マイクロン・テクノロジ
マイクロン・テクノロジ(英: Micron Technology)は、アメリカ合衆国アイダホ州ボイシ市に本社を置く、半導体製造の多国籍企業である。
なお、ナスダックで上場されている同社の株式はナスダック100指数の銘柄の一つにも成っている。
詳細
マイクロン・テクノロジは、1978年10月23日に、デニス・ウィルソンとダグ・ピットマンとジョー・パーキンソンの3人のエンジニアおよび弁護士であったウォード・パーキンソン(初代CEO)により[R 1]、モステック向けの[R 2]半導体製品の設計会社としてアメリカ合衆国アイダホ州ボイシ市の西部にあった歯科医院の建物の地下室にて創業された[R 3]。
現在では、同社はコンピューターにおける主記憶・ストレージ用の各種半導体メモリ(DRAMやフラッシュメモリとそれらの搭載製品群)を開発・製造・販売している[R 4]。 ただし、エンドユーザー向けの製品はクルーシャル・テクノロジやバリスティクス・ゲーミングのブランドで製造・販売されている。
なお、同社は、2012年から毎年連続でTop100グローバル・イノベーターに選ばれ[R 5]、研究開発では2014年時点で世界第8位と多額の投資を行っている[R 6]。 同社は、ガートナーから発表された2014年の半導体メーカー売上高ランキングでは、垂直統合型デバイスメーカー(IDM)としては世界第4位の市場シェアを持つ[R 7]。
また、インテルと共同設立したIM・フラッシュ・テクノロジーズがフラッシュメモリの製造を行っている。 さらに、KTIセミコンダクターの買収で既にDRAMの開発研究拠点を築いていた日本で、更にエルピーダメモリ[R 8]を買収したことで、メインフレーム・ワークステーション・PCなどの汎用DRAMの他に、モバイル用のDRAM[C 1]もラインナップに加わった。
日本法人
日本国内に登記されているマイクロン・テクノロジの子会社は2系統存在する。
- 神戸製鋼所とテキサス・インスツルメンツ(TI)からの流れを汲むマイクロンジャパン(MJP)(【旧】KTIセミコンダクター)[R 9]
- 日本電気と日立製作所および三菱電機からの流れを汲むマイクロンメモリジャパン(MMJ)(【旧】エルピーダメモリ)[R 10][R 11]
新型メモリの開発
2015年7月28日に、マイクロン・テクノロジはインテルと共同で、ハイブリッドメモリキューブ(HMC)という新型メモリを発表した[R 12][R 13]。
これは以下の特徴を有している。
- 不揮発性メモリセルの採用[C 2]
- 3D XPoint[R 14][R 15][R 16][R 17]
- 複数層に積層した3次元構造のメモリセル配列(集積度の向上)
- トランジスター型ではなくクロスポイント型のメモリアレイの採用(メモリセルの高密度化とコストパフォーマンスの向上)
- DRAM比で10倍の集積度
- NANDフラッシュメモリ比で最大1000倍のスイッチング速度および耐久性
- 市松格子パターンのメモリセル配列の採用(ノイズに因る影響の低減)
沿革
- 1978年10月23日 ‐ ウォード・パーキンソンをCEOとして半導体設計のコンサルティング会社という業態で創業される[R 3]
- 1980年 ‐ アイダホのポテト王として知られるジョン・リチャード・シンプロットに買収される[R 18]
- 1981年 ‐ トーマス・ニコルソン(2005年まで取締役を務める[R 19])が提供した土地に初の半導体製造工場を完成させる[R 3]
- 1982年 ‐ DRAM事業に参入する[R 3]
- 1984年 ‐ ナスダックに株式を上場する[R 3]
- 1990年11月30日 ‐ ニューヨーク証券取引所に株式を上場する[R 3]
- 1991年 ‐ 大容量の主記憶を搭載したPCの廉価での供給を目的として子会社エッジ・テクノロジを設立する
- 1994年9月 ‐ ウォード・パーキンソンが、ジョン・リチャード・シンプロットとの対立の末に、CEOを辞任し[R 3]、その後任として、スティーヴン・アップルトンがCEOに就任する。
- 1996年 ‐ ジョン・リチャード・シンプロットが出資を引き上げ始める[R 20][R 21]。
- 1996年 ‐ マイクロン・コンピューターとマイクロン・カスタム・マニュファクチャリング・サービシーズ(MCMS)およびZEOS・インターナショナルをマイクロン・エレクトロニクスとして統合する
- 1996年 ‐ エンドユーザーへの販売と市場対応の子会社をクルーシャル・テクノロジとして設立する
- 1998年 ‐ テキサス・インスツルメンツより半導体メモリ事業(DRAM事業を主力としていた)を買収する
- 2000年 ‐ 科学技術教育とコミュニティ組織支援を目的として、子会社マイクロン・テクノロジ・ファウンデーションを設立する
- 2001年 ‐ CMOSイメージセンサーの開発企業であったフォトビットを買収しCMOSイメージセンサー事業に参入する
- 2001年2月16日 ‐ 神戸製鋼所とテキサス・インスツルメンツの合弁会社であったKTIセミコンダクター[C 3]をKMTセミコンダクターとして子会社化する[R 9][R 22][R 23]
- 2002年 ‐ インターナショナル・ビジネス・マシンズ(IBM)と東芝のジョイントベンチャーであったドミニオン・セミコンダクターを買収する[C 4][R 24][R 25][R 26]
- 2002年4月 ‐ KMTセミコンダクターの株式を全て買い取って同社を子会社マイクロンジャパンとする[R 27]
- 2004年 ‐ NAND型フラッシュメモリ事業に参入する
- 2005年 ‐ NAND型フラッシュメモリの開発・製造の合弁会社設立でインテルと合意する
- 2006年 ‐ インテルと共同でIM・フラッシュ・テクノロジーズを設立する
- 2006年 ‐ フラッシュメモリの製品ポートフォーリオ拡充のため、レキサー・メディアを買収する(マイクロン・コンシューマー・プロダクツ・グループ傘下)
- 2008年3月4日 ‐ CMOSイメージセンサー事業を子会社アプティナ・イメージングとして分離する[R 28][R 29][R 30][R 31]
- 2009年 ‐ 子会社アプティナ・イメージングの株式の大半を投資ファンドに売却してCMOSイメージセンサー事業から事実上撤退する
- 2010年 ‐ ニューモニクス(インテルとSTマイクロエレクトロニクスの合弁会社)をマイクロン・セミコンダクター・イタリア(MIT)として買収し[R 32][R 33]てNOR型フラッシュメモリ事業に参入する
- 2012年2月3日 ‐ CEOのスティーヴン・アップルトンが自家用飛行機搭乗中の事故で急逝する[R 34][R 35][R 36]。これに伴って、エルピーダメモリとの統合交渉は白紙となる[R 37]。
- 2012年2月4日 ‐ ダーモット・マーク・ダーカンがCEOに就任する。
- 2012年7月2日 ‐ エルピーダメモリとのスポンサー契約に合意する[R 38][R 39]。
- 2013年7月31日 ‐ エルピーダメモリの株式と共に力晶半導体が所有する瑞晶電子の株式の買い取りも行い、それぞれをマイクロンメモリジャパンとマイクロン・メモリ・台湾(MMT)として傘下に収める[R 40][R 41]
- 2013年10月10日 ‐ エルピーダメモリの買収に伴う利益を14億8400万ドルであると発表する[R 42]
- 2015年7月28日 ‐ インテルと共同で新型の半導体メモリを発表する[R 17][R 14][R 16][R 15][R 17]
- 2017年6月26日 - レキサーブランドからの撤退を発表する。[1]
注釈
出典
- ↑ ロイ・アラン (2001-10-1). A History of the Personal Computer The People and the Technology ((英語)). イアン・アラン・パブリッシング. ISBN 9780968910801.
- ↑ “Micronʼs first contract was for the design of a 64K memory chip for Mostek Corporation.” ((英語)). マイクロン・テクノロジ. . 2017-2-17閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 脇英世. “アイダホのポテト王からパソコン王へ”. ITmedia. アイティメディア. . 2009-3-6閲覧.
- ↑ “Memory and Storage Products” ((英語)). マイクロン・テクノロジ. . 2013閲覧.
- ↑ “Top100 グローバル・イノベーター・アワード”. クラリベイト・アナリティクス. . 2017-1-1閲覧.
- ↑ “Top semiconductor R&D leaders ranked for 2014” ((英語)). エクステンション・メディア. . 2015-4-7閲覧.
- ↑ “Worldwide Semiconductor Revenue Grew 7.9 Percent in 2014, According to Final Results by Gartner” ((英語)) (プレスリリース), ガートナー, (2015年4月7日)
- ↑ 2013年2月27日に経営破綻して会社更生法の適用を申請した
- ↑ 9.0 9.1 “マイクロン・テクノロジー社によるKMTセミコンダクター(株)の経営権取得について” (プレスリリース), 神戸製鋼所, (2000年10月18日)
- ↑ “NECと日立、DRAMの合弁会社を設立” (プレスリリース), 日本電気, (1999年12月29日)
- ↑ “NEC日立メモリ株式会社を設立” (プレスリリース), 日立製作所, (1999年12月27日)
- ↑ “ハイブリッドメモリキューブ・コンソーシアム、新仕様をリリース HMCの性能向上と業界レベルでの採用を推進” (PDF) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2009年8月6日)
- ↑ “All About HMC” ((英語)). マイクロン・テクノロジ. . 2015-7-28閲覧.
- ↑ 14.0 14.1 “3D XPoint Technology Media Kit” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2015年7月28日)
- ↑ 15.0 15.1 “Intel and Micron Produce Breakthrough Memory Technology ― New Class of Memory Unleashes the Performance of PCs, Data Centers and More” ((英語)) (PDF) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2015年7月28日)
- ↑ 16.0 16.1 “Introducing Intel Optane Technology ― Bringing 3D XPoint Memory to Storage and Memory Products” ((英語)) (プレスリリース), インテル, (2015年7月28日)
- ↑ 17.0 17.1 17.2 “A Revolutionary Breakthrough In Memory Technology” ((英語)) (PDF) (プレスリリース), インテル, (2015年7月28日)
- ↑ “Entrepreneur J.R. Simplot Dies At 99” ((英語)). フォーブス (フォーブス・メディア). (2008年5月26日)
- ↑ “マイクロン・テクノロジー、トーマス・ニコルソン取締役の2005年度末での退任を発表”. ビジネス・ワイヤー (ビジネス・ワイヤー). (2005年8月22日)
- ↑ “Simplot Reduces Stake In Micron Technology” ((英語)). シアトル・タイムズ (シアトル・タイムズ・カンパニー). (1996年7月13日)
- ↑ “J.R. Simplot Further Reduces Stake In Micron Technology” ((英語)). シアトル・タイムズ (シアトル・タイムズ・カンパニー). (1996年7月31日)
- ↑ “KMTセミコンダクター(株)の株式譲渡契約の締結について” (プレスリリース), 神戸製鋼所, (2000年10月18日)
- ↑ 長広恭明 (2000年10月18日). “神戸製鋼と米Micron, KMTの株式譲渡を正式発表”. Tech-On! (日経BP社)
- ↑ “Dominion Semiconductor LLC” ((英語)). ズーム・インフォメーション. . 2013閲覧.
- ↑ “ドミニオン・セミコンダクタ社の買取によるメモリ事業体制の再編について” (プレスリリース), 東芝, (1999年7月7日)
- ↑ “Microelectronics Facility” ((英語)). IDC. . 2013閲覧.
- ↑ “タワージャズジャパンについて”. タワージャズジャパン. 2014年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
- ↑ “Aptina Imaging Enhances Technology and Product Portfolio” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2008年3月4日)
- ↑ 加納征子 (2008年3月5日). “米Micron Technology社, CMOSセンサ事業を分社化”. Tech-On! (日経BP社)
- ↑ “Micron Launches Aptina Imaging: A CMOS Image Sensor Division” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2008年3月4日)
- ↑ “History / Legacy” ((英語)). アプティナ・イメージング. 2014年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
- ↑ “Micron Announces Agreement to Acquire Numonyx” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2010年2月9日)
- ↑ “Micron Announces Closing of Numonyx Acquisition” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2010年5月7日)
- ↑ “Steve Appleton 1960-2012” ((英語)). マイクロン・テクノロジ. . 2013閲覧.
- ↑ 福田昭 (2012年2月6日). “半導体メモリ大手MicronのCEO、Appleton氏が急逝”. Impress Watch (インプレス)
- ↑ “Micron Technology Announces Update” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2012年2月3日)
- ↑ 坂本幸雄 『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』 日本経済新聞出版社、2013-10-8。ISBN 9784532318994。
- ↑ “Micron and Elpida Announce Sponsor Agreement” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2012年7月2日)
- ↑ “エルピーダとマイクロンがスポンサー契約に合意” (PDF) (プレスリリース), エルピーダメモリ, (2012年7月2日), オリジナルの2013年12月3日時点によるアーカイブ。
- ↑ “Micron and Elpida Announce Closing of Sponsor Agreement Transactions” ((英語)) (プレスリリース), マイクロン・テクノロジ, (2013年7月31日)
- ↑ “エルピーダとマイクロンがスポンサー契約手続を完了” (PDF) (プレスリリース), エルピーダメモリ, (2013年7月31日), オリジナルの2013年12月3日時点によるアーカイブ。
- ↑ “Annual Report” ((英語)). マイクロン・テクノロジ. . 2013-8-29閲覧.
関連項目
- マイクロンジャパン(【旧】KMTセミコンダクター|KTIセミコンダクター)・マイクロンメモリジャパン(【旧】エルピーダメモリ)
- クルーシャル・テクノロジ・バリスティクス・ゲーミング
- テキサス・インスツルメンツ・神戸製鋼所
- イスラエル・コーポレーション・タワージャズ(タワー・セミコンダクター)・タワージャズジャパン
- 力晶半導体・瑞晶電子
- インフィニオン・テクノロジーズ・キマンダ
- インテル・STマイクロエレクトロニクス・ニューモニクス・IM・フラッシュ・テクノロジーズ
- 東芝・インターナショナル・ビジネス・マシンズ・ドミニオン・セミコンダクター
- アプティナ・イメージング
- フォトビット
- 揮発性メモリ
- 不揮発性メモリ
- CMOSイメージセンサ
外部リンク
- Micron Technology, Inc. | Memory and Storage Solutions (英語)
- Enterprise SSD Storage from Micron Technology (英語)
- Investor Relations (英語)
- Investor Relations (英語)
- Micron Financial Accounting - Vendor Portal (英語)
- Model N High Tech Revenue Management (英語)
- Micron Sample Center (英語)
- Jobs at Micron (英語)
- Students (英語)
- Micron CPG Partner Portal (英語)
- MU stock quote - Micron Technology, Inc. stock price (英語)
- Crucial.com (英語)
- Ballistix Gaming (英語)
- IM Flash (英語)