ホットケーキ
ホットケーキ(米: hotcake)とは、小麦粉に卵やベーキングパウダー、砂糖、牛乳、水などを混ぜ、フライパンで両面を焼いた料理。
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概説
英語圏では「パンケーキ(pancake)」と呼び、厚みは薄いものが多いが、アメリカで「ホットケーキ(hotcake)」と呼ぶ場合、厚めのものが多い。しかし、アメリカで主に食されているのは薄いパンケーキ(pancake)の方である。パンケーキの名前はパン(ポルトガル語: pão)ではなく、平鍋(パン、フライパンなど)で簡単に焼いて作る製法に由来する。膨化食品の一種。
ホットケーキという名称の由来については諸説あり、ホットプレートで焼いていた事からパンケーキではなくホットケーキと言われる説や、日本でホットケーキミックスを発売した社長が「温かいケーキだからホットケーキ」と名づけたことが始まりと言う説などがある。
また、日本国外ではお好み焼きもパンケーキの一種として認識されることがある(英語版Okonomiyakiページ参照)。
調理・食べ方
小麦粉に鶏卵、砂糖、牛乳または水、ベーキングパウダーを加えた生地を用いるのが基本で、日本では菓子のような甘めの配合が主流。塩やバターなどの油脂を加える例もある。
ホットケーキ用に小麦粉、砂糖、膨張剤などが配合された商品(ホットケーキミックス、パンケーキミックス)が、製菓メーカーや製粉メーカーから各種販売されている。基本的には、卵と適量の水または牛乳を入れ、混ぜることで、生地がすぐに出来上がるようになっている。このホットケーキミックスは、他に加える材料や分量、調理手順を変更することで、ベースとなる物と配合が類似するドーナツ、クレープ、スポンジケーキなどの材料として流用することも可能である。
生地にココア、チョコレート、果物や他の穀粉(小麦粉の全粒粉、蕎麦粉、はったい粉、オートミールなど)を混ぜて味や食感に変化をつけることもできる。バニラオイルを数滴加えることで香りがよくなる。
ホットケーキを焼く際には、生地の表面が先に焼けると内部に火が通りにくくなるため、生地を流し込む前に、加熱したフライパンを濡れ布巾の上に置いて少し冷ますのがコツとされる。また、ホットプレートで焼く場合は、設定温度を180度にして焼けばきれいにふんわり焼ける。焼きあげられたホットケーキは、冷凍食品としても出回っている。
バター・マーガリンやメープルシロップ、キャラメルソース、蜂蜜、ホイップクリーム、チョコレートソースなどをかけて食べることが多い。多くの国や地域ではソーセージ・ベーコン・豆類やスープとともに朝食として供されることが多いが、日本ではおやつとして供されることが多く、甘味喫茶などではアイスクリーム、チョコレートクリームや果物を乗せたメニューも一般的である。ファーストフードやファミリーレストランの朝食メニューとしても定着している。手軽に焼けるため、アウトドアでもおやつや主食として焼くことも多い。
フライパンやホットプレートで焼く代わりに炊飯器でホットケーキを「炊く」という方法もある。生地を入れて炊飯スイッチを入れるだけで簡単に出来上がる。ただし、量が多過ぎると火が通りきらず、中が生焼けになる。炊飯終了後に生地の中心に竹串などを刺し、串に生地が付着していれば生焼けになっている。もし、生焼けになった際にはもう一度炊くとよい。焼きあがったものはホットケーキよりはスポンジケーキに近い感じに仕上がるため、そのままケーキにすることも可能である。
歴史
粉と水、燃料、パンケーキを焼く金属製や石製の表面があれば簡単に作れるため、その歴史は古代エジプトまで遡るといわれる。古代エジプトでは人々の健康と幸福を祈り、神への捧げ物として作られていた。
英語圏では古くから脂の火曜日(灰の水曜日の前日)にパンケーキを焼いて食べる習慣があるため、この日をパンケーキの火曜日と呼ぶ習慣がある(Shrove Tuesday参照)。フランスとカナダの旧フランス領では主の迎接祭(2月2日)にクレープを焼き、ロシアでは灰の水曜日の前のマースレニッツァ(バター週間)にブリヌイを焼いて食べるなど、ヨーロッパでは早春の行事にパンケーキが関係していることが多い。
フィンランドではキリスト教の断食の前日によりパンケーキと豆のスープを木曜日に食べる習慣が一部にある。
アメリカ英語の慣用句「Selling like hotcakes(ホットケーキのように売れる)」は、「飛ぶように売れる」の意味である。
日本においては明治30年代初頭に雑誌で紹介されたのが最初といわれており、1914年(大正3年)に東京・上野にて現在と同様のホットケーキのようなどら焼きが誕生したとされる。
戦後しばらくはドラ焼きとホットケーキは混同されていたようであり、長谷川町子の漫画『サザエさん』にてサザエが「どら焼きを焼く」と言ってホットケーキを焼いていたシーンが描写されている。
各国のホットケーキ
ホットケーキ状の食品は世界中の様々な国で見られ、特に欧米に多い。地域によって材料や配合、作り方が異なることがあり、クレープやケーキ、プディングに近いもの、食事用の甘みが少ないものなどがある。特に独立した記事があるものを以下に挙げる。
北米
アメリカ合衆国とカナダのパンケーキは卵、小麦粉、牛乳もしくはバターミルクを原料とし、膨張剤としてベーキングパウダーと重曹を加える。砂糖を少量入れることもある。これらを混ぜ合わせて作った生地を熱した鉄板などの上に流しこみ、約1センチメートルの厚さにして焼く。膨張剤から発生した泡が生地の上面に上がってきたら、ひっくり返してもう片方の面も焼く。焼き上がったホットケーキの表面は明るい色をしており、メープルシロップ、バター、ピーナッツバター、果物などを添え、朝食として食べられることが多い。生地自体にブルーベリー、イチゴ、チーズ、ベーコン、バナナ、チョコレートチップを加え、甘みや香りをつけることもある。さらにナツメグやシナモンのような香辛料、バニラオイルのような香料を入れるものがある。カナダでは、フランス語の会話で単にクレープというとパンケーキを指す。
アメリカ国内では主にパンケーキ(pancake)と呼ばれるが、ホットケーキ(hotcake)、グリドルケーキ(griddle cake)、フラップジャック(flapjack)といった名称もある(グリドルとは料理用の鉄板の意味である)。「シルバーダラー・パンケーキ」(silver dollar:1ドル硬貨)といえば直径約7cmの小型のホットケーキのことである。
北米ではパンケーキを主力商品とするチェーンレストランにアイホップ(IHOP、インターナショナル・ハウス・オブ・パンケークス)があるほか、デニーズなども朝食メニューにパンケーキを置いている。
アメリカ・バーモント州を発祥とするバーモント・パンケーキは小麦粉と一緒にオートミールもしくは蕎麦粉を加え、ベーキングパウダーを多めに入れて焼く。焼き色が濃くなることとそば粉の香りが強く出ることが特徴で、食感も小麦粉だけのパンケーキとは異なる。
アメリカ合衆国にはまた、ホーケーキ(hoecake)やジョニーケーキ(jonnycake)というコーンミールのパンケーキがある。
メキシコではパンケーキはパンケーケ(スペイン語: panqueque)と呼ばれ、アメリカ合衆国のパンケーキと似ているが、材料に小麦粉ではなくトウモロコシの粉を用い、「パンケーキ」よりも「ホットケーキ」という呼び名の方が一般的である。レストランの朝食の定番メニューであり、路上の屋台やお祭りで一日中売られていることもある。パンケーケ一枚にコンデンスミルク、フルーツジャム、甘い山羊乳のカヘタといったさまざまなソースをかけて食べる。
ヨーロッパ
イギリスのパンケーキは日本や北米と同じく材料に卵・小麦粉・牛乳を使うが、牛乳が多いために生地がより水っぽい。また、膨張剤を入れないので、フライパンなどで焼いても膨らまず、フランスのクレープに近い、薄いホットケーキになる。色は薄い茶色で、泡の跡が焦げ茶色に残る。砂糖をまぶしたりシロップをかけてデザートとして供するほか、他の食物を巻いて食事として食べることもある。同じ生地でヨークシャー・プディングが作られる。
ドイツのプファンクーヘン(ドイツ語: Pfannkuchen)は、イギリスのものと同様である。ジャム入りドーナツをプファンクーヘンと呼ぶ地域では、アイアークーヘン(Eierkuchen:卵ケーキ)と呼ばれる。このほか、クレープに似たパラチンケ(Palatschinke)やプリンゼン(Plinsen)もある。
オランダとフランドル地方のパンケーキはパンネクック(オランダ語: Pannenkoek)と呼ばれ、主に昼食や夕食に食べる。クレープよりもわずかに厚く、また直径30cm以上にもなる大きさが特徴である。生地は卵がベースで、リンゴ、チーズ、ハム、ベーコン、ショウガの砂糖漬けなどを入れて焼く。何も入れずに焼くこともあり、砂糖をまぶして食べる。パンネクック・レストランではさまざまな種類のパンネクックを提供しており、家族向けの店として人気がある。他の地域のパンケーキと比べて変わっており、値段も手ごろなことからオランダ名物料理として国外からの観光客に人気がある。このほか、オランダには丸い小型のポッフェルチェがある。
ロシアのパンケーキはブリヌイと呼ばれ、伝統的に四旬節前のマースレニッツァ(バター週間)にスメタナやキャビアを載せて食べる。より薄いクレープ状のパンケーキはブリンチキと呼ばれる。
アジア
香港
中国香港はイギリスの植民地であったため、イギリス風の薄いパンケーキ(広東語で「班戟」)をホテルや茶餐廳などの飲食店で朝食などに供している例がある。近年は、これとは別に極薄に焼いたパンケーキを使ったデザートが広く食べられている。ハネムーンデザート(Honeymoon Dessert、滿記甜品)というチェーン店は、果肉と生クリームを包んだマンゴーパンケーキ(芒果班戟)、ドリアンパンケーキ(榴蓮班戟)を考案して人気を呼び、現在は海外展開もしている。デザートプレーグランド(Dessert Playground、沛公甜品)という店は「千層班戟」という、クレープと生クリーム、フルーツソース、果肉などを10-15層重ねたミルクレープで人気がある。他に、バナナ、レイシなどの果肉を使う飲食店もある。
マカオ、香港、広東省などで作られている「蛋卷」(ダンジュアン dànjuǎn、広東語 ダーンキュン daan2gyun2)は、甘めの薄いパンケーキに似た生地をじっくり焼いて水分を飛ばし、焼き上がり後に円筒状に巻いた菓子である。
台湾
台湾では、ホットケーキを鬆餅(ソンビン)と呼ぶ。ホット・チョコレートとアイルクリームで付けて食べるのは普通のカフェ店の定番といわれる。
韓国
韓国では伝統的な韓国風ホットケーキはホットクと呼ばれ、主に冬季、間食系の屋台などで売られている、安価で庶民的な菓子料理である。一言でいえば、中に甘い餡が入ったホットケーキのようである。また、アメリカ式のホットケーキは三つのホットケーキを重ねて、中身はイチゴ・生クリーム・はちみつを加えて、オレンジジュースと一つのセットという形に売れる。
他のアジアの国
マレーシア、シンガポール、タイ王国などにみられるローティ・チャナイは、焼き上がりの形状がイギリスのパンケーキに似ているが、甘くなく、焼く前に空中で生地を回して伸ばすなど、製法が異なり、ナンやチャパティに近い食品である。