一般送配電事業者
一般送配電事業者(いっぱんそうはいでんじぎょうしゃ)は、日本の電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、経済産業大臣から一般送配電事業を営む許可を受けた者をいう[1]。供給区域内で送電線、変電所などを維持、運用し、他者から受け取った電気を他者に送り届けることが主な事業である[2]。日本全土は10の供給区域に分割されており、供給区域ごとに1事業者が存在する(2016年4月時点)。
Contents
概要
2016年4月現在、一般送配電事業者は北海道電力、東北電力、東京電力パワーグリッド、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10者であり、各々の供給区域は「供給区域」節のとおりである。東京電力パワーグリッド以外の9者は、小売電気事業、一般送配電事業、発電事業の3事業を兼営している。
役割
一般送配電事業者は、送電線、変電所、配電線、柱上変圧器、電力量計などの送電用・配電用の設備を維持、運用し、これらにより託送供給、発電量調整供給、最終保障供給、離島供給を行うことが役割である。「託送供給」と「発電量調整供給」は他の電気事業者や自家発電設備のある需要家向けのサービスであり、「最終保障供給」と「離島供給」は、家庭、工場などの一般の需要家向けのサービスである。一般送配電事業者は、正当な理由なくこれらのサービスの提供を拒むことができない[3]。
2016年4月現在、一般送配電事業者は小売電気事業や発電事業を兼営することができるが、2020年4月以降これらの兼営が原則禁止されることが法律で決まっている。このため、以下では、小売電気事業や発電事業を兼営しない一般送配電事業者について説明する。
託送供給
小売電気事業者は、発電事業者から仕入れた電気を家庭、工場などの需要家に販売することを事業とするが、発電所からの受電地点と需要家への供給地点との間を結ぶ送電線、変電所などの設備は持っていない。そこで、一般送配電事業者は、小売電気事業者のような他者との契約に基づき、受電地点で他者から受電すると同時に、供給地点で他者に電気を供給する。これが託送供給である。
一般送配電事業者は託送供給の契約者ごとに専用の送電線を使用するわけではないので、託送供給の契約者が提供・受電する電力と一般送配電事業者が実際に送電する電力は異なり得る。例えば、一般送配電事業者甲が契約者乙に対してA地点からB地点まで8万kWの託送供給を約束したからといって、甲が8万kWの送電(A→B)を行うとは限らない。この例において甲が別の契約者丙に対してB地点からA地点まで10万kWの託送供給を約束している場合、甲は、乙からA地点で受電した8万kWを送電することなく、同地点で丙に供給してしまう。同時に、甲はB地点で丙から10万kWを受電し、うち8万kWを同地点で乙に供給する。甲は残りの2万kWをB地点からA地点に送電し、A地点で丙に供給する。
託送供給は、経済産業大臣の認可を受けた託送供給等約款に基づいて行うのが原則である。託送料金は公共料金であり、一般送配電事業者が適正利潤を確保できる水準に設定される。
発電量調整供給
発電事業者の発電所の出力は天候、設備の状態などにより時々刻々変動する。そこで、一般送配電事業者は、発電事業者のような他者との契約に基づき、他者からの受電と同時に、計画量に対する超過分は引き取り、計画量に対する不足分は補給して、他者に計画量の電気を供給する。これが発電量調整供給である。
最終保障供給
一般送配電事業者の休業、廃業などに経済産業大臣の許可が要るのとは異なり、小売電気事業者の撤退は自由である。また、法律により地域独占と適正利潤が保障されている一般送配電事業者とは異なり、小売電気事業者は競争に敗れ倒産する可能性がある。このため、地域によっては需要家が契約できる小売電気事業者がなくなることがあり得る。このような場合、一般送配電事業者は、小売電気事業者を介することなく、供給区域内の需要家に電気を供給する。これが最終保障供給である。
離島供給
北海道、本州、四国、九州または沖縄本島から電線路が伸びていない離島では、電気を低コストで安定的に供給することが難しい。このような離島の需要家に本土並みの料金で電気を供給する小売電気事業者が現れる見込みは薄い。そこで、一般送配電事業者は、小売電気事業者を介することなく、供給区域内の離島の需要家に電気を供給する。これが離島供給である。
離島供給は、経済産業大臣に届け出た離島供給約款に基づいて本土並みの料金で行わなければならない。離島供給は赤字になる可能性が大いにあるが、離島供給の赤字は託送供給の料金で埋め合わせることが認められている。
離島供給の対象の離島は表のとおりである[4]。中部電力、関西電力、四国電力の供給区域内には、離島供給の対象の離島はない。
一般送配電事業者 | 離島供給の対象の離島 |
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北海道電力 | 礼文島、利尻島、天売島、焼尻島、奥尻島 |
東北電力 | 飛島、佐渡島、粟島 |
東京電力パワーグリッド | 大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島 |
北陸電力 | 舳倉島 |
中国電力 | 島後、中ノ島、西ノ島、知夫里島、見島 |
九州電力 | 小呂島、対馬島、海栗島、泊島、赤島、沖ノ島、島山島、壱岐島、若宮島、原島、長島、大島、上甑島、中甑島、下甑島、竹島、硫黄島、黒島、口之島、中之島、平島、諏訪之瀬島、悪石島、小宝島、宝島、種子島、屋久島、口永良部島、奄美大島、喜界島、加計呂麻島、与路島、請島、徳之島、沖永良部島、与論島 |
沖縄電力 | 粟国島、渡名喜島、久米島、奥武島、オーハ島、北大東島、南大東島、宮古島、池間島、大神島、来間島、伊良部島、下地島、多良間島、水納島、石垣島、竹富島、西表島、鳩間島、由布島、小浜島、黒島、新城島(上地)、新城島(下地)、波照間島、与那国島 |
供給区域
一般送配電事業者 | 供給区域 |
---|---|
北海道電力 | 北海道 |
東北電力 | 青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県、新潟県 |
東京電力パワーグリッド | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
静岡県のうち熱海市、沼津市、三島市、富士宮市(昭和31年9月29日における旧庵原郡内房村の区域を除く。)、伊東市、富士市(平成20年10月31日における旧庵原郡富士川町の区域を除く。)、御殿場市、裾野市、下田市、伊豆市、伊豆の国市、田方郡、賀茂郡、駿東郡 |
中部電力 | 長野県、愛知県、岐阜県(不破郡関ケ原町(昭和29年8月31日における旧今須村の区域に限る。)、飛騨市(平成16年1月31日における旧吉城郡神岡町及び宮川村(昭和31年9月29日における旧坂下村の区域に限る。)の区域に限る。)及び郡上市(平成16年2月29日における旧郡上郡白鳥町石徹白の区域に限る。)を除く。)、静岡県(熱海市、沼津市、三島市、富士宮市(昭和31年9月29日における旧庵原郡内房村の区域を除く。)、伊東市、富士市(平成20年10月31日における旧庵原郡富士川町の区域を除く。)、御殿場市、裾野市、下田市、伊豆市、伊豆の国市、田方郡、賀茂郡及び駿東郡を除く。)、三重県(熊野市(昭和29年11月2日における旧南牟婁郡新鹿村、荒坂村及び泊村の区域以外の区域に限る。)及び南牟婁郡を除く。) |
北陸電力 | 富山県、石川県、福井県(小浜市、三方郡、大飯郡及び三方上中郡を除く。)
岐阜県のうち飛騨市(平成16年1月31日における旧吉城郡神岡町及び宮川村(昭和31年9月29日における旧坂下村の区域に限る。)の区域に限る。)及び郡上市(平成16年2月29日における旧郡上郡白鳥町石徹白の区域に限る。) |
関西電力 | 滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県(赤穂市(昭和38年9月1日に岡山県和気郡日生町から編入された区域に限る。)を除く。) |
中国電力 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
兵庫県のうち赤穂市(昭和38年9月1日に岡山県和気郡日生町から編入された区域に限る。) 愛媛県のうち今治市(平成17年1月15日における旧越智郡吉海町、宮窪町、伯方町、上浦町、大三島町及び関前村の区域に限る。)、越智郡 |
四国電力 | 徳島県、高知県、香川県(小豆郡及び香川郡を除く。)、愛媛県(今治市(平成17年1月15日における旧越智郡吉海町、宮窪町、伯方町、上浦町、大三島町及び関前村の区域に限る。)及び越智郡を除く。) |
九州電力 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 |
沖縄電力 | 沖縄県 |