佐渡汽船

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佐渡汽船株式会社(さどきせん、: Sado Steam Ship Co.,Ltd. )は、新潟県佐渡市に本社を置く、新潟県本土と佐渡島とを結ぶ定期航路を運航する海運会社。ジャスダック上場。

概要

1932年、佐渡航路で競合していた商船会社3社を経営安定の見地から、新潟県の資本参画のもと統合して成立した。当初から半官半民で設立された日本最初第三セクター企業である。現在も新潟県が資本金の39.2%を出資している。ほかの出資企業には新潟県内の主要企業である新潟交通第四銀行なども加わっている。

現在、佐渡汽船は定期便としては新潟航路(新潟港 - 両津港)、直江津航路(直江津港 - 小木港)、寺泊航路(寺泊港 - 赤泊港)の3航路を運航し、2隻のカーフェリー、3隻のウォータージェット推進式全没型水中翼船と1隻の高速船、1隻の双胴型高速カーフェリーを就航させている。このうち水中翼船・ボーイング929(ジェットフォイル)は1977年、日本で初めて定期航路に就航したもので、後にボーイングから製造・販売のライセンスを取得した川崎重工業(現川重ジェイ・ピイ・エス)にもノウハウを提供している。

沿革

  • 1885年5月 - 佐渡島・新潟本土側双方の資本により、越佐汽船会社設立。本社は当初、佐渡島の夷(両津)に置かれた。同年7月から新潟-夷間に新造船「度津丸」による航路開設。
    • 同社は1893年に株式会社に改組。早くから新潟本土側の資本が多数派となり、後に本社も新潟市へ移転。佐渡島や新潟周辺における小規模の個人経営海運業者と競合しつつ、それらを合併するなどの過程で経営を拡大し、1888年には当時鉄道開通前だった新潟-酒田間の沿岸航路を開設、大正時代の羽越本線開通までこの区間の主たる交通機関となった。また日露戦争後には政府命令によるロシア極東への国際航路も開設、日本国内の地方海運会社としては一時有数の存在となった。1918年、社名を「新潟汽船」に改称。
  • 1913年2月3日 - 佐渡島側資本の糾合により、佐渡商船株式会社が創立。登記上における現・佐渡汽船の前身である直系企業。新潟本土側資本である越佐汽船との競合を展開。
  • 1923年 - 前佐渡汽船株式会社が設立。本土に近い前佐渡(佐渡島南部)を中心に新規航路を開設、先発2社に対抗。同社は1927年に「越佐商船」と改称。
  • 1932年4月 - 佐渡商船株式会社は、新潟汽船株式会社、越佐商船株式会社の両社を買収して合併、商号を現社名「佐渡汽船株式会社」に改称。実質は新潟県の介入による企業統合・再編であった。
  • 1949年12月 - 既存定期航路事業免許申請により、新潟 - 両津間、小木 - 新潟間、小木 - 直江津間の定期3航路の経営免許が交付され、運用開始。
  • 1950年8月 - 直江津港 - 柏崎港 - 小木港間の定期航路を開設(柏崎寄港は夏期のみ。1955年8月をもって廃止)。
  • 1967年3月 - 佐渡航路初のカーフェリー「さど丸」が新潟 - 両津間で運航開始。
  • 1968年9月 - 株式を店頭登録(後の大阪証券取引所ジャスダック市場)。
  • 1972年
    • カーフェリー「こがね丸」が新潟 - 両津間に就航。
    • 4月 - 両津港に旅客ターミナルビルが完成。
  • 1973年
    • カーフェリー「おとめ丸」が新潟 - 両津間に就航。
    • 4月 - 新潟 - 赤泊 - 寺泊航路が就航。
  • 1977年5月 - 日本初のウォータージェット推進式水中翼船(ボーイング社製ジェットフォイル)による定期航路が新潟 - 両津間に就航(1号艇「おけさ」)。
  • 1979年4月 - ジェットフォイル2船目の「みかど」(ボーイング社製)が新潟 - 両津間に就航。
  • 1981年7月 - 新潟西港・万代島埠頭に旅客ターミナルビルが完成、下大川前の旧ターミナルより機能を移転。
  • 1983年7月 - 8,000t級(注:国際トン)の大型カーフェリー「こさど丸」が新潟 - 両津間に就航。国内初の車両甲板2段積み可能となり、この「こさど丸」から佐渡汽船カーフェリーの大型化が始まる。カーフェリー「こがね丸」が小木 - 直江津間に就航。
  • 1985年2月 - 小木港に旅客ターミナルビルが完成。
  • 1986年7月 - ジェットフォイル3船目の「ぎんが」(ボーイング社製)が新潟 - 両津間に就航。
  • 1988年
    • 4月 - 日本国内の離島航路初となる10,000t級(国際トン)のカーフェリー「おおさど丸」が新潟 - 両津間に就航。カーフェリー「おとめ丸」が小木 - 直江津間に就航。
    • 6月 - 直江津港に旅客ターミナルビルが完成。
  • 1989年
    • 1月 - 新潟 - 赤泊間の航路を休止、寺泊 - 赤泊間を通年運航に。
    • 4月 - ジェットフォイルの国産1号艇「つばさ」(川崎重工製)が両津航路に就航、ジェット4船体制に。これに伴い、ジェットフォイル「みかど」が小木 - 直江津間に就航(春 - 秋の季節運航)。
  • 1991年4月 - ジェットフォイル「すいせい」(川崎重工製)が両津航路に就航。これに伴い最古参の「おけさ」が香港へ売却。
  • 1992年
    • 3月 - 寺泊港に旅客ターミナルビルが完成。
    • 4月 - 1,000t級のカーフェリー「えっさ丸」が寺泊 - 赤泊航路に就航。同航路に就航していた佐渡汽船初のカーフェリー「さど丸」売却。
  • 1993年4月 - 国内の離島航路最大となる12,000t級(国際トン)のカーフェリー「おけさ丸」が新潟 - 両津間に就航。これに伴い、カーフェリー「こさど丸」が小木 - 直江津間に就航。カーフェリー「こがね丸」フィリピンへ売却。
  • 1995年3月 - 9,000t級(国際トン)の大型カーフェリー「こがね丸」が小木 - 直江津間に就航。カーフェリー「おとめ丸」フィリピンへ売却。
  • 1996年8月 - ジェットフォイル「ファルコン」(ボーイング社製・元関西汽船「ジェット8」)が就航、ジェットフォイル5隻体制へ(「ファルコン」は予備船扱い)。
  • 1999年11月 - 九州郵船から予備船を保有する佐渡汽船にジェットフォイル売却の要請があり、「ファルコン」が九州郵船へ売却。ジェットフォイル4隻体制へ戻る。
  • 2000年4月 - 赤泊港に旅客ターミナルビルが完成。
  • 2003年
    • 5月11日 - JR東日本との連絡運輸取扱廃止。
    • 10月31日 - 小木航路のジェットフォイルを廃止、余剰となる一隻のジェットフォイル「みかど」をいわさきコーポレーションに売却。新潟 - 両津間のジェット3船体制に(「すいせい」「つばさ」「ぎんが」)。
  • 2005年
    • 航送費が値上げされる。また前年の新潟県中越地震による観光への打撃対策として社会実験を複数に分けて実施。
    • 6月10日 - 赤泊航路に高速船「あいびす」就航。これに伴い、カーフェリーを廃止。余剰となるカーフェリー「えっさ丸」をいわさきコーポレーションに売却。
    • 11月 - カーフェリー内で予約用の用紙を裏紙として、船内のスタンプ用紙などに転用していたことが発覚。
  • 2006年6月 - 「燃料油価格変動調整金」を導入。旅客130円/片道(ジェットフォイル・カーフェリー・高速船とも)、四輪車850円/片道、二輪車200円/片道の運賃アップとなった。
  • 2007年2月 - カサ増しされたカーフェリーのt数が経営不振のため減t(経費面で不利にもかかわらず、わざわざ大きく見せるだけのカサ増しt数から、国内他社と同一の基準に戻った)され、おけさ丸は12,419t(国際トン)→5,862tへとなった。
  • 2008年
    • 4月 - 小木航路のカーフェリー1隻体制となる(昭和58年就航と船歴の高かった「こさど丸」を廃止し、「こがね丸」1隻体制)。
    • 5月 - 小木航路1隻体制で余剰となった「こさど丸」のいわさきコーポレーション系・新屋敷商事への売却が決定。帳簿価額は226,853千円、譲渡価額は600,000千円(消費税別)。引き渡し日は6月10日。
  • 2009年
    • 4月 - 事業会社を分割。船舶運航に関する業務を連結子会社の「佐渡汽船シップマネジメント」に移管し業務委託を開始。
    • 10月 - 事業会社を分割。陸上業務を「佐渡汽船営業サービス」「佐渡汽船シップメンテナンス」に移管。
  • 2012年
    • 3月31日 - 新潟港・両津港両ターミナルにて自動改札機QRコードFelica併用型)の運用を開始。また6港とも乗船時の旅客名簿の提出が不要となる。
    • 4月 - 佐渡汽船営業サービス株式会社を吸収合併。
  • 2013年
    • 3月23日 - 両津航路にてSuicaのサービスを開始(Suica電子マネーのシステムによる)。PiTaPaを除く全国9種類の交通系ICカードが利用可能となる。
    • 4月 - 日本海内航汽船株式会社を吸収合併。貨物事業部を設置。
  • 2014年4月8日 - カーフェリー「ときわ丸」が新潟 - 両津間に就航[1][2]。これに伴い、「おおさど丸」が定期就航終了[3]
  • 2015年3月4日 - 固定資産(カーフェリー)の譲渡に伴い約8億7500万円の特別利益が発生する見通しだと発表。譲渡先はリベリアの海運企業。決算は2015年12月末。
  • 2018年7~9月 - 寺泊 - 小木で月1回ずつの試験運航を予定[4]

運航航路・就航船

ファイル:おけさ丸2016.jpg
新潟港を出航するおけさ丸

新潟航路

新潟港 - 両津港(67km・国道350号海上区間

1日にカーフェリー5往復、ジェットフォイル7往復(繁盛期はカーフェリー7往復、ジェットフォイル9往復)

カーフェリー(所要時間:2時間30分)

  • おけさ丸 (3代)
  • ときわ丸
    • 2014年3月建造、4月8日定期就航。
    • 全長125.0m、総トン数5300t、最大旅客定員1500名、車両積載台数:大型バスまたは大型トラック28台及び乗用車8台、乗用車のみの場合168台、最大速力19.1ノット
ファイル:ジェットフォイル.JPG
両津航路に就航する、ジェットフォイル「つばさ」(所要時間:1時間5分)

ジェットフォイル(所要時間:1時間5分)

  • ぎんが1986年定期就航)
  • ファイル:佐渡汽船ジェットフォイル02.jpg
    新潟港内ですれ違う ぎんがとつばさ
    つばさ1989年定期就航)
  • すいせい1991年定期就航)
    • いずれも出力7600馬力、旅客定員260人、最大速力47ノット(87km/h)
    • 最古の「ぎんが」のみボーイング社製で、他2隻は川崎重工業製。
    • 「つばさ」は日本製ジェットフォイル1号である。
    • 「すいせい」の設計には佐渡汽船の意見が盛り込まれており、わずかだが船体が大型化しているため、テイクオフ(フォイルボーン)までの滑走距離が長い。

直江津航路 

直江津港 - 小木港(78km、国道350号海上区間)。1日2往復(繁忙期は3往復)。冬季間は、新潟航路の「おけさ丸」「ときわ丸」がドックに入渠するため。

高速カーフェリー(所要時間:1時間40分)

ファイル:佐渡汽船高速カーフェリー「あかね」左舷.jpg
小木航路に就航する、高速カーフェリー「あかね」(写真は両津港)
  • あかね
    • 2015年4月建造。全長89.70m、総トン数5702t、最大旅客定員672名、最大速力30ノット[5]
    • 直江津航路にはカーフェリー1隻のみが就航している。

寺泊航路

寺泊港 - 赤泊港(46km)

1日2往復

※冬季間(12月1日 - 2月末)は全便運休
2017年時点では、4月29日 - 10月1日の期間のみ就航
ファイル:赤泊港佐渡汽船に停泊する高速船あいびす.jpg
赤泊航路に就航する、高速船「あいびす」

高速船(所要時間:1時間5分)

  • あいびす
    • 2005年6月建造、総トン数263t、最大旅客定員216名、最大速力25ノット
    • 名称は公募により、2004年10月に決定。
    • 冬期間は運休のため、新潟港佐渡汽船ターミナルに停泊している。
    • ファイル:Ferry jetfoil 20040822.jpg
      2014年4月まで両津航路に就航していた、カーフェリー「おおさど丸」とジェットフォイル「すいせい」
      寺泊航路には高速船1隻のみが就航している。

過去に就航していた船舶

カーフェリー

おおさど丸

  • 1988年4月建造、全長131.9m、総トン数5373t、最大旅客定員1520名、最大速力22.6ノット。
  • 直江津航路を所要時間2時間40分で運行。
  • 2014年4月8日引退。

ジェットフォイル

  • おけさ
  • みかど
  • ぎんが
  • ファルコン

ターミナル所在地

所在地はいずれも新潟県。運航の詳細に関する問合わせ先は佐渡汽船の公式ウェブサイトを参照。

新潟航路

ファイル:Ryoutsu port Terminal.JPG
両津港ターミナルビル

新潟港ターミナル新潟市中央区万代島9-1

両津港ターミナル佐渡市両津湊353番地

  • 佐渡島内各方面から新潟交通佐渡バスで「両津埠頭」下車
  • 佐和田から車で約30分

直江津航路

直江津港ターミナル上越市港町1-9-1

小木港ターミナル:佐渡市小木町1950番地

寺泊航路

寺泊港ターミナル長岡市寺泊上片町9786番地3−7

赤泊港ターミナル:佐渡市赤泊2208番地

現在の運航体制

新潟航路(新潟⇔両津)が3航路の中で唯一黒字を計上している一方で、直江津(直江津⇔小木)・寺泊(赤泊⇔寺泊)の両航路は慢性的な赤字にさいなまれている。

県と上越市、佐渡市、佐渡汽船などが国に対し、2011年に創設された「地域公共交通確保維持改善事業」の直江津航路への適用を申請した結果、2012年度補助事業分として1811万円の補助を受けることになり、同年度から新潟市と長岡市が加わって小木航路の検討委員会を改組し「佐渡航路確保維持改善協議会」として発足した。以後、国の補助を受けながら新潟・直江津・寺泊の越佐間3航路全体のあり方について検討が行われており、自動改札機の導入や旅客名簿の提出省略などといった利便性の向上策や、利用者数の動向などを精査したうえで運航体制の再構築を図るなど、3航路にわたる改善策が取られている。

新潟航路

新潟市と佐渡市両津地区を結ぶ新潟航路は、県庁所在地の新潟市が発着地になっていることや、新潟港ターミナルが市街地に近く、新幹線や航空機など他の交通機関との接続が比較的容易であることから、長年にわたって佐渡への観光や佐渡市民の生活航路として機能し続けている。航路は佐渡島の南東側を経由しており、高波の影響が少ない。このため運航率は90%以上で他2航路と比較して高く、台風の襲来時や冬場の荒天時にはジェットフォイルこそ欠航となるものの、カーフェリーについては余程の高波でない限り、運航できるケースが多い。

春の大型連休と夏のお盆の時期には増便し、特にお盆には終日運航を行うダイヤも設定されているが、2004年1月1日に通常・閑散期ダイヤの改正が行われた際、18時台と21時台に両港を出港していたカーフェリー2往復が廃止され、19時台出航の1往復に統合された。この影響で本土側・佐渡側で滞在時間が短縮されるなど、不便が生じている。

またジェットフォイルは就航以来、新潟港を出航して両津港で折り返すダイヤを基本線に運航されており、両津港での夜間停泊は行っていなかった。故に両津港からの始発便は遅く、新潟港からの最終便は早く設定されていたため、佐渡島民の利便性低下が指摘されていた。2008年4月1日のダイヤ改正から両津港での夜間停泊が開始され、これにより運航時間が延長されて利便性が改善された。

2010年8月11日、「おおさど丸」が新潟沖を航行中、エンジンの出力を調整する減速機の部品が損傷して航行不能となり、お盆の帰省ラッシュや観光客の足、佐渡島内外の物流に大きな影響を及ぼした。カーフェリーは「おけさ丸」1隻のみとなり、急遽1日4往復で終日運航する特別ダイヤが編成された。この間ジェットフォイルを増発し、小木航路も週末を中心に1日2往復の臨時ダイヤを編成した他、ジェットフォイルに割引運賃を適用するなどの措置が取られた。なお「おおさど丸」は当初、減速機の機器全体の損傷を想定して10月31日までの休航を見込んでいたが、部品の損傷が軽微であったことから予定を前倒しし、機器調整や試験運航などを経て10月1日から運航を再開、同日から両津航路の運航体制も通常ダイヤに復旧した。

国土交通省運輸安全委員会2011年12月19日、このトラブルに関する調査報告書を公表した。それによると、2000年と2005年の定期検査で減速機のスクリューの軸受け部分に摩耗が生じて隙間が広がり、部品の交換推奨値を超えたことが判明したものの、当時の整備担当者が「問題ない状態」と判断して使用を継続。さらにトラブルが発生した2010年の点検でも簡易な確認にとどまったため、結果として損傷を引き起こした可能性がある、としている。また報告書では「整備担当者が代わった際に、適切な点検方法が引き継がれなかったことも故障の要因」とも指摘している。

佐渡汽船ではこのトラブルを受け、「おおさど丸」に代わるカーフェリー「ときわ丸」を2014年春の就航を目途に新造する考えを表明し、2012年から建造が進められた。ときわ丸は白と紺をベースにしたカラーリングで、全長約125m、総トン数約5200t、最大速力約18.7ノット、旅客定員約1500人、車両搭載数168台(普通車のみ)。2013年2月3日より船名の一般公募を実施し選考の上、同年4月24日付で船名「ときわ丸」が発表された[6]。船体は2013年10月21日の進水式を経て施工後、2014年3月に納入され、同年4月8日の新潟港発9時25分発の便から定期運航を開始した。一方のおおさど丸は同日の両津港発5時30分の便を以って営業運航を終了した。

2018年1月21日、ジェットフォイル「すいせい」の推進装置に不具合が発生した。この故障が発生した際、「つばさ」はドックに入渠していたためジェットフォイルは「ぎんが」1隻での運航体制となった。この故障を起こした「すいせい」では、左舷推進装置の部品の脱落が判明しており、その部品取付や原因救命に時間を要していたが[7]3月30日に運航を再開した[8]

直江津航路

上越市直江津地区と佐渡市小木地区を結ぶ直江津航路は、2010年度決算で約5億1000万円の損失を計上しており、年間輸送人員実績も約17万6000人と減少が年々続いている。

直江津航路は上越地方のみならず、長野県北陸地方中京圏近畿地方など各方面から佐渡島へ最短距離で移動できる航路である。しかし観光需要は新潟航路ほど多くなく、上越地方と佐渡市南部とを結ぶ生活航路としての役割が大きい。故に利用者数は新潟航路と比較して少なく、特に近年は慢性的な乗客減少傾向と不採算に陥っている。また航路は地形的に佐渡島の影にならず、佐渡海峡を横断する他の航路に比べ日本海からの荒波を受けやすい。そのため台風の襲来時や冬の荒天時には波が高くなりがちで、安全上の問題から欠航になるケースが多い。これも赤字を増大させた要因の一つである。

直江津航路には1989年から、冬季間を除いてジェットフォイルも就航していたが、2003年10月31日をもって運航を終了。またカーフェリーも2008年3月31日まで「こがね丸」と「こさど丸」の2隻体制で運航していたが、このうち1983年就航の「こさど丸」は老朽化等のため退役し、同年4月1日のダイヤ改正から「こがね丸」1隻のみで運航している。小木港の構造的制約で10,000t級(国際トン)以上の船は入港できないため、新潟航路の大型フェリーを転用することはできない。また前述の通り不採算が続いているため、小木港に入港できる9,000t(国際トン)クラス以下のフェリーを新造するメリットも少ない。

こうした事から新潟県は2007年、直江津航路の存続について検討を開始した。議論は減便や季節航路化、さらには佐渡汽船の航路撤退や航路そのものの存廃にまで及んだ。だがその一方で、直江津航路は新潟航路とともに国道350号の海上区間を担っており、仮に廃止となった場合にはこのルートが断たれてしまうことになる。また2015年春には北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間の延伸開業が予定されており(その後開業)、直江津航路は新幹線利用者の観光二次交通の一つとして重要であるとの見地から、上越市と佐渡市は存続を強く主張してきた。これを受けて佐渡汽船は前述の通り、直江津航路を当面フェリー1隻体制で維持する方針を2008年1月18日に発表し、同年4月1日からは奇数日が直江津発1本・小木発2本、偶数日が直江津発2本・小木発1本という変則的な運航体制となった(但し第2・4の金・土曜は1日2往復、繁忙期は1日最大3往復、冬季は全面運休するが年末年始に限り1日1往復を運航)。

県と両市は直江津航路の2隻体制復帰に向け、同年春に「小木直江津航路二隻化戦略検討委員会」(のちに前述の「佐渡航路確保維持改善協議会」へ改組)を立ち上げ協議を進め、直江津航路を対象とした社会実験を相次いで実施した。同年8月には「アースセレブレーション」「小木港まつり」等の開催に合わせ、新潟 - 小木間・直江津 - 小木間の2経路でジェットフォイルの臨時運航を実施した。

委員会では直江津航路の2隻体制について、北陸新幹線開通前までの整備を目指し検討を進めた結果、カーフェリーに加えて中古のジェットフォイル1隻を導入し、計2隻とする当初案では損失が増大する懸念がある見地から、2013年1月22日の委員会において「新造の高速カーフェリー1隻を導入し、1日2往復体制として利便性の改善を図る」との方針で一致し、検討の結果インキャット製の双胴型高速カーフェリー1隻の導入が決定、同年11月に発注の手続きが行われた[9][10]。船名は一般公募により「あかね」に決定し、2015年3月14日の新幹線延伸開業から1か月後の4月21日の定期運航開始を予定している。佐渡汽船では「あかね」就航後の「こがね丸」の処遇について航路関係者の意見や同航路の特性、利用者のニーズを踏まえて検討した結果、「あかね」1隻のみでも1日2往復での運航が可能で、且つ誘客宣伝効果による収支改善が図れるとして、2015年1月に「こがね丸」の売却を発表した[11]。なお頸城自動車では北陸新幹線開業日から、上越妙高駅と直江津港ターミナルを連絡する直通路線バスの運行を開始する。

寺泊航路

長岡市寺泊地区と佐渡市赤泊地区を結ぶ寺泊航路は、2005年夏から小型カーフェリーに代わって高速船による航路に転換し、「あいびす」1隻体制で運航している。

しかし、例年にない寒波が襲った同年12月の運航率は約10%と、1ヶ月の大半で運航できないという最悪の事態に陥った。これは、導入した船が小型で軽量であるにもかかわらず、スタビライザーなど横揺れを防止する装置が設けられていないため、少々の高波でも激しく横揺れを起こして乗り心地が著しく低下するという問題があったことによる。このため佐渡汽船では、2006年1月18日から1ヶ月掛けて実施した「あいびす」の定期検査の際に横揺れ防止システム「ARG」を船内に8台追加設置し、2月15日から運航を再開した。その後ARGの設置効果を反映した上で運航体制を再構築したものの、冬場など悪天候時の欠航率は改善できず、2008年1月期の1便当たりの平均乗客数も1人にとどまるなど収支が悪化し、航路単体で年間約2億円の赤字を計上していた。こうした背景から佐渡汽船は2009年1月から、寺泊航路を冬季間(12月から2月)全面運休することになった。これにより5000万円の赤字額を削減できる見通しである。

また、長岡市と佐渡市の観光関係者らでつくる「長岡佐渡広域観光協議会」は2009年5月28日にジェットフォイルをチャーターし、同会のメンバーと国、県などの観光・交通政策の担当者ら約50人を乗せ、寺泊港沖と赤泊港沖を経由して新潟 - 小木間で試験運航を実施した。これは航路の活性化に加え、「あいびす」の欠航率の高さの問題などからジェットフォイルによる航路への転換や、新潟・直江津両航路との連携などを長期的に検討するため実施したもので、寺泊と赤泊は港の水深や設備の関係でジェットフォイルが接岸できないため、沖から港内を視察した。

2017年7月13日に船員の確保及び経営状況の厳しさから、両泊航路撤退を軸とした協議を申し入れる旨の発表があった[12]

2018年夏季には、新潟県と長岡市の要請・支援を受けて、小木港との各月1日に限り1往復の試験運航が予定されている。

その他

原油価格高に伴う燃料費の高騰で、2006年から繁忙期以外はカーフェリーの運航所要時間が通常時より10分程度長くなっている。

さらに、2006年6月からは、「燃料油価格変動調整金(燃油サーチャージ)」を導入し、旅客は一律大人130円・子供70円、自動車850円・二輪車200円の加算となっている。2007年1月からは旅客は一律大人260円・子供130円、自動車1690円・二輪車400円の加算と値上げした。

またカーフェリーでは本土側(新潟港・直江津港など)からの往復運賃よりも佐渡側(両津港・小木港など)からの往復運賃の方が約1000円ほど安い。これは島発往復きっぷと言う。

グループ企業

  • 佐渡汽船シップマネジメント - 佐渡汽船が保有している船舶の運航および管理を行う。
  • 佐渡汽船シップメンテナンス - 佐渡汽船が保有しているジェットフォイルの保守管理を行う。
  • 佐渡汽船運輸
  • 佐渡汽船商事
  • 佐渡汽船観光
  • 小木観光
  • 万代島ビルテクノ

脚注

関連項目

外部リンク

テンプレート:佐渡汽船の船舶