乾電池

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乾電池。左から、単2・単3・単4・単5・9V形

乾電池(かんでんち)は、電解液固体に染み込ませて担持させ、扱いやすくした一次電池である。(一回限りの使用で使い捨てるものが一次電池、充電して繰り返し使うものが二次電池

概要

一次電池は、乾電池と、電解液を液状のまま使う湿電池に分けられるが、現在の一次電池はほぼ全て乾電池である。

文字どおりには、一次電池以外の化学電池である二次電池燃料電池も、湿電池と乾電池に分けられるが、これらの用語は一次電池に限って使う。二次電池では、それぞれに当たるものを開放型・密閉型と言う。

乾電池は基本的に充電ができず、放電後に機器を動かすには電池の交換が必要なため、寸法・電圧などが国際電気標準会議IEC 60086(日本ではJIS C 8500)で規格化されている。日本で実際に「乾電池」として売られるものはその内、通称単1形 - 単6形9V形などと呼ばれる一部である。それ以外は、小型のものは「ボタン型電池」、それ以外は「リチウム電池」のように電池系で呼ばれる。以下では、この狭義の「乾電池」について主に述べる。

規格

幾つかの形状・電圧などが規格化されていて、高い互換性がある。形の小さい電池に、より大きい電池の形状をした「スペーサー」と呼ばれる製品を包み込むように装着して、形の大きい電池として使用できる場合もあり、近年品揃えが少なくなり価格的にも不利な単2形以上の大きさの電池を使用する機器に対してしばしば用いられる。

以下は、アルカリ乾電池の容量の目安。

  • 単1形、12,500 - 17,000mAh
  • 単2形、5,700 - 7,700mAh
  • 単3形、2,000 - 2,700mAh
  • 単4形、850 - 1,300mAh
  • 単5形、650 - 900mAh

代表的な規格

  サイズ / mm 通称 IEC 60086 / JIS C 8500
直径 高さ 日本 アメリカ マンガン乾電池 アルカリ
乾電池
ニッケル
乾電池
リチウム
乾電池
  高容量 高出力 超高性能
緑 ※ 青 ※
円筒型
単電池
32.2 - 34.2 59.5 - 61.5 単1形 D R20S R20C R20P R20PU LR20
24.7 - 26.2 48.5 - 50.0 単2形 C R14S R14C R14P R14PU LR14
13.5 - 14.5 49.0 - 50.5 単3形 AA R6S R6C R6P R6PU LR6 ZR6 FR6
9.5 - 10.5 42.5 - 44.5 単4形 AAA       R03 LR03 ZR03 FR03
10.7 - 12.0 28.0 - 30.2 単5形 N       R1 LR1
7.7 - 8.3 41.5 - 42.5 単6形 AAAA         LR8D425
17.0 34.5 CR123A
平形
6層電池
15.5 - 17.5 ×
24.5 - 26.5
46.5 - 48.5 9V形
006P型
9V       6F22 6LR61
6LF22
  • ※は、日本では2009年現在、OEM専用品を除き、一般流通向けには製造されていない。
  • 単6形は日本では規格外である。

円筒型には他に、ドアチャイムなどに使われる、単5形と高さが同じ、直径がやや細い形状で12ボルトの「23A」がある。

平型にはほかに、マンガン電池を内部で並列に繋いだ「平3型」(1.5V)、直列に繋いだ「平5型」(3V) などの大容量大型乾電池が通信用などに用いられる。「0210」(315V)、「0160W」(210V×2組)、「015」(22.5V)、「W10」(15V)といった高電圧の小型積層電池がエレクトロニックフラッシュ用に用いられる。ただしこれらの使用は稀になりつつある。現在はラジコンエンジンの始動用にVT-10(1.5V)や道路標識灯用の電池がよく使われている。

9V型はトランジスタラジオ用に設計されたものである。真空管ラジオのB電池にBL-030(45V)、BL-045(67.5V)等の高電圧電池も存在したが、国内での生産は終了し、海外に数種類が残るのみである。

規格名の意味

IEC 60086とJIS C 8500の規格名称の意味を述べる。

  • 積層電池(内部で複数の電池が直列に繋がれている電池)は、最初に内部の電池の数を表す(例 6F22)。単電池では何も付かない。
  • アルファベットの1文字目は、以下の電池系を表わす。数字は公称電圧。
    なし
    マンガン乾電池 (1.50V)
    F
    酸化鉄・リチウム電池リチウム乾電池)(1.50V)
    L
    アルカリ乾電池 (1.40V)
    Z
    ニッケル系一次電池(1.50V)
  • その次のアルファベットは、形状を表わす。
    R
    円形(円筒形、ボタン形、コイン形)
    F
    角形、平形
  • その次の数字の列は、寸法を表わす。「乾電池」の場合、直径順になっている(「単○形」の数字は容量順なので順序が一致しない)。R1(単5形)より細い電池は数字が足りなくなったため、R03などとなっている。
  • 単1形 - 単3形マンガン電池に限り、その次のアルファベットでグレードを表わす。
    • S - 標準 (standard) 途上国や中国等で生産されている。外装色からと称される。
    • C - 高容量 (high capacity) 国内では製品入れ組み用やOEM用である。欧米では一般的なグレードで外装色からと称される。
    • P - 高出力 (high power) 欧米では一般的なグレードで外装色からと称される。国内では数社が販売するのみである。
    • PU - 超高性能 ※JISのみと称されるもので、日本独自規格である。

乾電池の構造

一次電池の内部構造には、次のような種類がある。

円筒型乾電池

ボタン型電池

特徴と用途

構造別の特徴と用途

マンガン乾電池

使用により徐々に電圧が低下するが、電流を止めると一時的に起電力が回復する。

大電流を流せないため、時計(置時計、掛時計)や(CDラジカセなどの)バックアップメモリー用のように小電流で連続動作させるもの、ドアチャイム・石油ストーブの点火&消火時臭い取り機構・デジタル体重計・電卓・各種リモコンなどのように間欠的な動作を行なうものに適する(但しリモコンの場合、音声認識機能などを有する多機能モデルは「短寿命のマンガン乾電池は使えず、必ず長寿命アルカリ乾電池を使うよう指示」されている機種もあり)。

アルカリ乾電池

マンガン電池に比して長時間安定した電圧・大電流を維持し、電流を止めると一時的に起電力が回復する。近年の大電流モデルほど、寿命を迎える時の電圧降下は急激な傾向。

デジタルカメラエレクトロニックフラッシュ・携帯テレビ・小型の携帯電話&スマートフォン充電器・バックライト付き液晶ディスプレイを備えた携帯オーディオ機器(ポータブルMD、ポータブルCDプレーヤー、ポータブルレコードプレーヤー、MP3プレーヤー、CDプレーヤー付きラジオ、ポケットラジオ、CDラジカセテープレコーダーICレコーダー)・電動玩具(電池で動く車、電車、動物)・懐中電灯・電動シェーバー拡声器・小型の楽器アンプ・携帯用小型扇風機など大電流で連続動作させるものや、電波時計エアコン&温水洗浄便座のリモコン・ガス器具(ガステーブル瞬間湯沸かし器バランス型風呂釜など)や石油風呂釜の点火&安全装置・ワイヤレスマウス&キーボード・ワイヤレスマイクなど電圧が降下すると機能に影響したり動かなくなったりする機器に適する(「短寿命のマンガン乾電池は使えず、必ず長寿命のアルカリ乾電池を使うよう指示」されている機器もある)。

ニッケル乾電池

デジタルカメラなど高電圧を要求する機器に向く。初期電圧が一般の乾電池よりも高く1.7V程度あり、負荷をかけてもそれを維持するため、特に消費電力の大きなデジタルカメラで実力を発揮する。

東芝製のニッケル電池(GigaEnergy)はデジカメ専用となっていた。(後継は「EVOLTA」及び「EVOLTA NEO」)。高い電圧に比して容量は少ない。

リチウム乾電池

大容量で大電流を維持できる。また、極めて自己放電が少なく長期間の使用に耐える。

出力モーターやデジタルカメラなどからデータ保持用まで、大電流・小電流問わず使用可能。電池本体が軽く、本数を多く使用するカメラ用ストロボなどの機器にも有用。対応する温度域が広く、低温に強い。

酸化銀電池

1.55V。主に写真機などの露出計や薄型電卓の電源など。

水銀電池

主に写真機などの露出計の電源など。古い写真機に多く使われていたが、環境問題から生産中止となった。必要な機器向けに代用スペーサーが作られている。

二酸化マンガンリチウム電池

3.0V。メモリの起動用電源、釣り用の浮き、フィルムカメラのデート機能、携帯ゲーム機など。

空気亜鉛電池

1.4V。耳掛式及び耳穴式、眼鏡と一体化されている補聴器の電源として使われている。

規格別の主な用途

懐中電灯や乾電池で動作するおもちゃのような電力消費の大きいものには単1形や単2形が多く使われ、ラジオなどの小型の電子機器には単3形や単4形が広く使われる。単3形を基準にすると、単4形の電池容量は約半分、単2形は約3倍弱、単1形は約5 - 6倍となる。主流は単3形だが、近年機器の小型化が進んだ事や電力消費が抑えられている事もあり単4形の流通量が増え、単1形、単2形は減っている。単5形は小型のライトや防犯ブザーに使用される。

梱包方法

大半の乾電池は「2本1セット」で販売されており、パナソニックなどの大手メーカーは(使う分だけ切り離して未使用品と区別できるよう)シュリンク包装ビニールへミシン目を縦に入れている。量販店では「最大20本を1セットとしたお買い得パック」も販売されている一方、100円ショップでは単1・単2を中心に「1本パック」で販売されている製品もある。

容量

電池の容量はAh(アンペア・アワー)で表わされる。例えば2,000mAhの容量であれば、100mAを20時間ほど流せるはずである。しかしアルカリやマンガンは大電流に適しておらず、大電流の用途では極端に容量が少なくなる。また製品によるバラつきも大きい。

上記より、それぞれの特徴がうかがえる。

アルカリ乾電池とマンガン乾電池の特徴の違いによる使い分けは浸透せず、また製造企業の宣伝戦略もあって「アルカリ乾電池は、マンガン乾電池より価格が高いが強い(長持ちする)」という認識が広まった(それ自体は虚偽ではない)。その後アルカリ乾電池が安くなってマンガン乾電池との価格差が少なくなると、アルカリ乾電池のみを扱いマンガン乾電池を置かない店も増えた。

携帯オーディオ機器の大半は(液晶ディスプレイ表示やランプ明暗で電池交換時期を知らせる)「電池残量表示機能」を搭載しているが、電池交換サインは本体内メモリー(時計&タイマー設定・ラジオプリセット受信ポジション設定・CD再生曲プログラム設定・音質メニュー設定など)を保護する観点から「(完全に使い切る前の)電池寿命がわずかに残った時点」で出るようになっている(電池が空になるまではラジオなどの機能が動作する「電池交換予告サイン」と、「全機能を完全停止させて電池交換を催促するサイン」の2段階表示を採用している機種もある)。レコーダー・プレーヤー類(テープレコーダー・ICレコーダー・CDラジカセ)は「電池の消耗により大切な内容の録音・ダビングなどが出来なくなる」トラブルを未然に防ぐ観点から「新しいアルカリ乾電池・満充電された充電式電池・AC電源いずれかの使用を推奨」している(特に録音時・CD再生時は消費電力が多くなるため、電池駆動時はアルカリ乾電池使用を推奨。なお駆動用とバックアップメモリー用を同一乾電池が兼務している機種では「本体電源を切って電源コードを本体から抜いている時でも微弱な電力が消費される」ことから、電池はアルカリ使用時でも約1年で消耗。このため新品の予備電池を多めに用意すると共に、室内での長時間使用時はAC電源による駆動を推奨。但し防水対応機種の場合、浴室など水がかかりやすく湿気の多い場所で使う場合はAC電源使用不可となり、駆動は必ずアルカリ乾電池又は充電式電池を用いる)。温水洗浄便座リモコン・ガス&石油風呂釜・ガステーブル・ワイヤレスキーボード&マウスも大半が「電池交換サイン」を搭載しており、通常使用時は約1年で乾電池が消耗する(バランス型ガス風呂釜・ワイヤレスキーボード&マウスの場合、口火を消し忘れたり電源を切り忘れると乾電池は約1ヶ月で消耗する)。なおリモコン操作対応のCDラジカセ・CDラジオ・携帯ラジオ・ポータブルCDプレーヤーは「リモコンにある電源ボタンは乾電池駆動時に切専用とし、リモコンでの電源入はAC駆動時のみ可」としている他、ディスプレイの液晶バックライトは「乾電池駆動の場合・ボタンを押した時に約5秒間だけ点灯させ、常時点灯はAC駆動時のみとする」ことで、誤動作などによる乾電池消耗を早めない工夫をしている。加えて無操作状態が最長1時間半以上続くと自動で電源を切る「オートパワーオフ(切り忘れ防止)」機能を搭載した製品もある。

使用上の注意

液漏れ

アルカリ電池に起きやすいとされる液漏れは、過放電によって更にその確率が上がる。過放電とは、機器を作動させることができない電圧(通常0.9V が基準)になること。これにより、乾電池内に水素が急速に発生し、内圧上昇による破裂を防ぐため、安全弁が開く構造になっている。このとき水素と一緒に内液が放出される。また、マイナス側端子の損傷も原因の一つ。度重なる改良が行なわれているが、現在でも基本的にはどの電池にも起こりうる。異種電池の混用によって、先に寿命を迎えた電池が過放電ないし逆充電状態に置かれて引き起こされることもある。マンガン電池が相応とされる微弱電力機器(時計など)[1][2][3]にアルカリ電池を入れた場合、結果的に長期間の使用となり液漏れを誘発することもある。何らかの理由でいったん液漏れが発生すると、アルカリ電池の場合は電解液が水酸化カリウム等の強アルカリのため、漏れた液に触れば化学火傷を起こし、目に入れば失明のおそれもある。また、電池の種類を問わず液漏れは金属腐食の原因となるため故障が起こりやすい。

使用推奨期限

1993年以降に発売された乾電池の多くには、使用推奨期限が刻印されている。使用推奨期限は、使用開始を推奨する期限を示した物であり、期限までに使い終わることを推奨しているわけではない。期限は製造時から数年程度が一般的。ほとんどのメーカーが、マンガンは単1、単2が3年、単3から単5が2年、6F22が1年半となっている。アルカリは単5と9Vを除いて5年が多くなっているほか、近年のモデル(富士通 Premiun G、maxell ボルテージ、パナソニックエボルタ、東芝インパルスなど)では10年となっている(100円ショップで販売されているアルカリ乾電池には7年のモデルもある)。リチウム電池では米国エナジャイザー社のアルティメットリチウムで15年となっている。

使用済み乾電池のリサイクルと廃棄

家電量販店をはじめとした回収体制が確立している充電池に比べると認知度は劣るが、乾電池はリサイクルの対象である。一例として、回収された使用済み乾電池は、資源化施設に運ばれた後製錬され、亜鉛合金、電気亜鉛、鉄等に再資源化される。一般に、自治体が担っている場合が多く、公共施設の入り口付近に回収ボックスが設置されている場合が多い。マンガンなどの希少金属を再生・再資源化するために拠点回収するなど、蛍光灯等の有害ゴミと同様に回収する市町村・小売店も多い。

現在日本で生産されている乾電池には水銀が含まれていないため、廃棄する場合は、特に大都市部などでは不燃ゴミとして回収しているところが多く、これらの地域のホームセンターや家電量販店などでは乾電池の正しい使用法を啓発するビデオや手引書の中でも、粘着テープ等で電極を絶縁してから不燃ゴミとして廃棄するように示されている。

水銀0使用

『水銀0使用』とは『水銀不使用』の意味。日本では、マンガン乾電池は1991年、アルカリ乾電池は1992年から、水銀は使用されていない。ボタン形酸化銀電池は、無水銀化した物を2005年ソニー株式会社が商品化させた。2005年1月から、10種を全世界で順次販売する。ただし設備が水銀使用電池と共用なので、微量の水銀が検出されることもありうる。なお、アルカリボタン電池はいまだに水銀0化がなされていないものが多く、処分には注意を要する。中国製でも一部の電池には水銀が使用されている。

歴史

乾電池以前

参照: [[電池の歴史]]

乾電池の誕生

  • 1885年(明治18年)- ドイツカール・ガスナー (Carl Gassner) がドイツで乾電池の特許を取得(生産開始は1888年)。小型湿電池の性能に不満を抱いた日本の時計技師屋井先蔵が、より取扱いが簡素でまた日本の寒冷地でも使用可能な時計用小型一次電池「屋井式乾電池」を作る。
  • 1888年(明治21年) - デンマークヘレンセンが乾電池の特許を取得。
  • 1892年(明治25年) - シカゴ万国博覧会帝国大学理学部が地震計を出展する。これに使用した屋井式乾電池がアメリカ企業に模倣され、翌年には「Dry battery」という模倣品が舶来品として日本に逆輸入された(当時の日本は「日本が外国から取るものは多くても外国が日本から取るものは少ない」との考えに立って法律を作っていた[4])。
  • 1892年(明治25年) - 日本の乾電池の特許の第一号が高橋市三郎によって取得される(第2,062号)。その後屋井先蔵も金銭難から出願できずにいた乾電池の特許を出願・取得(第2,086号)。
  • 1896年(明治29年) - アメリカ・エナジャイザー(energizer)社が、世界で初めて消費者向けの乾電池を発明。

乾電池の飛躍

日本国内の主な乾電池・充電式電池メーカーと主なブランド

脚注

外部リンク

テンプレート:ガルバニ電池

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