乗鞍スカイライン
乗鞍スカイライン(のりくらスカイライン)は、岐阜県高山市(飛騨)側から乗鞍岳畳平を繋ぐ山岳観光道路である。岐阜県道5号乗鞍公園線の一部。10月下旬から5月中旬までは積雪のため通行止め、開通期間はマイカー規制が行われており一般車両は通行できない[1]。
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概要
標高1,684 mの平湯峠を起点とし、標高2,702 mの畳平を終点とする、岐阜県東部の乗鞍岳に向かう延長14.4 kmの山岳観光道路であり、かつては岐阜県道路公社の管理する有料道路であったが、2002年(平成14年)10月31日に無料開放された[2] 。
日本一の高度を走ることのできる雲上のスカイラインとして名高く、景観も格別で、夏季は観光客のマイカーで溢れかえり渋滞が続いていた[3]。付近は高山植物の宝庫でもあることから、マイカーによる著しい排気ガスによる自然破壊の進行が問題となっており、さらにはマイカー客による高山植物の摘み取り行為やゴミの持ち込み行為、鳥類など動物への威嚇行為(マイカー客が連れ込んだペットによる威嚇も含む)などの問題もあり、自然保護が叫ばれていた。
この渋滞解消と自然保護の観点から、乗鞍岳は中部山岳国立公園の特別保護区域に指定されて規制が厳しくなったため、2003年(平成15年)5月15日からは(実質的には無料開放されたと同時に)通年マイカー規制となり、一般車両は走行する事ができなくなった。
こうしたマイカー規制の趣旨・目的は乗鞍スカイラインを走る路線バスでテープによる車内案内がされている。
沿革
- 1941年(昭和16年):陸軍航空本部が航空エンジンの高地実験施設を乗鞍岳畳平に建設することを計画。そのための軍用道路として建設を開始。設計、施工は岐阜県。
- 1942年(昭和17年):幅員3.6 m、延長約15 kmが完成。第2陸軍航空技術研究所の乗鞍航空実験所が畳平に設置される。
- 1948年(昭和23年):岐阜県の県道に編入され県道乗鞍公園線となる。翌1949年(昭和24年)から濃飛乗合自動車による乗鞍登山バスの本格的な運行が始まる。
- 1969年(昭和44年):岐阜県開発企業局が県道乗鞍公園線を拡幅改良の工事を開始[4]。
- 1973年(昭和48年)7月1日:2車線の乗鞍スカイライン開通。30年の料金徴収期限付きで岐阜県が管理運営。
- 1980年(昭和55年)4月1日:管理運営が新たに発足した岐阜県道路公社に移管される。
- 2002年(平成14年)10月31日:料金徴収が終了。岐阜県道5号乗鞍公園線の一部となる。
- 2003年(平成15年)5月15日:無料開放とともにマイカー乗り入れを禁止。日本の国立公園で初めて岐阜県による環境保全税が導入される。
2012年度(平成24年度)から電気自動車の乗り入れ実験が行われる[5]。
路線状況
1973年(昭和48年)7月1日の開通から償還を終えた2002年(平成14年)10月末までの利用台数は約669万7,700台。
冬季閉鎖があり、10月下旬から5月中旬までの期間は通行することは出来ない[2]。マイカー規制のため、一般車両の乗り入れは禁止されており、バスやタクシー、自転車のみ通行可能である[2]。このため、通行する自動車は皆無に近い状況であるが、マウンテンサイクリングには絶好の道路であり、自転車で往来する自転車ヒルクライマーがよく見られる[2]。
有料道路時代は長らく自転車の通行は禁止されていたが、2003年(平成15年)からは自転車の通行が許可された。2004年(平成16年)からは乗鞍スカイライン・サイクルヒルクライム(サイクルロードレース)が開催されている。秋にはクマが出没することがあるため、乗鞍自転車利用適正化協議会が注意を呼び掛けている。東海地方のローカルニュースでは、開通の頃になるとこの道路の話題が流される。さらに同地域の道路交通情報では、開通・閉鎖の頃になると、この道路の話題が流される。
規制
いずれも全線(平湯峠ゲート・鶴ヶ池ゲート間)で規制される。
- 冬期通行止(開通期間は、概ね5月15日から10月31日まで)
- 通年マイカー乗り入れ規制(ただし、バス(定員11名以上。観光バス含む)、タクシー、自転車、道路交通法に基づく除外車両などは規制外)
- 夜間通行禁止(開通期間中)
- 5月、6月、10月 - 18:00から翌7:00まで
- 7月、8月、9月 - 20:00から翌3:30まで
山頂駐車場
終点には山頂駐車場(乗鞍鶴ヶ池駐車場または畳平駐車場)がある。乗鞍スカイラインおよび乗鞍エコーラインがマイカー規制されている現在、これらを通行可能な車両が駐車する際には駐車料金と合わせて乗鞍環境保全税が徴収される。(緊急車両は除く)
- 大型バス:10,000円
- マイクロバス:4,500円
- タクシー:2,000円
路線バス
平湯温泉近郊のあかんだな駐車場・ほうのき平駐車場から、マイカーなどから乗り換えて、畳平までを片道約1時間10分(ほうのき平からは約45分)で走る[2]。濃飛乗合自動車とアルピコ交通の共同運行。
運賃
平湯・畳平間を結ぶ2012年現在の路線バスの運賃は運賃以下の通り。
あかんだな駐車場・平湯温泉から畳平
- 大人
- 往復:2,300円
- 片道:1,420円
- 子供
- 往復:1,150円
- 片道:710円
ほうのき平駐車場から畳平
- 大人
- 往復:2,300円
- 片道:1,270円
- 子供
- 往復:1,150円
- 片道:640円
通行料金(有料道路時代)
2002年(平成14年)当時、普通車の通行料金は1,570円、二輪車は1,100円であった。
地理
最高点の標高はおよそ2,710メートル。終点畳平駐車場の標高は2,702メートル。なお、乗鞍岳畳平地域の公共交通機関の車両が走行する最高地点は乗鞍スカイラインではなく乗鞍エコーラインの長野県・岐阜県県境地点の標高2,715メートル地点で、この地点が車の走る道路としての日本最高地点であり[3]、日本の公共交通機関車両が到達できる最高地点でもある。桔梗ヶ原付近は長野県域を通行するため、全線が岐阜県に属しているわけではない(県道については岐阜県道5号乗鞍公園線を参照)。
森林限界を超えており、背の高い木は生えておらず、雲の上の景色を見ることができる[2]。山々のピークを避けながら緩やかなカーブが続くワインディングロードで、遠方には穂高連峰を望むことができる[2]。
接続道路
乗鞍スカイラインの区間と接続している道路は以下の通り。
- 岐阜県道485号平湯久手線(起点で接続)
- 乗鞍エコーライン(長野県道84号乗鞍岳線)
脚注
- ↑ 乗鞍山頂マイカー規制(アルプス観光協会)
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 小川・栗栖・田宮 2016, p. 55.
- ↑ 3.0 3.1 浅井建爾 2001, p. 48.
- ↑ 岐阜県道路公社37年の歩み・乗鞍スカイライン有料道路(1980年の事象まで)
- ↑ 岐阜・乗鞍スカイライン、電気自動車乗り入れ実験へ - 朝日新聞デジタル 2012年3月10日
参考文献
- 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』 日本実業出版社、2001-11-10、初版。ISBN 4-534-03315-X。
- 「乗鞍スカイライン」『ニッポン絶景ロード100』 中村純一編、枻出版社〈エイムック〉、2016-04-10。ISBN 978-4-7779-3980-8。