マルタ騎士団
- ロドス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会
- Sovrano Militare Ordine Ospedaliero di San Giovanni di Gerusalemme di Rhodi e di Malta
- 国の標語:Tuitio Fidei et Obsequium Pauperum(ラテン語)
- 領土を持たない「主権実体」
公用語 | イタリア語 |
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首都 | イタリア、ローマ・コンドッティ通り68(マルタ宮殿) |
最大の都市 | なし(領土を持っていない) |
主権実体 無領土化 | エルサレムにて 1113年2月15日 1798年 |
通貨 | Scudo (???) |
時間帯 | UTC +1(DST:不明) |
ISO 3166-1 | 不明 |
ccTLD | なし |
国際電話番号 | 領土を持たない |
ロドス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会(ロドスおよびマルタにおけるエルサレムのせいヨハネびょういんどくりつきししゅうどうかい、伊: Sovrano Militare Ordine Ospedaliero di San Giovanni di Gerusalemme di Rhodi e di Malta)、通称マルタ騎士団(マルタきしだん)は、キリスト教カトリックの騎士修道会である。現在は国家ではないが、かつて領土を有していた経緯から「主権実体」として承認している国々がある。
軍事組織としての意味合いは既に失われて久しいが、医療団体としての活動はあり、イタリア共和国軍の軍医部隊としても運用されている。
概説
12世紀、十字軍時代のパレスチナに発祥した聖ヨハネ騎士団が現在まで存続したものであり、ロドス島及びマルタ島における旧来の領土を喪失しているため国土を有さないが、主権実体 (sovereign entity) として承認し外交関係を有する国が約94か国ある。国際連合にオブザーバーとしても参加している。団(修道会)事務局はイタリア・ローマ・コンドッティ通り68(マルタ宮殿)に置かれており、建物内はイタリア当局から治外法権が認められている。
医療などの慈善活動を行っており、独自のコインや切手を発行している。
- Malteserkreuz.svg
紋章
- Blason Ordre Malte 3D.svg
団章
歴史
第1回十字軍の後、1100年ごろ、巡礼保護を目的としてエルサレムで設立された。正式名称から明らかなように病院を持ち、ことに病気になった巡礼者の保護に務めた。十字軍勢力がパレスチナから追われた後はロドス島を根拠とし、聖地巡礼をするキリスト教徒の重要な経由地の守護者、ムスリム(イスラム教徒)に対する聖戦の実行者として活躍したが、1522年、オスマン帝国のスレイマン1世によりロドス島は陥落。本拠をマルタ島に移して、マルタ騎士団と呼ばれるようになった。
1798年、ナポレオン・ボナパルトの侵攻によりマルタ島を奪われた。総長がオーストリア領トリエステに逃れ、抗議のため大総長の地位をパーヴェル1世に譲った。騎士団の総長 (Principe e Gran Maestro) は、カトリック教会の修道会の総長であり、伝統的に枢機卿の任命を受けている[1]。
騎士団には飛び地があった。バイエルン選帝侯領のカール・テオドールが、自身の非嫡出子などを扶養する目的で、1773年に廃止されたイエズス会の財産を基礎に、マルタ騎士団バイエルン支部をつくっていた。後継のマックス・ヨーゼフらは公序良俗に反するとして支部を廃止させようとした。しかしオーストリアとナポレオンの板ばさみに遭い、ロシアの支援がほしくなった。バイエルンとパーヴェルは姻戚であったが、パーヴェルが怒りを露にしたので支部の廃止をあきらめた。1799年、バイエルンとロシアの間にガッチナ条約が結ばれた。これによりバイエルンは対仏大同盟に新しく兵士2万を供出することになり、またロシアの仲介でイギリスから補助金が出ることになった。
対外関係
マルタ騎士団は国際連合加盟国の107か国と外交関係を持ち、在外公館を設置している。また、5か国と公的な関係を、パレスチナと大使レベルの関係をそれぞれ有している[2]。いわゆるキリスト教文化圏の国々が多い。その中で主要国はイタリア、ロシア、スペインがある。一方で、アメリカ合衆国・オーストラリアなどは承認していない。また、国際連合では「国連総会オブザーバーとして参加するために招待を受ける実体 (entity) あるいは国際組織」として扱っており、「加盟国」とも「非加盟国」とも異なる立場である。
アマチュア無線の世界では、マルタ騎士団は国籍符号「1A」を用いており、たとえばクラブ局(局名:1A0KM―Knights of Maltaの略)が存在している。この「1A」は、国際電気通信連合 (ITU) がマルタ騎士団に割り当てたものではなく、アマチュア無線のみの独自の規定である。同様な例は、一部の領有権紛争対象地などの"帰属地未定区域"にも見受けられる。
統治機構
騎士団は、憲章に基づき、大評議会、次の役職が置かれている。
- 総長 (Gran Maestro) は、国務評議会 (Consiglio Compito di Stato) で選挙された終身職である。総長は、伝統的に大公 (Principe) の称号をおび、また伝統的に騎士団修道会の総長としてローマ教皇から枢機卿に親任される。
- 事務総監 (Gran Commendatore) は、事務をつかさどる。
- 外務総監 (Gran Cancelliere) は、外交に関する事項をつかさどる。
- 医務総監 (Grande Ospedaliere) は、保健衛生、民生及び人道援助に関する事項をつかさどる。
- 財務総監 (Ricevitore del Comun Tesoro) は、財政及び予算に関する事項をつかさどる。
憲章に基づく会議体はこれらのものがある。
- 国務評議会 (Consiglio Compìto di Stato)
- 大評議会 (Capitolo Generale)
- 政務評議会 (Sovrano Consiglio)
- 管理評議会 (Consiglio del Governo)
- 監事会 (Camera dei Conti)
- 司法評議会 (Consulta Giuridica)
関係者
- ヴェンツェル・フォン・エスターライヒ(神聖ローマ帝国皇子、1577年カスティーリャ王国のマルタ騎士団会長)
- ピエール・アンドレ・ド・シュフラン(フランス王国海軍提督、マルタ騎士団員)
- パーヴェル1世(ロシア帝国皇帝、マルタ騎士団総長)
脚注
- ↑ なお、枢機卿のほとんどが聖職者である現代では、あくまで名誉的なものである。
- ↑ Bilateral relations Order of Malta