三段論法

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三段論法(さんだんろんぽう、: συλλογισμός, シュロギスモス[1]: syllogismus: syllogism)は、論理学における論理的推論の型式のひとつ。典型的には、大前提、小前提および結論という3個の命題を取り扱う。これを用いた結論がであるためには、前提が真であること、および論理の法則(同一律無矛盾律排中律、および充足理由律)が守られることが必要とされる[2]

アリストテレスの『オルガノン』(『分析論前書』『分析論後書』)によって整備された。

語義

もともと言語依拠段階的推論法というような意味合いである。3段と限定されてはいない。そのように限定されるかのような誤解を招く邦訳語であるが、古代ギリシアが確立したものが3段構成だったために、欧米文明へ向けての開化という実際目的に即した訳語が作られた。インド固有の三段論法では5段構成である。

構成

3つの項(概念)と3つの命題

古代ギリシアに由来する西洋の三段論法は、

  • 大概念(Major term) - 結論において述語(P - Predicate)となる概念(項)。
  • 小概念(Minor term) - 結論において主語(S - Subject)となる概念(項)。
  • 媒概念(Middle term) - 大前提・小前提で上2つの概念(項)との関係性が示される媒介的な概念(項)。中項(M - Middle term)。

という3つの項(概念)の内、2つの組み合わせ(関係性)をそれぞれ表現する、

  • 大前提(Major premise) - 大概念/述語(P)と、媒概念/中項(M)の関係性を示す命題文
  • 小前提(Minor premise) - 小概念/主語(S)と、媒概念/中項(M)の関係性を示す命題文
  • 結論(Conclusion) - 小概念/主語(S)と、大概念/述語(P)の関係性を示す命題文

という3つの命題によって構成される、演繹的な推論規則である。

このように、(「量化」的な変動性を持つ)ある個物的/基体的な「小概念」と、抽象的/類的な「大概念」の関係性を、両概念との関係性を示すことが可能な「媒概念」(中項)を介しつつ提示/規定するのが、三段論法という手法の目的である。(「媒概念」(中項)を介さずに、すなわち「大前提」「小前提」を経ずに、端的に「結論」の「小概念」と「大概念」の関係性のみを命題として提示する場合、それは推論ではなく単なる「定義文」となる。)

このように、概念間の関係性を規定・整理する「概念の整理整頓術」としての論理学において、その推論形式の最小型となるのが三段論法である。


以下に「定言的三段論法」の例を示す。

  • 大前提:全ての人間は死すべきものである。
  • 小前提:ソクラテスは人間である。
  • 結論:ゆえにソクラテスは死すべきものである。

(なお、これが今日に至るまでに伝統的なものになっているが、アリストテレスがその著『分析論後書』において例示している、定言命題を欠いて仮言命題一本のみの「三段論法」とは形式が異なる。)

命題の4つの型

三段論法を構成する各命題は、「全称 - 特称」「肯定 - 否定」の区別の組み合わせによって、A,E,I,Oの4つの「型」に分類される。(括弧内は今日の一階述語論理における量化子を用いた表現。)

  • A = 全称肯定判断 ≪全ての人間生物である≫(∀)
  • E = 全称否定判断 ≪全ての人間不死ではない≫(∀¬=¬∃)
  • I = 特称肯定判断 ≪ある人間学生である≫(∃)
  • O = 特称否定判断 ≪ある人間学生ではない≫(∃¬=¬∀)

(なお、このAとIはラテン語の「affirmo」(肯定)、EとOはラテン語の「nego」(否定)から採られた記号で、特に深い意味があるわけではない。)

三段論法の4つの格(配列パターン)

三命題における S, P, Mの配列パターンを「格」 (かく、英 : figure) と呼び、これには4つの可能性がある。

三段論法の「格」
大前提 小前提 結論
第一格 M - P S - M S - P
第二格 P - M S - M S - P
第三格 M - P M - S S - P
第四格 P - M M - S S - P

(なお、第四格は、ガレノスが形式整備のために補完したものである。アリストテレスは、実用性は無いと考え、省いたものと考えられている。)


ちなみに、上記した命題の4つの「型」(A, E, I, O)と、この4つの「格」を組み合わせて表現すると、例えば、第一格の命題が全てAの場合は、(分かりやすくこれを小文字のaにして)

  • MaP SaM SaP

といった具合に表現できる。

種類

4つの型(A, E, I, O)を採り得る各命題が3つ(「大前提」「小前提」「結論」)組み合わされ、更にその組み合わせが命題3要素の配列パターンによって4つの「格」に分けられるので、全部で43×4=256通りの三段論法がありえるが、実際にはそのうちの19通り(厳密には「弱勢式」[3]の5通りを加えて24通り)のみから恒真な結論が得られる。このとき2つの前提はともに真でなければならない。(真でない前提からは、しばしばパラドックスが導かれる。)

その19式(24式)を示せば、

  • 第一格では AAA, (AAI,) EAE, (EAO,) AII, EIO
  • 第二格では EAE, (EAO,) AEE, (AEO,) EIO, AOO
  • 第三格では AAI, EAO, IAI, AII, OAO, EIO
  • 第四格では AAI, AEE, (AEO,) IAI, EAO, EIO

である。

詩による表現

「定言三段論法」における上記の19式を覚えるため、中世スコラ学)ではsyllogismusと呼ばれるラテン語の詩が作られた。

Barbara celarent darii ferioque prioris.

Cesare camestres festino baroco secundoe.

Tertia darapti disamis datisi felapton, bocardo ferison habet.

Quarta insuper addit bramantip camenes dimaris fesapo fresison.

この詩から子音を取り除くことによって三段論法の式が得られ(上記の詩の強調文字の部分が式である)、それぞれの式を呼ぶのには詩のおのおのの単語を用いる。

また、詩の1行目が第一格、2行目が第二格、3行目が第三格、4行目が第四格に対応している。

また、第一格以外の格は、第一格に還元され得るが、式の名称に含まれる子音のうちs, m, p および c は還元の際の手引きとなるもので、s および p はそれぞれ直前の母音で表される式を「単純換位」あるいは「限量換位」せよという意味であり、m は「前提の変換」を命じ、c は「三段論法の換位」すなわち帰謬法によって証明せよという意味である。

冒頭で示した三段論法の例は第一格の Barbaraに対応している。

大前提:全ての人間は死すべきものである。(A, M-P:全てのMはPである)
小前提:ソクラテスは人間である。(A, S-M:全てのSはMである)
結論:ゆえにソクラテスは死すべきものである。(A, S-P:全てのSはPである)

ベン図による表現

上記の19式(24式)を「ベン図」で表すと、以下のようになる。

上に「M」(中項)、左下に「S」(主語)、右下に「P」(述語)が配置され、その3つの関係が示されている。また、右上に「大前提」、左上に「小前提」、下に「結論」が補足的に示されている。

黒い領域は要素が無いことを表す、赤い領域は特称を表す。「弱勢式」の項目は背景を灰色で示している。

(このように、「オイラー図」と異なり、「ベン図」は直感的にやや分かりづらい面があるので注意。)

AAA EAE AEE AII IAI AOO OAO EIO AAI EAO AEO
1 50px
Barbara
50px
Celarent
50px
Darii
50px
Ferio
50px
Barbari
50px
Celaront
2 50px
Cesare
50px
Camestres
50px
Baroco
50px
Festino
50px
Cesaro
50px
Camestros
3 50px
Datisi
50px
Disamis
50px
Bocardo
50px
Ferison
50px
Darapti
50px
Felapton
4 50px
Calemes
50px
Dimatis
50px
Fresison
50px
Bamalip
50px
Fesapo
50px
Calemos

オイラー図による表現

上記の19式(24式)を、より直感的に分かりやすい「オイラー図」で表すと、以下のようになる。

「M」(中項)は青、「S」(主語)は赤、「P」(述語)は緑で表現されている。「弱勢式」の項目は背景を灰色で示している。

AAA EAE AEE AII IAI AOO OAO EIO AAI EAO AEO
1 50px
Barbara
50px
Celarent
50px
Darii
50px
Ferio
50px
Barbari
50px
Celaront
2 50px
Cesare
50px
Camestres
50px
Baroco
50px
Festino
50px
Cesaro
50px
Camestros
3 50px
Datisi
50px
Disamis
50px
Bocardo
50px
Ferison
50px
Darapti
50px
Felapton
4 50px
Calemes
50px
Dimatis
50px
Fresison
50px
Bamalip
50px
Fesapo
50px
Calemos

詳細

包含タイプ

AAA-1(Barbara)

第一格のAAA、すなわち「MaP SaM SaP」の三段論法。

入れ子」式に、主語(S)が述語(P)に包含されるパターン。

以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pである。 (MaP)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに()、「全てのS」は、Pである。(SaP)


具体例。(M=人間、S=ギリシア人、P=死ぬ存在)

大前提:「全ての人間」は、「死ぬ存在」である。 (MaP)
小前提:「全てのギリシア人」は、「人間」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのギリシア人」は、「死ぬ存在」である。(SaP)
AAI-1(Barbari) : 弱勢式

第一格のAAI、すなわち「MaP SaM SiP」の三段論法。

上記の「AAA-1」と同じ形だが、結論の主語(S)だけを不必要に特称にしてしまっている「弱勢式」。

以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pである。(MaP)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=人間、S=ギリシア人、P=死ぬ存在)

大前提:「全ての人間」は、「死ぬ存在」である。(MaP)
小前提:「全てのギリシア人」は、「人間」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるギリシア人」は、「死ぬ存在」である。(SiP)

AAI-4(Bamalip)

第四格のAAI、すなわち「PaM MaS SiP」の三段論法。

「AAA-1」とは逆に、主語(S)が述語(P)を包含してしまうパターン。したがって、主語(S)の観点から見れば、常にその一部だけが、述語(P)(の全体)に該当することになる。

以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=人間、S=死ぬ存在、P=ギリシア人)

大前提:「全てのギリシア人」は、「人間」である。(PaM)
小前提:「全ての人間」は、「死ぬ存在」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある死ぬ存在」は、「ギリシア人」である。(SiP)

一部重複(絶対)タイプ

AII-1(Darii)

第一格のAII、すなわち「MaP SiM SiP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pである。(MaP)
小前提:「あるS」は、Mである。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=ウサギ、S=ペット、P=有毛生物

大前提:「全てのウサギ」は、「有毛生物」である。(MaP)
小前提:「あるペット」は、「ウサギ」である。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「あるペット」は、「有毛生物」である。(SiP)
AII-3(Datisi)

第三格のAII、すなわち「MaP MiS SiP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pである。(MaP)
小前提:「あるM」は、Sである。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=ウサギ、S=ペット、P=有毛生物)

大前提:「全てのウサギ」は、「有毛生物」である。(MaP)
小前提:「あるウサギ」は、「ペット」である。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「あるペット」は、「有毛生物」である。(SiP)

IAI-3(Disamis)

第三格のIAI、すなわち「MiP MaS SiP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「あるM」は、Pである。(MiP)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=ウサギ、S=有毛生物、P=ペット)

大前提:「あるウサギ」は、「ペット」である。(MiP)
小前提:「全てのウサギ」は、「有毛生物」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある有毛生物」は、「ペット」である。(SiP)
OAO-3(Bocardo) : 否定形

第三格のOAO、すなわち「MoP MaS SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「あるM」は、Pではない。(MoP)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=ネコ、S=哺乳類、P=有尾生物

大前提:「あるネコ」は、「有尾生物」ではない。(MoP)
小前提:「全てのネコ」は、「哺乳類」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある哺乳類」は、「有尾生物」ではない。(SoP)

IAI-4(Dimatis)

第四格のIAI、すなわち「PiM MaS SiP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「あるP」は、Mである。(PiM)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=ウサギ、S=有毛生物、P=ペット)

大前提:「あるペット」は、「ウサギ」である。(PiM)
小前提:「全てのウサギ」は、「有毛生物」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある有毛生物」は、「ペット」である。(SiP)

AAI-3(Darapti)

第三格のAAI、すなわち「MaP MaS SiP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てM」は、Pである。(MaP)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pである。(SiP)


具体例。(M=正方形、S=菱形、P=長方形

大前提:「全ての正方形」は、「長方形」である。(MaP)
小前提:「全ての正方形」は、「菱形」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある菱形」は、「長方形」である。(SiP)

一部重複(可能性・不明)タイプ : 全て否定形

EIO-1(Ferio)

第一格のEIO、すなわち「MeP SiM SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pではない。(MeP)
小前提:「あるS」は、Mである。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=宿題、S=読書、P=楽しみ)

大前提:「全ての宿題」は、「楽しみ」ではない。(MeP)
小前提:「ある読書」は、「宿題」である。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「ある読書」は、「楽しみ」ではない。(SoP)
EIO-2(Festino)

第二格のEIO、すなわち「PeM SiM SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mではない。(PeM)
小前提:「あるS」は、Mである。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=宿題、S=読書、P=楽しみ)

大前提:「全ての楽しみ」は、「宿題」ではない。(PeM)
小前提:「ある読書」は、「宿題」である。(SiM)
結論:ゆえに(∴)、「ある読書」は、「楽しみ」ではない。(SoP)
EIO-3(Ferison)

第三格のEIO、すなわち「MeP MiS SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pではない。(MeP)
小前提:「あるM」は、Sである。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=宿題、S=読書、P=楽しみ)

大前提:「全ての宿題」は、「楽しみ」ではない。(MeP)
小前提:「ある宿題」は、「読書」である。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「ある読書」は、「楽しみ」ではない。(SoP)
EIO-4(Fresison)

第四格のEIO、すなわち「PeM MiS SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mではない。(PeM)
小前提:「あるM」は、Sである。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=宿題、S=読書、P=楽しみ)

大前提:「全ての楽しみ」は、「宿題」ではない。(PeM)
小前提:「ある宿題」は、「読書」である。(MiS)
結論:ゆえに(∴)、「ある読書」は、「楽しみ」ではない。(SoP)

EAO-3(Felapton)

第三格のEAO、すなわち「MeP MaS SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pではない。(MeP)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=、S=植物、P=動物

大前提:「全ての花」は、「動物」ではない。(MeP)
小前提:「全ての花」は、「植物」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある植物」は、「動物」ではない。(SoP)
EAO-4(Fesapo)

第四格のEAO、すなわち「PeM MaS SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mではない。(PeM)
小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
結論:ゆえに()、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=花、S=植物、P=動物)

大前提:「全ての動物」は、「花」ではない。(PeM)
小前提:「全ての花」は、「植物」である。(MaS)
結論:ゆえに(∴)、「ある植物」は、「動物」ではない。(SoP)

AOO-2(Baroco)

第二格のAOO、すなわち「PaM SoM SoP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「あるS」は、Mではない。(SoM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=有用、S=ウェブサイト、P=参考情報

大前提:「全ての参考情報」は、「有用」である。(PaM)
小前提:「あるウェブサイト」は、「有用」ではない。(SoM)
結論:ゆえに(∴)、「あるウェブサイト」は、「参考情報」ではない。(SoP)

分裂(排反)タイプ : 全て否定形

EAE-1(Celarent)

第一格のEAE、すなわち「MeP SaM SeP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pではない。(MeP)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのS」は、Pではない。(SeP)


具体例。(M=爬虫類、S=ヘビ、P=有毛生物

大前提:「全ての爬虫類」は、「有毛生物」ではない。(MeP)
小前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SeP)
EAO-1(Celaront) : 弱勢式

第一格のEAO、すなわち「MeP SaM SoP」の三段論法。

上記の「EAE-1」と同じ形だが、結論の主語(S)だけを不必要に特称にしてしまっている「弱勢式」。

以下のようになる。

大前提:「全てのM」は、Pではない。(MeP)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=爬虫類、S=ヘビ、P=有毛生物)

大前提:「全ての爬虫類」は、「有毛生物」ではない。(MeP)
小前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SoP)

EAE-2(Cesare)

第二格のEAE、すなわち「PeM SaM SeP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mではない。(PeM)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのS」は、Pではない。(SeP)


具体例。(M=爬虫類、S=ヘビ、P=有毛生物)

大前提:「全ての有毛生物」は、「爬虫類」ではない。(PeM)
小前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SeP)
EAO-2(Cesaro) : 弱勢式

第二格のEAO、すなわち「PeM SaM SoP」の三段論法。

上記の「EAE-2」と同じ形だが、結論の主語(S)だけを不必要に特称にしてしまっている「弱勢式」。

以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mではない。(PeM)
小前提:「全てのS」は、Mである。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=爬虫類、S=ヘビ、P=有毛生物)

大前提:「全ての有毛生物」は、「爬虫類」ではない。(PeM)
小前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
結論:ゆえに(∴)、「あるヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SoP)

AEE-2(Camestres)

第二格のAEE、すなわち「PaM SeM SeP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「全てのS」は、Mではない。(SeM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのS」は、Pではない。(SeP)


具体例。(M=爬虫類、S=有毛生物、P=ヘビ)

大前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(PaM)
小前提:「全ての有毛生物」は、「爬虫類」ではない。(SeM)
結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SeP)
AEO-2(Camestros) : 弱勢式

第二格のAEO、すなわち「PaM SeM SoP」の三段論法。

上記の「AEE-2」と同じ形だが、結論の主語(S)だけを不必要に特称にしてしまっている「弱勢式」。

以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「全てのS」は、Mではない。(SeM)
結論:ゆえに(∴)、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=有蹄生物、S=人間、P=ウマ)

大前提:「全てのウマ」は、「有蹄生物」である。(PaM)
小前提:「全ての人間」は、「有蹄生物」ではない。(SeM)
結論:ゆえに(∴)、「ある人間」は、「ウマ」ではない。(SoP)

AEE-4(Calemes)

第四格のAEE、すなわち「PaM MeS SeP」の三段論法は、以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「全てのM」は、Sではない。(MeS)
結論:ゆえに(∴)、「全てのS」は、Pではない。(SeP)


具体例。(M=爬虫類、S=有毛生物、P=ヘビ)

大前提:「全てのヘビ」は、「爬虫類」である。(PaM)
小前提:「全ての爬虫類」は、「有毛生物」ではない。(MeS)
結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」ではない。(SeP)
AEO-4(Calemos) : 弱勢式

第四格のAEO、すなわち「PaM MeS SoP」の三段論法。

上記の「AEE-4」と同じ形だが、結論の主語(S)だけを不必要に特称にしてしまっている「弱勢式」。

以下のようになる。

大前提:「全てのP」は、Mである。(PaM)
小前提:「全てのM」は、Sではない。(MeS)
結論:ゆえに()、「あるS」は、Pではない。(SoP)


具体例。(M=有蹄生物、S=人間、P=ウマ

大前提:「全てのウマ」は、「有蹄生物」である。(PaM)
小前提:「全ての有蹄生物」は、「人間」ではない。(MeS)
結論:ゆえに(∴)、「ある人間」は、「ウマ」ではない。(SoP)

その他

なお上に示した「定言三段論法」のほか、その発展として

がある。

また、ジョン・スチュアート・ミルは、如上のソクラテス云々の場合、結論を知っていないならば、大前提の全称判断は得られないのだから、三段論法は一種の循環論証であると批判した。

脚注

  1. 原義は「推論術」といった程度の意味。
  2. エス・エヌ・ヴィノグラードフ、ア・エフ・クジミン『論理学入門』西牟田久雄、野村良雄訳、青木書店(青木文庫)1973年、157頁
  3. 結論(S-P)を特称化(大小対当)したもの。

関連項目

外部リンク