ワイドショー
ワイドショー(wide show、和製英語)とは、テレビ番組の一種。ニュースや芸能情報など幅広く(wide)情報を紹介する番組である。
歴史
日本においては、1964年4月、日本教育テレビ(NET)が朝の放送枠の目玉で日本ヴィックスの一社提供番組として、『トゥデイ』(NBC)の番組形式を踏襲した『モーニングショー』が日本のテレビ局初のワイドショーである。1965年4月、平日正午の不毛の時間枠にNETが『モーニングショー』の成功に乗じて、『アフタヌーンショー』が開始された。その後、他局も追随し、平日午前枠で『スタジオ102』(NHK総合テレビ)、『小川宏ショー』(フジテレビ)が、深夜枠は『11PM』(日本テレビ・読売テレビ)、翌年1966年11月に平日午後枠は『2時ですこんにちは』(日本テレビ・読売テレビ)がそれぞれ第一号になっていった[1]。いずれの番組も視聴率不毛時間帯の開拓に成功を成し遂げている。
放送開始当初はVTRの技術は無く、スタジオからのトークと新聞社から提供されたニュース原稿が中心であった。1970年になると、東京ホームジョッキー(フジテレビ)にてテレビ番組内でのテレビショッピングが開始された。1976年、ワイドショーの番組構成として芸能ニュースがメインラインナップに連ねた状態が始まり、テレビ局と専属契約をした芸能リポーターが誕生する事となった。
ワイドショーの相次ぐ成功を機会とし、特に民放キー局は平日午前、午後の放送枠にて横並びでワイドショーを編成する様になった。しかし、公共放送であるNHKと民放の後発局であるテレビ東京は2000年代に入るまでワイドショー(情報番組)を編成する事は無かった。
1996年、オウム真理教幹部による、坂本堤弁護士一家殺害事件に関連したTBSビデオ問題により、TBSテレビは平日午前のワイドショー枠から一旦撤退する事となった[2]。その後、2000年代に入ると日本のテレビ各局は「ワイドショー」と言う呼称を使用せず「情報番組」という呼称で呼ぶ様になった[3]。
番組構成
単独または複数の司会者により、番組をコーナー毎に区切り、テーマ毎において、ニュース、生活、芸能、社会など幅広い話題を取り扱う番組形態を採用している。生放送であり、放送時間が比較的長い(概ね1時間から2時間程度である)ことが特徴でそこから「ワイド」な「ショー」という名称が発生した。放送時間帯が主婦層・高齢者層の在宅率が高い全日の午前と午後に編成されている[4]。基本的はニュースと企画コーナーの2つからなり、曜日によっては報道、芸能ニュースとは関わりの無いコーナーが放送され、それが報道番組との違いを示す最大の要素である。また、ニュース等の話題に対し、複数の様々な肩書の人間がコメンテーターとして出演する[5]。
演出
報道番組との差別化を図るため、事柄の結果よりも、その結果に至る過程を物語的に演出することに重点を置く傾向があり、番組専属のレポーターが現場から事件・話題についてレポートを行うことが多いが、2015年時点で編成されている情報番組(ワイドショー)においては、番組制作費のコストダウン化により、局アナ若しくは報道局の記者、もしくは番組制作会社所属の番組ディレクターがレポートしている。
事件ニュースと芸能ニュース、またグルメ企画や密着企画などでレポーターが区別されている。ただし事件レポーターが芸能分野の話題を追いかけたりすることもある。かつてワイドショーのメインであった芸能情報よりも、生活に密着した情報や政治・経済寄りの番組構成を敷いている。
問題点
コメンテーターの発言
ワイドショーの場合、報道番組と比べイエロー・ジャーナリズムである、芸能人のゴシップ等を取扱う事が多いため、幅広い話題についてコメントするという構成において、コメンテーターの不用意な発言や専門分野外に言及した発言の信憑性が指摘される。世論形成においての悪影響を危惧する意見もある[6]。
番組によっては、あらかじめ番組スタッフとでコメント内容を打ち合わせることがあり、コメンテーター本人ではなく、番組スタッフによって意図されたものをアナウンスしている。また、バランスを取っているように見せかけるために政府に批判的な人も入れるが、あえて論戦に負けそうな人を選んでいるとの指摘がある[7]。しかし、ワイドショー(情報番組)の制作スタッフがコメンテーターのキャスティングにおいて、放送作家の高橋秀樹は重要なのは「情報を持った専門家、笑いの取れる人、気の利いた/時に毒ぎりぎりの印象批評が言える人」と指摘している。また、「一般視聴者の意見と同レベルの感想を代弁する」と言う立ち位置から置いていると主張している[8]。[9]
集団取材
ワイドショーの取材については疑問の声が付きまとい、綿密な取材によるスクープ報道で評価を得る一方、各番組のレポーターが一団となって渦中の人物にインタビューを求め追いかける姿が非難の的となっている。
ことに芸能人が取材対象の場合は顕著で、反省を踏まえてこれまで幾度か「脱・芸能ニュース」を掲げることがある。[10]
その他
日本の事例として、国会で重要法案が審議される時期等において、政治権力側より民放テレビ局に法案審議から世間の目を逸らすためにワイドショーで近々に発生した事件や芸能界のトラブルなどを大々的に取り上げるよう圧力がかかる場合があるとされる。仲築間卓蔵は「重要法案が審議される時、決まったように視聴者の目を反らせる事態が起こるのは不思議」と語っている[11]。
脚注
- ↑ 『GALAC』1999年11月号 特集「国民的番組!? ワイドショー」
- ↑ TBSビデオ問題参照。
- ↑ [安倍宏行]〈ワイドショーなのか?ニュースなのか?〉乱立する「情報番組」とテレビ凋落の背景 2014年4月21日
- ↑ バカが多いのには理由がある 橘玲
- ↑ 報道番組#ニュース番組のワイドショー化
- ↑ 「ワイドショー『いかがわしさの正体』/社会が悪い、政治が悪い---。テレビコメンテーターの化けの皮を剥ぐ」文藝春秋、2014年11月号
- ↑ コメンテーター業と経済問題の話題比率 - 山本元「王様の耳はロバの耳!」
- ↑ NEWSポストセブン コメンテーターの役割は視聴者からの共感 専門的な話は不要 2015年4月23日
- ↑ コメンテーター#問題点
- ↑ 報道被害
- ↑ 『しんぶん赤旗日曜版』2003年6月1日付