ヤマザキショップ
ヤマザキショップ(ヤマザキYショップ、またはYショップとも呼ばれる、旧ヤマザキサンロイヤル)は、山崎製パンとの契約による日本の小売店業態の店舗の名称。同社の市場開発営業部が所管する。
本項では、ヤマザキショップの機能強化業態である「ヤマザキスペシャルパートナーショップ(YSPS)」についても説明する。
概要
しばしばフランチャイズ方式のコンビニエンスストアと同様のものとして見られるが、主に個人経営の商店や雑貨店、医療機関や教育機関などの購買部が転換するための業態であり、山崎製パンという共通仕入れ先を持ついわゆるボランタリーチェーン方式の小売店[注 1]である。
なお、山崎製パン本社ではコンビニ機能店として位置付けているが、2013年7月1日に山崎製パンの大規模コンビニ店舗を担っていた「(株)デイリーヤマザキ」が山崎製パンの本社に合併し直営化(デイリーヤマザキ事業統括本部管轄)となってからは、事実上デイリーヤマザキの小型サテライト店舗ブランドとなっている。それゆえ、店舗契約は一般的なコンビニエンスストアと異なり、比較的ゆるやかなものになっている。
建物や商品陳列方式もコンビニエンスストア様態の店舗が多いが、オーナーの裁量による店舗の独自性が強く、店の形態や店舗面積、品揃えについてはバラエティが広い。営業時間には毎日14時間以上という条件はある[注 2]ものの24時間営業をする必要はなく、営業時間もオーナーの権限であるため、立地条件や経営形態によっても異なる。一般的な店舗については概ね5〜7時に開店し20〜24時に閉店するという設定が多く、月2回まで店休日を設ける事ができ、一部には毎週定休日を設けている店舗もある。また、家族経営が基本であるため、他のコンビニエンスストアの店舗と違い身内や親族の不幸など都合に応じて臨時休業をする事もできる。
また、多くのコンビニエンスストアチェーンではオーナーに専業となる事を要求し、元々が酒類販売業でも無い限り副業を行うことは中々に難しいが、ヤマザキショップではその様な制限が無く、オーナーの兼業も自由である。この事から、ヤマザキショップの他にもビジネスや自営業として全く別の職業を持っていたり、逆に別業種の店舗や事務所の建物の一部が区分されてヤマザキショップとなっているもの、学校や病院の購買部などがそのままヤマザキショップに転換したものも見られる。
品揃えについては、山崎製パンのパン製品、サンデリカ等の系列デリカ工場が製造する弁当やサンドイッチなどのデリカ食品類(「ヤマザキクールデリカ」のブランド名を持つ)、ヤマザキビスケット・不二家・東ハトの菓子など全店舗に概ね共通している物もあるが、雑誌、新聞、タバコ、酒類なども扱い、事実上コンビニエンスストアと同等の品揃えをしている所も珍しくない。また、宅配便やクリーニングの取次、自動車学校の入校案内所、食堂を併設しているものや、独自に卸した生鮮食品等を販売している場合もある。さらには、手作りサンドイッチやファーストフードを提供するCOOK33、焼きたてパンを提供するCEBSといったシステムを展開している(COOK33、CEBS共に別途契約。ヤマザキショップ業態でなくこれらを単独で運営する店舗も存在する)。
また、山崎製パン系列のコンビニエンスストア業態である「デイリーヤマザキ」・「ニューヤマザキデイリーストア」の取扱全商品も同ネットワークを利用し仕入れることが可能である。またヤマザキショップオリジナル商品もあり、500mlのペットボトル飲料のお茶・ジュース類が100円程度の安価な価格設定で販売されている。また、ヤマザキ独自のドリンク自動販売機を設置している店舗も少なくない。
その一方で、ヤマザキショップの場合、店頭のレジスターと本部のホストコンピュータを直結するシステムはなく、したがってPOSや在庫管理のシステムは各店が独自に何らかの方法で構築する。このため公共料金の収納代行を行っている店舗は一部に留まる。また電子マネー・楽天Edyの取扱も一部の店舗のみである。なお、商品の発注に関しては、専用のEOS端末を使用する。
なお、先述のようなヤマザキショップの機能に加え、POSレジ、ストアコントローラ、携帯端末SSTを備えた店舗と、本部・取引先を結ぶ高速通信ネットワークにより単品情報を管理し、発注・検品・販売・在庫管理を一貫して行うトータル店舗システムを導入した機能強化店舗を「ヤマザキスペシャルパートナーショップ(YSPS)」という業態に設定している。この業態は原則16時間営業で、トータル店舗システムの導入により、在庫発注管理、収納代行、電子マネーの提供や、店内厨房で調理し焼きたてパン・サンドイッチの提供(後述)、マルチコピー機サービス、宅配便等の取り扱いもできる。ただし、ATM設置などこれ以上のコンビニエンスストア機能を付加する場合は、デイリーヤマザキもしくはニューヤマザキデイリーストアへ移行することを勧めている[1]。なお、YSPSのロゴマークは、山崎製パンに勤める女子美術大学のOGがデザインし、2012年には同大学相模原キャンパス敷地内への出店を果たしている。この店舗は学校敷地内にあるものの、一般道に面しており、学生以外も利用可能で、駐車場も完備している[2]。
店舗運営に関して本部である山崎製パンは基本的に介入しない分、デイリーヤマザキなどのコンビニエンスストア業態とオーナーの権限と責任はより大きくなる。他のコンビニエンスストアチェーンよりもロイヤリティーや機器リース料が低いこともあり、住宅地や農村部など人通りや人口の少ない地帯にも数多く存在する。また医療機関や教育機関の施設内に設置されている雑貨売店にもヤマザキショップとして運営されている所が多い[注 3]。
上記の通りコンビニエンスストアよりも緩やかな契約である事からコンビニエンスストアチェーンのフランチャイズ店舗などからの転換も多く、特に同じ山崎製パン系列のデイリーヤマザキやニューヤマザキデイリーストアへ移行が済んでいない古くからの「ヤマザキデイリーストアー」業態の店舗で、店舗面積が比較的小さい或いは郊外部にある店舗からの転換例が目立つ。また、地域にもよるが一部には商品配送などの都合でコンビニ本部が24時間営業しか事実上認めていないチェーンもあるため、深夜帯の極端な不採算や周辺の道路事情の変化などの経営問題に直面した土地建物を自己所有する他チェーンの店舗のオーナーが、24時間営業を辞め経営規模を縮小しての存続の可能性を模索してヤマザキショップへと転換する事も見られる。
他社コンビニおよびデイリーヤマザキともっとも大きく異なる点としては、仕入れにおいて本部的役割を果たす山崎製パンが各店のお客様サポートをほとんど受け付けていない点があげられる。デイリーヤマザキや他社コンビニにおいてはフランチャイズ契約店舗における苦情・問い合わせも本部にて電話・メール等での受付をしているが、ヤマザキショップはオーナーと契約しているだけの別会社店舗と位置づけているため、ヤマザキショップおよび山崎製パンの本部には加盟受付に関する電話受付窓口案内があるだけで、ヤマザキショップ店舗に関する苦情・問い合わせの総合窓口はなく、通常ならコンビニのホームページに必ずある各店情報の案内さえもないため、全国規模のコンビニチェーンでありながら消費者には他社コンビニやデイリーヤマザキよりも知名度と評価が低く見られることもある。
2017年現在、デイリーヤマザキ・ニューヤマザキデイリーストアは北海道、福井県、三重県、鳥取県、高知県、鹿児島県、沖縄県の以上7道県には店舗が置かれていないが、これらの地域でも沖縄県を除き「ヤマザキショップ」としての店舗展開は行われている。
過去には愛媛県松山市にある伊予鉄道の交通ICカードであるICい〜カードが使用できる店舗は、「い〜ショップ」という名で運営されていた(市駅店・古町店の2箇所、いずれも現在ではセブン-イレブンに転換されている)。また、店舗自体はほぼ全国に展開しているが、2017年9月時点で前述の通り沖縄県にのみ店舗がない。