フランスの教育

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フランスの学校制度

フランスの教育(フランスのきょういく)では、フランスの教育を解説する。

概要

フランスの教育は中央集権制度であり、6-16歳までの学業が義務教育であり[1]教育フランス教育省に帰属するあらゆる教育施設により行われる。

フランスの児童、生徒および学生は1,500万人にのぼる。つまり、総人口の約1/4が学業に専念していることになる。生徒一人あたりの年間教育支出(R&D関連を除く)は10,309米ドル(PPP調整)で、EU平均の8,334米ドルと比較される[2]。フランスの国内総生産に占める教育支出の割合は6.3%(うち公費が5.8%)となっている(EU平均は6.0%、うち公費が5.5%、個人負担が0.5%)[3]

第3期の教育を受けている割合は、労働年齢人口においては30%であり、971万人に相当する[4]。大学への入学は、一部のいわゆるエリート大学グランゼコールを除いて、バカロレアに合格すればできるが、しかし進級認定はきわめて厳格になされる。このため大学入学時、教授に「恋愛か勉強か選びなさい」と言われるという逸話があるほど勉強しなければ進級できない。

2011年のOECD報告書では、フランス労働年齢人口(25-64歳)の教育修了率は、第3期の教育が39%、 後期中等教育までが31%、前期中等教育までが18%、初等教育のみが11%であった[5]。この調査に従えばバカロレア保持者は全体人口の4割以下であり、また10人に3人が義務教育しか受けていないことになる[5]

2018年3月27日、フランス政府は2019年度から義務教育の開始年齢を現行の6歳から3歳に引き下げると発表した[6]

所管

フランス第四共和政憲法(1946年)の前文13段落目に、また、第五共和制においても同様に、次のように謳われている。

国家は、子どもや成人の教育、文化、職業訓練への平等な機会を保障する。国家の義務の一つである公教育の組織は、全ての段階において、これを無償とし、政教を分離する。

つまり、重要とみなされたこの条文は、フランスで長く続く遺産である公教育制度についての原則である。フランスのこの公教育制度は、国家により提供され、中央集権化され、単一化された。全ての市民に対し保障しているという点については、教育者への機会も同様に保障されている。

フランスでは教育制度や運営については、国民教育省に委ねられている。国民教育省は、幼稚園(2歳)から高等教育まで教育制度の組織一連の責任を担う。ただし、他の省庁(特に農業省)が教育省の業務を補っており、教育省以外の省庁も学位を認可する権限がある(たとえばCAPAは農務省所管)。

しかしながら、1982年・1983年および2003年・2004年の地方分権の法律では、いくつかの所轄が限定つきではあるが主な管轄先である行政区画に移転された。

中等教育まで

ecole maternelle (幼稚園)
年齢 学年 略称
3 -> 4 Petite section PS
4 -> 5 Moyenne section MS
5 -> 6 Grande section GS
ecole primaire (小学校)
6 -> 7 Cours préparatoire CP / 11ème
7 -> 8 Cours élémentaire première année CE1 / 10ème
8 -> 9 Cours élémentaire deuxième année CE2 / 9ème
9 -> 10 Cours moyen première année CM1 / 8ème
10 -> 11 Cours moyen deuxième année CM2 / 7ème
Collège (中学校)
11 -> 12 Sixième 6e
12 -> 13 Cinquième 5e
13 -> 14 Quatrième 4e
14 -> 15 Troisième 3e
Lycée (高校)
15 -> 16 Seconde 2de
16 -> 17 Première 1ere
17 -> 18 Terminale Term or Tle

フランス教育法典において、6-16歳までの教育は義務であり、かつ無償であると定められている[7]。中等教育についても公立校であれば無償と定めらている[8]

初等教育

小学校では、「卒業するまでにすべての子供が、自分が頭で考えていることを相手に正確に分かりやすく説明することができる基礎的コミュニケーション能力を身につける」という国語教育が最重要の教育目標になっている。

中等教育

フランスの中等教育は、以下の2段階に分かれる[9]

  • 前期中等教育 - コレージュ(4年間、中学校相当)
  • 後期中等教育 - リセ(3年間、高校相当)

コレージュ修了者にはDiplôme national du brevet(国家ディプロマ)が付与され、これは学生が初めて手にする公式ディプロマである。

リセでは、大学への進学希望者は普通/技術バカロレア(英国のAレベル類似)取得を、その他の者は職業適性証(CAP)取得などを目指すこととなる。CAP取得者はさらに2年間の教育を得て職業バカロレア(Bac Pro)の取得を目指すこともできる。

高等教育

高等教育の進学先(2010年)[10]
一般大学 45.0%
IUT 10.6%
STS 25.0%
CPGE 9.4%
グランゼコール 5.4%
各種専門学校 4.7%
高等教育の専攻分野(2010年)[11]
学部 大学院
人文芸術 31.8% 28.4%
法経など 27.1% 26.5%
理・工・農 16.5% 20.0%
医・歯・薬・保健 7.8% 23.7%
その他 16.8% 1.4%

18歳の年齢時点で、人口の41%は高等教育に進学している(2010年)[10]。国立大学であれば入学料・授業料は無料であるが、別途として政令で定める年間学籍登録料(2010年では174ユーロ)が必要[12]

高等技術部

Section de technicien supérieur(STS, 高等技術部)はバカロレア取得者を対象とした2年制の技術教育で、多くはリセの付属コースである。修了時には上級技術者免状(BTS)ディプロマを付与する。

技術大学

技術大学(IUT, Institut universitaire de technologie)は2年制の職業大学技術大学ディプロマfrançais版(DUT)を付与し、卒業後は労働市場に入る。

一般大学

一般大学(Universities)では、学士号(3年課程)、修士号(さらに2年課程)、博士号(さらに3年課程)を付与する。

グランゼコール

グランゼコールは、中等教育修了後にグランゼコール準備級(CPGE, 予科)を修了した者を対象として、高度専門職業人を養成する高等職業教育(ISCED-6レベル)を行う。修了時にはグランゼコール修了証明書が発行される。

公立CPGEであれば学費は無償である[13]

歴史

フランスの教育制度の歴史は、政治、経済、社会、文化の影響を受け、いくつかの注目すべき改革によりそれの変遷を見ることができる。

フランス革命期の公教育論

この時代、教育は啓蒙の精神を広めるものとしての重要性を持っていた。求められたのは、国民に与えられた主権を行使できる状態に国民全体を高める新しい教育計画であった。

ラボー・サン=テチエンヌによれば、教育について良い計画が必要であることは、「革命を行い、隷属の鎖を断ち切ったのは知性であること、人間には無限の自己完成能力があること、人間の完成は彼が獲得する知識にかかっていること、人々が啓蒙されるほど、とりわけあまねく啓蒙されるほど、政体もより完全なものに近づくこと、人々は啓蒙されればされるほど、自由の価値を知り、自由を保持することができるようになること、知識が全員の手の届くものになればなるほど、それだけいっそう人々のあいだの平等が維持されること」によっていた[14]

革命期の混乱のなか、さまざまな教育機関の試行錯誤が行われたが、国庫と公教育にかかる費用の不均衡を解決する必要があった。全般的に、小学校が子どもに社会で必要な基本的な道徳や能力を身につけさせるための重要な役割を担うことが確認された。また、批判精神を成長させるとともに産業を促進させる科学・技術教育の強化が訴えられた。この時代の教育論のなかでとりわけ鋭く対立したのは、理性にもとづいて知的な公教育を主張する立場と祖国愛にもとづいて国民の徳育を主張する立場であった。理性にもとづく知育はエリートに好意的な教育論になり、祖国愛を育成する徳育は民衆に好意的な教育論になった。啓蒙の精神を全員に広めるという理想と実際的な教育の不平等という問題がたびたび上がることになったが、最終的には労働者階級の教育と学識者階級の教育のそれぞれが国家の繁栄のためには必要なものであるという意見に収斂した。エリート養成機関であるエコール・ポリテクニーク高等師範学校などのグランゼコールはこの時代に設立された。

その後

もっとも重要な改革としては、ジュール・フェリー法による変革を上げることが出来る。彼が手がけた法律には、義務教育、教育の無償化、そして公教育の政教分離原則(ライシテ)がある。

財政

奨学金

給付型奨学金の受給者割合(2010年)[15]
前期中等教育 後期中等教育 高等教育
コレージュ 24.2% 普通リセ(公・私) 15.2% 国立大学 33.8%
技術リセ(公・私) 24.3% CPGE(公・私) 25.7%
STS(公・私) 44.1% 職業リセ(公・私) 32.0%
グランセコール n/a

奨学金の実施主体は国[15]

国家資格フレームワーク

フランス国家資格フレームワーク(NQF)は欧州資格フレームワーク(EQF)との互換性が担保されている。 フランスで付与されるディプロマの種類は50種類を超え、フランス職人資格国家委員会français版(CACP)が所管している。それら資格のデータベースとしてRNCPが存在する。

テンプレート:フランス資格フレームワーク

課題

フランスの公立学校では、10人に1人はいじめの被害にあっているという統計があり、いじめは大きな社会問題になっている。しかし、フランスは他のヨーロッパ諸国よりいじめ対策が遅れているとされる[16]

脚注

  1. 教育法典:L131-1条
  2. OECD 2014, p. 174.
  3. OECD 2014, p. 193.
  4. OECD 2014, p. 37.
  5. 5.0 5.1 OECD 2014, p. 35.
  6. フランス、義務教育を3歳からに引き下げ 19年度から”. iRONNA (2018年3月28日). . 2018閲覧.
  7. 教育法典 L131-1条
  8. 教育法典 L131-2条
  9. ISCED mapping - France”. UNESCO. . 2015閲覧.
  10. 10.0 10.1 文部科学省 2013, p. 13.
  11. 文部科学省 2013, p. 29,31.
  12. 文部科学省 2013, p. 52.
  13. 教育法典 L131-2条
  14. コンドルセ他 (2002) p.155
  15. 15.0 15.1 文部科学省 2013, p. 54.
  16. “出口なき教室 ~フランス いじめの被害~”. NHK. (2013年8月23日). http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/130828.html . 2014-7-19閲覧. 

参考文献

日本人向けの留学案内
当時のフランスの大学・グランゼコールについての案内の記述が参考になる。当時留学を志す高校生・大学生の必読書。

  • サンケイ新聞開発室編『海外留学案内』東京: サンケイ新聞出版局、1966年8月
  • サンケイ新聞開発室編『海外留学案内』東京: サンケイ新聞出版局、 増補改訂版 、1967年
  • サンケイ新聞社『海外留学案内』サンケイ新聞社出版局、 最新版、1970年

関連項目

外部リンク

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