ホーム・アンド・アウェー

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ホーム・アンド・アウェーは、主にサッカーなどのスポーツにおいて、2チームがそれぞれのホームタウンで1度ずつ計2回対戦する方式のこと。広義のラウンドロビントーナメントである。

概説

対戦するスタジアムを本拠としている側のチーム、もしくはまったく無関係なスタジアムであっても試合を主催する側のチームのことをホームチームといい、主催側の立場ではそのゲームをホームゲームと呼ぶ。一方、ホームチームと対戦する相手チームのことをアウェーチーム、日本プロ野球ではビジター(visitor)と言い[1]、アウェーチームの立場で行う試合をアウェーゲームあるいはロードゲーム(road game)と呼ぶ。ホーム・アンド・アウェーは、対戦する特定の2チームの組み合わせについて、ホームゲームとアウェーゲームを1試合ずつ行う対戦方式である。

Jリーグなどのサッカーのリーグ戦では通常、この方式で行う。日本の野球では「ホーム(フランチャイズ)・アンド・ビジター」という表現が正式名称であるが、最近ではサッカーの影響で野球でもアウェイと言う場合が増えている 。なお、アメリカ・メジャーリーグにおいては公式サイト上やニュースサイト、テレビ中継等で「Away」の表現が主に使用されており「Visitor」の表現は少ない[2]。また、韓国プロ野球台湾プロ野球においても英語や現地語で「アウェー」の表現になっているなど、どちらかと言えば「ビジター」表記は日本プロ野球独自のものとなっている。

この方式においては、選手ユニフォームにはホーム用とアウェー(ビジター)用の2種類が用意される場合が多い。野球においてはホーム用ユニフォームの胸部には球団の愛称、ビジターユニフォームにはチームの愛称よりチームの親会社の社名か本拠地を置く地元名が入っている傾向がある(日本野球機構の各チームのユニフォームについては、各球団の項目を参照のこと)。

サッカーやラグビー、バスケットボールでもユニフォームは、2パターンの色のユニフォームを準備しているのが基本であるが、こちらは、主に色の被りへの対策である。そのため、アウェーの試合でも主にホームで使用するユニフォーム(ファーストユニフォーム)が相手のファーストユニフォームと色が被らなければファーストユニフォームを着用することや、逆にファーストユニフォームが相手のファーストユニフォームや主にアウェーで使用するユニフォーム(セカンドユニフォーム)双方の色と被ってしまう場合はホームでもセカンドユニフォームを使用する場合がある。

双方のチームが対戦するスタジアムを本拠としている場合や、一方のチームが本拠としているスタジアムが主催側の規定に満たない場合などの理由から、対戦するスタジアムを本拠としているチームをアウェーチーム扱いで開催する事例もある。

利点

ホームタウンでの試合は、ホームチームのほうが施設やその他の環境に慣れている点や、移動による疲労がない点などで有利だと考えられている。また、比較的多く地元のファンの声援を受けられることや、それに伴う判定への影響(ホームタウンディシジョン)などもホームチームに有利に働く要素だとされることがある。国際試合などでは特にそうした傾向が強い。ホーム・アンド・アウェイ方式では、このような開催場所による有利不利を均等化することが期待される。

また、リーグ戦を通した試合数が増えることによる興行収入の増加、それぞれがホームタウンで試合を開催することによる観客動員の均等化など、プロスポーツにおける興行面での理由もある。

欠点

ホームゲームの開催順序や時期に依存した有利不利が発生する可能性は残されており、これを均等化するのは事実上不可能である。特にホーム・アンド・アウェーの2試合によって必ず勝敗を決する必要がある場合(例:ノックアウトトーナメント)、2試合目のみが延長戦になる場合があり、後にホームゲームを行うチームが有利となってしまう[3]。また、プロ野球のプレーオフ日本シリーズNBAファイナルのように、勝利数の差によって勝敗を決める場合には試合数を奇数にせざるを得ないといった問題もある。

また、ホームタウンのファンによる応援は時として度を超え、治安上の問題に発展するケースがある。こうした場合問題が発生した試合のホームチーム側に何らかの制裁が課されることがある。問題を未然に防ぐために敢えて双方に無関係なスタジアム(主に他国のスタジアム)で試合をする場合もある。

ホーム・アンド・アウェー方式は1ゲームで勝敗を決する場合と比較すると、移動距離や日程を増加させるため、金銭的な面や体力的な面で負担になる。特に学生などのアマチュアには負担が大きい。世界規模の大会では移動行程の問題からホーム・アンド・アウェー方式はあまり行われない。

総当たりが奇数回となる場合、ホームゲーム数のバランスが均等になりにくい場合もある。

日本野球機構管轄のプロ野球では、フランチャイズ制度が導入された1952年以後、1997年-2000年2015年2016年セ・リーグパ・リーグの両リーグで、2004年はパ・リーグのみで、総当たり回数が奇数(2015・2016年は25回、それ以外は27回総当たり)だったため、2004年のパ・リーグを除き、それぞれの対戦カードごとに、1年ごとにホームゲームを1試合多く開催できるようにした(2年間でH&Aの数が均等になる)。また2015・2016年のセ・パ交流戦も互いのリーグのチームと3回総当たりとなるため、1年ごとにホームとビジターを入れ替える(こちらも2年間でH&Aが完成する)。

また、Jリーグにおいても、J22008年から2010年まで、J3では2014年2015年JFL1999年のみ、それぞれ3回総当たりを採用しており、どちらか一方のチームがホームゲームを2試合開催していた。

フットサルFリーグ2007年度の第1回大会から基本的に3回総当たりとし、原則として「ホーム&アウェー&セントラルで1回ずつ」当たるようにしていた。2009年度以後は「ホーム&アウェー+ホームorアウェー」を強化しているものの、セントラル開催も数節行われている(2013年度に関しては2シーズン制のため、基本的にホーム&アウェー×2となっていたが、全日程の3分の1がセントラル開催だった。2014年度は元の1シーズン制に戻したため、完全「H&A&C」(各1回ずつ)としたが、2015年度は2009年度-2013年度の方式に戻されている)。

Bリーグも地区交流戦は互いのカンファレンスのチームと2回戦総当たりを1年ごとにホームとアウェーを入れ替えている(ただし2017-18シーズンより各チーム3カードはホーム&アウェー開催)。Bリーグの前身たるNBLでは最終年度である2015年度のみ東西カンファレンス制廃止に伴い5回戦総当たりに変更されたため、どちらか一方のチームがホームゲーム1試合多くなっていた。さらにその前身たるJBLは6回戦総当たりとしていたが、1節につき2回ずつ行われていたため、片方のホームゲームが1節2試合多くなっていた。なお、2007年度から2008年度までの2シーズンは5回戦総当たりでうち1試合をリーグカード(リーグ主管)として中立地で開催した。また、JBL及びNBLと並立するbjリーグにおいても、東西カンファレンス間の交流戦は互いのカンファレンスのチームと2回戦総当たりを1年ごとにホームとアウェーを入れ替える。

Jリーグ(J2とJ3)、FリーグとJBLはチーム数が少ないための、日程確保の観点によるものである。

代替方式

ホーム・アンド・アウェイの欠点を考慮し、試合の一部または全部を以下のような方式で行うこともある。

  • 中立地方式。セントラル方式のうち、特に参加する各チームのホームタウンでない場所を選定して試合を行う。セントラル方式よりは公平性が高いと言えるが、開催地における両チームの習熟度・人気等の面で必ずしも十分な公平性が保てるとは言えない。2004年まで開催されたサッカーのトヨタカップは、かつてはホーム・アンド・アウェー方式であったが、治安や日程面の問題から中立地方式に変更された。サッカーのUEFAチャンピオンズリーグのように、準決勝まではホーム・アンド・アウェー方式を採用し、決勝戦のみを中立地方式で行うトーナメント戦もある。ただし、決勝戦開催地は早い時点で決められるため、場合によっては決勝進出チームのホームグラウンドが会場となってしまうこともありうる[4]NFLスーパーボウルも中立地方式であるものの、こちらも開催地は早い段階で決定されるためやはりホーム開催となる場合もありうるが、開催地を本拠とするチームが、そのシーズンのスーパーボウルに出場したことはこれまで一度もない。上記のFリーグにおいても、試合日程確保の観点で、基本的に総当たりが奇数の3回(2013-14年度のみ4回)総当たりであるため、一部の節でリーグ直轄による全チーム総集結のセントラルシリーズが組まれている。
  • ダブル・セントラル方式。2か所の開催地で1か所ずつ2回対戦する。ワン・エンド・ワンセントラル方式とも言う。特にアジア地区におけるサッカーの国別対抗リーグ戦でしばしば見られる方式である。自国のホームで試合をする機会のないチームにとって不利であるが、実力差があり過ぎてその2チーム以外に事実上突破の可能性や試合開催の運営能力がない場合に移動負担軽減のためと、ホーム・アンド・アウェーと試合数を合わせる場合に採用される。

ホームタウン以外での試合開催

ホーム・アンド・アウェー方式での試合は原則として、そのチームのホームタウン区域内にあるスタジアム等で開催されるのが通常であるが、以下のような理由でホームタウン地域外で開催されることがある。

  • 本拠地地域以外での市場開拓を目的とした開催。
    • NPB管轄のプロ野球においては、特定球団のホームタウンとなっていない空白地域が多い。これらの地域でスポーツ振興を図り、また市場開拓を行うといった目的のため、特定チームがホームタウン以外の地域において試合を主催することが少なくない。このような場合でも、主催側をホームチームと呼ぶが、ホームであることの有利さはほとんど享受できない[5]
    • 他球団の本拠地で主催試合を行うこともあり、セントラル・リーグ所属の読売ジャイアンツの本拠地である東京ドームではこれまでにパシフィック・リーグ加盟全球団がホームゲームを組んでいる。パ・リーグ所属大阪近鉄バファローズ及び近鉄と合併したオリックス・バファローズの本拠地、京セラドーム大阪では阪神タイガース(後述)、巨人、更にはオリックスと同じパ・リーグに所属する福岡ソフトバンクホークスがホームゲームを組むなどしている。ただし、セ・パ交流戦導入以後はそれまで主催していた球場において本来その球場を本拠地にする球団と交流戦で対戦する(当然ビジターとして)ことになったため、以前に比べると減少している。
    • サッカー・Jリーグやバスケットボール・Bリーグではクラブ数がそれぞれ54、36と多く、カバーしていない都道府県の方が少ないため、ホームタウン地域以外での試合開催は少ない。
    • 2部制導入前のJリーグにおいては特定クラブのホームタウンとなっていない地域が多く、プロ野球同様の地方開催も多く見受けられたが、地方開催を行った地域の大半に新たなJリーグクラブが設立されているため、現在ではホームタウン地域外での開催は、ホームスタジアムが事故、災害、改修等で使用不能などの特殊事情がない限り(後述)ほとんど見られなくなっている。
  • かつての本拠地での開催
    • 東京ドームは2003年まで、パリーグ所属日本ハム・ファイターズも本拠地として使用していた。2004年、日本ハムは札幌ドームに移転したが、2004年以降も東京時代のファンへの配慮として、10試合程度の東京ドームでの主催試合を毎年開催している。また、オリックス・バファローズは、2004年オフに大阪近鉄バファローズと合併する前は神戸市の神戸総合運動公園野球場(現ほっともっとフィールド神戸)を本拠地としオリックス・ブルーウェーブと言う名称で活動していたが、2005年の合併以後も、旧本拠地の神戸で[6]15試合程度開催している。この他にも、所沢移転後に旧本拠地の福岡市・平和台球場で主催試合を行った西武ライオンズや、川崎移転後に旧本拠地の仙台市・宮城球場で主催試合を行ったロッテ・オリオンズなどの事例がある。
  • 営業上の理由
    • ホームスタジアムで試合を行うより観客動員、収入が期待できる場合、アウェー動員を見込んであえてアウェーチームのファンの多い地域で主催ゲームを行う場合もある[7]

脚注

  1. アウェイとビジターの違いは興行権をリーグ側が持つかホームチーム側が持つかである。現行の日本プロ野球日本バスケットボールリーグではチーム主催で試合を開くので相手チームは「ビジター」と呼ぶのが正式である、サッカーのJリーグでは「アウェー」と呼ぶのが正式である。
  2. Schedule(MLB.com)
  3. ただし、サッカーで延長戦までにわたりアウェーゴール制度を採用している場合、延長戦で双方に得点が入った末同点で終了すると、アウェーチームの勝ちとなるため、アウェーチームが一概に不利とも言い切れない。
  4. 2012年のバイエルン・ミュンヘン及び前身たるUEFAチャンピオンズカップ時代の1957年レアル・マドリード、1965年インテル・ミラノ、1984年ASローマの4例。ホームチームが勝利したのは1957年と1965年の2度。
  5. 例えば岡山県倉敷市マスカットスタジアムや、どらドラパーク米子市民球場(かつては北陸地方=富山市民球場アルペンスタジアム石川県立野球場福井県営球場他も)で行う広島東洋カープ阪神タイガースでは、広島が主催者でありながら、阪神ファンの方が多いということが慢性化している。
  6. ただし、2005年から2007年までの3年間は合併特例措置として、大阪・神戸のダブルホーム
  7. 例-2008年新大分球場北九州市民球場で行われた横浜ベイスターズ主催の福岡ソフトバンクホークス戦、1999年に行われた福岡ドームでのオリックス・ブルーウェーブ主催の福岡ダイエーホークス戦、1991年から1997年に行われていた岐阜市長良川球場での広島東洋カープ主催の中日ドラゴンズ戦。

関連項目