マリンジャンボ

提供: miniwiki
移動先:案内検索

マリンジャンボ (Marine Jumbo) は、全日本空輸 (ANA) のスペシャルマーキング機の嚆矢ともいえる存在で、クジラ生き物の仲間を機体一杯にユーモラスに描き、マスコミでも盛んに取り上げられた。1993年から約1年半の間、国内線定期便の運用に組み込み、日本全国の空港を交互に訪問する形態を取った。「マリンジャンボ」は全日本空輸の登録商標(日本第4284977号)である[1]

概要

ファイル:Ja8963.jpg
ANA 747-481D マリンジャンボ JA8963
ファイル:ANA marinjambo jr. tak.jpg
ANA 767-381 マリンジャンボJr. JA8579 高松空港にて
ファイル:ANA marinjambo&jr. 95-5-21 kmi.jpg
マリンジャンボJr.(左)とマリンジャンボ(右)宮崎空港にて

ANAが創設以来の乗客数累計5億人突破を記念し、1992年12月から2か月にわたり、一般からスペシャルマーキングを募集した所、最優秀作として千葉県在住の小学校6年生の女子児童だった大垣友紀惠[2]の、機体一杯にクジラの姿をユーモラスに描き、その他海の生き物をあしらった形の作品が選ばれた。新規に受領した機体ボーイング747-400D登録記号:JA8963)機にそのペイントが施され、海の生き物をあしらったことからANAは「マリンジャンボ」と名づけ、1993年9月12日羽田 - 札幌間のフライトを皮切りに、1年半の期間限定ながらフライトを開始した[3]。また、昨今のスペシャルマーキング機の大半は印刷された特殊フィルムの貼り付けであるが、当機は全面塗装で仕上げられている。新造機であり、「生まれつき」マリンジャンボであったが、ボーイングの機体価格に関わる条項に塗装の手間による区分が無く他のボーイング747-400Dと同価格での納入だったという。 羽田(ときに伊丹[4])を拠点に定期運航に組み込まれる形で日本各地の空港を訪問、ほぼ1空港1か月で訪問先を交替、というサイクルが組まれ、時刻表上でもどのフライトに同機が割り当てられるか一目で分かる工夫も取られていた。この工夫とはマリンジャンボは「青クジラ」のマーク[5]で、後述する「マリンジャンボJr.」は「赤クジラ」のマーク[6]で表示されていた。ただし、時刻表に記載されていても運航する日程は限定されていて、運航されない日は通常塗装の該当型式で運航されていた。当時のANA関係者は不備が出て運航日でありながら急遽「通常塗装の機材に変更」とならないようにスケジュールどおりの運航させることに神経を使った。また、多数発売された関連グッズの売れ行きも好調、このスペシャルマーキング機が訪れる空港は見物人が大挙して押しかける、等々社会的にも大きな影響を及ぼし、航空不況と言われていた時代に、ANAにとって国内線の乗客増にも貢献するヒット作となった。

しかし、ボーイング747-400Dでは離着陸できる空港が限定されており、小規模な地方空港からも同種のスペシャルマーキング機の訪問を望む声が出てきたため、ボーイング767-300(登録記号:JA8579)に同種のペイントを施し、「マリンジャンボJr.」としてこちらはローカル空港への訪問を主目的とした運航が組まれることとなった。定期便では同年12月13日に羽田 - 富山線に初就航。2機揃った「クジラの親子」は好評のうちにスケジュールを消化していった。

当初は「マリンジャンボ」「マリンジャンボJr.」とも新規導入から1年5か月後の1995年1月末をもって、整備期に合わせて一般塗装に戻される予定だったが、阪神・淡路大震災発生による山陽新幹線山陽本線不通の影響もあってANAが全社を挙げて機材のフル稼働を余儀なくされ、そのしわ寄せで一般塗装への変更も延期され、結局は同年5月末までその雄姿を披露することとなった。ただし当初の運航予定が完了し、また震災直後の世情に配慮という事情もあったからか、時刻表上の注記は2月からは消滅している。

1995年5月末をもって全運航を終了し、JA8963・JA8579とも整備時に一般塗装へ変更され外見上は「普通のANA機」に戻った。その後も、機内入口にそれぞれ「マリンジャンボ」「マリンジャンボJr.」としての功績を記念するプレートが取り付けられ、華やかにフライトした時期をささやかながら後世に伝える形となっていた。なお、「マリンジャンボJr.」だったJA8579は2006年2月の神戸空港開港時に開港記念のロゴマークを入れられ、同空港ANA就航初便に起用された。

2008年10月30日、ANAは佐賀インターナショナルバルーンフェスタへ参加する際の熱気球のデザインを大垣が手がけ、気球のデザインの一部としてマリンジャンボが描かれると発表。間接的ながら、元のデザイン者の手で復活を果たすことになった[7]

また同年、ANA協力の映画『ハッピーフライト』の公開を記念して監督と出演者の直筆サインの入ったプレートが上映期間中飾られた。これは前述のマリンジャンボであったことを示す記念プレートの設置場所に取り付けられた。同時にL1ドアとL2ドアそしてR1ドアとR2ドアの間の胴体表面にも「ハッピーフライト」の広告ステッカーが取り付けられた。なお、このプレートとステッカーは同様に国際線用機にも取り付けられ、こちらはボーイング747-400(登録記号:JA8097)[8][9]に飾られた。

2011年8月3日、マリンジャンボとして活躍したJA8963がANAのB747-400Dとしては登録抹消となった[10]。ANAの2011年度の機材計画には入っていなかったが、前倒しする形での退役となった。退役後の機体は、スクラップ・パーツ取りとなっている[11]

サービス

海をイメージした機内にすべく、座席の色やカバーもマリンブルーで統一された。また、ドリンクサービスに供されるカップも対象機限定のクジラのイラスト入りであり、搭乗記念に機体写真入り絵葉書を配布したり、といったサービスも展開した。客室乗務員も機内サービスの際「マリンジャンボ」のデザインをあしらった特製のエプロンを着用したり、といった徹底ぶりであった。

影響、その他

ANA自体もこの時のスペシャルマーキングの試みが、その後の「スヌーピー号」や「ポケモンジェット[12]に影響している。

この時期に合わせ、日本航空 (JAL) もディズニーキャラクターを機体にあしらった「JALドリームエクスプレス」という特別塗装機を就航させていた。この際、ボーイング747は「赤ミッキーマウス」、ボーイング767は「青ミッキーマウス」で時刻表に掲載された。

ファイル:N280WN (10792043335).jpg
サウスウエスト航空 ボーイング737「ペンギン」 N280WN

日本ではあまり話題には上らなかったが、アメリカサウスウエスト航空では「マリンジャンボ」就航以前の1988年からシャチのペイントを施したボーイング737機「シャム」を運航していた。こちらはカリフォルニア州サンディエゴ等アメリカ国内数か所に存在する水族館シーワールドのPR用としてのものだが、一見類似した印象がある。2013年にはサウスウエスト航空とシーワールドの提携25周年を記念してペンギンのペイントを施したボーイング737を運航した。両者共にサウスウエスト航空とシーワールドの提携解消に伴い、2014年を最後に運航は終了し、全機が通常塗装に戻された。2013年には同様に日本トランスオーシャン航空ジンベエザメのペイントを施したボーイング737「ジンベエジェット」を運航している。なおこちらも沖縄美ら海水族館のPR用である。

その後、ANAの子会社であるエアーニッポン (ANK) もボーイング737の機体をイルカに見立てた特別塗装機「アイランドドルフィン」を運航した。

1993年12月に沖縄県航空自衛隊那覇基地で開催された航空祭で、同基地所属の第302飛行隊F-4EJ戦闘機エイマンタを見立てた「マリンファントム」なる特別塗装機が披露された。

この時期、鉄道車両でも同機の影響と見られる特別塗装の車両が登場している。

ファイル:Eidan 3055.jpg
日比谷線3000系マッコウクジラ
(1994年7月23日 / 中目黒駅)

2012年9月、ANAは創業60周年を記念し「マリンジャンボJr.」と同じボーイング767-300に一般公募によるデザインの特別塗装機を運航させることを発表し[13]、2013年2月23日より「ゆめジェット〜You&Me〜」として運航を開始した。

その後2016年10月、2019年春からホノルル路線に使用予定のエアバスA380型機の塗装を一般公募すると発表し、選考の結果ウミガメをモチーフにしたデザインが採用され、「FLYING HONU」という愛称が付けられた[14]

脚注

  1. 出願したのは1993年だが、商標登録されたのは運行終了から4年が経過した1999年6月18日だった。
  2. 後にプロのデザイナーとなり、2012年現在では広告代理店アサツー ディ・ケイのアートディレクター。→外部リンク参照
  3. 大垣もこの便に搭乗した。さらに運航終了記念として伊丹空港でマリンジャンボへの「落書き」イベント(写真「ANA 747-481D マリンジャンボ JA8963」は当イベント時に撮影)が行なわれたが、このときにも参加している。
  4. 羽田⇒伊丹⇒那覇(→羽田)と言った変則路線も組まれた。
  5. 型式であるボーイング747-400Dは通常塗装機に対しては当時はB44と記載。
  6. 型式であるボーイング767-300は通常塗装機に対しては当時はB6Sと記載。
  7. ANA特別塗装機マリンジャンボも乗せて「ANA熱気球」が、大空に舞い上がります〜マリンジャンボを手がけたアートディレクターの大垣友紀惠さんがデザイン〜(全日本空輸公式サイトより)
  8. 現在は、ANAの営業路線からは退いている。
  9. 2009年10月の登録機変動
  10. JA8963登録情報”. . 2013-5-29閲覧.
  11. All sizes JA8964 KTUP Flickr - Photo Sharing!” (英語). Photo Sharing!. Yahoo! Asia Pacific Pte. . 2014-3-8閲覧.(リンク先タイトルはJA8964となっており機体番号が異なるが、垂直尾翼手前の塗装の補修跡からこちらが当該機になると思われる)
  12. 1999年から2007年まで運航された「ポケモンジェット99」ならびに2004年から2012年まで運航された「お花ジャンボ」も一般公募によるデザインである。
  13. ANA創立60周年記念 機体デザインコンテスト
  14. A380型機 特別塗装機が「FLYING HONU」に決定!

外部リンク

  • Yukie design デザイナー・大垣友紀惠のサイト。プロフィールや作品紹介にも、マリンジャンボが記載されている。
  • さよなら“ジャンボ機”NHKオンライン おはよう日本 番組サイト 2014年3月31日 のインターネットアーカイブ版) ANAからのボーイング747引退を報じたニュース特集。「さよなら“ジャンボ” 人生変えた出会い」の項で、マリンジャンボをデザインした小学生当時の大垣の写真と2014年現在の大垣へのインタビューが掲載されている。