フワーリズミー

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フワーリズミー
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1983年のソビエト連邦の記念切手

アル=フワーリズミーالخوارزمي al-Khuwārizmī)ことアブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・ムーサー・アル=フワーリズミー(أبو عبد الله محمد ابن موسى الخوارزمي)は、9世紀前半にアッバース朝時代のバグダードで活躍したイスラム科学の学者である。アッバース朝第7代カリフマアムーンに仕え、特に数学天文学の分野で偉大な足跡を残した。

人物

中央アジアホラズムアラビア語でフワーリズム)の出身で、フワーリズミーの名は、「ホラズム出身の人」を意味するニスバ(通称)である。生没年は諸説あり、780年あるいは800年の生まれ、845年あるいは850年の没とされる。

メルヴで学者として有名となり、カリフのマアムーンに招かれてバグダードに出て彼に仕えた。知恵の館で天文学者として働き、図書館長もつとめ、のちにカリフとなったワースィクにも仕えた。数学天文学、さらに地理学暦学などの分野で様々な研究を行った。散逸した著作も多いが、様々な書を著し、日時計観象儀アストロラーベ)なども作成したとされる。

数学

以下のような著作による業績が知られている。

約分と消約の計算の書

アラビア語: الكتاب المختصر في حساب الجبر والمقابلةhisāb al-jabr wa'l muqābala, ヒサーブ・アル=ジャブル・ワル=ムカーバラEnglish版, 820年

最古の代数学書のひとつ。のちにラテン語に訳され、アル=ジャブルという語は、英語のアルジェブラ(代数学)の語源となった。jabrは「バラバラのものを再結合する」という意味の jabara を語根とする語で「移項する」を原義とし、方程式の両辺に等しいものを加えて負の項を消去する過程を表している。また、a'l muqābalaは「縮小」を意味し、方程式の両辺の正の数から同じ数を引いて同類項を消去する過程を表している。

この著作にはプラス記号、マイナス記号、アラビア数字は使用されていない。未知数 (ジャズル jadhr[1]) あるいは「もの」(ジズル jidhr[2]) と表現し、また平方はマール( mal。元は財産を表す語 [3])、立方はカーブ( kab [4])と表現した。フワーリズミーはこれらの言葉を用いて、方程式を6つに分類した。

  • 根が平方に等しい:bx = ax2
  • 根が数に等しい:bx = c
  • 平方が数に等しい:ax2 = c
  • 平方と根が数に等しい:ax2 + bx = c
  • 根と数が平方に等しい:bx + c = ax2
  • 平方と数が根に等しい:ax2 + c = bx

abc は正の整数にあたる。フワーリズミーは、これらを解く公式を与え、いくつかには幾何学的な説明を加えている。

本書の後半には、イスラーム法遺産相続についての問題が書かれている。配偶者や血縁以外の第三者にも遺産がある場合の分配法が複雑だったため、法律面でもフワーリズミーの著作は重視された。

インドの数の計算法

アラビア語: كتاب الجمع والتفريق بحساب الهندKitāb al-Jām'a wa'l-Tafrīq bi'l-Hisāb al-Hindī, 825年

インド数学記数法を扱った最古のアラビア語文献。四則演算代数方程式の解法、二次方程式幾何学三角法、数の十進法表記で 「0」ゼロ を空いている桁に使用することなどが書かれている。

チェスターのロバート(あるいはバースのアデラード)により『アルゴリトミ・デ・ヌーメロ・インドルム 』[5]ラテン語: Algoritmi de numero Indorum )という題でラテン語に訳され、西洋に紹介された。この翻訳本は通称『アルゴリトミ』と呼ばれ、500年にわたってヨーロッパの各国の大学で数学の主要な教科書として用いられた。計算の手順を意味するアルゴリズム (Algorithm) やオーグリム (augrim) という言葉はこの書の冒頭 Algoritmi dicti (フワーリズミーに曰く) に由来する。

天文学

天文表を作り、フワーリズミーの天文学に関する学問を集大成した書となった。インド天文学の理論を取り入れた初期アラビア天文学の代表作。太陽惑星の運動やなどを計算する多数の表からなっていたが、現存するものは不完全なラテン語訳のみである。

8世紀にインドの使節団が持ち込んだ『スーリヤ・シッダーンタ』や『ブラーマ・スプタ・シッダーンタ』を、ファザーリがアラビア語に翻訳して『シンドヒンド』という書にまとめた。フワーリズミーは、この『シンドヒンド』とバビロニアやプトレマイオスの天文書を参考に天文表を作り上げた。中世ヨーロッパにも大きな影響を与えた天文書となり、アンダルスの天文学者マスラマー・マジュリーティーによるラテン語訳が残っている。

地理学

数学や天文学での活躍に比べて有名ではないが、地理学の分野では、プトレマイオスの世界論を受け継いだ世界地図の作成に携わった。マアムーンの命により、シンジャール平原において太陽高度差を利用した緯度差1に相当する子午線弧長の測量を実施している。フワーリズミーは、この調査の成果を著作『大地の概念』に取り入れた。また、プトレマイオスによる地中海の長さの見積りを修正し、アジアやアフリカの地形描写を精密にした。インドやビザンティンには調査で3回出向いている。

脚注

  1. ラテン語訳 radix
  2. ラテン語訳(12世紀) causa
  3. ラテン語訳 census, 財産
  4. ラテン語訳 cubus
  5. 直訳『インドの数に関して、アル=フワーリズミー』、意訳で『実用算術についてのアルゴリズムの本』

参考文献

関連項目

外部リンク