体罰
体罰(たいばつ)とは、私的に罰を科す目的で行われる身体への暴力行為である。
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概要
体罰は、父母や教員などが、子供や生徒などの管理責任の下にあると考えられる相手に対し、教育的な名目を持って、肉体的な苦痛を与える罰を加えることを指す。この場合の苦痛とは、叩くなどの直接的なものから、立たせたり座らせるなどして束縛して動くことを禁ずるなど間接的なものも含む。体罰に明確な定義はなく、一般的に身体刑や虐待や暴行や訓練とは異なる行為とするが、該当することもある。軍隊や部活動等における先輩から後輩への指導が肉体的苦痛を伴う時も、体罰とされることがある(→根性論も参照)。
体罰は古くより「注意をしても聞かない・もしくは理解できない」という子供に対する教育的な指導と認識されていた[1][2]。方法としては、動物に対する躾と同様の直接的な痛みを伴う行為がとられることが多かった(手で叩く・殴る・鞭で打つなど)。
しかしその一方で、その罰がしばしば当人の人格否定に繋がったり、重大な負傷に至る事例が挙げられるにつれ、社会的に問題視され、その効果に疑問が投げ掛けられるようになった[3][4]。また、体罰の実施者に、そもそも罰を与える権利があるのかも問題となっている[5]。また、過去60年にわたり、全米で36000人を対象とした、Gershoff ET 2002では、短期的には指示に従うものの、長期的に見ると、「攻撃性が強くなる」、「反社会的行動に走る」、「精神疾患を発病する」といったマイナス面が見られ、上記、体罰肯定派の意見とは全く反対の事が述べられている。
体罰には様々な方法が存在し、また実施される状況によって、あるいはこれを被る側の反応によって、その影響は異なる。
ただ体罰であるか口頭での注意かを問わず「罰することによって許すこと」は、教育においても大切なことと考えられることもある[6]。すべての発達段階において、人間の人格形成・人間形成を促す方向での指導と、そのために学校組織としての方針の策定が求められている[7]。
2014年9月4日に発表された国際連合児童基金(ユニセフ)の調査によれば、世界の2歳から14歳の約6割(約10億人)が両親などから日常的に体罰を受けており、世界の大人の約3割が子供にしつけに体罰は必要と考えているという[8]。
日本における体罰の扱い
日本の学校教育の場においては、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第11条において、校長および教員は、懲戒として体罰を加えることはできないとされている。この規定に対する(刑事上の)罰則はないものの、教員以外の者と同じく、スキンシップと解せないものについては、暴行罪や傷害罪(死亡した場合は致死罪)となる。また、教員が職権として体罰を加えた場合は、刑事上の責任とは別個に民事上の責任も問われる。教員は、公務員の信用失墜行為として免職を含めた懲戒処分を受けることがある。刑事告訴をおこされぬよう、示談を前提に加害教員と勤務校が被害者に“陳謝”する場合が多い。
法務省は、懲戒権の限界について定め、それを越すいわゆる体罰は触法であると定め、「体罰」について以下のように通達している[9]。
- 学校教育法第11条にいう「体罰」とは、懲戒の内容が身体的性質のものである場合を意味する
- 身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る・蹴るの類)は体罰に該当する
- 被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(端坐・直立等・特定の姿勢を長時間にわたって保持させる)は体罰に該当する
すなわち、「体罰」はその成立要件として、
- 懲戒の対象となる行為に対して、
- その懲戒内容が、被罰者の身体に対する侵害を内容とするか、被罰者に肉体的苦痛を与えるようなものであり、
- その程度があくまでも「罰」の範疇であること。
である。往々にして、最初の条件を欠くものが多い。最初の条件を欠くもの、3つ目の条件を欠く(程度が「罰」の範疇を逸脱している)ものは、ともに「罰」ではなく、単なる暴力であり、これらを「体罰」と称することにより、問題のすり替え(刑事犯である暴行を教育論にすり替える)、責任転嫁(「罰」である以上、受ける側にも非がある)することになる。 また法務省では体罰を日本国内における主な人権課題の一つとみなし、「校内における暴力容認の雰囲気を作り出したりするなど、いじめや不登校を誘発する原因と考えられる」との見解を示している[10]。
2012年、警察庁長官は記者会見で「一義的には教育現場の対応を尊重すべきだが、違法行為があれば被害者や保護者の意向、学校の 対応状況を踏まえて対処する」と見解を述べている。
一方、家庭内での体罰は慣習的に認められていた部分では在るが、1990年代より児童虐待が社会問題として取り上げられるようになり、教育的な意味のある体罰なのか、それとも単に保護者などの鬱憤晴らしなどに過ぎない虐待かは慎重に判断されるようになった。特に外傷の有無に関しては外傷の種類などや状態に関する判断基準が示されるなどしており、教師や小児科医といった普段子供を間近で観察する機会の多い職種を中心に、判断基準などの情報が提供されている。
家庭における体罰・躾
家庭内等において、子供が保護者と生活する時間は長い。特に就学前の乳幼児にとっては、親権者は、親権者であると共に、最初に出会う教師ともいえる。このため保護者は、それら幼児に日常生活を通じて、やるべき事・やってはいけない事・守るべきルール・言葉を教育する。この教育の過程で、まだ言葉を十分に理解出来ない幼児にとっては、往々にして「言葉による賞罰」よりも、「肉体の感覚による賞罰」の方が効果的な事が多いという考えもある。しかし、過度な体罰は虐待になるため、そのさじ加減が難しいといわれる[11][12]。
1990年代から北欧諸国では体罰禁止運動が盛んになり、これらの国では全面禁止、イギリス、フランス、アイルランド、オーストラリアでは平手で身体(頬は除く)を打つこと以外は法律で禁止された。
近年では、前述の統計結果の体罰を受けたとする回答者の内訳が親から過激な虐待を受けた者を含んでおり、あくまで躾として軽度の体罰を受けたとするものは、体罰を一度も受けなかったとするものよりも犯罪歴が低く、学歴、収入が高いとの結果も出ている。
日本においても、躾 (しつけ) という名目で、子に対して説教だけでなく殴る・蹴る・地面などに叩き落すといったいわゆる「折檻(せっかん)」をして親が傷害罪や悪質な場合殺人罪等に問われることもある。
この場合において賞は微笑んだ表情を見せたり、抱きしめたり、頭を撫でたり、幼児が喜ぶ物品を与える等して行われ、罰は怒ったり悲しんだ表情を見せる、怒気を込めた口調で叱る、(手加減して・注意を喚起する程度に留めて)叩くといったような物が与えられる。しかし環境が閉鎖的である事もあって、他の要因から罰の方法が激化し、拷問を科す事と混同されるケースも少なくない[13]。
特に乳幼児は、言葉以前に善悪も理解出来ないため、初期の段階においての躾はほとんど不可能である。また空腹や孤独・便意・濡れた衣服にまつわる不快感に対して敏感であり、泣く事によってこれらの不快な状態の改善を(本能的に)要求する。自分では何も解決できない乳幼児が、このような手段を用いて要求するのは至極当然の反応であるが、性格的に未熟だったり、精神的疲労やノイローゼ状態にある保護者にとっては、これらの要求を煩わしく感じる事も少なくないためか、要求を減らすために、「我慢する躾」と称して体罰よりもエスカレートした児童虐待を行う場合がある。
このような場合、乳幼児にとってはその罰の意味がまったく理解出来ないものであったり、本能的に見て非常に理不尽極まりない事もあるために、事態が激化しやすい。特に乳幼児は、母親一人だけでは手に余る程の保護を必要としている部分に負う所も大きいため、問題解決には周囲の人間の理解や援助が必要である。児童相談所では、これらの悩みを持っているにも関わらず、身近に相談できる人間がいない人々の問題を解決する手助けを行っている。
学校内における体罰
- 参照: 学校内における体罰
相談窓口・関連団体
- 24時間子供SOSダイヤル 文部科学省
- 法務省:子どもの人権110番 法務省人権擁護局
- スポーツにおける暴力行為等相談窓口 日本体育協会
- スポーツにおける暴力根絶を目的とし、指導者や選手のための通報窓口 (対象:JOC加盟団体)公益財団法人日本オリンピック委員会
- 暴力根絶相談窓口 公益財団法人 日本サッカー協会
- コンプライアンスに関する受付窓口の設置について 公益財団法人日本野球連盟
- 『体罰・暴力の相談窓口』開設について 日本バレーボール協会
- 「スポーツ指導における暴力根絶へ向けて」 日本ラグビー協会
- 子どもの人権110番 東京弁護士会
- チャイルドライン® 18さいまでの子どもがかけるでんわ 認定NPO
- いきづらびっと LINEアカウント「@yorisoi-chat」で友達登録 (毎日、午後5時~10時)
- NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク 連絡先
他、いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧)
連盟や団体の通報・相談窓口、最寄りの教育委員会や弁護士事務所、心療内科、精神科など。
体罰の隠蔽
体罰についての隠蔽を疑う意見がある[14]。
体罰を受けた際または体罰を加えられそうになった際に、生徒が避けようとしたり抵抗するなどしてもみ合いになると、加害教師や学校によってその行為が一方的な対教師暴力と扱われることもある。私立の学校・高校などでは退学や転校を強要することがある[15]。
体罰の行われた学校名を公表するよう、教育委員会に答申が行われているにもかかわらず、教育委員会が従わずに非公開とした事例も判明している[16]。
文部科学省が体罰に関するアンケートを実施した際に、中学校の生徒の運動部の父母会が、顧問教諭の体罰を無かったことにするよう、部員の保護者に要請し、事実上隠蔽を図っていた例も存在する[17]。
また、学校側が加害教員に対し、部活動の顧問の業務を停止させるのみで、学校としての処分を全く課していない事例もある[18]。
事例
- イーストボーンの悲劇(1860年、イギリス)
- イギリス・イーストボーンで、教師が生徒を体罰死させた事件。裁判の結果、故殺となり、イギリスでは体罰が法で禁止されるまでの体罰事件判例の先例となった。
- 戸塚ヨットスクール
- 不登校や家庭内暴力といった問題行動のある児童を、スパルタ式教育により、脳幹の機能を増進させ、健康で逞しく育てると謳った私塾。しかし、指導方法に医学的根拠はなく暴力的な指導により心理的外傷を負った者や、ついには死者・行方不明者まで出た(戸塚ヨットスクール事件)。このため戸塚宏校長らが逮捕・起訴され、実刑判決を受け服役したが、戸塚は出所後の記者会見でも「体罰は教育だ」と発言した。その後も児童が複数自殺しておりたびたび報道されている。
- 水戸五中事件(1976年5月)
- 水戸市立第五中学校の体育授業における体力測定中、手伝い係の男子生徒が「なんだKか」と担当教員を呼び捨てにした発言に対し、怒った担当教員が男子生徒の頭部を殴打し、生徒が1週間後に死亡した事件。加害教員は一審で有罪となるも、二審では目撃証言から「男子生徒を軽く叩いた」と認定され、「口頭の訓戒・叱責と同一視され、正当な懲戒権として許される限度内」として無罪判決を受けた。学校側は被害生徒側に体罰の事実を告知せず、また生徒たちに被害生徒の通夜への参列を禁止するなど、不誠実な対応も問題になった。遺族が体罰の事実を知るのは荼毘に付した後で、級友から知らされて初めて体罰の事実を知った。学校は遺族に「土葬か火葬か」と意味深な発言もしていた[19]。
- 岐阜県立中津商業高等学校(1985年3月)
- 陸上部顧問の教員が女子部員に執拗な体罰と言葉の暴力を加え、自殺に至らしめた事件。被害生徒は国体などへの出場経験を持つやり投の選手だったが、顧問教員から半年にわたり、成績不振やその他の些細な理由で執拗かつ激烈な体罰を受け続け、さらに進級のための追試験に合格したにもかかわらず県の強化合宿メンバーから外され、体育教官室で顧問ら2人の教員から長時間立たされたまま、言葉の暴力を加えられ、翌日未明に自宅で自殺した。当時同校では、この顧問教員を中心とした体育科教員による「もう1つの生徒指導部」と呼ばれる生徒指導体制が確立されていた(一種の恐怖政治)[20]。
- 被害生徒の自殺後、顧問教員は「あの子は叩きよかった、殴りよかった」と話し、また焼香に訪れた際にも遺族に対し「バカとしか言えん」「死人にクチなし」などと半ば逆ギレとも思える暴言を浴びせた。遺族が岐阜県と加害教員を相手取り提訴し、県に対する請求は認められたが加害教員への請求は認められなかった[21]。
- 岐阜県立岐陽高等学校(現・岐阜県立本巣松陽高等学校)(1985年5月)
- 修学旅行で国際科学技術博覧会を訪れた際、宿泊先である近隣の臨時宿泊施設で持参が禁じられていたヘアドライヤーを使用した生徒に学級担任の教員が激しい体罰を加え、死亡させた事件。傷害致死罪で逮捕され実刑判決を受けた(事件後に懲戒免職)加害教員は転任したばかりで普段は体罰を振るう教員ではなかったが、生徒指導担当の教員から前任校での指導方針を詰られたことが暴行とも見紛う激烈な体罰の引き金になったとされる。また、当校はゼロ・トレランス方式による生活指導を行っていた。校長は、「これは教諭の弱さだった」と発言している。
- 岐阜県の教育委員会は、「信じられない特異なケース」「教師個人の体質、資質の問題」「体罰は日常化していない」と断言した。しかし、後のアンケートの結果生徒の半数が体罰を受けているという結果も出た。判決後の記者会見で校長は「学校側の管理上、教育上の責任が全くゼロとは感じていないが、教育現場では、教師の個々の生徒に対する力量が最後に出てくる」と発言した[22]。
- 小松市立芦城中学校(1986年7月)
- 遅刻や忘れ物の多い生徒に対し、学級担任の教員が4回の往復びんたの後に柔道技を数回かけて転倒させ、3日後に死亡させた事件。加害教員は「明日も忘れ物をしたら本当に怒る」と被害生徒に伝えていたが、被害生徒は母親が病気入院中で家事や弟の面倒も見ていたために遅刻が多くなり、「忘れ物」も家計が苦しいためそもそも持っていなかったという。さらに被害生徒は解剖の結果、動静脈に先天的な異常があることも判明した[23]。加害教員は執行猶予付き判決を受けた[24]。
- 川崎市立桜本小学校(1987年1月)
- 特殊学級の担任教師が指示に従わない児童の頭部を殴打し、死亡させた事件。生後6ヶ月の時に頭骨の手術を受けた被害児童は入学する際、絶対に頭を叩かないよう両親が学校側に申し入れていた。日常的に体罰を振るっていた加害教員は1988年11月26日に最高裁で懲役2年の実刑判決を受けた[25]。
- 近畿大学附属女子高等学校(現・近畿大学附属福岡高等学校)(1995年7月)
- 学級副担任の教員が指示に従わなかった生徒に激しい体罰を加え、死亡させた事件。加害教員は自らの公判で体罰を伴う指導方針を正当化したほか、学校内外で体罰を容認・正当化する風潮があり、被害生徒の遺族への嫌がらせもあった。加害教員は1、2審とも実刑判決を受けた[26]。また事件がメディアに流れていた頃、加害者の男性教師に世話になったOGなどは、刑を軽くするために学校近隣で署名を集めていた。また、被害者の両親に匿名で家に寿司10人前やカラオケセットが送りこまれ、代金を払わせようとする悪戯も行われていた。
- おかやま山陽高等学校(2005年)
- 元野球部監督の男性職員(35歳)が、部員に体罰を繰り返していたことや「メンタルトレーニング」と称して全裸でのランニングを強要していたことが発覚した。保護者からの告訴により11月に強要罪・暴行罪で逮捕・起訴された。この性犯罪じみた体罰については、体罰肯定派が多い保守的な立場の論客からも「性的な体罰は性犯罪者を生み出すだけだ」と強く非難されたため、どのような判決が出るか注目された。男は容疑となった事実関係そのものについては認めているが、それらの行為は正当だったとして無罪を主張。2007年3月、執行猶予付き有罪判決[27]。なおこの元監督はその後、愛知県で中卒・高校中退の選手を受け入れる野球チームの監督に就任するが、特定の部員に執拗に体罰を振るう場面がテレビ番組で取り上げられた直後の2013年1月に辞任している[28][29]。
- 京丹後市の市立小学校(2007年)
- 28歳の男性教諭が自分の担任クラスで、1人の児童の外見を一部児童がからかい他の児童も黙認する動きがあることに気付き、「次にからかったらみんなを叩いて自分は教師を辞める」と宣言。しかし再び同様のからかいが発生した為、この教諭は宣言通りかわかわれた児童1人を除くクラス全員児童の頬を一人一回ずつ平手打ちをした後、その足で校長室に向かって体罰を報告した(この際、クラスの児童は泣きながらこの教諭を引き留めた)。校長は教諭を3日間の謹慎処分とし保護者を集めて謝罪したが、教諭は反省文と辞表を提出した。その後、この小学校の保護者の間で辞表の撤回を求める署名活動が始まり、ほぼ全児童の保護者が署名に応じる事態となった。校長はこの教諭が二度と体罰をしないと約束した為、辞表を返却した[30]。
- 幸福会ヤマギシ会
- 広島弁護士会が、[[広島県]三次市のヤマギシズム学園花見山初等部に対して「憲法や子どもの権利条約で保障された人権が侵害されている」として警告書を提出した。これに対し学校サイドは、「子供を預かっている学校が、担任が子供たちを見ているときに、お腹がすいて輪ゴムを食べたりとか、あるいは体が悪くないのに長期に休ませるとか、放課後部活もできない、そういうことを見て、これは子供が普通じゃないんじゃないか」と、広島弁護士会の方に相談し、広島弁護士会も、「平手打ちなどの体罰、あるいは反省させる名目で数時間から数日間も狭い一室に一人で閉じ込めた。また、通学日に朝食を与えず、18時間も食事をさせなかった、子供の手紙を無断で開封し閲覧した、無断で私物を検査し、取り上げた、家族との交流は月一回に制限され、休日も学園のスケジュールどおりで、テレビ、新聞の視聴、閲覧を制限した」と警告書を出した。同様の事例が過去に岐阜県の武並小学校でもあったと広島弁護士会はしている。岐阜では食事を抜く、雨の中裸で外へ出す、登校させない、会の中での暴力行為がある等が子供たちの様子から感じられて警告書を提出するに至ったとしている[31]。
- 時津風部屋力士暴行死事件(2007年)
- 元小結双津龍の時津風親方が17歳の序ノ口力士をビール瓶で殴るなどして死亡させた。
- ネッツトヨタノヴェル三重(2008年)
- 三重県のトヨタ自動車系列ディーラー「ネッツトヨタノヴェル三重」において、店長(33歳)が、ノルマを達成できなかった大卒新入社員(23歳)の胸と腕を殴り、約2週間のけがを負わせたほか、肋骨を骨折させた疑いも持たれた。被害者によると、暴行は計10日にわたり100回以上繰り返され頭を足で踏まれたり、傘で頭を叩かれたこともあったというが、同社側は暴行は計7日、数十回で職務怠慢などが理由だと説明した。被害者は500万円の損害賠償を求める労働審判を裁判所に申し立てた[32]。
- 北海道遠軽町立小学校(2008年)
- 北海道の遠軽町にある町立小学校(校名は非公表)の当時11歳の女子児童が、担当教諭から楽器の居残り指導を何度も続けさせられるなどの体罰的指導を受けるようになり、これを苦にした女児は2008年4月に首吊り自殺した。女児の両親は同町と北海道とを相手取り、札幌地方裁判所に慰謝料の支払いを求め訴訟を起こした。2013年6月3日に同地裁は、学校側のその後の対応による精神的苦痛を認め計110万円の支払いを命じたが、指導と自殺との因果関係については認めなかった[33]。
- 鳥取県立米子養護学校(2008年)
- 同校の男性教諭(38歳)が2008年6月18日、作業中に作業を怠けた高等部の男子生徒の両頰を平手で叩くなどの体罰を与え、同年8月19日に戒告の懲戒処分を受けた。
- 熊本体罰訴訟(熊本県天草市)
- 2002年11月26日に熊本県の小学校で「校舎1階の廊下でだだをこねる小学3年男子児童にしゃがんでなだめている小学校教員に後ろから肩を揉み、小学校教員が止めるように言っても続行する」「通り掛かった小学6年女子数人に対してじゃれつくように蹴る」「小学6年女子児童数人を蹴ったことを小学校教員に注意されたことに腹を立てて、後ろから小学校教員の臀部付近を2回蹴って逃げ出す」等の数々の悪ふざけをしていた小学2年男子児童(当時7歳)に対し、小学校教員が「小学2年男子児童を追いかけて胸元の服を右手でつかんで壁に押し当て、大声で『もう、すんなよ』と叱った」が、その後で小学2年男子児童から「体罰」であるとして自治体に損害賠償を求めて民事訴訟を起こされたが、2009年4月28日に最高裁で小学校教員の行為について「これからはそのような悪ふざけをしないように小学2年男子児童を指導するために行われたもの」「やや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではない」として体罰ではないと判断され、損害賠償は認められなかった[34][35]。
- 法政大学高等学校(2010年)
- 愛知県立刈谷工業高等学校(2011年)
- 同校の硬式野球部の当時16歳の男子部員が自殺したことについて愛知県の設置した第三者委員会が詳細な調査を実施し、その結果、同部の顧問の男性教諭から執拗に暴言を受けていたことの他、顧問が他の部員らに対し体罰を執拗に行っていたことを目撃したことで欝状態が進行したことが原因であるという中間報告が出された。[36]。
- 大阪市立桜宮高等学校(2012年)
- 同校のバスケットボール部の主将を務めていた2年生の男子生徒が、12月23日に首吊り自殺した。この生徒は自殺の前日まで、顧問の男性教諭から暴力的な体罰を執拗に受けていたことが判明した[37]。男性教諭は懲戒免職処分となり、2013年3月22日に大阪府警察本部から書類送検され、大阪地方検察庁は傷害罪と暴行罪で在宅起訴する方針を固めた[38]。なお、日本バスケットボール協会は2013年6月の理事会で公認コーチ資格を取り消す処分としている[39]。
- 神戸市立飛松中学校(2012年)
- 同校の運動部顧問の男性教諭が同年11月に自分が担当する部活を指導していた最中に13歳の男子部員の顔を素手で殴るなどし、被害部員は肋骨骨折の重傷を負った。また、別の男性教諭も同年10月に男子生徒の一人に対し胸倉を掴むなどして頭部に軽傷を負わせた。神戸市教育委員会は、2013年1月18日にこれら2人の教諭を減給処分とした[40]。
- 静岡県立浜松商業高等学校(2010年~2012年)
- 同校は2010年~2012年の間に計13件の体罰があり、9人の教諭と講師が関与していたことを明らかにした。男子バレーボール部では2011年10月、顧問が当時の部員に体罰を加え、鼓膜を破るけがをさせていた。女子バレーボール部でも男性教諭が部員三人の頬をはたき、文書訓告となっていた。硬式野球部では2010年夏ごろから、部員を正座させ顔を平手でたたくなどの体罰が複数件あった。同校の運動部では体罰が常態化していた疑いがあるが、静岡県教委は「浜松商で体罰が特別に多いのかは全校調査の中で分かる」と述べた。部活動以外では2011年に40代の男性教諭が授業終了後、廊下で男子生徒1人の顔を平手で3回殴打、ももを2回膝蹴りし、1回頭突きした事例があった[41]。
- 山陽高等学校(2013年)
- 5月26日に同校の男子バレーボール部顧問の男性教諭が部員3人に対し、練習試合中に指示通りプレーしなかったとの理由で頬を4-5回平手打ちする暴力を行い、うち部員1人は顎を骨折する重傷を負った。この教諭は同年6月6日付で依願退職となった[42]。
- 浜松日体高等学校(2013年9月)
- 男子バレーボール部顧問の男性教諭が遠征先で部員1人に対し、15秒間に13回平手打ちする場面を密かに撮影した動画がインターネット上に流出された。詳細は浜松日体中学校・高等学校#不祥事を参照されたい。
- 大阪府立難波支援学校(2016年)
- 高等部の男性教諭が2016年4月以降に、重度の知的障害を持つ男子生徒の一人に対して手を叩いたり体を振り回すなどの体罰を行っていたことが同年7月20日の新聞報道で発覚した。この教諭は、当該の生徒に対し一人での食事が困難であるにもかかわらず「給食は自分で食べろ」などの暴言も吐いており、被害を受けた男子生徒は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、その影響で会話もできない状態となった[43]。その後、大阪府教育庁は体罰に加担したとされる男性実習助手を同年9月16日付で停職3か月の懲戒処分とした[44]。
- 兵庫県立のじぎく特別支援学校(2016年)
- 高等部部長の男性教諭が、授業の一環として訪れていた兵庫県三田市内の障害者支援施設に於いて生徒の一人の襟首を掴み揺さぶった上、机に頭を打ち付けたとして2016年10月31日に兵庫県警察に暴行の容疑で逮捕された[45]。
- 福井県池田町立池田中学校(2017年)
- 2年生の男子生徒(当時14歳)が担任と副担任から排他的な扱いや執拗で集中的な怒声と叱責を伴う指導を受け続け、2017年3月14日に当該生徒が校舎の高所から投身、搬送先の病院で死亡した。調査委員会は「校舎から転落死したのは、担任らから厳しい指導を受けた精神的ストレスによる自殺だった」とする報告書を公表した[46]。
脚注
- ↑ たとえば第166回参議院文教科学委員会 公述人中島啓子
- ↑ 少年保護施設における「虐待プログラム」については第166回参議院法務委員会・厚生労働委員会 下田敦子
- ↑ 第166回参議院本会議 神本美恵子
- ↑ 第147回参議院文教・科学委員会 林紀子
- ↑ 「国際人権法の分野では、親が権利を持つ。したがって、国家が教育の中身を決めていくわけではないとする。体罰をするかしないかについても、親の考え次第で子供一人ずつについてやり方を変えなければいけないというヨーロッパ人権裁判所の判決がある」第165回参議院教育基本法に関する特別委員会 戸塚悦朗
- ↑ 第147回衆議院法務委員会少年問題に関する小委員会 杉浦正健
- ↑ たとえば第168回参議院文教科学委員会 亀井郁夫
- ↑ “子どもの6割に日常的体罰 ユニセフの国際統計”. 河北新報. (2014年9月5日) . 2014-9-5閲覧.
- ↑ 法務庁調査意見長官通達『児童懲戒権の限界について』
- ↑ 法務省:主な人権課題
- ↑ 虐待をする親たちは、これは必要な体罰だと大体言う。第154回衆議院青少年問題に関する特別委員会 水島広子
- ↑ 体罰をしている親に聞くと、悪いとは思うけれども仕方がなくというふうに言ったり、しつけのためには必要なことだと言いわけしながらやっているわけである。子供のころ多少たたかれて育った親にとっては、たたく以外の危機管理方法をなかなか知らないということがある、とする意見がある。第154回衆議院青少年問題に関する特別委員会 水島広子
- ↑ いわゆる家庭内暴力。親には民法の親権の身上監護権の中の懲戒権に関して、822条懲戒権があり、懲戒権の中には一定の合理的な範囲内で体罰も含まれるわけあるが、この懲戒権が児童虐待を助長するのではないか、廃止したらどうか、こういう御意見がある。しかしこの懲戒権は親が子のためにやるものであって、子供を死に至らしめたりあるいは傷害をさせたりあるいは心理的な虐待を加えるというような、いわゆる児童虐待と言われるような行為がこの懲戒権の行使として許されないものであることは当然とされる。第153回参議院共生社会に関する調査会 田嶋陽子 また同意の回答を法務副大臣横内正明
- ↑ 障害児への暴行:「体罰」と認定 第三者委が結論 奈良 毎日新聞 2013年11月6日
- ↑ [1][2]
- ↑ [3]
- ↑ 「体罰、報告するな」父母会役員が保護者に要求 兵庫 朝日新聞 2013年3月22日
- ↑ 暴力 相撲部員に顧問ら ハンマーでたたく 福島・日大東北高 毎日新聞 2016年12月18日
- ↑ 「わたしの雑記帳」内「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ NHK取材班+今橋盛勝:『NHKおはようジャーナル 体罰』(日本放送出版協会,1986年)より
- ↑ 上掲サイト「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ 上掲書『体罰』および上掲サイト「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ 上掲書『体罰』より
- ↑ 上掲サイト「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ 上掲サイト「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ 上掲サイト「子どもに関する事件・事故 2」より
- ↑ 朝日新聞2007年3月23日付
- ↑ 東海テレビ『ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~』
- ↑ 懲りない蛮行/生々しい体罰の現場をここに晒す !!
- ↑ 「ぼくたちのたんにんをやってください」体罰の教諭復職 産経新聞 2007年6月12日
- ↑ 第145回衆議院予算委員会第11号 池坊保子
- ↑ 『店長が新人にパワハラ暴行 トヨタ車販売会社、労働審判に』共同通信 2008年9月5日
- ↑ 北海道・遠軽の女児自殺:損賠訴訟 小6自殺、精神的苦痛認定 札幌地裁、賠償命令 毎日新聞 2013年6月4日
- ↑ MSN産経ニュース2009.4.28 11:06[4]
- ↑ 最高裁HPに掲げられている裁判例情報[5]
- ↑ 刈谷工高生自殺:「顧問の体罰見てショック」第三者委報告 毎日新聞 2013年8月29日
- ↑ 【過剰指導の悲劇 大阪・高2自殺(上)】体罰指導「プロではない」 産経新聞 2013年1月13日
- ↑ “桜宮高の元顧問を在宅起訴へ 体罰、自殺生徒への傷害罪”. 朝日新聞. (2013年6月27日). オリジナルの2013年6月29日時点によるアーカイブ。 . 2013閲覧.
- ↑ “大阪・桜宮高のバスケ元顧問、公認コーチ資格取り消し”. 朝日新聞. (2013年6月22日) . 2013閲覧.
- ↑ 体罰で生徒骨折 神戸市教委、教諭2人を懲戒処分 産経新聞 2013年1月18日
- ↑ 浜松商、体罰など13件 内部調査で教諭ら9人申告 静岡新聞 2013年2月22日
- ↑ 保護者の期待に応えようとして平手打ち…依願退職 読売新聞 2013年7月5日
- ↑ 重度知的障害の生徒虐待か 支援学校教諭が暴行、暴言「投げ飛ばすよ」 大阪・浪速 産経新聞 2016年7月20日
- ↑ 補助金私的流用、財布を置引き…あきれた教諭、講師を免職処分 大阪府教育庁 産経新聞 2016年9月16日
- ↑ 生徒の襟首つかみ、机に頭打ち付け…暴行容疑で特別支援学校教諭を逮捕 兵庫県警 産経新聞 2016年10月31日
- ↑ 担任らの厳しい指導で自殺 福井・池田町の男子生徒死亡報告書
参考文献
- 西部邁 「心地よかった体罰」『生と死、その非凡なる平凡』 新潮社、2015年、139-145。ISBN 9784103675068。
- 平野裕二「■体罰の根絶に向けて」 平野裕二の「最近読んだ本」、2005年5月5日。
- 江森一郎『体罰の社会史』(新装版)2013年(初版1989年)新曜社
- "discourses of discipline An Anthropology of Corporal Punishment in Japan’s Schools and Sports" by Aaron L Miller (August 7, 2013) ISBN 1557291055
関連項目
なお、体罰は以下のような問題の延長にみなされる場合もある。
- 虐待 - 児童虐待 - 動物虐待(児童虐待の問題では、付随して動物虐待が発生する傾向も見られる)
- 心的外傷(トラウマ)
- 暴力
- 社会問題 / 教育問題
- Welsh Not
- ミルグラム実験
- スタンフォード監獄実験
- 精神論 - 根性論
体罰を使った指導者
外部リンク
- 文部科学省
- 体罰に関する文部科学省の対応
- 学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方
- 学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例
- 体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について 平成25年3月13日通知
- 体罰を全面禁止している国一覧
- スポーツ指導における暴力根絶へ向けて~文部科学大臣メッセージ~ 平成25年2月5日
- その他