マルタ
- マルタ共和国
- Repubblika ta' Malta
Republic of Malta - 国の標語:なし
公用語 | マルタ語、英語 |
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首都 | バレッタ |
最大の都市 | ビルキルカラ |
独立 | 1964年9月21日 |
通貨 | ユーロ (€) (EUR) [2] |
時間帯 | UTC +1(DST:+2) |
ISO 3166-1 | MT / MLT |
ccTLD | .mt |
国際電話番号 | 356 |
マルタ共和国(マルタきょうわこく)、通称マルタは、南ヨーロッパの共和制国家。イギリス連邦および欧州連合(EU)の加盟国でもあり、公用語はマルタ語と英語、通貨はユーロ、首都はバレッタである。地中海に位置する島国で、いわゆるミニ国家のひとつ。
Contents
概要
イタリアのシチリア島の南に位置し、面積は316km2で、東京23区の面積622.99km2の半分の大きさである。
カルタゴ、共和政ローマ時代に既に地中海貿易で繁栄し、その後一時イスラム帝国の支配に入ったこともある。それに抵抗して戦ったマルタ騎士団がこの地の名前を有名にした。
小型犬のマルチーズの発祥の地であり、マルチーズの名はマルタに由来する。
国名
正式名称はマルタ語で Repubblika ta' Malta。通称 Malta。英語では Republic of Malta(リパブリック・オブ・モールタ)。通称 Malta。
日本語の表記はマルタ共和国。通称マルタ。
歴史
新石器時代から人間が生活していたといわれ、巨石文明および平行に穿たれた2本の溝の遺跡が島内各所に残る。前者はジュガンティーヤ、スコルバ、タルシーン、ハジャイーム、(イ)ムナイドラの各神殿を含む。後者は「カート・ラッツ(車輪の轍)」と呼ばれ、この溝には水路説と神殿などに石を運ぶために出来た(あるいは造られた)レール説があるが、鉄道のポイントのように分岐点が所々存在する。
紀元前1000年頃、現在のレバノン一帯が起源とされるフェニキア人が渡ってきて支配者となる。
紀元前400年頃、カルタゴの支配を受け、その後ローマに支配されるが、その頃から既に地中海貿易で繁栄していた。
870年にアラブ人の侵攻を受け、1127年にノルマン人が占拠するまでイスラム帝国の支配下に置かれる。その後、1479年にスペインの支配下に置かれ、1530年には、1522年にロドス島を追われた聖ヨハネ騎士団(後のマルタ騎士団)の所領となった。1565年にマルタ騎士団はオスマン帝国からの攻撃を受けるが(マルタ包囲戦)、およそ4か月で撃退に成功した。現在の首都バレッタは、この時のマルタ騎士団の団長ジャン・ド・ヴァレットの名前にちなんでいる。
エジプト遠征途上のナポレオン・ボナパルトによって占領されたが、その没落後はイギリスが支配した。地中海を経由しインドに至るルート上に位置するマルタはイギリスの重要拠点となった。特に第二次世界大戦中にはエジプトへの連合国側の輸送路の途上にあり、またイギリス海軍の拠点としてイタリアと北アフリカとを結ぶ枢軸国側の輸送路を脅かす存在となったために空襲に晒されたが(第二次マルタ包囲戦)、ついに陥落することはなかった。戦時下の国民の努力と忍耐を讃え、ジョージ6世は「マルタの国と国民全て」を対象に「ジョージ十字勲章」を授与した。戦後、反英抵抗運動、独立闘争では、後に第3代大統領となるアガサ・バーバラらが活躍した。1964年、英連邦王国自治領マルタ国(State of Malta / Stat ta' Malta)としてイギリスから独立し、さらに1974年12月13日には、イギリス連邦内のマルタ共和国となった。2004年5月1日に欧州連合 (EU) に加盟した。
政治
国家元首である 大統領は任期5年で、立法府である代議院によって選出される(複選制)。すべての執行権は大統領によって直接的または間接的に行使されるが、基本的には儀礼的・形式的地位である。
行政府の長である首相は、代議院選挙後に第1党の党首が大統領により指名され就任する。代議院の信任を失った場合は辞職する(議院内閣制)。
代議院は任期5年の一院制で、原則として定数は65議席となっている。比例代表制選挙により選出されるが、選挙の結果、いずれの党も単独過半数の議席を得ることができなかった場合は、もっとも得票率が高かった党に対してさらに最大4議席を追加配分し、単独過半数を確保させる。これは二大政党制が確立しているマルタにおいて、たとえば第1党が32、第2党が30、第3党が3という結果になった場合、国民全体の中で少数の支持しか得ていない第3党が連立政権の発足および維持において過剰な影響力を行使しうる事態に陥るのを回避することにより、民意の国政への適切な反映および政局の安定を図る制度である。
軍事
陸海空の各戦力を有する。兵員は約1,600名で志願制[1]。マルタ軍の設立は共和制となった1974年のことである。
国際関係
冷戦終結の舞台
マルタは、東西冷戦の終結を告げる歴史的なマルタ会談の舞台としても知られる。
1989年12月3日、当時のミハイル・ゴルバチョフソビエト連邦最高会議議長兼ソ連共産党書記長とジョージ・H・W・ブッシュアメリカ大統領がマルタで会談して戦後44年間続いた冷戦の幕引きを世界にアピールし、欧州新秩序づくりへ向けての一致協力をうたった。
東西冷戦が1945年のヤルタ会談から事実上始まり、マルタ会談で終結したことからマルタ会談については「ヤルタからマルタへ」というキャッチフレーズで語られることも多い。
日本との関係
- 1862年、1858年にイギリス・フランスなど5カ国と個別に締結された修好通商条約の修正を求めて派遣された文久遣欧使節団が訪問している[2]。
- 1917年6月11日に大破した駆逐艦榊の59人の戦死や傷病による戦死者の「大日本帝国第二特務艦隊戦死者之墓」がある[3][4]。
- 1921年4月、皇太子時代の昭和天皇が訪問している[2]。
地方行政区分
地方行政区画は、68の市(町・村)に分かれる。県や州に相当する国と市の中間レベルの地方行政単位はない。
地理
マルタは地中海の中央部、シチリア島の南約93kmに位置する。主要な島はマルタ島とゴゾ島、コミノ島の三つである。海岸線が変化に富むため、良港が多い。地形は低い丘陵や台地からなり、最高地点はマルタ島内の標高253mの丘陵である。
気候は地中海性気候のため、冬は温暖で雨が多く、夏は暑く乾燥している。
経済
18世紀までは綿花とタバコの栽培、造船業が中心で、造船業はイギリス軍にとって有用なものだった。1854年のクリミア戦争のように、戦時のたびにマルタ経済が繁栄した。1869年のスエズ運河の開通後は船舶の寄港地として賑わうこととなった。しかし19世紀末以降、大型船の就航により燃料補給のための寄港の必要性が減少し、マルタの経済は縮小し、1940年代には深刻な危機に陥った。現在のマルタは、国内にエネルギー資源はなく、石灰岩が産出されるのみである。食料自給率も20%にすぎない。淡水は限られ、飲み水はイタリアから輸入している。経済的に有利な点は、地中海の中央に位置することと労働者が勤勉なことである。貿易を中心とした経済となっており、電子、繊維、観光が主要産業である。とくに観光インフラは近年整備され、良質なホテルがある。映画製作も成長産業で、毎年巨額予算の外国映画が撮影されている。
資源や経済の乏しさを補うために教育拡充を重要視し、政府は教育を無料にして将来の経済成長を支える人材育成に励んでいる。とはいえ現実としては国民の教育水準は高くなく、2010年現在における15歳以上の労働力人口においては、小学校など初等教育のみで教育課程を終える国民が全体の53%を占めている[6]。また識字率も15歳以上の国民で92.4%に留まり、欧州主要国よりも低い状態にある[注 1]。
2004年5月1日には欧州連合に加盟し、国営企業の民営化と市場開放に取り組んでおり、2007年1月に国営郵便の40%を放出した。2008年より統一通貨ユーロが導入された。チュニジアとの間で大陸棚の商業的開発、とくに石油探鉱の協議を進めている。
自動車の通行区分は日本と同じ左側通行である。多くの国民が自動車を所有し、交通手段に利用している。左側通行であることから、自動車は右ハンドル仕様の欧州車に加え、日本から輸入された中古車が多く使われている。対日中古車輸入および関連産業が盛んである。 バレッタ南方13kmのMarsaxlokkにある自由港は欧州11位のコンテナ扱い高がある。
国民
言語は、マルタ語と英語が公用語である。またイタリアから近く、1934年まで公用語であったイタリア語もかなり使用されている。2012年の調査では、96%がマルタ語、4%が英語を母語と回答している。また、89%が英語で、56%がイタリア語で、11%がフランス語で会話が可能であると回答している[8]。マルタ語はアラビア語の方言とされるが別言語に区分する説もあるほど正則アラビア語や他方言との差は大きく、「アラビア語」で会話可能と答えた者は2006年の調査では2%である[9]。
宗教はローマ・カトリックが98%である。離婚は、かつては法律上認められていなかったが2011年5月の国民投票により認められることとなった。2017年9月1日より同性結婚が可能となった。
文化
文学とマルタ
ルソーの著作『エミール』の中では、「必要とあらばアイスランドの氷の中であろうと、マルタ島の焼けただれる岩壁の上であろうと、生き抜くことを彼に教えなければならない」とマルタについての言及があり、近代初めのヨーロッパ人にとっては、この地がいかに過酷な生活環境とみなされていたかがうかがえる。
世界遺産
マルタ国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された文化遺産が3件存在する。
- ハル・サフリエニの地下墳墓 - (1980年、文化遺産)
- バレッタ市街 - (1980年、文化遺産)
- マルタの巨石神殿群 - (1980年、文化遺産)
映像
マルタのThe Producer's Creative Partnership (PCP) 社は、世界最大の撮影用水槽を有している。NHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』第9話「廣瀬、死す」の旅順口閉塞作戦のシーンはここで撮影された。
スポーツ
国内サッカーリーグの頂点として、マルタ・プレミアリーグが存在している。マルタはEU加盟28カ国の中で唯一、2010年までは冬季オリンピックに参加していなかったが、2014年ソチオリンピックでエリーズ・ペレグリンがアルペンスキーに出場し、EU加盟全28カ国が冬季オリンピックに参加した。[10][11]。また、マルタは欧州小国競技大会を開催し参加している。
参考文献
- ピーター・シャンクランド&アンソニー・ハンター著『マルタ島攻防戦』朝日ソノラマ、1986年12月発行(原著は1961年発行).
- 石川和恵著『マルタ島に魅せられて―地中海の小さな島』晶文社、1997年7月発行.
- ビッグボーイ編集部編『ザビッハマルタ―マルタ共和国ガイドブック』楽天舎ブック、1997年9月発行.
- 桜田久編『日本海軍地中海遠征秘録』産経新聞ニュースサービス、1997年10月発行.
- ビッグボーイ編集部編『バスの王国マルタ』楽天舎ブック、1999年2月発行.
- 紅山雪夫著『シチリア・南イタリアとマルタ』トラベルジャーナル、2001年7月発行.
- マルタ観光局編『The Maltese Cross』vol.3.,2010年5月発行.
ドキュメンタリーなど
- 「マルタの猫―地中海・人とネコの不思議な物語」(2003年3月17日BS-hi放送、2010年10月7日BS-hi再放送)
- 「岩合光昭の世界ネコ歩き・マルタ」(2015年9月18日、NHK-BS2放送)
脚注
- ↑ ザ・ワールド・ファクトブックにおける識字率一覧[7]によれば、マルタの識字率は2005年の15歳以上のマルタ国民に対する調査で92.4%となった。一方、15歳以上の国民に対する同様の調査でドイツ、フランス、イタリアは99%、スペインは97.7%となっている[7]。
出典
- ↑ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malta/data.html
- ↑ 2.0 2.1 地中海のマルタに「旧日本海軍墓地」があった… 昭和天皇も皇太子時代にご訪問 (3/4ページ) 産経ニュース 2009.2.5
- ↑ 皇太子時代にご訪問 (1/4ページ) 産経ニュース 2009.2.5
- ↑ 地中海のマルタに「旧日本海軍墓地」があった… 昭和天皇も皇太子時代にご訪問 (2/4ページ) 産経ニュース 2009.2.5
- ↑ Cedefop(European Centre for the Development of Vocational Training) (2010). Skills supply and demand in Europe: medium-term forecast up to 2020. Luxembourg: Publications Office of the European Union. DOI:10.2801/25431. ISBN 978-92-896-0536-6. Retrieved on 2014-03-29.
- ↑ Cedefop (2010) [5],p.88.の、2010年におけるマルタの労働力人口に対する初等教育修了者のデータより算出。
- ↑ 7.0 7.1 アメリカ合衆国中央情報局の国際情勢資料
- ↑ Special Eurobarometer 386 Europeans and their Languages 欧州委員会
- ↑ Special Eurobarometer 243 Europeans and their Languages 欧州委員会
- ↑ [:en]Malta at the 2014 Winter Olympics(英語版)
- ↑ 2018年平昌オリンピックにもマルタも参加しており、2大会連続でEU加盟全28カ国参加を果たしている
関連項目
外部リンク
- 政府
- マルタ共和国政府 テンプレート:Mt icon(英語)
- マルタ大統領府 (英語)
- マルタ首相府 (英語)
- マルタ共和国名誉総領事館 (日本語)
- 日本政府
- 日本外務省 - マルタ
- 在イタリア日本国大使館 - 在マルタ大使館を兼轄
- 地域情報
- 中央地中海通信 (日本語)
- 観光
- マルタ政府観光局 (英語)
- マルタ観光局日本事務所 (日本語)
- マルタ空港からの就航地図 (日本語)
- 独立ダイビング情報 (日本語)