ヘンドラウイルス感染症
提供: miniwiki
ヘンドラウイルス感染症とはウイルスによるヒト、ウマの新興感染症。日本では家畜伝染病予防法における届出伝染病に馬モルビリウイルス肺炎の名称で指定されている。人獣共通感染症の一つ。日本での発生はこれまで報告されていない。
原因
パラミクソウイルス科ヘニパウイルス属のヘンドラウイルスの感染を原因とする。ヘニパウイルス属にはヘンドラウイルスの他にニパウイルス、シーダウイルスが属している。ヘンドラウイルスはBSL4の病原体である。
疫学
1994年オーストラリアブリスベン郊外の競走馬の厩舎で初めて発生。現在までヒトの発症数は3例6人であり、厩舎が存在した場所(ヘンドラ村)の名前がそのまま症名となった。現在までに、オーストラリア以外での発生は確認されていない。自然宿主はPreropus属のオオコウモリ(野生個体の羊水からのウイルス分離が報告されている)。ヒトには感染馬との直接接触により感染する。ウマへの感染経路は不明。発症時期がオオコウモリの繁殖期であり、出産時の体液の飛沫が牧草に掛かり感染したのではないかという説があるが、感染者数が少ないため明確な根拠ではない。そもそもオオコウモリは、森林地帯に住み果実を主食とする動物であるため、草地で暮らすウマと濃厚な接触をする機会は少なく、ヒトへ感染するケースはさらに少ないのである。
症状
- ヒト
- ウマ
- 出血性肺炎、急性の呼吸困難と突発性の神経症状を示し、致死率は約75%と高い。
診断
ベロ細胞を用いてのウイルス分離、PCR法、IFAによる抗原検出、ELISA法。感染培養細胞には特徴的な合胞体が形成される。
治療
特異的な治療法はない。
予防
オーストラリアでは馬用ワクチンの接種が推奨されている。
出典
- ヘンドラウイルス感染症 厚生労働省
- ヘンドラウイルス感染症 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部
関連項目
参考文献
外部リンク
- 前田健、水谷哲也、田口文広、「コウモリ由来のウイルスとその感染症」 獣医疫学雑誌 Vol.15 (2011) No.2 P88-93, doi:10.2743/jve.15.88