ペイストリー

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ブラックベリーパイ

ペイストリーペーストリーまたはペストリー: pastry)とは、穀粉バターショートニングベーキングパウダーまたは等の材料を焼いて作った食べ物である。また、小さなケーキ、タルト等の甘い菓子類を「ペイストリーズ」、「ペストリーズ」(pastries)と呼ぶ。[1][2]

ペイストリーはまた、これらの食べ物を作る生地も指す。ペイストリーの生地は薄く押しのばして料理の土台に使われる。一般的なペイストリー料理にはパイタルトキッシュがある。

ペイストリーは、より多くの脂肪分を含むことでパンと区別される。これにより、薄くサクサクした質感になる。良いペイストリーはふんわりと軽く脂肪分に富みながら、フィリングを保つに十分な固さを持つ。ショートクラスト・ペイストリーを作るときは、水分を加える前に油脂と穀粉を徹底的に混ぜなければならない。混ぜることにより穀粉の粒が油脂に程よく覆われ、グルテンの生成が抑えられる。他方では、よく混ぜることでグルテンの繊維が長くなり、ペイストリーは堅くなる。デニッシュクロワッサンのような、他の種類のペイストリーに特有のサクサクとした食感は、酵母パンに似た生地を繰り返し押しのばし、バターを薄く塗って何層にも薄く折り畳むことで作られる。

多くのパイのレシピでは、フィリングを加える前に、ペイストリーのみを焼く。ペイストリー生地は甘い場合も、甘くない場合もある。

主なペイストリーの種類

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フィロ・ペイストリーで作るシュトゥルーデル
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パフ・ペイストリーで作る、ペカンとメープルのデニッシュ
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シュー・ペイストリーで作るプロフィトロール
ショートクラスト・ペイストリー 
ショートクラスト(またはショート)・ペイストリーは、最も簡易で一般的なペイストリーである。穀粉、油脂、塩、および水が材料であり、油脂と穀粉を混ぜ、水を加えて練った生地を押しのばして作る。摂氏180度で焼き、軽く柔らかなペイストリーとなる。これを甘くすると、スイートクラスト・ペイストリーとなる。
フレーキー・ペイストリー 
フレーキー・ペイストリーは、層により調理時に膨らむ簡易なペイストリーである。サクサクしてバターが効いた食感を望む場合、最適である。「パフ(膨らみ)」は、焼き工程を高温で始め、焼き上がりに温度を下げることで得られる。
パフ・ペイストリー 
パフ・ペイストリーは多くの層により「パフ(膨らみ)」を焼き工程で得る。このペイストリーは穀粉、バター、塩、および水で作り、材料の結合と化学反応、および十分な量の層の間の空気により膨らむ。オーブンから出した焼きたてのパフ・ペイストリーは、軽くサクサクとし、柔らかい。
シュー・ペイストリー 
シュー・ペイストリーは、非常に軽いペイストリーであり、クリームが詰められる。様々な風味のクリームが詰められ、しばしばチョコレートをかける。シュー・ペイストリーはまた、チーズ、ツナ、鶏肉等を詰めてアペタイザーとしても使われる。
フィロ・ペイストリー 
フィロ・ペイストリー(通称:フィロ)は通常、紙のように非常に薄く引き延ばされる。バターを塗って複数の薄い層を重ねてフィリングを包む。このペイストリーは非常に脆く、崩れやすい。[3]パイデニッシュに似た食感を持つのが特徴である。

背景

ペイストリーの起源は、古代地中海の紙のように薄い多層のバクラバとフィロである。十字軍により、中世ヨーロッパにペイストリー作りが伝わった。その後ルネサンスのフランスおよびイタリアのシェフがパフおよびシュー・ペイストリーを完成させ、17〜18世紀のシェフが新しいレシピを作り上げた[4]。新しいペイストリーには、ブリオッシュ、ナポレオン(ミルフィーユ)、シュークリームエクレアがある。フランスの料理人アントナン・カレームがペイストリーの料理法に最初に取り組んだと伝えられている。[5]

関連用語

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ペイストリークリームを使ったレッドベルベットケーキ (Red velvet cake
ペイストリー 
穀粉、油脂、場合により卵と砂糖を混ぜて作る。油脂は通常、穀粉の粒子を包むように混ぜ込まれ、水分を加えて全てを混ぜ、成形して焼き上げる。ペイストリーには多くの種類がある。
ペイストリーボード 
通常木製(大理石が望ましい)の正方形または長方形の板で、この上でペイストリーを押しのばす。
Pastry brake 
正対し逆方向に回転し、可変間隔を持つローラーで、商業的に使いペイストリーを薄くのばす。小型のものは家庭でパスタ作りに使われる。
Pastry case 
未調理またはフィリングなしで焼いたペイストリーの容器で、塩味の、または甘い具を入れて使う。
ペイストリークリーム 
菓子用カスタードである。卵と穀粉でとろみを付けたカスタードで、バニラ風味の甘みを加えた牛乳で作る。フラン、ケーキ、ペイストリーズ、タルト等のフィリングに使われる。穀粉により、卵の凝固が防がれる。
ペイストリーカッター 
様々な形状の金属またはプラスチックの型で、波ライン円形、菱形、ジンジャーブレッドマン等がある。片側の縁が鋭く、ビスケット、スコーン、ペイストリー、ケーキ生地の型抜きに使用する。[6]
ペイストリーブレンダー 
油脂と穀粉を正しく混ぜるために使用する台所用具である。通常金属製またはプラスチック製であり、取っ手に複数の針金または小さな刃が付いている。

ペイストリーの物理と化学

小麦粉の性質および特定の油脂により、様々なペイストリーが作られる。小麦粉を生地に練り上げ、水を加えると、グルテンの繊維が生成され、生地は堅くなり弾力がつく。しかしながら、典型的なペイストリーでは、この堅さが望まれないため、脂肪または油を加えてグルテンの生成を抑制する。これにはラードまたは牛脂(スエット)が使われることが多く、荒い結晶構造が効果的である。澄ましバターを使用しない場合、水分により失敗することがある(澄ましバターは殆ど水分を含まない)。バターのみを使用するショートクラスト・ペイストリーは質感が劣ることもある。湯で溶かした脂肪、または油を使用すると、粒子間の薄い油膜によるグルテンの形成阻害が少なく、ペイストリーは堅くなる。ホットウォーター・クラスト(湯練り)ペイストリーでは、油または溶かした脂肪が使用され、粒子間の層または油によるグルテンの生成が容易であり、ペイストリーはより堅くなる。[7]

歴史

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フィロ生地にシロップをかけた、典型的な地中海のバクラバ
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シリアでペイストリーを販売する店

ヨーロッパにおけるペイストリー作りの伝統は、薄片状生地のショートクラストが使われた古代地中海の時代にさかのぼる。これらのレシピは十字軍により、西ヨーロッパに普及した。

地中海、ローマ、ギリシャ、およびフェニキアでは、伝統的にフィロに類するペイストリーを調理に使用した。また、古代エジプトでペイストリーに似た菓子を作ったという有力な証拠があり、エジプト人がペイストリーを作って食べていた可能性は非常に高い。技能を持った専門のパン焼き職人がいて、穀粉、油、ハチミツのような材料を必要としていた。紀元前5年に、アリストパネスの劇で果物のフィリングの小さなペイストリーズを含む菓子に言及している。ローマでは穀粉、および水を使って、肉や家禽を包むペイストリーが作られた。これは焼き工程で肉汁を保つために使われ、食べるためではなかった。食べるためのペイストリーは小さく作られ、卵または小鳥の肉を具とした、より栄養に富むペイストリーであり、しばしば響宴に供された。ギリシャおよびローマでは、調理に用いる油でペイストリーの堅さが失われることにより、良いペイストリー作りに苦心していた。[8]

中世の北欧ではラードとバターで調理したため、良く堅いペイストリーを作ることができた。北欧の中世の料理本では、不完全な材料一覧がいくつかあるが、完全で詳細なものは発見されていない。棺、または「ハフ・ペースト」と呼ばれる空のペイストリーは、召使いのみが食べ、よりおいしく食べるため卵黄が表面に塗られていた。中世のペイストリーには小さなタルトもあり、軽食に豊かさを加えていた。16世紀半ば頃に、実際のペイストリーのレシピが現れた[9] [10]。これらのレシピは時を経てヨーロッパの様々な国に伝わり、西はポルトガルの「パステル・デ・ナタ」から東はロシアの「ピロシキ」まで、それぞれの地域で知られる無数の伝統をもたらした。ペイストリー料理でのチョコレートの使用は、現在一般的だが、1500年代に始まるスペインとポルトガルによる新世界からヨーロッパへのチョコレート貿易の後に始まった。多くの料理歴史研究家は、フランスの料理人アントナン・カレーム(1748-1833)を現代のペイストリー料理法の最初の巨匠としている。

ペイストリー作りは、アジアの多くの地域にも強い伝統がある。中国のペイストリーはコメ、または他の種類の穀粉で作られ、フィリングは果物、、またはゴマである。19世紀以降、イギリスが西洋式のペイストリーを極東に伝えた。しかしながら、1950年代に美心食品に影響を与え、香港に始まる中国語圏への西洋ペイストリーを普及させたのはフランスである。中国のペイストリーと区別するために「西餅」という言葉が未だに使われる。他のアジアの国には、韓国のトック、ハングァ、ヤクシのように、穀粉、コメ、果物、地域特有の食材で作る独特な種類のデザートを作る伝統的なペイストリー菓子がある。日本には、餅および饅頭と呼ばれる特殊なペイストリー菓子がある。アジア起源のペイストリー菓子は一般に、西洋のペイストリー菓子と明らかに異なり、より甘い味である。

パティシエ(ペイストリー・シェフ)

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プロフィトロール(クロカンブッシュ)を持つパティシエ

ペイストリーの専門職人は、ペイストリーを焼く職場がパン屋またはレストランかにより、それぞれパン焼き職人またはパティシエ(ペイストリー・シェフ)と呼ばれる。パティシエは料理技能と創造性を駆使して、材料を焼き、装飾、風味付けをする。ペイストリー作りには、多くの時間と集中力を要する。ペイストリーとデザート作りでは、飾り付けが重要である。この職業は、多くの手作業と長時間の立ち仕事をするための体力を要し、早朝からの長時間労働はストレスが多いことがある[11]。パティシエはまた、メニューに新しいレシピを加える責任を持つ。パティシエはレストラン、ビストロ、大きなホテル、カジノ、およびパン屋で働く。通常、焼き釜やオーブンは厨房からやや分かれた場所にある。厨房のこの部門は、ペイストリー、デザート、および他の焼き料理を担当する。[12]

画像


脚注

  1. Bo Friberg. Professional Pastry Chef. John Wiley and Sons. ISBN 0471218251. 
  2. L. Patrick Coyle (1982). The World Encyclopedia of Food. Facts on File Inc. ISBN 0871964171. 
  3. http://www.kswheat.com/upload/got-pastry.pdf
  4. http://www.onlinereviewworld.com/education/pastry-arts.html?gkw=history+of+pastry+arts
  5. http://www.foodtimeline.org/foodpies.html
  6. Sinclair, Charles. International Dictionary of Culinary Terms. Grand Rapids: Bloomsbury Plc, 1998
  7. Jaine, Tom, and Soun Vannithone. The Oxford Companion to Food. New York: Oxford UP, 1999
  8. アーカイブされたコピー”. 2013年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013年1月1日閲覧.
  9. Jaine, Tom, and Soun Vannithone. The Oxford Companion to Food. New York: Oxford UP, 1999
  10. http://www.bakeinfo.co.nz/school/school_info/pastry.php
  11. http://www.allculinaryschools.com/faqs/baking
  12. アーカイブされたコピー”. 2008年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2008年12月8日閲覧.

関連項目