ブルームバーグ (企業)
ブルームバーグ(Bloomberg L.P.)は、経済・金融情報の配信、通信社・放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社。本社はニューヨークにある。
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概要
ソロモン・ブラザーズの元幹部で、第108代ニューヨーク市長であるマイケル・ブルームバーグ(以下「マイケル」)が1981年10月に「イノヴェーティヴ・マーケット・システムズ (Innovative Market Systems) 」を設立、後に社名を「ブルームバーグ」と改称した。当初は債券取引の情報を専用端末に配信するサービスを提供していたが、その後、通信社をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌などメディア事業を展開。世界に185の拠点を持ち、社員数は約1万5500人。東京支局でも社員約600名を抱えて、事業を展開している[1]。
マイケルが、当時のソロモン・ブラザースを解雇された際に渡された退職金を元手に、メリルリンチ向けに債券の取引情報サービスを手がけたのが、会社の原点。そのため、ブルームバーグの株主にはマイケルのほかにメリルリンチが並んでいる。当時、マーケットのデータ提供サービスは、ロイターとダウ・ジョーンズに牛耳られていた。ただマイケル自身、トレーダーをしていた頃に両社のサービスに不満を持っていたので、これを改良するサービスを提供したところ大ヒットし、急成長を遂げた。現在では株のほとんどを買い戻し、情報中立的な立場をとっている。
その後、会社のブランド力を上げるには報道部門が必要だと判断し、ウォールストリート・ジャーナルで債券担当の記者だった、マット・ウィンクラーをスカウトし、報道部門の責任者に据え、本格的に報道部門に参入した。
2009年12月にはマグロウヒル社から雑誌ビジネスウィークを買収した[2]。
利用者の使い勝手や操作性、データの見つけやすさなどを向上させるようにソフトウェアの開発を常に行うことが強みなっており、2001年からの10年間で売り上げを約3倍に増やし、2010年の年商は推定70億ドルである。
主なサービス内容と特徴
ブルームバーグが提供しているサービスで最も普及しているのは独自アプリケーションを用いた情報端末である。どこからでもインターネット接続があれば利用できる「ブルームバーグ・エニウェア」と主に社内利用用の固定端末の「ブルームバーグ・プロフェッショナル」サービスがある。一部にバグなどの問題の指摘もあるが、常にユーザーのフィードバックを元に新しい機能や改良などが頻繁に行われサービス向上に努めている。ロイターのシェアを過去十年以上に渡って奪い続けていることからも、企業戦略としては成功を収めていることがわかる。
2015年4月17日、取引システムに原因不明の障害が発生した。市場参加者らによると2時間近く画面が全く表示されない状態が続いた。値動きが確認できず、ニュース配信も途切れがちだったという[3]。
中国共産党に配慮した報道
抗議と圧力
ブルームバーグ・ニュースは、2012年6月に中華人民共和国の習近平国家副主席(当時)を含む、中国共産党首脳陣の私有財産についての調査記事 [4]を配信してから、中国共産党政府の抗議を受け、同社記者への中国報道査証の新たな交付が一切認められず、中国の官民機関とのブルームバーグ端末の契約も減っていた[5]。
その後、同ニュースは現職・元職の中国共産党中央政治局常務委員の親族と中国人実業家との資産的つながりに関する記事を準備したが、中国当局から国外追放されることを懸念して配信を取りやめたことが2013年11月に明るみに出た[6]。直後に執筆した記者の1人が停職処分になったうえ[7]、退社した[8]。
また、アジア担当の編集委員が中華人民共和国に関する調査報道の扱いを巡り辞任した[9]。同ニュースのウィンクラー編集長は同年10月末、中国と同じ一党独裁下で報道規制を行っていたドイツの「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」を引き合いに出し、記事を配信すればブルームバーグが中国から追放される可能性に言及していた[10]。中国当局は同年11月末、同社の北京と上海のオフィスを抜き打ちで調査し、ウィンクラー編集長のナチス発言をめぐり謝罪を求めた[11]。
ブルームバーグのグローアー会長は2014年3月に、中華人民共和国の特別行政区の香港で「会社はビジネス・ニュース報道の中心から逸れる記事を見直すべきだった。なぜならば、そのような記事は中国市場における巨大な売り上げの可能性を危険にさらしたからだ」と発言した。この発言は上記記事を示唆したものと受け止められている[12]。
当局の検閲幇助
ブルームバーグは特定の記事にコード(Code 204)を埋め込むことで、当該記事が中華人民共和国内のブルームバーグ端末で閲覧できないようにする機能も利用しているとされる[13]。
顧客情報への不適切なアクセス
同社報道部門であるブルームバーグ・ニュースの社員と記者は、マーケティングと顧客管理上の観点から、契約者である金融機関がブルームバーグ端末をどう利用しているかについて知りうる立場にあり、[14]これを利用して取材を行った疑いが持たれている。
社員と記者は「連絡先情報を含む個別の契約者に関する属性」、「いつ契約者が最後にログオンしたか」、「契約者と顧客サービス担当者間のチャット[15]に関する情報」、「加入者が特定の機能をどのくらい使用したかに関する週別統計」などのデータを閲覧することができた。
これらの情報は、マーケティングや顧客管理のみに利用されたわけではなく、JPモルガン・チェースのトレーダーが2012年夏に起きた巨額損失事件で解雇されたか否かに関する取材でも利用された疑いがある。またゴールドマン・サックスは、自社従業員の雇用状況をめぐる取材で端末ログオン情報が利用されたとして、ブルームバーグに苦情を申し入れた[16]。
同社のドクトロフCEOは「長い間、限られた顧客関連データについて記者に利用を許していたが、間違いだった」と述べ[17][18]、ブルームバーグ・ニュースのマシュー・ウィンクラー編集長は謝罪のためゴールドマン・サックスに連絡を取った[16]。 なお、同問題が発覚する数日前に記者・編集者研修担当の社内弁護士が辞任を発表している[19]。
イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は社説で「ブルームバーグは馬鹿なまねをした」と評した上で、記者が「特権の乱用」を行った背景について「ウィンクラー氏の手による記者向けのマニュアル」に「手がかりがいくつか潜んでいる」と分析している[20]。
誤報
2010年9月29日、「ニンテンドー3DSが10月28日に1万8千円で発売」と報道。クリスマス商戦の目玉になる可能性が高くなることを見越して任天堂の株価が急騰したが、任天堂側が即座に否定したために株価は瞬時に暴落。この乱高下に対して証券取引等監視委員会が調査に乗り出した。次いで、翌週10月6日、「金融庁がメガバンクの自己資本規制を日本独自で強化検討」との報道し銀行株が急落。金融庁は即座に否定したが影響は市場全体へ波及した[21]。
労働問題
ブルームバーグ・ニュース東京支局では、同社が独自に取り入れている業績改善プラン「パフォーマンス・インプルーブメント・プラン(PIP)」(独自記事の本数などについてのノルマ)を、2009年12月以降に男性記者に課した。この記者は2010年4月になって、ノルマを達成できないことなどを理由に退職勧奨されるようになり、同年8月に解雇された。記者は解雇を無効として東京地裁に訴えを起こし、2012年10月5日に同地裁は「解雇は客観的に見て、合理的理由が無い」などとして、解雇の無効を認める判決を言い渡した[22][23][24]。ブルームバーグ側(代理人:フレッシュフィールズ法律事務所の岡田和樹弁護士)はこの判決を不服として控訴したが、東京高裁も2013年4月24日、地裁判決を支持し、控訴を棄却した[25][26]。ブルームバーグ側は上告せず、確定した判決に基づいて記者に給料を支払い続ける一方、男性を記者職に復帰させることは拒否しており、2013年7月に男性を相手取り「雇用関係不存在」の訴訟を提起した[27]。
他社の対抗商品
など
脚注
- ↑ 会社概要 - Bloomberg.co.jp/
- ↑ ビジネスウィークをマグロウヒルから買収 - Bloomberg.co.jp
- ↑ ロイター ブルームバーグでシステム障害、世界に「前例なき」影響 2015年4月18日 00:54 JST
- ↑ 2012年6月29日付ブルームバーグ・ニュース記事“Xi Jinping Millionaire Relations Reveal Fortunes of Elite”
- ↑ ニューヨーク・タイムズの上記記事に基づく古森義久氏の記事 2013年11月13日付「日本ビジネスプレス」掲載
- ↑ 共同通信記事、日本経済新聞(ウェブ版)2013年11月11日付
- ↑ 2013年11月19日付「産経ニュース」掲載の共同通信記事
- ↑ 2013年11月19日付「Huffington Post」記事
- ↑ 2014年3月24日付ニューヨーク・タイムズ(電子版)記事
- ↑ ニューヨーク・タイムズ(電子版)2013年11月8日付
- ↑ 2013年12月2日付フォーチュン誌(ウェブ版)記事
- ↑ 2014年3月20日付ニューヨーク・タイムズ(電子版)記事
- ↑ 2013年11月13日付ニューヨークタイムズ(ウェブ版)「Sinosphere」欄掲載記事
- ↑ “記者の閲覧、会社が容認=ブルームバーグ顧客情報-米紙”. 時事通信. (2013年5月14日)
- ↑ “コミュニティー機能”. ブルームバーグ社ウェブサイト. . 2013閲覧.
- ↑ 16.0 16.1 “ブルームバーグ端末でプライバシー流出”. ニューヨーク・タイムズ. (2013年5月10日) . 2013閲覧.
- ↑ “顧客の金融情報端末利用、記者が把握 米ブルームバーグ”. 日本経済新聞 (共同通信). (2013年5月12日) . 2013閲覧.
- ↑ “顧客データの保護”. ブルームバーグ・ブログ. . 2013閲覧.
- ↑ “ブルームバーグのフィクサー、スパイスキャンダル発覚の数日前に辞任”. Gawker. (2013年5月14日) . 2013閲覧.
- ↑ “ブルームバーグ、顧客離れの可能性は無視できない”. フィナンシャル・タイムズ社説. (2013年5月16日) . 2013閲覧.
- ↑ 三流記者ぞろい、海外メディアの東京支局(fACTA.2011年2月号)
- ↑ 「解雇は合理的理由欠く」米通信社元記者の請求認める 東京地裁 日本新聞協会
- ↑ Ex-Bloomberg reporter wins nullification of his dismissalJapan Press Weekly
- ↑ 「労働判例」1067号76頁
- ↑ ブルームバーグ訴訟:地裁判決を支持、控訴棄却 東京高裁毎日新聞 2013年4月24日
- ↑ 「労働判例」1074号75頁
- ↑ ブルームバーグ、不当解雇裁判で敗訴後も原職復帰認めず、被害者を逆提訴ビジネスジャーナル 2014年3月17日
関連項目
外部リンク
- Bloomberg.co.jp(日本語)
- Bloomberg.com(英語)
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