九州国立博物館
九州国立博物館(きゅうしゅうこくりつはくぶつかん)は、福岡県太宰府市石坂にある歴史系の博物館。独立行政法人国立文化財機構が運営する博物館の1つで、2005年10月16日に開館。太宰府天満宮裏で、同宮所有の丘陵地に建設された。通称「九博」(きゅうはく)「九国」(きゅうこく)。館長は島谷弘幸。
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概要
100年以上の歴史を有する東京・京都・奈良の3つの国立博物館が美術系博物館であるのに対して、九州国立博物館は歴史系博物館として設立された。九州が日本におけるアジア文化との交流の重要な窓口であった歴史的かつ地理的背景を踏まえ「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える博物館」を基本理念に、旧石器時代から近世末期(開国)までの日本の文化の形成について展示している。
また、アジア地方各地との文化交流を推進する拠点としての役割も持って建設されているため、アジア各地の民族美術の展示が行われたり、実際に体験できるようになっている。
岡倉覚三(天心)が九州にも国立級の美術館・博物館が必要であると説いてから100年。太宰府天満宮をはじめ関係各所の熱意により念願は結実し、現在では年間100万人以上の来場がある施設となっている。なお、九州で最も初詣の参拝客が多い同天満宮そばにあることから、他の国立博物館とは異なり元日から開いている。ただし、年末には12月25日頃から閉館するので注意が必要である。
日本において国立文化財機構が運営する「国立博物館」を称する博物館としては1897年設立の京都国立博物館以来、108年ぶりに新設された。日本の国立文化財機構が運営する国立博物館の中で最大の敷地面積と、1つの建物としては30,085m2と最大の延床面積を持つ博物館であり、開館当時はこのことが話題となった。(ただし東京国立博物館のメインとなる5つの展示館の合計延床面積60,420m²には大きく届かない。また国立文化財機構運営ではないが、国立歴史民俗博物館の延床面積の方が35,548m2、国立民族学博物館の延床面積の方が51,225m2と大きい)。なお、当館収蔵品のほか個人や法人からの寄託品も数多く保管している(所蔵品には含まない)。
沿革
- 1893年7月 - 江藤正澄・西高辻信厳(太宰府天満宮宮司)・吉嗣拝山が菅公千年祭記念の「鎮西博物館」設置を計画。福岡県の認可の元、募金活動を始めたが、翌年の日清戦争により挫折。
- 1896年 - 『鎮西博物館歴史参考之備品』が発表される。展示品として須恵器器台や石包丁・狛犬などが図示されている。
- 1899年2月 - 岡倉覚三(天心)が、古来からの外交の要としての九州に注目し、歴史討究のための九州博物館の必要性を主張。
- 1899年9月29日 - 『福岡日日新聞』(現在の『西日本新聞』)紙上に森鴎外の「我をして九州の富人たらしめば」が掲載される。
- 1927年2月 - 第52回帝国議会で山内伴造ら福岡県選出の代議士によって「九州博物館ニ関スル建議案」が提出され、衆議院本会議で可決。政府に提出。
- 1948年1月 - 文部省が昭和24年度予算に国立博物館長崎資料館の設置予算を計上したが、長崎市が原爆被害復旧優先を理由に返上。
- 1949年 - 福岡県が国立博物館九州分館誘致を決定。文部省に陳情。
- 1966年11月 - 総理府明治百年記念準備会議が「歴史民族博物館」建設を採択、閣議はこれを承認(最終的に千葉県佐倉市に国立歴史民俗博物館として建設)。
- 1967年11月 - 福岡県が国立歴史博物館の誘致を開始。
- 1980年4月 - 「博物館等建設推進会議」発足。機関紙『文明のクロスロードMuseum Kyusyu』刊行を中心とした建設運動が活発化。
- 1994年6月 - 第1回「新構想博物館の整備に関する調査研究委員会」開催。文化庁長官が九州設置について諮問。
- 1996年3月 - 文化庁が新構想博物館の設置候補地を福岡県太宰府市とすることを決定。
- 1999年5月 - 同委員会が「九州国立博物館(仮称)基本計画」を策定。
- 2002年4月 - 福岡県及び財団法人九州国立博物館設置促進財団が共同で建設工事(3年計画の第一年次)に着手。
- 2005年4月1日
- 九州国立博物館設置。
- 三輪嘉六が館長に就任。
- 人事を発表。
- 2005年10月15日 開館。
- 2005年10月16日 一般公開開始。
- 2005年10月30日 最多入館者数21,797人。
- 2005年11月21日 入館者数50万人突破。
- 2006年2月19日 入館者数100万人突破。
- 2006年5月14日 入館者数150万人突破。
- 2006年8月31日 入館者数200万人突破。
- 2006年10月16日 開館1周年。入館者数220万人。
- 2007年3月2日 入館者数300万人突破。
- 2007年10月16日 開館2周年。入館者数約378万人。
- 2007年10月31日 今上天皇・皇后が常設展示を視察
- 2008年8月14日 入館者数500万人突破。
- 2008年12月13日 日中韓首脳会議(麻生太郎、温家宝、李明博)が開催される。
- 2010年6月11日 入場者数600万人突破。
- 2010年7月9日 国宝「奈良県藤ノ木古墳出土品」のうち、馬具「鉄地金銅張鐘形杏葉」1箇が、特別展に係る輸送中に毀損。
- 2010年11月3日 入場者数800万人突破。
- 2012年10月9日 入場者数1000万人突破。
- 2015年 開館10周年。記念展として東大寺正倉院宝物をはじめとする『美の国・日本展』が開催された。
- 2017年4月28日 毎週金曜日と土曜日の開館時間を、午後8時まで延長(夜の九博)
- 2017年8月19日 入場者数1500万人突破。
特別展
- 2005年
- 10月 「美の国 日本」
- 2006年
- 1月 「中国 美の十字路」
- 5月 「うるまちゅら島琉球」
- 8月 「南の貝のものがたり」
- 10月 「海の神々」
- 2007年
- 2008年
- 2009年
- 2010年
- 1月 開山無相大師六五〇年遠諱記念 「京都妙心寺」 - 禅の至宝と九州・琉球 -
- 4月 日本磁器ヨーロッパ輸出350周年記念 「パリに咲いた古伊万里の華」
- 7月 「馬 アジアを駆けた二千年」
- 10月 「誕生!中国文明」
- 2011年
- 1月 没後120年 「ゴッホ展」
- 3月 黄檗宗大本山萬福寺開創350年記念 「黄檗-OBAKU」-京都宇治・萬福寺の名宝と禅の新風
- 6月 よみがえる国宝 - 守り伝える日本の美 -
- 9月 草原の王朝 「契丹」 - 美しき3人のプリンセス -
- 2012年
- 1月 細川家の至宝 - 珠玉の永青文庫コレクション -
- 4月 平山郁夫 ‐ シルクロードの軌跡 ‐
- 7月 美のワンダーランド 十五人の京絵師
- 10月 フェルメール 「真珠の首飾りの少女」 in ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年
- 2013年
- 2014年
- 1月 国宝大神社展
- 4月 華麗なる宮廷文化 近衞家の国宝 京都・陽明文庫展
- 7月 クリーブランド美術館展 - 名画でたどる日本の美 -
- 10月 台北國立故宮博物院 - 神品至宝 -
- 2015年
- 2016年
- 2017年
- 2018年
- 2月 書聖 王羲之と日本の書
- 5月 至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
- 10月 オークラコレクション 古今の美を収集した、大倉父子の夢
- 2019年
指定文化財
国宝
重要文化財
- 絹本著色浄土曼荼羅図(大津市・円満院伝来)
- 絹本著色仏涅槃図 命尊筆
- 紙本著色病草紙断簡 3幅1枚 - 「頭の上がらない乞食法師」「侏儒」「屎を吐く男」(以上掛幅)、痣のある女(1枚)
- 紙本墨画布袋図 簡翁居敬賛 - 中国・南宋時代[3]
- 紙本墨画淡彩山水図 2幅 狩野正信筆
- 紙本淡彩陸奥奇勝図 池大雅筆
- 紙本墨画日新除魔図 葛飾北斎筆 219枚(附:款記、識語類5枚)[4]
- 唐詩残篇
- 古今和歌集巻第二・第四断簡(亀山切)
- 継色紙(われみても)[5]
- 大燈国師墨蹟 上堂語(凩墨蹟)
- 孤峯覚明墨蹟 与保樹大姉法語 南北朝時代
- 馮子振墨蹟 与放牛光林語 中国・元時代
- 宋版圜悟心要(えんごしんよう)
- 石造浮彫三尊仏龕(ぶつがん) - 中国・唐時代(長安・宝慶寺伝来)
- 石造浮彫三尊仏龕 - 中国・唐時代(長安・宝慶寺伝来)
- 銅造如来立像(弥勒仏立像) - 中国・北魏時代、太平真君4年(443年)[6]
- 木造阿弥陀如来立像(京都府亀岡市・元明院伝来)
- 木造観音菩薩立像(京都市・清和院伝来)
- 木造観音菩薩立像
- 奈良三彩壺 - 奈良時代
- 緑釉四足壺 - 猿投窯、平安時代
- 色絵藤棚文大皿 - 鍋島
- 色鍋島松竹梅文瓶子[4]
- 菊蒔絵手箱
- 亀甲地螺鈿鞍
- 花鳥蒔絵螺鈿聖龕
- 油滴天目茶碗 - 中国・南宋時代
- 芦屋楓流水鶏図真形釜(しんなりがま)
- 孔雀文鎗金(そうきん)経箱 - 中国・元時代、1315年
- 銅鐘 高麗時代、金の承安六年銘
- 大和国添上郡楢中郷家地手継券文(十六通)1巻
- 対馬宗家関連資料 14,033点
- 印章(図書・木印)37点
- 朝鮮国書契・書簡 16点
- 文書・記録類 13,780点
- 書画・器物類 200点
- 附:文書箱 45点
- 琉球国中山王書翰並貢物目録 23通(附:書翰箱2合)(東京国立博物館と分有)
- (2018年度指定見込み)安南国副都堂福義侯阮書簡 日本国国王宛 1通、安南国文理侯書簡 日本国商人市良碧山伯等宛 1幅[7]
- 白釉経筒 福岡県四王寺山経塚出土
- 彩画人馬鏡
- 多宝千仏石幢(せきとう) - 中国・遼時代
以下の物件は国(文化庁)所有、九州国立博物館(福岡県太宰府市)所在である。
- 小早川家文書(三百六通)31巻(重要文化財)
- 金錯銘直刀身(重要文化財)
- Landscape by Kano Masanobu (Kyushu National Museum)2.jpg
山水図(双幅のうち)狩野正信
- Landscape by Kano Masanobu (Kyushu National Museum).jpg
山水図(双幅のうち)狩野正信
- Pure Land Mandala (Kyushu National Museum).jpg
浄土曼荼羅図
観覧料(文化交流展)
2014年4月1日現在
- 大人 - 通常料金430円/団体料金220円
- 大学生 - 通常料金130円/団体料金70円
- 下記該当者は無料。
- キャンパスメンバーズ会員
入館料支払いには、電子マネー[10]が使用可能。
アクセス
- 西鉄太宰府線太宰府駅より徒歩15分。
- 太宰府天満宮より徒歩10分。(「虹のトンネル(連絡通路)」経由)
- JR鹿児島本線二日市駅より西鉄バス二日市(1-2)太宰府ゆきに乗車、九州国立博物館前バス停より徒歩3分。
- 西鉄太宰府線西鉄五条駅より西鉄バス二日市原営業所行きに乗車、九州国立博物館前バス停より徒歩3分。
館長
建築概要
- 設計 - 菊竹清訓建築設計事務所・久米設計
- 照明 - 近田玲子デザイン事務所
- 竣工 - 2004年
- 施工
- 敷地面積 - 160,715m²
- 建築面積 - 14,623m²
- 延床面積 - 30,085m²
- 構造 - S造、SRC造
- 規模 - 地上5階、地下2階
- 所在地 - 〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4-7-2
- 受賞 - 日本免震構造協会賞(2005年)、照明普及賞(2005年)
- その他−屋根:チタン製(三晃金属工業施工・新日鐵住金製チタン)ブルー発色
スーパーハイビジョンシアター(旧称:シアター4000)
4階の文化交流展示室内に「スーパーハイビジョンシアター」と呼ばれるスーパーハイビジョンシアターがあり、「受け継がれるおもい、小さな島の教会群」「不思議・再発見!200年前の日本地図」「じろじろ ぞろぞろ 南蛮屏風」「海の正倉院・沖ノ島」「世界をとらえた日本のわざと美」「シルクロード 敦煌の仏たち」と題した映像ソフトを10:00〜16:30の間、30分ごとに上映している。
脚注
- ↑ 「国立博物館誘致の歩み」 博物館等建設推進会議編『文明のクロスロードMuseum Kyusyu』第72号 2002年 ISSN 0287-2757
- ↑ 福岡市博物館常設展示室(部門別)解説272「おもしろ博物館 」2005年
- ↑ 文化庁サイトの「国指定文化財等データベース」及び「文化遺産オンライン」は本件を東京都の個人所有とするが誤りで、国立文化財機構の所有(九州国立博物館保管)である。(参照:九州国立博物館サイト)
- ↑ 4.0 4.1 “北斎重文など九博に寄贈 東京の古美術商 コレクション259件”. 西日本新聞. (2018年1月11日) . 2018閲覧.博物館公式サイトの「収蔵品ギャラリー」には未収録。
- ↑ 平成28年12月27日官報号外政府調達第242号
- ↑ 文化庁サイトの「国指定文化財等データベース」では本像の保管先を東京国立博物館としているが、九州国立博物館サイトの「収蔵品ギャラリー」に本像が掲載されているため、本記事に収録する。重要文化財指定名称は「銅造如来立像」だが、九州国立博物館サイトでは「銅造弥勒仏立像」と表記されている。
- ↑ 「文化審議会答申〜国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について〜」(文化庁サイト、2018年3月9日発表)
- ↑ 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類(本人及び条件付きで介護者1人を含む)
- ↑ 生年月日がわかる証明書(生徒手帳、健康保険証、運転免許証等)の提示が必要。
- ↑ WAON・nanaco・Edy・iD・nimoca及び相互利用可能な交通系IC乗車券
- ↑ 西日本新聞(2015年3月15日)九博・三輪館長退任へ
- ↑ 独立行政法人国立文化財機構お知らせ(2015年3月18日)
- ↑ 西日本新聞(2015年3月19日)九博新館長に島谷氏
関連項目
- 博物館
- 国立博物館
- 東京国立博物館
- 奈良国立博物館
- 京都国立博物館
- 国立文化財機構
- 九州歴史資料館(福岡県が運営している博物館。隣接地にあったが、のちに移転した)
- 福岡県道610号九州国立博物館線
- 福岡市博物館
関連人物
外部リンク