番目の規模となるが、県庁所在地以外の都市圏に限ると全国で4番目の規模である。2010年の域内総生産は約2兆7665億円である[1]。
定義
福山都市圏
福山都市圏 | |
---|---|
— 都市雇用圏 — | |
座標: 東経133度22分北緯34.483度 東経133.367度 | |
都道府県 | 広島県 |
中心都市 | 25x20px福山市 |
面積(2011)[2] | |
- 計 | 1,420.74km2 (548.6mi2) |
人口 (2010)[3] | |
- 計 | 612,988人 |
域内総生産 | (2010)[2] |
- 名目 | 2兆7665億円 |
ウェブサイト | bingolife.jp |
2010年国勢調査の基準では福山市を中心都市とする4市1町で都市雇用圏を構成する。域内総生産は約2兆7665億円[2]、2015年の人口は607,767人である[4]。
2000年12月31日時点の福山市を中心とする都市雇用圏(10% 通勤圏)の構成市町を以下に列挙する。現在は、市町村合併によって、福山・尾道・府中・笠岡・井原の5市(太字)に集約されている。編入合併をした町は斜字 で表す。なお、この都市圏の広島県部分は、全域が「福山地方拠点都市地域」に指定されている。
- 福山市への通勤・通学人口 (PDF) (地図)
- 広島県
- 岡山県
府中市において、通勤者の数では、「福山市→府中市」(3436人)の方が、「府中市→福山市」(2584人)よりも多い(福山市からの流出超過)。しかし、府中市の通勤者の 10% 以上が福山市に通勤しているのに対し、福山市の通勤者の 10% 以上が府中市に通勤しているわけではないので、府中市は福山都市圏に入ると見なされる(工業都市である都市圏によく見られる例→北九州都市圏)。その他の市町は福山市への流入超過である。
福山地方拠点都市地域
「福山地方拠点都市地域」とは、1992年(平成4年)に施行された地方拠点法に基づき、広島県知事によって地域指定された地方拠点都市地域(地域指定1993年(平成5年)4月28日)。拠点都市を福山市とし、尾道市・府中市・御調町・向島町・沼隈町・神辺町の3市4町で構成される(指定時)。当地域の市町村合併に伴って指定地域は変遷しているが、現在、上記の福山都市圏における広島県部分全域(地図)の指定に変更されている(注:三原都市圏は含まれない)。
備後都市圏
備後都市圏とは、旧備後国とその周辺に存在する都市群の総称。何を指標にするかで定義域は異なる。
広域行政圏
備後都市圏は、県が設定している広域行政圏との関係で語られることがある。広島県庁が「備後都市圏」と言うときは、県境を意識して、広島県内の福山および尾三の両広域行政圏を合わせた地域(人口約80万人)を指すことが多い。福山市が「備後都市圏」というときは、かつては広島県庁の定義の他、福山都市圏の広がりに則し、福山・尾三に加えて岡山県の井笠広域行政圏の3つの広域行政圏を指すのが一般的だった。
これら3つの広域行政圏の合計の人口は95万3106人(広島県[5]および岡山県[6]発表の2006年6月1日現在の推計人口)となり、和歌山県の人口に比類する。以下にそれら広域行政圏の構成自治体を示す。斜体 は、上記の福山都市圏の構成市を示す(2000年(平成12年)当時と市域が異なるので、上記の各市の人口と異なる)。
- 広島県・尾三広域行政圏(尾三地域事務所の管轄地域)27万1850人
都市圏の変遷
現在「備後都市圏」と言われている地域には、複数の都市圏が存在してきた。交通インフラや社会の変化に従って、それら都市圏の枠組みも変化してきた。以下に、備後圏域連携中枢都市圏に岡山県里庄町と愛媛県上島町を合わせた地域における、2010年までの都市雇用圏(10% 通勤圏)の変遷を示す[7][3]。
- 福山都市圏および三原都市圏の 10% 通勤圏に属していない市町村には○印を付す。さらに、どの周辺都市圏の 10% 通勤圏にも入っていない町村は、各統計年の欄で「-」で示す。
県 | 自治体 ('80 - '00) |
1980年 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2005年 | 2010年 | 自治体 (現在) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
岡山県 | 里庄町 | 福山 都市圏 | 福山 都市圏 | 福山 都市圏 | 岡山 都市圏 | 福山 都市圏 73万1960人 |
福山 都市圏 61万2988人 |
○里庄町 |
○美星町 | - | - | - | - | 井原市 | |||
井原市 | 福山 都市圏 51万7514人 |
福山 都市圏 53万4641人 |
福山 都市圏 72万9472人 |
福山 都市圏 71万5334人 | ||||
芳井町 | ||||||||
笠岡市 | 笠岡市 | |||||||
広島県 | 福山市 | 福山市 | ||||||
沼隈町 | ||||||||
内海町 | ||||||||
神辺町 | ||||||||
○新市町 | 府中 都市圏 8万1420人 |
府中 都市圏 7万7182人 | ||||||
○府中市 | 府中市 | |||||||
○上下町 | - | - | - | - | ||||
○油木町 | - | - | - | - | - | - | ○神石高原町 | |
○神石町 | - | - | - | - | ||||
○豊松村 | - | - | - | - | ||||
○三和町 | - | - | - | - | ||||
○甲山町 | - | - | - | - | - | - | ○世羅町 | |
○世羅町 | - | - | - | - | ||||
○世羅西町 | - | - | - | - | ||||
三原市 | 三原 都市圏 10万0586人 |
三原 都市圏 10万2523人 |
三原 都市圏 10万0791人 |
三原 都市圏 9万8626人 |
三原 都市圏 10万4196人 |
三原 都市圏 10万0509人 |
三原市 | |
久井町 | ||||||||
本郷町 | ||||||||
○大和町 | - | - | - | - | ||||
○御調町 | 府中 都市圏 | 府中 都市圏 | 福山 都市圏 | 福山 都市圏 | 福山 都市圏 | 尾道 都市圏 15万2850人 |
○尾道市 | |
○尾道市 | 尾道 都市圏 12万1710人 |
尾道 都市圏 11万5266人 | ||||||
○向島町 | ||||||||
○瀬戸田町 | - | - | 因島 都市圏 4万6861人 |
因島 都市圏 4万3775人 |
因島 都市圏 4万3837人 | |||
○因島市 | 因島 都市圏 5万0733人 |
因島 都市圏 3万9968人 | ||||||
愛媛県 | ○弓削町 | ○上島町 | ||||||
○生名村 | ||||||||
○岩城村 | - | - | - | |||||
○魚島村 | - | - | - | - |
由来・歴史
名称の備後とは当該地域の大部分が旧備後国であった事に由来するが、三原の西部地域は旧安芸国で笠岡や井原・浅口などは全域旧備中国である。
江戸時代までは、福山藩の藩庁や城下町が所在した福山、広島藩有数の港町であった尾道、広島藩の城代家老が治める支藩的な存在の三原、江戸時代前期は福山藩領、中期以降は幕府天領(倉敷代官所の支配地域)で石見銀山からの積み出し港だった笠岡、福山藩領で石見銀山への街道宿場町であった府中が大いに栄えた。明治 - 昭和30年代初頭までは尾道が経済の中心都市的な役割を担っていたが、元来からの平地の狭さや、隣接の福山へ大規模製鉄所が立地し人口が急増すると立場が逆転し、経済・行政・工業の中心的役割は福山に明け渡していった。
特色
中心都市である福山市以外にも尾道や三原は製造業や商業基盤が特に集中し都市集積度は高い。また府中・笠岡・井原・浅口の各市も製造業を中心にある程度規模の集積がある。世羅は野菜や果物の一大生産地であると同時に備後中部の商業の中心的存在で、神石高原や矢掛は農業・畜産業が主体。里庄は笠岡や浅口と市街が連続しており、製造業の集積が高い。当都市圏にあり、当該地域のみを管轄する企業の支店や国の出先機関も多い。また福山・尾道・府中各市を中心に上場企業やトップシェア企業が多い。国内では静岡県浜松地域に次ぐ集積を誇る。
当都市圏地域は福山市と笠岡市への旧日本鋼管(現在のJFEスチール)の進出に伴い、国の備後工業整備特別地域に指定されていたため、鉄鋼や造船や繊維、電子産業など商工業分野での連携が強く、また観光事業や消防など行政間や民間では商工会議所との連携も深い。
主要産業
当地域に本社を置く主な企業
- 日東製網(福山市・東証1部上場・漁業用網製造)
- 福山通運(福山市・東証1部上場・大手運送業)
- 青山商事(福山市・東証1部上場・大手衣類販売)
- エフピコ(福山市・東証1部上場・大手食品トレー製造販売)
- リョービ(府中市・東証1部上場・電動工具・印刷機)
- 北川鉄工所(府中市・東証1部上場・機械)
- 自重堂(福山市・東証2部上場・衣類製造販売)
- アシードホールディングス(福山市・東証2部上場・自動販売機・酒類製造)
- マナック(福山市・東証2部上場・化学品製造)
- ローツェ(福山市・東証1部上場)
- 石井表記(福山市・東証2部上場)
- ハローズ(福山市・東証1部上場・地方スーパーストア)
- カイハラ(福山市・デニム製造大手)
- ホーコス(福山市・ポンプ機器製造)
- テラル(福山市・ポンプ機器製造)
- 備後漬物(福山市・漬物製造)
- ジーベック(福山市・衣料品製造)
- サンエス(福山市・衣類製造販売、電子部品製造)
- タカヤ商事(福山市・衣類製造販売)
- ブルーウェイ(福山市・衣類製造販売)
- ビッグボーン(福山市・衣類製造販売)
- 広島化成(福山市)
- 早川ゴム(福山市)
- 鈴木工務店(福山市・総合建設業・設計事務所)
- キソメック(福山市・非鉄金属材料製造販売)
- ププレひまわり(福山市・ドラッグストア)
- エブリイ(福山市・食品スーパー)
- 深江特殊鋼(福山市・特殊鋼専業商社)
- オー・エイチ・ティー(福山市・電気検査装置製造)
- アドテック プラズマ テクノロジー(福山市・東証2部上場・検査機器設計製造)
- 北川精機(府中市・JASDAQ上場・プリント配線板成形プレス)
- コーコス信岡(福山市・衣類製造販売)
- 日本ホイスト(福山市・ホイストクレーン、駐車場製造)
- ツネイシホールディングス(福山市・大手造船業)
- アサムラサキ(福山市・調味料製造)
- ヒロボー(府中市・ラジコンヘリコプター製造)
- ヒルタ工業(笠岡市・自動車部品製造)
- シーピー化成(井原市・大手食品トレー製造販売)
- タカヤ(井原市・電子部品製造)
- 井原精機(井原市・自動車部品製造)
- ヤスハラケミカル(府中市・東証2部上場)
- ジーベック(福山市・衣類製造販売)
- 丸善製薬(尾道市)
- クニヒロ(尾道市)
- 河原(尾道市)
- 向島ドック(尾道市・造船業)
- アンデックス(尾道市)
- 福利物産(尾道市・加工食品メーカー)
- まるか食品(尾道市・食品メーカー)
- 啓文社(尾道市・書籍販売・流通)
- 内海造船(尾道市・東証2部上場・造船業)
- やまみ(三原市・食料品製造)
- 森川観光(三原市・飲食業)
当地域に拠点を置く企業
- JFEスチール西日本製鉄所福山地区
- シャープ 電子デバイス事業本部 福山工場・三原工場
- 日東電工 尾道工場
- 帝人 三原工場
- 三菱重工 三原製作所
- 三菱電機 福山製作所
- 横浜ゴム 尾道工場
- 日立造船 尾道工場
- プレス工業 尾道工場
- アサヒグループ食品 岡山工場
交通アクセス
空港
新幹線
- 圏内にはJR山陽新幹線福山駅・新尾道駅・三原駅があり、「のぞみ」を利用すると、福山駅 - 東京駅間は約3時間40分、福山駅 - 新大阪駅間は約1時間、福山駅 - 岡山駅間は16分、福山駅 - 広島駅間は24分、福山駅 - 博多駅間は約1時間40分、福山駅 - 新尾道駅間はこだま利用で8分、また三原駅へは所要時間は15分。
在来線・私鉄
- 圏内のJR山陽本線には笠岡駅・大門駅・東福山駅・福山駅・備後赤坂駅・松永駅・東尾道駅・尾道駅・糸崎駅・三原駅・本郷駅がある。所要時間は福山駅 - 金光駅間25分、鴨方駅間22分、笠岡駅間13分、松永駅間9分、尾道駅間18分、三原駅間33分、本郷駅間38分。
- JR福塩線は福山から福山北部を経て府中駅までの所要時間43分。府中北部の上下駅へは83分。
- 井原鉄道井原線は福山より福山北部を経て井原の井原鉄道井原駅へ32分、矢掛の矢掛駅へ42分(福山駅との直通便の所要時間)。
路線バス
- 中国バス - 福山・尾道・三原・府中地域
- トモテツバス - 福山・尾道・三原地区
- 井笠バス・北振バス - 福山・笠岡・井原・浅口・矢掛地区
- おのみちバス - 尾道・福山西部(松永)地区・しまなみ島しょ部
- 本四バス開発・因の島運輸 - しまなみ島しょ部
- 芸陽バス - 三原地区
主要国道
- 国道2号(大阪市 - 北九州市) - 浅口市・里庄町・笠岡市・福山市・尾道市・三原市のそれぞれ南部を通過。
- 国道182号(福山市 - 岡山県新見市) - 福山市・神石高原町福山市東部、福山市北部 - 神石高原町を縦断。
- 国道184号(尾道市 - 島根県松江市) - 尾道市・世羅町、尾道市北部、を縦断。
- 国道313号(福山市 - 鳥取県東伯郡北栄町) - 福山市・井原市福山市、福山市北部、井原市を縦断。ロマンチック街道313と呼ばれ親しまれている。
- 国道314号(福山市 - 島根県雲南市) - 福山市・神石高原町 国道182号と重複
- 国道317号(尾道市 - 愛媛県松山市) - 尾道市、尾道市向島、因島を縦断。
- 国道432号(竹原市 - 松江市) - 東広島市河内町・三原市大和町・世羅町、府中市上下を縦断。
- 国道486号(岡山県総社市 - 東広島市) - 矢掛町・井原市・福山市・府中市・尾道市・、三原市久井町 - 大和町を横断。
高速道路
- 山陽自動車道のインターチェンジ (IC) は、鴨方IC・笠岡IC・福山東IC・福山西IC・尾道IC・三原久井IC・本郷ICがある。
- 尾道と愛媛県の今治市とを結ぶ西瀬戸自動車道(しまなみ海道)の、西瀬戸尾道IC・向島IC・因島北IC・因島南IC・生口島北IC・生口島南ICの各ICがある。
- 尾道と島根県の松江市とを結ぶ中国横断自動車道尾道松江線の一部である尾道自動車道(起点は山陽自動車道尾道ジャンクション)の、尾道北ICと世羅ICがある。なお、世羅IC以北は現在建設中。
港湾
- 旅客の主要港湾は笠岡港(笠岡諸島行)・福山港・鞆港(尾道港への遊覧船、走島行)・松永港・尾道港(鞆港への遊覧船、百島・向島行など)・糸崎港・三原港(生口島・大三島行など)があり、物流の港湾は福山港(笠岡港地区も含む)と尾道糸崎港(松永港・三原港地区も含む)があり、福山港には広島県営の福山国際コンテナターミナル港もあり、圏内の海運物流拠点として右肩上がりの取扱い量を記録している。
地域メディア
- コミュニティFM
- レディオBINGO(福山市)
- FMおのみち79.4(尾道市)
- エフエムゆめウェーブ(笠岡市に本社・送信所、浅口市に演奏所)
- タウン情報誌
- Wink 福山・備後
- 福山リビング新聞
- ケーブルテレビ
脚注
- ↑ 金本良嗣. “2010年 大都市雇用圏統計データ”. 東京大学空間情報科学研究センター. . 2016閲覧.
- ↑ 2.0 2.1 2.2 金本良嗣. “2010年 大都市雇用圏統計データ”. 東京大学空間情報科学研究センター. . 2016閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 “平成26年度総合調査研究(地域経済の将来動向分析に関する調査研究)”. 経済産業省. . 2016-11-6閲覧.
- ↑ “平成27年国勢調査結果”. 総務省統計局. . 2016-11-6閲覧.
- ↑ http://db1.pref.hiroshima.jp/data/geppou/jinkou/saisin/tge01-2.xls
- ↑ http://www.pref.okayama.jp/kikaku/toukei/ryuudou/kakoH17base/H18.6.1.xls
- ↑ 金本良嗣. “都市雇用圏コード表”. 東京大学空間情報科学研究センター. . 2016閲覧.
外部リンク
- 備後圏域連携中枢都市圏(福山市)
- 備後圏域の都市計画区域マスタープラン(広島県)
- びんごライフ(備後圏域連携協議会)